![]() |
ニコニコ大百科 : 医学記事 ※ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。 |
エボラ出血熱(英: Ebola Hemorragic Feber, EHF)とは、フィロウイルス科のエボラウイルスに感染することで起こる感染症である。正式名称はエボラウイルス病(Ebola Virus Disease, EVD)。単にエボラ(Ebola)とも。
エボラという言葉はコンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)の北部を流れるレグバラ川の別名(ウバンギ語系列のングバンディ語(Ngbandi)で「白い水」を意味する Legbala がベルギー=フランス語化した定冠詞付きの L'Ebola から)で、この川は当国最大の河川であるコンゴ川(旧ザイール川)の一支流モンガラ川(Mongala)の源流であり、1977年に南スーダン共和国(当時はスーダン共和国の南部)で初めて確認された患者の出身がこの川の流域であったことによる。焼肉のたれとは無関係である。
エボラ出血熱はその名の通り、感染者の全身からの出血と発熱を伴う感染症であり、出血は口鼻腔・消化管・皮下にみられる。これらの症状は、エボラウイルス(Ebola virus)がタンパク質を分解する毒素を出すことで、体内のコラーゲンが分解されるためであるが、体外へ出血するケースはそう多くない。
出血以外の主な症状には、38℃以上の急性発熱や頭痛・嘔吐・下痢・筋肉痛・関節痛・疲労感があり、初期症状はインフルエンザによく似ているため、誤った処方を行って手遅れになる惧れもある。
症状は急速進行性で、重症化すると嘔吐や下痢による脱水が急激に進み、補液を供給しても衰弱が進行したり、意識障害が起こる。現地の医師が見た例の一つに、午前中には会話や歩行が可能だったにもかかわらず、午後には息絶えていたというケースもある。根本的な治療法は無く、致死率は50%~80%以上とされる。
人から人への感染は主に接触感染であると考えられており、感染者の嘔吐物・排泄物・血液・汗・涙・母乳・これらが触れた場所(ドアノブ、スイッチ、便座、布団、床など)等に触れただけでも感染の危険性がある。この病気が発見された当初は使い回された医療器具等により二次感染が拡大して多数の死傷者を生んだ。
しかし逆に言えば、これらに触れさえしなれなければ感染しないということで、症状がある程度改善された患者は、感染対策をしたうえで家族との面会が許される場合もあるが、空気感染の可能性が完全に無いわけではない。
感染後の潜伏期間は2~20日間と他の感染症よりも長く、日本などの先進国では、まだ症状が出ていない感染者が不特定多数の人物と接触し、ウイルスが広がることが懸念されている。ちなみにインフルエンザの潜伏期間は2~3日間。
エボラウイルスは、日本では感染症法における一類感染症という最も高リスクな感染症として扱われているほか、世界保健機関でもバイオセーフティーレベルが最高のレベル4(BSL-4)として扱われている。BSL-4の病原体を実験に用いる際は専用の施設が必要となるが、2014年現在日本でBSL-4を扱うことのできる施設は、色々な事情で停止されている(理化学研究所と国立感染症研究所)。
現在、エボラウイルスに対する根治療法は無く、エボラ出血熱の感染者には主に対症療法が用いられている。
感染者は重篤な脱水症状や激しい痛み、血液内で無造作に血栓ができる播種性血管内凝固症候群を併発するため、対症療法として「栄養点滴」「鎮痛剤投与」「抗凝固剤投与」などが行われ、病原体そのものへの対処は感染者の免疫任せとなる。
もし一命を取り留めたとしても、脳機能障害や失明といった重い後遺症を残すことが多い。
根本的な治療法は無いが、2014年10月現在、西アフリカでのエボラ出血熱の流行を受け、世界各国で抗生物質の開発が進行中である。
米国のマップ・バイオファーマシューティカル社が開発した「ZMapp」や、日本の富士フィルムが本来は抗インフルエンザ薬として開発した「アビガン」などが感染者に用いられ、症状が回復したとの報告も出ているが、また明確にエボラウイルスを完全に殺すことが出来るかまでは証明されていない。
感染していない状態であれば、エボラウイルスは石鹸やアルコール消毒で簡単に殺菌できるので、季節に関わらず手洗いうがいはしっかりしよう。
ウイルスに感染しておきながら症状が出ず、ウイルスと共存している動物を自然宿主(natural reservoir)または保有宿主(reservoir host)と呼ぶ(なお宿主はヤドヌシではなくシュクシュと読む)。エボラウイルスについては未だに感染源である一次宿主(primary host)たる自然宿主の特定には至っていないが、現地で広く食用にされている大型の果食性コウモリが有力候補とされている。このコウモリは常にエボラウイルスに感染していることになるが、エボラ出血熱が発病することはない。現地では患者のペットが自然宿主となる可能性が否定できないとして、飼い犬等は殺処分されている。
これに対して、他の動物からウイルスに感染した動物(中間宿主(intermediate host)または二次宿主(secondary host))のうち、それ以上他の動物にウイルスを媒介させられない者を終末宿主(dead-end host)または偶生宿主(incidental host)と呼ぶ。つまりエボラウイルスがヒトやサル、ゴリラといった動物に感染しても、食物連鎖の頂点に近い彼らが捕食されるなどで他の動物にウイルスを伝染させる機会は少なく、そのうえエボラ出血熱を発病させて短時間のうちに個体を死に至らしめてしまえば更に伝染の機会が減ることになるため、ヒトやサルはエボラウイルスにとっての終末宿主と成り得る(現地では俗に食用のサルの燻製が感染源の一つに疑われているが、真相は定かではない)。
ウイルスは、自らエネルギーを産生できる細菌類とは異なり、宿主に寄生することで初めてエネルギーを生むことができる生物であり、宿主を殺してしまうと自らも死んでしまうこと(dead-end)になる。これは生物的には重大な失敗であり、このように感染者を死に至らしめるウイルスは不完全な生物ともいえる。ひょっとしたらエボラウイルスの劇症化の速さとヒト同士での感染力の高さは、この取り返しの付かない失敗を僅かでも取り戻そうとするウイルスたちの必死の抵抗の表れなのかもしれない。
※便宜上、この項目ではウイルスを広義の生物として扱っています。詳細はウイルスの個別記事参照。
掲示板
210 ななしのよっしん
2021/01/01(金) 19:02:41 ID: h6ENvmPFur
原因が猿とわかってるんだから猿肉を禁止するのが最善の選択だと思うんだが何故どこの国も猿肉の提供と食事を禁止しないんだ?
211 ななしのよっしん
2021/02/18(木) 00:00:50 ID: MR06Kv4UHA
西アフリカで再流行しているらしいな…
212 ななしのよっしん
2021/09/06(月) 18:25:08 ID: 18HUw/QaKR
「まずこの場所を清潔にする」のおじさん(ギニアの首都コナクリの市長でソリバ・ソレル・カマラさんというらしい)、亡くなったのかぁ…
https://
急上昇ワード改
最終更新:2025/02/16(日) 23:00
最終更新:2025/02/16(日) 23:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。