陸の孤島(りくのことう)とは、離島でもないのにそれくらい交通が不便な地域を比喩した表現である。
実際の離島、特に本土と架橋・トンネルを結ぶこともできない距離の島においては、外界に出るための交通の手段は船か航空機しかない。これに喩えて、鉄道がない・バスがない・高速道路がないなど、本土にも拘らず外界に出る手段が乏しい地域がこう呼ばれる。
交通機関の発達前からこういった交通不便の地は存在しており、ひどいものだと道路すらなかった。たとえば、土佐国(現在の高知県)は四国山脈と太平洋に挟まれた地形から、かつては島流しの地にされていた。また、交通の不便さは軍事面においては利点となる(守りを固めやすい)ので、そういった不便なところをあえて拠点にした武士も多かった。
昭和の時代になっても、北海道の雄冬集落(増毛町)や青森県の牛滝集落(佐井村)など、本土に属してはいるものの他地域からの道路が建設されておらず、フェリー(船便)を使用しなければならない物理的な「陸の孤島」も存在した(現在は両者とも道路で本土他地域と接続可能になっている。前者は国道開通後、札幌~増毛を経由する路線バスの停留所も作られるなど、幹線ルートとは言えないながらも脱却したといえるが、後者は国道からも逸れた地域に属し、同地に存在する牛滝小中学校は本州最後のへき地等級5級の学校であった(現在は4級、なお2022年現在休校中である)など、現在においても陸の孤島と言える)。
地方では高速道路などの道路網が不足している地域が、一方で都会では公共交通機関が不足している地域がそう呼ばれやすい。たとえば、横浜市で本牧地域(横浜市中区東部の沿岸)が「鉄道が通っていない」という理由で市民から陸の孤島呼ばわりされているが、実際のところ本牧地域のバス運行本数は非常に多く、「交通が不便」というにはかけ離れている。あくまで「周囲の環境と比べて不便」なのである。
都道府県単位だと新幹線が通っていない、または自動車専用道路(俗にいう広義の高速道路)が貫通していない高知県や宮崎県、和歌山県、島根県、福井県などがそう扱われやすい。2015年に宮崎県延岡市に高速道路が開通することの記念として「まもなく陸の孤島終了します」というポスターを延岡市自らが制作しているなど、地元の自虐として使われることも多い。
地域レベルだと鉄道が廃線となった鹿児島県大隅半島、鉄道が未成区間のままの高知県の室戸岬近辺、足摺岬近辺がよく挙げられる。
東京23区内における陸の孤島としては、2021年現在開発が進んでいない中央防波堤(江東区・大田区)を除くと、大泉学園町および西大泉(練馬区)、花畑(足立区)、水元(葛飾区)、鹿骨(江戸川区)、宇奈根(世田谷区)などが挙げられる。いずれも東京23区の郊外にある鉄道空白地帯で、大江戸線の延伸が予定されている大泉学園町以外には鉄道延伸計画も存在しない。それでも、同地と主要駅を結ぶバス便は決して少なくなく、あくまで23区内での相対的な地位にとどまる。また、2000年代以降のつくばエクスプレスや日暮里・舎人ライナーの開通によって、解消された鉄道空白地帯も存在する(足立区入谷など)。
山手線内では、唯一渋谷区の一角に1km圏内駅なしのエリアがある…という話を聞いたことがあるが、どこにあったかは忘れてしまった。詳細情報を頼む
大阪市における陸の孤島としては、(これもまた鉄道空白地帯であるが)鶴町を中心とした大正区のほぼ全域、生野区の千日前線と大阪環状線の間の地域、そして此花区の夢洲・舞洲などが挙げられる。かつてはもう少し多かったが、大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)長堀鶴見緑地線・今里筋線や、おおさか東線(城東貨物線の旅客化)といった路線の開通によって多くの地域が解消された。現在でも上述した鉄道空白地帯で長堀鶴見緑地線や今里筋線の延伸、敷津長吉線の開通が願われているが、大阪メトロの民営化後は下火になりつつある。
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最終更新:2024/12/22(日) 20:00
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