“816(1990)”とは、VOCALOIDを使用した楽曲投稿者の一人である。
別名“しゃれた名前P”。“8 1/6”とも。
概要
等身大の人生観を歌ったロックンロールに定評がある作者。案外哲学好み。
その個性のベクトルはアンダーグラウンドよりアンチテーゼに近い。
ニコニコ動画の初投稿は“キャタピラー(2009/11/01)”。現在非公開設定中。
しかし現在の作風が頭角を現したのは“この世界に花をうえて(2011/01/09)”頃であり、
当初から完成しきった作風でなく、試行錯誤を重ねて変化していった痕跡を残す。
それでも5年以上の活動実績を持つことには変わりはなく、多彩な変化を遂げている。
流行のボカロ曲から離れた、ひと味違う刺激を受けた若い層から主なる支持を得ている。
殿堂入りの記録こそないが、様々なリスナーから楽曲をカバーされており、
その認知度は多少VOCALOID音楽を嗜んでいる者からすれば「知る人ぞ知る」。
流行の最先端ほどではないものの、今でもなお新曲の投稿を待つファンは少なくない。
一方で作品制作は殆どが単独行動。他者と共同で制作した例は皆無に近く、
せいぜいコラボと言えるものも“迎居昭彦”氏よりイラストを書き下ろされた程度
(動画内で使われているイラストはピアプロから引用しているとのこと)。
故に他のボカロPとの交流は限られており、お世辞にも親交的とは言い難い。
なお、基本的にニコニコ動画外部の活動は消極的。しいて言えばピアプロの投稿程度。
それらも楽曲の投稿以外のことは殆どしないので、些か作曲にストイックな印象を受けるかもしれない。
名前の由来
- 投稿者名《816(1990)》
- 自身の誕生日を由来にしている。わかりやすい。
名前の丸括弧はユーザーネームの重複を指摘された際に付け加えられたもの。
いくらなんでも誕生年の数字ではない…はず。これはこれで被りそうだけど。 - もともと読み仮名はなかったが、改名する際に「ヤイロイックオー」と定められた。
ちなみに読み仮名はノリで付けられたもので、深い意味は無い。 - プロデューサー名《しゃれた名前P》
- 投稿者の呼びかけとしてP名が募集され、正式に採用されたもの。
- その以前から「うれのこりP」や「ロッケンP」などのP名が付けられていたが、
実際に採用することはなく、長らくP名が決められていなかった。
後にTwitter内にて新曲の動画タグに貼る形でP名を募集。
結果として十数のP名が集まり、最終的に「しゃれた名前P」の銘が正式採用される。 - こうしてP名は決まったものの、実際ところは殆ど使われていない。使う気配すらない。
投稿者名の方が呼びやすいのか、こちらもこちらでP名で呼ぶリスナーも殆どいない状況だったりする。 - とはいえ結果的にはP名のことで急かされなくなったので、これはこれで意味はあったのだろう。
もっとも、P名を欲しがっているボカロPにすれば贅沢な話かもしれないが。
作風
その歌で社会を語り、愛に走る作風を持つ。
好機猟奇多感を秘めるは少年の心。汚泥に住まう男が求むは自由か高潔か恋人か。
兎にも角にも作曲はロック調が主体。転じてシューゲイザーやグランジも多い。
また、ポップスやエレクトロニカのようにバンドサウンドに頼らない曲調も手掛けているが、
一方でポストロックのように「ロック調の曲調でシンセサイザを目立たせる」作品は少ない。
基本的に良くも悪くも素朴ながらも王道であり、曲調のメリハリはキッチリとしている。
ついでに言えばヘヴィメタルよろしく強烈でハイテンションなジャンルとは無縁なもので、
暴走気味に無礼講を働くようなネタ曲だか電波曲だかを作ることもない。
仮に物騒な歌詞を書いたとしても、それもスマートに格好がつくように仕上げるのが常である。
こうした作曲姿勢には、感化されたアーティストの存在が大きく関わる。
ポール・マッカートニーの自在でパワフルなロックンロール、
才能だだ漏れ学生バントらしかった頃の桑田佳祐が送るスーダラなんだけれども時々センチな浮世絵ソング、
Oasisのギターや久石譲のシンセサイザに坂本龍一の不協和音、
そそられるRolling_Stonesの適当加減とScott_Joplinの軽快なラグタイムに潜むポップサウンドなど、
王道を語る70年代の洋楽から変革を彩る90年代の邦楽をインスパイアしているようだ。
- なかでも“John_Lennon”からの影響は一際強かったという。
ジョンは荒涼で暗澹とした環境を音楽と仲間と共に耐え抜き、野性的で弾丸のように生き抜き、
ビートルズの一人として音楽史に名を残していった人物である。
ジョンのオリジナリティは、彼の音楽性となって節々に現れているのだろう。
基本的には「アンニュイで退廃してるけど、時々ピュアで明るい」というべき傾向があり、
活動時期にもよるが、作風の幅は割と広め。製作時間や作りこみ加減の差が広いのはご愛敬。
少なくとも愛を語ってもメルヘンに走らないタイプなのは確かだろう。
主なボーカルは“初音ミク”。“眠れる蠅のバラード(2013/10/25)”よりV3にも対応。
調声技術は可もなく不可もなく。現在は特に不自然なく歌わせているが、
活動当初は調声バランスに疑問が残る作品が点在しなかったわけでもない。
どうやら調声の苦手意識があるようで、基本的に深くは手を加えないらしいとか。
なお、ボーカルのキャラクター性は希薄。引用したイラストを意識する程度に留まる。
活動当初から現在に至るまで徐々に作風を変えていった作者である。
以下は活動時期ごとの傾向と推移を記載する。
黎明期
作品の投稿を初めて間もない時期。荒削りのような未熟さを残す。
前述したように活動当初から完成していた作風ではなく、
故に当時は方向性を模索していた頃であり、現在の作風と比べると相違点は多い。
意外にも後の代名詞と言えるロック調の楽曲は多くなく、ポップ調の楽曲と半々だった。
歌詞の表現は(現在と比べると)浅いものの、発想自体は特別逸脱している程ではなく、
言葉回しこそ違えど、どこか偏屈的な価値観と清楚なる憧憬が垣間見得る。
もっとも、歌詞を凝ろうとして調声で難儀していた節がないわけでもないが。
“哀愁コード(2009/11/14)”がボカランED曲で起用された影響か、そこそこ知られていた模様。
しかし知名度の規模は決して大きくはなく、本当の意味で有名になるのは先の話になる。
作品一覧(黎明期)
キャタピラー | 真夜中までの3時間 | 哀愁コード | サヨナラロイド | 無彩色 |
---|---|---|---|---|
想像、イメージ | 青、もしくは緑 | ノイズでも雑音でもない | エリーのように | 好奇 |
失敗作 | カラフルなこの場所 | 落下のルール | 一秒先の抽象化 | デジタル時計が100時をさすまで |
ポップ・グループ | わがままな毎日 | 無限のエナジー | ロマンス | |
揺籃期
恐らくニコニコ動画での音楽活動の中で最もギターサウンドに傾倒していた時代であり、
ロックンロールを中心に、シューゲイザーやグランジ等のジャンルを数多く手掛けていく。
活動当初と比べると、ギターを用いた楽曲に表現の幅が広がっていった時期であった。
歌詞の傾向も「人間社会」を連想させる内容が増えつつあり、
社会生活の日常や、社会の縮図を表したかのような作品が目立つ。
時には“才能あふれる天才共へ(2011/11/04)”みたくニヒリズムに走る歌も多かった。
- また、“深い海のブルー(2011/03/03)”や“虫たちのいる湖畔にて(2011/10/18)”のように、
殺生な歌詞をポップテンポの曲調に忍ばせる作品も見受けられる。
このような雰囲気で歌詞の意味合いを暈かす手法は“Lady Madonna”を彷彿とさせる。
その一方でギターサウンドを用いないテクノやエレクトロニカも試みていたが、作品数は少なめ。
結果的にロック調の作品が目立つ形となり、彼の作風として大きく印象付けることとなる。
作品一覧(揺籃期)
この世界に花をうえて | ソ連ならとうに消えた | ロックンロールゴースト | その先に | 深い海のブルー |
---|---|---|---|---|
極楽浄土に咲き誇る蓮の花 | アジア的ユーラシア | 楽しいことばかりの日 | 新たな気分 | ぼくたちの夏 |
青い青い夢の汽車 | ヒーローは檻の中で歌う | シャンペンと君とスーパーノヴァ | ベーコンエッグ・ミステイク | 虫たちのいる湖畔にて |
才能あふれる天才共へ | BAD HELP | 神様の風に吹かれて | テレビジョン | プレゼント |
宇宙に舞う神の遊び | 蛇口 | GENTLEMAN | グッバイ・リバプール | |
転換期
揺籃期の作風がポール・マッカートニーのロックンロールが中心だとすれば、
転換期は才能ダダ漏れな頃の桑田佳祐や諸々にインスパイアを受けたであろう作風。
様々な方面のジャンルや世界観に着手しようとしていた時期である。
“ホワイト・ライト(2012/05/12)”の完成がキッカケとなったのか、
全体の傾向としてシンセサイザを積極的に取り入れたジャンルの楽曲が多く、
それまで手掛けていた70年代ロックとは ひと味違った趣を印象に残す。
こうした作品の評判は概ね良好。作風として一先ずの完成を迎える。
作曲の幅が広がったように、作詞の傾向も若干変化。
かなり直球な表現で薄暗い人間社会を連想させたりする一方で、
詩的な表現を用いて煌びやかな情緒風情を歌わせるような、真逆な印象も醸し出す。
相変わらず柄になく前向きだったり世間を達観していた事が多かったものの、
比喩表現抜きで人を殺したり、モロに「この世は最低だ」と言い切ったり、
澄み切ったような精神世界を広げた歌も出していた時代でもあった。
意外にも当時流行していたボカロ曲からも着想を得ていたようで、
“サヨナラ電子世界(2012/07/19)”や“あの子がいる(2012/07/27)”等はそれを意識したらしい。
しかし こうした作風は一過性で終わり、以降このような作品が出されることはなかった。
先述したサヨナラ電子世界や某歌い手の反響もあってか、
この時期より旧作が掘り返されるような形で注目が集まるようになる。
最盛期と呼ぶに相応しい時代であり、ここから認知したファンも多数に及ぶ。
作品一覧(転換期)
遠くの方の蒸気 | ホワイト・ライト | 水中で遺書を書く | 生き抜け!地上の薔薇 | サヨナラ電子世界 |
---|---|---|---|---|
あの子がいる | THIS IS THE LIFE | 傍観者No.9 | 精神のカルマ | 雪国 |
自分は人間ができている方だと思う | 魔法の絨毯 | バブルは弾けていきました | BOOGIE TUNE MAMA! | 歌うテロリズム |
PSR B1257+12 | 君は言う | マルゴトゼンブ | 罪と名付けて | 日常の中にひそんだリズム |
Worlds in the world | 彼女と僕 | 嗚呼、この世界は最低だ | 麗しのニーナ | 現代講義録 |
確立期
作風が定着した印象を受ける時期。成熟期とも。
作品ごとによる制作時間の二極化が顕著に現れていった時期でもある。
かねてよりシンプルな曲構成を好んでいた816(1990)氏であったが、
この頃を境に(従来の作品と比べ)変則的な曲構成を試みるようになる。
その主たる例が“史上最高の時代(2014/02/22)”や“パープル(2015/06/06)”であり、
一連の進行の中で明確なる緩急や転換を加えようとした痕跡が多く見受けられる。
ついでに大人の恋愛を語る官能的な歌も出していたが、ファンからの反響は乏しかった様子。
しかし様々な環境変化もあったのか、作品制作に難儀し続けた時期でもあり、
全盛期の勢いは途絶え、投稿頻度は大きく落ち込んでしまうようになる。
それでも即席で作ったような曲を気晴らしに投稿し続けて繋いでいたものの、
時には試作品と称してタイトルも一枚絵も付けずに公開してしまったこともしばしば。
こうした即席の曲も、結局はマイリストから外されお蔵入りになってしまうものばかりだった。
歌詞の傾向も退廃的でアンニュイな感情を晒す表現が一層深まる。
そうでなくとも十代特有の皮肉屋じみた若さは既に消えつつあり、
彼の歌は現実社会で一喜一憂を繰り返すものに変わろうとしていた。
作品制作が思うようにいかないスランプ続きの時代であったが、
作者の苦悩をよそに、作品全体の評価は穏やかに伸び続けていた。
決して順風満帆とは言い難いが、それでもファン達は彼の曲を求め続けていたのだろう。
ちなみにボカロランキングを真っ向から否定した歌も出していたが、反響はまずまず。
物議を醸し出そうだったが、そんなことはなかった。みんなかしこぶっちゃって。
作品一覧(確立期)
眠れる蠅のバラード | メトロポリス | 僕らはなんでもできる | 愛してるよ~ | ロンリー少女の脳がスパーク! |
---|---|---|---|---|
時の歯車に乗って | 靴をもらう | ドレスと麦わら帽子 | 史上最高の時代 | ランキングを見て思ったこと |
夕焼け空が大好きなあの子 | 愛と憎しみ | 君に夢中… | 夢を探すビートル | 妙鴦 |
死んだドルフィン | 東の端のニルヴァーナ | ナンテナ | パープル | ポップソングはマジック |
アンダーグラウンド | 晩春 | |||
近作
現在進行形の状況。投稿頻度は減少気味だが、かといって失踪している状態でもない。
未だに作曲の意欲は見せているので、とりあえず気長に待とう。
いつの間にか“8 1/6”に改名しているが、これといったエピソードはない。
作品一覧(近作)
脳内麻薬で僕はハイ | 曇りガラス | ヒーロー BACK AGAIN | dance | |
---|---|---|---|---|
なお、一部の非公開作品はPIAPRO(ピアプロ)にて掲載を続けている模様。
興味のある方は下記の関連リンクからどうぞ。
代表曲
作者様から作品のコメントを頂けましたので、この場をお借りして掲載させて頂きます。
ロックンロールゴースト
才能あふれる天才共へ
この世界に花をうえて
ホワイト・ライト
愛と憎しみ
君に夢中...
後半コメントもらえてないね。
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