アトラク=ナクアとは、以下のような事柄を指す。
- クトゥルフ神話などに登場する蜘蛛神の名前「Atlach=Nacha」。 → アトラク=ナカ
- アリスソフトから発売された18禁ノベル形式アドベンチャーゲーム。1に由来。
ここでは主にゲームのアトラク=ナクアについて語ることにする。
概要
初音と奏子の関係を中心に、女性の心理を細やかに描き、多くのプレイヤーから共感を得た。百合ゲーの先駆けとの評価もある。
主な登場人物は以下のとおりである。
- 比良坂初音(ひらさか はつね):幾百の年を経た女郎蜘蛛。奏子から「姉様」と呼ばれている。
教師猪口に、「身の程を知るのね、豚」と言い放つなど、醜いものには容赦ない無慈悲さを見せる。 - 深山奏子(みやま かなこ):初音が巣を張る学園の女生徒。とある出来事で初音に助けられる。
- 銀(しろがね):初音の宿敵。僧形。
- 高野沙千保(たかの さちほ):おっとりさん。鷹弘に大切にされている。
- 渡辺つぐみ(わたなべ つぐみ):鷹弘の妹。はきはきしている。沙千保とも仲がよい。
- 渡辺鷹弘(わたなべ たかひろ):沙千保の彼氏。つぐみの兄。剣道部主将。生徒会長。
- 堀田美由紀(ほった みゆき):剣道部のマネージャー。鷹弘のことが好き。沙千保がうらやましい。
- 猪口(いぐち):素敵教師。
- 葛城和久 (かつらぎ かずひろ):関西弁。ゆるいキャラ。なごむ。
- 八神燐(やがみ りん) :あわあわしている。おでこ、眼鏡、巫女。
アリスソフトのファンディスク的なゲームパック「ALICEの館4・5・6」に収録されていたゲームで、長い間、再版されなかった為、伝説のゲームとして語られていた。後日、廉価版として単品で発売された。
後日談
本作には後日談(小説)があり、『ALICEの館4・5・6 オフィシャルガイド』に掲載されている。
物語はゲーム本編から十数年後、深山奏子の“仔”である深山初音の視点で語られる。
※以下、おおまかに荒筋を記載しますが、ネタバレのため文字色反転します。
ゲーム本編から約一年の後、初音を産み落とした奏子は現実世界へと帰還する。
贄たる人の身から蜘蛛へと為り、さらに仔を孕み産んだためか、この時既に精神を消耗していたと思われる。
またゲーム本編の描写から家庭を省みない人物と思われていた奏子の父も、長期に渡って失踪した挙句、赤子を抱いて帰って来た一人娘の姿を目の当たりにして、相当参ってしまったようだ。
蜘蛛となった奏子の生理は人知を逸しており、日々成長する初音に比べて奏子はほとんど歳を取らず、精神の消耗も相まって周囲からは病気を患っていると判断される。結果、実業家である父の資金とコネクションの庇護を受けつつ、幼い母子は各地を転々とする。
そして十数年の歳月が過ぎた。
人の年齢で十代に成長した娘と、全く歳を取らず精神も患ったままの母は、やはり人の世界にと解け込むことは叶わなかった。次に引っ越した先では“姉妹”を偽らねばならないと初音は考えていたが、そのような悩みを別にすれば、生活能力の欠如した母に代わって初音が家事の全てを担ってはいたものの、日々の生活は平穏と言えなくもなかった。
一日中、まるで老婆のように静かに過ごし、どこからか持ち出した“糸”で編み物を続ける母に対して、初音は思春期の反発を憶えつつあったが、「初音には白が似合うから」と囁く無垢な微笑みを拒絶することもできなかった。
そんな中、買い物先で初音は変質者らしき男に目をつけられる。初音の疑惑と嫌悪の眼差しにも男は全く動じず、初音は男から向けられる歪んだ情欲のようなものに底知れぬ恐怖を感じながら帰宅した。
時を同じくして、初音の体に変化が訪れる。
先ほど味わった強姦への本能的な恐怖――外敵に対し抗う力を無意識に欲したためだろうか、蜘蛛の力が目覚めたのである。
禍々しい鉤爪に変化した己の腕に、初音は混乱を抑えられなかった。そして、その声を聞いて現れた母の行動も、初音の混乱に拍車をかけた。
「姉様……」
体に異常をきたした娘を見下ろす母の、第一声がそれであった。
膝を着いて両手で娘の顎を包んで「姉様」と呟く母の想いも、その歳を取らない女の恍惚とした表情の意味も、初音に理解できる筈がなかった。
そして口づけを交わされた瞬間、初音は母を振り解いて走り出していた。
夜の闇が、森の木々が初音を見下ろして囁く。
「蜘蛛の仔だ」
「蜘蛛の仔がおる」
己が何者なのかと問い返すが、答える声はない。
昨日までの日常は破綻しつつあり、体が衝撃に襲われた時、それは終幕を迎えた。
あの気持ちの悪い男だった。
初音の上に覆いかぶさった男は獲物を捕らえたことに歓喜し、これからの行為を想像して狂わんばかりだったが、初音の抵抗に――たった一度、腕を振るわれただけで形勢を覆された。
薙ぎ払われたのは幼い生娘の細腕ではなかった。
それは歪な曲線で構成され、不吉な色彩で彩られた、凶器そのものの……。
化物と、男は叫んだ。
「……そうよ、化物よ」
闇夜を背負って男を見下ろす少女の眼には、彼女が受け継いだ種族の血を臭わせる冷たい光が宿っていたが、双眸を濡らす涙には人の温もりが残っていた。
初音は、男を殺さなかった。
己の中の何かを抑え込むかのように、彼女は手を下さなかった。
その後、初音は母との離別と上京を決意する。
人に紛れて暮らしたいというのが彼女の願いであり、祖父にも聞き入れられた。
静かな声で別れを告げる娘に、母は編み上げた衣物を手渡して言う。
「初音には白が似合うから」
母のその声が、眼差しが、想いが、誰に向けられているのか……確かなことは初音にも分からなかった。
初音にとっては、己の預かり知らぬこととは言え、運命に翻弄される母が不憫であり、その母を残して去っていかなければならないことに涙が流れた。
関連動画
ゲーム中で使用されている曲が多くの人の手でアレンジされており、アレンジ曲をもとにした動画も多い。
アレンジ曲
プレイ動画
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関連項目
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