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聖守護天使エイワスとは、
- 英国の魔術師アレイスター・クロウリーに「法の書」の知識を授けた高次元存在。本記事で解説する。
- ①を基にした『とある魔術の禁書目録』のキャラ → エイワス(とある魔術の禁書目録)
- ①を基にした『女神転生』のキャラ
※本記事の内容は元々「禁書目録のエイワス」との併用記事に記載されていた物ですが、現在は記事の肥大化に伴い分割措置を取っております。禁書のエイワスについては該当記事へどうぞ。
史実のエイワス
英国の魔術師アレイスター・クロウリーに「法の書」の知識を授けた高次元存在。
この存在はクロウリーの「聖守護天使(HGA=Holy Guardian Angel)」とされる。同時に「ホール・パール・クラアト(ホルス)の使者」であり、「秘密の首領(シークレットチーフ)」「地球外生命体」など様々な魔術的記号を内包する。
スペルはAiwassもしくはAiwaz。日本ではアイワス、アイワズとも表記される。
聖守護天使(HGA)
聖守護天使という概念は魔術結社『黄金の夜明け団』マグレガー・メイザースが翻訳して広めた「アブラメリンの書」において登場する。
古来よりオカルト・宗教の世界では、人間が内包する神聖的な一面(例えば「高次の自己(ハイヤー・セルフ)」「ジーニアス」「アウゴエイデス」等)が提唱されていた。
聖守護天使はそれらと酷似した概念で[1]、個々人にとって唯一無二の霊的存在にして神聖たる高次元との媒介者である。『黄金の夜明け団』他、新旧問わず魔術師(オカルティスト)と呼ばれる者達は各々の聖守護天使と対話し、「真の意志」を見出す事を目標に掲げている。
クロウリーはエイワスをこの聖守護天使だと確信していたが、後年になるとクロウリーの見解には変遷が見られ、自己とは独立した別個の存在として扱われるようになった。
クロウリーは聖守護天使エイワスを「秘密の首領(シークレットチーフ)」(アストラル界から人類を導く究極の高次元存在の総称)とも見做しており、その全体像が完全に固まっていない。
ちなみにトマス・アクィナスが成立させた「守護天使」はまた別の概念である。
法の書 - テレマ教の始まり
1904年。クロウリーは1人目の妻ローズ・クロウリー[2]との新婚旅行中、エジプト(カイロ)で彼女に魔術を披露する。その魔術は空気の精シルフの召喚魔術だったが、召喚作業の途中でローズに正体不明の高次元存在が憑依していることに気付く。
この時に何度か聞いた「声」──平たく言えば宣託である──の内容は、神秘知識もないローズの口から発せられるべき言葉ではなかった。
その声の一部を抜粋すると「あなたはホルスの神を怒らせた」「神々の分点が到来し、人類史の画期的な新時代が始まっており、クロウリーは太陽霊の力を人類とを結びつける鎖となる」という。
この神秘的存在〈エイワス〉を不審に思ったクロウリーだが、その宣託通り4月8日~10日の三日間にさらなる啓示を得て、霊界通信の内容を「一冊の書」に自動書記で書き殴った。
Had! The manifestation of Nuit.
(ハド! ヌイトの顕現よ。)
The unveiling of the company of heaven.
(天上の一団がヴェールを上げる。)
Every man and every woman is a star.
(全ての男女は星である。)
Every number is infinite; there is no difference.
(全ての数は無限。そこには如何なる差異も無し。)
Help me, o warrior lord of Thebes, in my unveiling before the Children of men!
(我を助けよ、おおテーベの戦将なる君主よ、人の子らの前でヴェールを脱ぐ事を!)
Be thou Hadit, my secret centre, my heart & my tongue!
(我が秘密の中枢たる汝 ハディートよ、我が心臓そして我が舌となれ!)
Behold! it is revealed by Aiwass the minister of Hoor-paar-kraat.
(見よ! それはホール・パール・クラアトに仕えるエイワスによりて啓示された。)
上の節から始まるこの書の名は「法の書[3]」。クロウリーは同書を聖典に新興宗教「テレマ教」を立ち上げ、新しい時代(ホルスのアイオーン)の預言者であると自称した。
オカルトの世界で霊的存在との接触が箔付けとして重要なのは歴史が証明している。エイワスとの交信は、間違いなくクロウリーの人生を左右する分岐点であった。
それはかつてエリファス・レヴィ[4]が賢人アポロニウスと接触した事や、「黄金の夜明け団」ウィリアム・ウィン・ウェストコットが秘密の首領アンナ・シュプレンゲルに結社設立許可を貰った事のように(ただし後者のシュプレンゲル書簡については偽造である…)。
クロウリーに否定的なジョン・シモンズはエイワスを指して「神秘的な知性がない」「超人的存在とは相容れない」と冷笑的に記した。結局、エイワスが〈黄金の夜明け団〉の後継に収まろうと考えたクロウリーの無意識の投影なのか、はたまた捏造の知性なのか、本当に神秘的知性なのかは定かではない。
イスラエル・リガルディは次のように書いた。「その書がエイワスと名付けられた超人の知性によって書き上げられた物でも、クロウリーの創造的観点から花咲いた物でも、大した違いはない。要は、その書は生まれた、そして時代の代弁者となって、これまでどこの誰もが表現しなかった我々の時代の本質的性格を見事に表現してくれた」。
確かに後世の神秘学者にはエイワスの正体を探る行為が物事の本質をつまらなくしていると考える者が多いという。
いずれにせよコロンゾン、30のアエティール、アブ・ウル・ディズ、ラム(lam)など、クロウリーに影響を与えた高次元存在の中でも特に重要な存在であることは間違いない。
ホルスの時代(アイオーン)
テレマ創始者のクロウリー曰く、キリスト教前の原始宗教が蔓延る「イシスの時代」を原初に、やがてキリスト教が支配する「オシリスの時代」が到来。その時代は「法の書」が世に投下された1904年を以て終焉を迎え、今の時代は人間が真の意志に目覚めて神となる「ホルスの時代」である。
ただし、クロウリーとの関係が深いある魔術師は、エイワスを邪悪と見做し、ホルスの新時代は到来しなかったという事(あと二重進行説も)提唱している。この魔術師はフラター・エイカド[5]という有名なセレマイトで、クロウリーとも(破門されるまでは)親交があった。
エイカドの「マートの時代」をはじめ、後年にはソロール・ネマ[6]による「ホルス/マートの時代」、悪魔主義者(サタニズム)のマイケル・A・アキノ米国陸軍中佐による「セトの時代」(後述)など、どれもクロウリー観と異なる潮流が発生した。
セトの時代(アイオーン)
アキノは1975年に新たな時代を宣告、さらに新興団体「セトの寺院」を設立し、後にクロウリーとその弟子ジャック・パーソンズの正当な後継的存在「第二の獣(セカンドビースト)」を自称した。
この1975年に何があったのか、率直に言えば1904年の再来である。「悪魔の教会」(ラヴェイ)と袂を分かったアキノは自らの指針を仰ぐべくサタンの召喚を試みたのだが、アキノの前に現れたのはサタンを象った死と破壊の神「セト」であった。
曰く、セトは1904年にクロウリーの前に現れた「エイワス」と同一存在であり、1966年にラヴェイを導いたサタンでもあるという。
新時代の起源は一九〇四年まで遡ることができる。セトはこの時、アレイスター・クロウリーの守護天使エイワスに化け、カイロにいた彼の前に現れた。そしてクロウリーを「太陽神ホルスの永劫(アイオーン)」の幕開けの布告者と宣言した。一九六六年、ラヴィはサタンの永劫を導いた。それは耽溺を象徴する中間段階である。その後にセトの永劫が訪れ、教化をもたらすのだ。
アキノはセトの宣告を機に『The Book of Coming Forth by Night』(夜に現れしことの書)を世に送り出しており、これが「セトの寺院」の聖典となっている。
関連項目
- アレイスター・クロウリー
- コロンゾン
- ラム(lam)
- エイワス(とある魔術の禁書目録):とあるシリーズにおける同じ存在。
脚注
- *というか黄金の夜明け団の教義、関連書籍では諸にハイヤーセルフ扱いされている。異論もあるらしいが
- *このとき第一子ニュイ・マ・アサヌール・ヘカテ・サッポー・イザベル・リリスがお腹の中にいて、旅行を急遽取りやめていた。
- *リベル・レギス、もしくはリベル・エル・ヴェル・レギス。220節からなるため「220の書」ともいう。名著である「第4の書」「777の書」以上にクロウリーの魔術師としての格を押し上げた。
- *魔術の中興の祖とも呼べる偉大な魔術師。ノーベル賞作家様やクロウリーにも影響を与えた。ちなみにクロウリーはエリファス・レヴィの生まれ変わりを自称している。
- *本名チャールズ・スタンスフェルド・ジョーンズ。クロウリーの魔術的な息子。セレマ系魔術団体「銀の星(A∴A∴)」の一員にして「東方聖堂騎士団(O.T.O.)」ブリティッシュコロンビア州のグランドマスター
- *クロウリー系の魔術師でマート・マジックの提唱者。
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