サトラレとは、佐藤マコトによる漫画作品、それに登場する架空の病気の患者を指す言葉。
概要
「サトラレ」と呼ばれる人たちの苦悩や生活、および複数のサトラレとそれを取り巻く人達の視点を描いた群像劇である。
1999年に講談社の漫画雑誌「モーニングマグナム増刊」で連載開始され、同誌の休刊後は同社の別の漫画雑誌「イブニング」に移籍して連載を継続し2004年に完結した。
2005年からはイブニングで本編終了から十数年後の話を描いた続編『サトラレneo』が掲載されたが、未完のまま連載が途絶えている。
のちに新シリーズとして「サトラレ ~嘘つきたちの憂鬱~」が連載、サトラレの少女一人を中心に描いた作品で、現在は完結している。
作中では自分の思考が周囲の人間にダダ漏れしてしまう人のことを「サトラレ」と呼び、作中では何人かのサトラレが登場する。サトラレは例外なく天才的な才能をもつが、彼ら自身が「自分がサトラレである」ことを知ってしまうとノイローゼになってしまうため、そうと知られないように政府機関が陰ながら守っている、と言う設定である。作中世界の法律では、サトラレに「お前はサトラレだ」と教えることは犯罪になる。
元ネタとなるのはおそらく妖怪の「サトリ」。Wikipediaによると、映画「トゥルーマンショー」に影響を受けているらしい。
「思考が他の人に漏れてしまう不都合なテレパシスト」というアイディアは本作以前からもあり、例えば1956年発表のアルフレッド・ベスターによるSF小説「虎よ、虎よ!」や、1984年発表のふくやまけいこによる短編SF漫画「セールスマン」などで類似の能力を持った人物が登場している。
しかしそういった人物らを主題に据えた長編作品で、しかもドラマ化や映画化するなどのヒットを成し遂げた作品は日本では本作が嚆矢であったようだ。そのためこういった「他者への一方通行なテレパシー能力」を会話で表現するときなど、本作内での呼称を用いて「サトラレ」と表現されることもある。
なお「自分の思考が漏れているのではないか」という心配をする人や、そう信じ込んでしまい悩んでいる人は実在している。この「考えが漏れてしまっている」という不安・懸念については精神医学の用語で「思考伝播」「考想伝播」などと呼ばれ、統合失調症における一症状として知られている。
サトラレ
■病気
自身の思考が外部に漏れ出て伝わってしまう思念波を出せる人間の総称、および病気の名称。正式名称は「先天性R型脳梁変成症」。サトラレである者はほぼ例外なく天才的な知能を有しており、世界各国においては貴重な財産としても扱われている。
ただし同時に、サトラレは周囲にいる人間全てにその考えている中身が伝わってしまうため、エロいことを考えればそれが伝わってしまうし、見た映像や文章化されていない感情なども伝えることができてしまう。思念が届く距離に個人差はあるものの感情が強くなればもっと遠くに思念を届かせることもできるため、プライバシーもなにもない。これは本人だけでなく、その身近な人物のプライバシーも筒抜けであることを意味する(例えばサトラレの恋人になった相手は、内緒話の内容から夜の営みの頻度まで全部周囲に筒抜けとなる)。
そのためサトラレ本人は、自覚してしまうことがないよう周囲の人間からその事を伝えられる事なく気づかずに生活している。
サトラレ研究の第一人者である山田一郎教授は、「脳の部分が人間とは違う」と語っており、のちにサトラレを元の人間に戻す手術法を生み出している。[1]
■社会体制
本人にサトラレであることを知らせてしまうのは本人にとって精神負荷が高く、廃人化や自殺などのリスクが有ることから、法律による保護がなされている。本人にサトラレと気づかせてしまうことは違反となってしまうため、周囲の人間は自分が悪く思われていようとバカにされていようとエロい目で見られていようと反応してはいけないように義務付けられている。
その思考が周りの人に伝わってしまうという特性上、弁護士や医者など秘匿すべき情報を扱う職業には基本的に就けないようになっている。 [2]
また、本人がふとしたことでサトラレであると気づいてしまわないよう、さりげないフォローや情報の隠蔽などの対策を行う専門の職員が常に張り付くようにされている。本人の家族を含めサトラレ本人以外は基本的にサトラレであることを気づかせないように振る舞い続けることになっている。
なお、最も危険なケースの一つはサトラレ同士が出会ってしまう、もしくは接近してしまう場合。サトラレは相手に思念を読まれてしまうので、互いに思念が届く範囲に入って互いの思考を読み合ってしまった場合、生来の頭の良さで互いにサトラレであることを自覚してしまう危険があるため(例外としてまだ子供だったサトラレやその存在自体を知らないサトラレが同族と出会った場合は気にすることなく終わる場合がある)。
なので周りの人間は、サトラレ同士が出会ってしまう状況を作らないよう、(本人たちに不自然がられない範囲で)予定を変更するよう仕向けたりする。またサトラレとの性行為の時はプライバシーのため近隣住民を退避させたりといった、裏方仕事をやる必要があるため、常に即応体制でいなければならない。
なお、シリーズ途中より、サトラレの増加に伴い投入する人員に限りがあることや予算が圧迫しているといった社会事情なども要素として出てきている。サトラレの環境に関して、日本政府の役人がアメリカのサトラレ生活環境を視察したり、サトラレを人間に戻す手術が実行されたりといった治療法を研究したりもしている。本人がまだ受容できるうちにサトラレであることを本人に伝える「告知」も制度に加わっており、シリーズ初期から比べるとサトラレが生活できる環境整備が進んできている。
なお、保護法が制定される以前からのサトラレも複数存在しており、それらの人物にはプライバシーも何もなく、自分の思考が読まれていることを周りから知らされたうえ迫害の対象にされたという。後に迫害を受けたサトラレの協力により現在の保護法が制定されている。[3]
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関連項目
脚注
- *ただしシリーズ本編で実行されたのは一回のみ。しかも許可をとっていない未承認の行為である。作中に登場したサトラレの中でも極めて悪質な人物に対して実施された。
- *後に人を救いたいという一念で外科医になれたサトラレもいる。ただし一般人が相手がサトラレであることを承知の上で診察や手術を受ける場合、様々な誓約書を書かなければならない。
- *法律に協力したサトラレは現在、政府所有の小島に一人住んでいる。迫害されることはなくなったものの、本人いわく「一人ぼっちはやはり寂しい」とのこと。
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