『スター・ウォーズ ハイ・リパブリック アウト・オブ・ザ・シャドウズ』(Star Wars The High Republic: Out of the Shadows)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。
「カノン」作品群に属する。単巻。著者はジャスティナ・アイルランド。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
概要
映画本編スカイウォーカー・サーガから200年を遡り、銀河共和国とジェダイ騎士団の黄金期を描くメディアミックス・プロジェクト「ハイ・リパブリック」の一環であるヤングアダルト小説。「ハイ・リパブリック」第一期にあたる“フェーズ1「ジェダイの光」”のウェーブ2(第二波)を構成する。
同じヤングアダルト小説『イントゥ・ザ・ダーク』の次作であり、少壮のジェダイ・ナイト、ヴァーネストラ・ロウと輸送船パイロット、シルヴェストリ・ヤロウを主な視点として「ハイ・リパブリック」における主敵たる組織ナイヒルの関わる陰謀を描く。
著者はカノンのジュニア小説を書いてきたジャスティナ・アイルランドで、原著は2021年刊行。邦訳は2023年10月、Gakkenより四六判上下巻構成での刊行となった。訳は稲村広香、表紙・キャラクター紹介などのイラストは5ヘルスによる邦訳オリジナルのもの。
ストーリー
銀河共和国とジェダイの黄金期。銀河を揺るがしたハイパースペース大災害以来、彼らは銀河辺境の海賊集団ナイヒルとの戦いに精力を傾けていた。若きジェダイの少女ヴァーネストラ・ロウは、ベレンジ宙域の調査任務のため辺境の<スターライト・ビーコン>から銀河首都コルサントへと呼び戻される途上、惑星ティカエを襲うナイヒルの撃退に協力し、銀河の有力者サン・テッカ一族のメンバーと知り合う。
いっぽう辺境で独立した輸送船を運航する少女シルヴェストリ・ヤロウ(シル)は、ベレンジ宙域で遭遇したナイヒルに自分の船を奪われ、共和国に警告すべくコルサントへと赴いていたところ、有力者グラフ一族出身の物理学者ザイラン・グラフの訪問を受ける。船を奪われた状況に興味があるという彼に気に食わないものを感じながらも、シルは自身の好奇心と高い報酬に逆らえず、彼に協力することとなる。
サン・テッカ一族とグラフ一族は、どちらもかつてハイパースペース・レーンの探索と輸送業で財を成した富豪一族であり、銀河に広く権勢を有するライバル同士。ふたつの一族の思惑とふたりの少女、そして暗躍するナイヒルの秘密が、ベレンジ宙域へ向けて絡み合ってゆく。
銀河共和国とジェダイ騎士団
惑星コルサントを中心とする銀河共和国は、後にハイ・リパブリック時代と呼ばれる黄金期にある。共和国は、銀河のコアと辺境の“開拓の地”との移動を容易にする巨大宇宙ステーション<スターライト・ビーコン>を稼働させ、“開拓の地”における共和国とジェダイの拠点としている。
ジェダイ騎士団は、全銀河の平和と正義の守護者として奉仕するフォースの使い手たちである。やはり黄金期を迎えている彼らジェダイは、多くの点で銀河共和国に協力し、“開拓の地”に散らばってさまざまな惑星で紛争の抑止や犯罪者との戦い、市民の救助に従事している。
目下、両者は一致して海賊集団ナイヒルの脅威を排除する戦いを進めており、ジェダイ・マスター、アヴァー・クリスの指導のもと、多くのジェダイと共和国の戦力が投じられている。
ナイヒル
ハイパースペース大災害を機に名が広まった、“開拓の地”で活動する巨大な海賊集団。特段のイデオロギーを持つわけでもなく、暴力と破壊によって秩序と平穏に挑戦する、ならず者の巨大な群れ以上のものではない。しかし、未知のハイパースペース・ルートを用いて神出鬼没に略奪行為をはたらくこと、そしてその残虐性と被害の大きさのために、今や銀河規模の公敵となりおおせた。
テンペスト・ランナーと呼ばれる三人の幹部がそれぞれテンペストと称する集団を率いる体制をとっており、テンペストの上には組織の長、“目”であるマーシオン・ローがいる。彼はハイパースペースに関する知識の源を独占し、ハイパースペースの“経路”を部下に分け与えて戦わせている。マーシオンはジェダイと共和国を強く憎んでいるようだが、その本意や目的が奈辺にあるかはまだわからない。
ハイパースペース内で破壊された客船の破片が多くの惑星に「出現」して悲惨な被害をもたらしたハイパースペース大災害の要因であり、共和国とジェダイが協力して討伐にあたっている。しかし、直接の戦闘では勝利してもナイヒルは巧妙に逃亡して被害を広げるばかりで、根絶にはまだほど遠い。最近では惑星ヴァロの共和国フェアを襲撃し大虐殺を起こすなど、依然として暴虐をほしいままにしている。
登場人物
ジェダイ騎士団
- ヴァーネストラ・ロウ Vernestra Rwoh
- ミリアラン・女性。ジェダイ・ナイト。緑色の肌の17歳の少女。ライトセーバー・ウィップを扱う。
愛称「ヴァーン」。弱冠15歳でナイトに昇格した天才だが、その若さゆえに未熟者扱いされがち。ハイパースペースで見るヴィジョンに悩まされている。宇宙船の操縦は「壊すのが得意」。 - イムリ・カンタロス Imri Cantaros
- 人間・男性。ジェダイ・パダワン。ヴァーネストラの弟子である大柄の少年。15歳。
無意識に周囲の感情を敏感に読み取り共感してしまう性質を制御できず、逆に相手の負の感情に干渉したり、うっかり口に出してしまうことも少なくない。人酔いしてしまうため繁華な土地は苦手。 - リース・サイラス Reath Silas
- 人間・男性。ジェダイ・パダワン。ヴァーネストラの学友だった少年。18歳。
学究肌で勉強熱心なパダワン。大人しいたちで冒険はけして好まないが、前年のハイパースペース大災害の際の出来事以来、さまざまな荒事と困難を経験している。 - コーマック・ヴァイタス Cohmac Vitus
- 人間・男性。ジェダイ・ナイト。リースの現在のマスター。
さまになる容貌と服装をした、熱心な歴史学者にして民俗学者。学術のためには危険を顧みないたちで、銀河の紛争地帯で積極的に遺物の保護にあたっている。 - ステラン・ジオス Stellan Gios
- 人間・男性。ジェダイ・マスター。ヴァーネストラのかつての師。ジェダイ最高評議会の一員。
惑星ヴァロの事件の際の英雄。思慮深く堂々とした人物だが、現在は評議会メンバーとして多忙をきわめ憔悴ぎみ。ヴァーネストラの師として、彼女が見るヴィジョンの能力に強い期待を寄せる。
銀河の人々
- シルヴェストリ・ヤロウ Sylvestri Yarrow
- 人間・女性。“開拓の地”の輸送船<スイッチバック>のオーナー船長。18歳。愛称は「シル」。
かつて船を襲撃され母チャンシー・ヤロウを失って以来、自分で船を切り盛りしてきたが、ナイヒルによってその船をも失い単身コルサントにやってきた。ジェダイをあまり信頼していない。 - ジョルダナ・スパークバーン Jordanna Sparkburn
- 人間・女性。サン・テッカ一族の一員。20歳。ペットとしてヴォルカのレミーを飼っている。
惑星ティカエにおける一族の代理人として入植地を守る、どこか淡々とした雰囲気の女性。かつてティカエに逗留していたシルとは深い恋愛関係にあったものの、自身の義務のため道を違えた。 - ザイラン・グラフ Xylan Graf
- 人間・男性。グラフ一族の出で、ハイパースペースを専門とする理論物理学者。22歳。
ハンサムで身なりも良いが、いやに気取った男。富豪の出らしく妙に気前の良い条件でシルに協力を求めるが、色々と意図を隠しているふしがある。ギゴーランのパシャをボディガードにしている。 - サデウス・ウォルク Thaddeus Wolk
- グンガン・男性。物理学者・教授。ハイパースペース理論物理学における卓越した専門家。
ザイランやシルの母チャンシーの恩師で、まだ未知の部分も多いハイパースペースに関するチャンシーの才能を高く買っていた。ベレンジ宙域で起きていることについて、何か心当たりがある様子。
ナイヒル
- ナン Nan
- 人間・女性。青い筋の入った黒髪の少女。ナイヒルの一員。自分の船<ウィスパーキル>を持つ。
ナイヒルの指導者マーシオン・ローに強い忠誠心を抱いており、彼から「預言者」の護送を命じられる。ハイパースペース大災害の際にリースとは面識があり、気にかけられている。 - 預言者 Oracle
- 人間・女性。生命維持システムがとりつけられたポッドの中の老女。
ハイパースペースの“経路”を示す能力を持つ、ナイヒルの重要な存在。極めて高齢で、もはや半ば死人のような状態で生かされ続けており、チャドラ=ファンの医師キスマ・アターソンドに世話されている。
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