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ナナマイノナマハム(Nanamaino Nama Ham)とは、日本の競走馬である。
珍名馬の中でも群を抜いた珍名、悲劇的な最期、そして妙な方向から知名度が上がる、と生前から死後まで奇妙な運命を歩んだ。
概要
父エスポワールシチー・母シルクアグライア・母父エルコンドルパサー。
父はスマートファルコン・フリオーソやトランセンドなどと共に2010年代ダートG1で活躍した名馬。母は未勝利だが、母父エルコンドルパサーはG1を3勝し、凱旋門賞2着と日仏で活躍した。ダートでも共同通信杯(1998年は降雪のためダートに変更)を勝利するなど結果を残しており、産駒にJBCクラシック3連覇のヴァーミリアンがいる。基本的にはダート血統といえる。
馬主は京都でレストランやワインバーを経営している大西洋平[1]で、彼の所有馬の中では初の中央所属馬である。
特徴的な馬名が目を引く、いわゆる「珍名馬」の一頭だが、馬主が経営するワインバーのメニュー「7枚の生ハム」が由来なのだとか。所有馬には同じく系列レストランの名前がついている「ヒダマリノバゲット」がいる。珍名馬ミギミミミギミミも彼の所有。
衝撃の名前、デビュー、そして…
馬名が発表されるや、珍名馬の中でもひときわ意味不明な名前にネットは騒然。
デビュー戦は2017年10月24日の2歳新馬(ダート1800m)。偶然にも7枠12番での発走だった。
珍名馬マニアが見守る中レースはスタートしたが、第4コーナーで転倒、落馬により競走中止してしまった。診断は右第三中手骨粉砕骨折の予後不良。鞍上の義英真騎手も腰背部打撲を負った。
走り続けていれば、馬柱に名前が載るたび、テレビにパドックが映るたびSNSを盛り上げていたであろう一頭の珍名馬は、実力を見せられぬままわずか2歳でその生涯を終えた。
しかし、どんなに悲劇的でも記録上の成績は1戦0勝。みんなの記憶に残る名馬というわけではなく、珍名馬の話になると名前が挙がる、程度の知名度で終わるはずだった。
思わぬ形での転生
ナナマイノナマハムが旅立ってしばらく後、競走馬擬人化作品『ウマ娘 プリティーダービー』のプロジェクトが徐々に進行していた。2021年にゲーム版がリリースされてからは、競馬好きやゲーム好きの枠を超えた予想外の盛り上がりぶりを見せ、それまで競馬を知らなかった人でもいろいろな競走馬の名前を言えるようになっていた。
しかし、当作に登場する競走馬は、ほとんどが重賞勝利経験があり、競馬ファンなら名前を知っている馬ばかり。未勝利のウマ娘はレジェンド級未勝利馬のハルウララしかおらず、ただ珍名馬だというだけのナナマイノナマハムがウマ娘になる可能性は絶望的である。
しかし一方で、『ウマ娘』に登場しない競走馬がもしウマ娘になったら、という想像からいろいろな競走馬の擬人化イラストがファンアートとして描かれてもいた。そういったファンアート群の中に、ウマ娘と幻覚ウマ娘が特徴的にデフォルメされた「たぬき(ウマ娘)」という作品群があった。
「たぬき」の中には珍名馬も多く、2022年頃、ナナマイノナマハムの「たぬき」も現れた。かわいらしく描かれたたぬき版ナナマイノナマハムはファンも多く、こちらから実馬の情報を調べて、1戦目で予後不良になったことを知る人も現れた。非公式ファンアートから名前が知れ渡るという、珍名馬の中でもあまりないような現象が、死後5年経って起こることになったのだ。
一般的に、オーナーや関係者は、うちの馬がG1を取った、とか、あの名馬の父になった、とか、そういうことで名前が知れ渡るのを望むものである。名前を使ったキャラが勝手に創作されて謎の盛り上がりを見せていることをどう思うかは当人たちにしかわからない。
また、他の「たぬき」は非公式といえど競走馬の特徴やドラマをなるべく反映しているが、デビュー直後に急逝したナナマイノナマハムがどんな馬だったかは知りようがなく、たぬきとしての姿は完全に創作である。したがって、「たぬき」としての盛り上がりで、競走馬ナナマイノナマハムの人気が上がったとはお世辞にも言いがたい。
義騎手によれば、ユニークな名前から関係者からかわいがられていた馬だという。インターネットが生み出したカオスから、違った形でかわいがられるようになったナナマイノナマハムだが、「たぬき」としてだけではなく、京都のダートに散った黄色いメンコの競走馬のことを忘れないでいることこそが、彼への弔いとなるかもしれない。
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関連項目
脚注
- *『魔進戦隊キラメイジャー』の主題歌などを歌うシンガーソングライターや、テレビ朝日アナウンサーとは別人。
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