ハイパーネオジオ64とは、SNK(旧SNK)がMVS(NEOGEO/ネオジオ)の後継機として1997年にリリースした、業務用ゲーム基板である。
概要
当時対戦格闘ゲームブームに乗じて成功を納めていた、MVSの後継機として開発された。『鉄拳』や『バーチャファイター』のような3Dゲームが人気を集めていた時代の流れか、3D表示も出来ないといけないだろうとSNKが急遽開発した業務用ゲーム基板である。
しかし実際の所は3Dの表示能力は非常に低品質で、一部からは家庭用ゲーム機以下と揶揄された。
それもそのはず、実はこの基板は元々高性能な2D表現能力を目的に開発されたもので、MVS(NEOGEO)の正統進化とも言えるものになるはずだった。しかしその副産物としてオマケ程度に3D表示の能力ができたため、上層部の指示によって、開発中に急遽3D作品専門の基板として(事実上無理矢理)ソフト開発を方針転換したという経緯を持つ。2D能力をフルに活かしたタイトルが発売されていれば評価も違っていたかもしれない。
当時のSNKがこのように3D作品の開発を急いだのは、業界にさえ衝撃を与えた「バーチャファイター2」の登場による影響が強く、旧SNK時代に営業部門だった伊藤誠氏は
『KOF』とかでも1日フル回転しても数万円だったんですが、『バーチャファイター2』ってフル稼動すると1日10数万円入ったんですよ(稼動初期は1プレイ200円だったことも影響していると思われる)。そこが営業マンとしてはつらかったですね。
としており、ブームに追従する形で自社開発を急遽推し進めた基板であることを裏付けている。
また開発費が膨大にかかったためか、発売当初には専用筐体と抱き合わせでのみ発売。50インチの大型画面と二人用のテーブル型座席がそれぞれ独立した大型筐体「Neo50Ⅲ」と、反対側にいる対戦相手の顔が映るサブモニターの付いた標準のアップライト筐体「Super Neo29 typeⅡ」の、2タイプの専用筐体を発売した。しかしそれがとんでもない価格で、特に「Neo50Ⅱ」などは発表当初一台100万円とされていた(実際はROMカセット(ソフト)込み80万円で発売された)ことをはじめ、ROMカセット自体も高額で、オペレーターからも評判がよろしくなく、導入を渋る店舗が多かったとされる。
このようにゲームの出来そのものに加え出回りの少なさも相まって、ゲーマーひいてはネオジオユーザーからも微妙な目で見られ見捨てられるなど、散々な結果に終わってしまう。ネオジオポケットとともに、SNK倒産の原因に挙げる声も多い。
また、強引に3D基板に転用された為ポリゴンの表示能力が低いという事実は他社にも知れ渡る所となっていたらしく、当時NEOGEOのサードパーティの代表格であったADK(アルファ電子)でさえ、「社長に諦めて貰う為に作った」と称して『ワールドヒーローズ』のキャラをHN64用に描画したものが残っている。
NEOGEOと異なり完全移植を前提とした家庭用機はSNKから販売されず、他社ハードで家庭用に移植されている作品も『餓狼伝説~WILD AMBITION~』しかないため、今となっては本作のタイトルをプレイすることは難しい。しかし『SAMURAI SPIRITS2~アスラ斬魔伝~』のように現在でもカルト的な人気を誇っている作品もあり、有志が持ち込んだ大会が稀に開かれることもある。また全部の仕様が全部ダメと評された訳ではなく、本来2D処理に強い基板であることを垣間見ることのできる良演出もわずかに存在していた。
なお本基板はMVS同様のROMカセット方式であるが、カセットはマザーに板面を重ねて接続するタイプ(CAPCOMのCPシステムに近い)であり、MVSよりも省スペース化が進んだ。また、MVSのように複数のカセットを接続するタイプのマザーボードは発売されなかった。
但し本基板には、バージョンが概ね2種類存在するとされている。前述の通り本基板は専用筐体用との抱き合わせで販売された為、その他の筐体では音声が出力できない前期型と、 旧MVS用の筐体やJAMMA規格の筐体(アストロシティ等)に対応した後期型が存在している。即ち、現在僅かにゲームセンターで稼働していたり、ファン有志が持ち込んでイベントに使用している基板は後期型か、前期型に改造を施したものである。
発売されたタイトル
- SAMURAI SPIRITS~侍魂~
- SAMURAI SPIRITS2~アスラ斬魔伝~
- 餓狼伝説~WILD AMBITION~
- 武力 〜BURIKI ONE〜
- ビーストバスターズ セカンドナイトメア
- ラウンドトリップRV
- オフビートレーサー!
以上。
専用アーケード筐体
上記の概要の通り、ハイパーネオジオ64は専用のアーケード筐体と抱き合わせで市場に出回った。
これらの筐体は、厳密にはSNKが1995年頃発売したMVS用の筐体「Super Neo29」「Neo50Ⅱ」のマイナーチェンジ及び改良型となっている。…のだが、この「Super Neo29」「Neo50」といった後期型筐体は、搭載していたMVSのスペックが優秀なことや、既に相当旧筐体が流通していた影響で、普及率は黎明期の筐体と比べ多くなく元々の知名度はそれほど高くなかった。
その為、ファンの間ではそれを知らず単に「サブモニターがついてるやつ」「大型の50インチ画面のやつ」というと、以下の2種類の、HN64用に発売された筐体を連想する者も多い。
MVS筐体同様、現在はサポートが終了しゲームセンターではまずお目にかかれないが、意外にもHN64の筐体は非常に稀だが、現役で稼働しているケースがある。
これはMVSとは異なりHN64はJAMMA規格に対応する後期型仕様が存在する為、筐体も同様にMVS筐体と比べ他機種の互換性に強い為である。その為、別のゲームを入れてHN64の筐体だけが稼動している…という哀愁漂う光景を見たという報告が現在でも稀に起きている。
- 「Super Neo29 typeⅡ」
- 1996年発売。MVSの項目でも紹介した「Super Neo29」のマイナーチェンジ版。
反対側にいる対戦相手の顔が映るサブモニターがついている。
(一応)発売当初のキラータイトルだったROM「SAMURAI SPIRITS~侍魂~」とのセットで、標準価格60万円代で販売されていたらしい。 - 「Neo50Ⅲ」
- 大画面50インチのモニターと二人用コンパネが設置された座席がそれぞれ独立した大型筐体。
こちらも「Super Neo29 typeⅡ」同様基本はマイナーチェンジだが、元となった「Neo50Ⅱ」よりもサイズはやや縮小され、スペックも上がっている。
コストダウンもあったのか、「Neo50Ⅱ」での標準価格100万円から、ROMカセット込みの80万円で流通したとされる。しかし「Neo50Ⅱ」とは異なり、筐体と抱き合わせでしか基板が発売されなかったせいか店側の印象は微妙な所であっただろう…。
関連動画
2D演出の能力の良さがよく分かる例。
3Dは。
関連項目
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