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本稿では、イタリアの銃器メーカー・マテバ社から発売されていたリボルバー拳銃「MATEBA modello 2006M(マテバ モデロ ドゥイミラセイエム)」について解説する。
2006M? M2007じゃなくて?
概要に入る前に解説しておくと、「マテバ M2007」とはアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』に登場する、実在の2006Mをモデルにした架空の銃である。
じゃーなんでM2007が主役のイラストを引用しているのかというと、初稿執筆の2024年10月時点で、純粋な2006Mをわかりやすい構図で描いた作品がニコニコ静画になかったのです……。
概要
スペック | |
---|---|
全長 | 約153~253mm (モデルにより異なる) |
重量 (装弾時) |
約1130~1380 g (モデルにより異なる) |
銃身長 | 2インチ~6インチ |
機構 | リボルバー シングル/ダブルアクション |
口径 | .357 インチ |
弾薬 | .38スペシャル弾 .357マグナム弾 |
装弾数 | 6発 |
マテバ社のエミリオ・ギゾーニが基礎設計を担当し、1990年に発売された射撃競技向けリボルバー。
1983年発売のリボルバー「MTR8」(これもギゾーニ作)を前身として開発された。MTR8は発砲時の跳ね上がり=マズルジャンプを軽減しやすくするため、銃身を一般的な拳銃より下側に配し、銃身軸と握り手の間の距離=ボアアクシスを極力低くするデザインを採用していた。
……動画を見てもらえばお分かりいただけるだろうが、何とも珍妙な見た目で、見た目相応に操作性も悪く、前方が重く構えづらいという、ハッキリ言って問題作に仕上がっていた。ちなみにカービンモデルもあった。
2006MではMTR8のコンセプトを継承しつつ、より一般的なリボルバーに外見を寄せながらボアアクシスを下げる工夫が盛り込まれた。即ち、通常なら一番上の弾倉=シリンダーで撃発・発射するところを、一番下のシリンダーから発射されるようにしたのである。撃鉄の位置も低くされ、シリンダーは一般的なリボルバーの左下側に転がり落ちる「スイングアウト」とは違い、左上方に「スイングアップ」する。
照星(フロントサイト)は上下に、照門(リアサイト)は左右に調節可能で、トリガープル/ストロークも調整可能。銃身上部にはカウンターウェイトとなる長いブロックが配され、よりマズルジャンプを抑えやすくしている。銃身長は2 / 2.5 / 3.1 / 3.5 / 4 / 4.5 / 5 / 6インチの8種類が用意され、工具ひとつで分解交換を行えるように設計されている(当然だが照準はその都度再調整が必要)。その他、グリップも3サイズ+エルゴノミクスタイプの計4種類が販売され、銃身前方に取り付けるカウンターウェイトも用意されていた。
この動画の2006Mは6インチ銃身。銃身上部側面に張り付けられたような板がカウンターウェイトである。
評価
あんまり売れなかった。無視できない運用上の欠点が多すぎたのである。
- 確かにマズルジャンプ=上方向の反動自体は小さいが、後方向=射手側への反動を受け流すことが難しくなってしまった。更に「マズルジャンプ軽減もあんまり大したことは……」と評するユーザーも。
- 銃口と照星の高低差が大きい=照準軸と射線軸が離れており、狙いのずれが大きくなりやすい。
- シリンダーのスイングアップが単純に扱いづらい。また、この構造のためにシリンダーストップ(弾倉固定部品)のテンションを強くしたため、シリンダーとシリンダーストップ双方の劣化が速かった。
- こんな構造にしてしまったせいでリボルバーとしては部品点数が多く、高コスト化した。
- 他の.357マグナムリボルバーよりデカくて重い。
コレクター人気は高かったが、当然ながらそれだけでは会社はやっていけない。この反省を踏まえたマテバ社とギゾーニ技師は、更なる一般受けを狙った「オートリボルバー」こと「モデロ6 ウニカ」を開発することになる。そしてこれもあんまり売れなかった。
2005年のマテバ社の倒産により、現在は全モデルが製造終了している。2017年にはイタリアの投資家が「旧マテバ社の商標権と製造権を得た」と主張して「マテバイタリア」社を立ち上げたが、結局一つも再生産することのないまま、2022年に各種法令や公的書類規則の違反を摘発されて解散と相成った。
バリエーション
2006
厳密には正規バリエーションではなく、開発中の形式番号。一般販売はされていない。
試作型の「MTR6」の形状を大幅に変更し、一般的なリボルバー形状に近づけた原型機。
2007M
使用弾薬を.38スペシャル弾に限定したモデル。弾倉は7発装弾になった。
2007M単体としては3.1、4、6インチのモデルが販売されたが、銃身とグリップは2006Mと互換性がある。
ぶっちゃけ装弾数以外はほとんど2006Mと変わらないため、やっぱりあんまり売れなかった。
2007SC
6インチの競技用銃身と、エルゴノミクス型グリップを装着した競技用カスタムのメーカー通称。
「トグサの銃」について
先述の通り、日本で一番有名なマテバリボルバー遣いと言えば、公安9課所属のトグサ捜査官だろう。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』における「リボルバーなんぞよりオート使え」という草薙素子の叱責に「俺はマテバが好きなの!」と反抗し、臨戦準備の確認に「マテバでよければ」とドヤ顔で応答する、トグサの意地に惚れた人も多いと思われる。
- 原作漫画『攻殻機動隊』の時点では、「M2007」はセリフだけの登場。トグサは草薙の叱責を素直に受け入れて「セブロの5ミリ20連」自動拳銃を装備しており、作画されることは無かった。
- 「M2007」が本格的に使用されたのは劇場アニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』。ここでは現実の2006Mとよく似た外見で登場。
- 劇場アニメ『イノセンス』ではアンダーマウントレイルが追加され、グリップが大型化し、バレルシュラウドに稼動式の重りが仕込まれた「パフォーマンスセンター風カスタム[1]」M2007が登場している。
- テレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』と劇場アニメ『攻殻機動隊 ARISE』では基本的に登場しない。代わりにトグサが愛銃にしているのはモデロ6 ウニカをモデルにした「M2008」である(ややこしい…)。
- 実写映画版『GHOST IN THE SHELL』でも登場しない。本作のトグサは、ギサーニ技師がキアッパ社で設計した「ライノ」リボルバーを使用している。このライノも2006Mの設計思想を受け継ぎ、下側シリンダーで撃発を行う珍銃である。流石にマテバリボルバーのプロップは調達できなかったのだろう。
遊戯銃
マルシン工業からエアソフトガンが販売されている。マルシンお得意のカートリッジ式リボルバーで、リアルな排莢・装填が楽しめる。ヘヴィウェイト素材モデルなら重量感もバツグンで、コレクターズアイテムとしては申し分ない。
2008年に「TOGUSA's MA・TE・BA M-2007M」と銘打ったM2007仕様として発売され、以後数度のマイナーチェンジを繰り返しながら再版されていた。初期のパッケージにはアニメのトグサのイラストが記載されていたが、いつごろからか外され、真っ黒な箱に「MA・TE・BA」とだけ記載されたパッケージになった。
構造上、実射性能は東京マルイやタナカワークスの足元にも及ばないが、フリーダム・アート社から発売されているインナーバレルに換装すればサバイバルゲームでもがんばれば扱えるレベルに引き上げることができる。
2023年からは現実の2006Mに即した構造にリニューアルされ、灰色基調のシンプルなパッケージになった。内部構造も見直され、実射性能も初期型と比べるとだいぶマシになった。
出演作品
ニコニコ大百科に記事があって、主役級のキャラが使っている作品だけ。……少なっ!
その他はMEDIAGUN DATABASEあたりでも参照してほしい。
関連動画
関連静画
関連項目
脚注
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