坊っちゃんとは、
- 他人の子どもを指す敬語。「―はお変わりありませんか」
- 大事に育てられて世情に疎い男性。「これを知らないなんて、―だなあ」
- 夏目漱石が著した中編小説。
- ゲーム『ポケットモンスター』に登場するNPCトレーナーの肩書 → おぼっちゃま
本記事においては3について説明する。
概要
― 『坊っちゃん』より
明治時代の代表的な作家・夏目漱石が1906年に俳句雑誌の『ホトトギス』に付録として発表した中編小説。旧字表記では『坊つちやん』だが、『坊つちゃん』だったり『坊っちやん』だったり、本によっては「っ」が抜けて『坊ちゃん』だったり表記揺れが激しい。
冒頭の書き出し通りの性分である主人公・坊っちゃんの少年期から、松山で教師になり辞めるまでの痛快で正義感もある生き様も描いた、大衆的な要素に満ちた小説である。
現代人からすれば読みづらい箇所もあるが、全体的には読みやすく、面白い内容なので発表から120年近く経過した現代においても多くの人に好んで読まれる作品で、漱石の代表作の一つになっている。中学校の教科書にも掲載されているのでそれで読んだ人も多いだろう。
小説の中身は漱石自身が高等師範学校で教師となり、松山へ赴任したときの体験を下地に書かれており、当人は10日足らずでこれを書き上げたと言われている。
漫画・テレビドラマ・映画版も数多く存在し、メディアミックスも盛んになされている。
主な登場人物
坊っちゃん
主人公。名前は設定されておらず、他人からは主に「お前」、「君」など二人称で呼ばれている。
上に兄がおり、両親からはいたずら好きでわんぱくな性分が災いしてか、冷たくあしらわれており、兄が主に可愛がられていた。そのためよく喧嘩をしていた。両親が亡くなった後は遺産として650円(坊っちゃんに600円、清に50円)渡され[1]それっきり疎遠になった。
遺産を使って、物理学校(現在の東京理科大学)に進学してどうにか卒業し、校長の勧めで月給40円で松山の数学教師となった。教師に成ってもその性分は変わらず、蕎麦を食べたり団子を食べたのを生徒に冷やかされたりしたときは彼らに食って掛かり、宿直の時にいたずらでバッタが寝具に仕込まれた時には激怒して赤シャツと狸(校長)に厳罰を主張した。
この通り典型的な江戸っ子で正義感が強く、筋の通らないことを受け入れない性格に設定されている。教師を辞めたあとは4割減って月給25円の街鉄(路面電車)の技手になった。
清
主人公の家に仕えた下女。明治維新で没落した名家の子女で、作中では老婆になっている。
家庭で疎まれる坊っちゃんを庇って可愛がっており、「あなたはまっすぐで、良いご気性」だと高く評価している。
坊っちゃんの両親が亡くなった後は家財を処分したため、清も去ることになった。その際は裁判所に務める弟の世話になっている。
坊っちゃんからすれば唯一といっていい理解者である為自身もかなり敬意を持っており、教師を辞めて帰京した時は涙を流して喜び、しばらく一緒に住んだがやがて亡くなってしまう。
山嵐
比叡山の悪僧のような強面であるため、坊っちゃんからは「山嵐」と命名された。坊っちゃんと同じく正義感が強いため生徒からも人気がある。
体制に反抗的な坊っちゃんとは当初対立していたが、彼が勧めた旅宿のいか銀の本性や、宿直のバッタ騒動を経て意気投合するようになり、終盤では赤シャツを共謀して懲らしめるほどになった。
赤シャツ
教頭。坊っちゃんの学校では唯一帝大を出た文学士であり、エリート。
体に薬になるからという理由で常にフランネルの赤シャツをきているため、そのまま命名された。表向きは物腰柔らかで紳士的な風をしているが、その実性格は陰湿で、坊っちゃんや山嵐からは毛嫌いされてる。画学教師の野だいこを従えている。
終盤では宿直の騒動後に、坊っちゃんに飲食店立入禁止を命じたにも関わらず、自分は旅館で芸者と密会していた為、付き従っていた野太鼓と共に坊っちゃんと赤シャツに懲らしめられる。
作中では事実上のヒール役として機能している彼だが、実は漱石自身が赴任した高校において唯一の文学士であったため、煙たがれていたのではないかという恐れが投影されたという説がある。
野だいこ
画学教師。名字は吉川。坊っちゃんと同じ東京出身だが、当人からは苦々しく思われている。
「~でげす」という芸人風の口調が特徴的で、赤シャツの太鼓持ちのようにおべっかを使って付き従っている。赤シャツと同じく坊っちゃんと山嵐に悪巧みをしかけるが、最後はこらしめられる。
うらなり
お人好しで控えめな性格。青白いながらふくれた容姿をした人物で、ぼっちゃんが子供のころに同じような人を見つけた時に「なんであんなに青く膨れているのか」と清に尋ねたところ、「あれはうらなりのとうなすばかり食べているからああなった」と答えたことから、このあだ名がつけられた。
マドンナの婚約者であったが、赤シャツに横恋慕されてしまい、厄介払いとばかりに赤シャツによって延岡に転勤させられたかわいそうな人。坊っちゃんが赤シャツに対して憎悪ともいうべき感情をもったきっかけになった人物といえる。
山嵐と並んで坊っちゃんの理解者の一人で、いか銀を去った後に母の知人である萩野夫妻の家に住むことを勧めている。
マドンナ
坊っちゃんが色白で、ハイカラ頭の背の高い美人と評した容姿端麗な人物。
作中においては関係性を変化させるキーパーソンではあるが、本人のセリフも直接話に関わる事も無い。
道後温泉との関わり
作中の舞台になっただけあって随所に坊っちゃんを意識した施設や店舗が存在する。
- 作中では「マッチ箱」と称された汽車が伊予鉄道の道後温泉駅前に展示されている、
- 道後温泉の男性浴室に「坊っちゃん 泳ぐべからず」という木板が貼られている。
- 夏目漱石が湯上がりにくつろいだとされる客室が、「坊っちゃんの間」として残されている。
- 作中での描写から赤いタオルが貸出・販売されている。
関連リンク
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 0
- 0pt


