2000GTとは1967年~1970年にかけて製造されていた、トヨタとヤマハの共同開発したグランドツーリングカーである。
概要
当時トヨタ自動車は、1960年代にライバルの日産やホンダがスポーツクーペマシンを生産開始したことによって「日本最大のメーカーでありながらスポーツカーを作らない」ということでメンツが少し潰されかけていた。そこで、1965年、トヨタスポーツ800というマシンが製造されたが、これではライバルに対し格が不足しているのではないかということで、より大型な本格的スポーツカーの製造を望んでいた。
一方でヤマハも四輪車を作ることを望んで日産と共に高級スポーツカーの製造に取り組んでいた。しかしこれが日産の都合(採算がとれそうになかったことが理由と言われている)により破談となると、トヨタにスポーツカー製造の話を持ち込んだ。こうして利害が合致した両者が2000GTの製作に取り組むこととなった。
新車価格は当時の値段で238万円。この金額で、当時の新車のクラウンが2台、カローラだったら6台は買えた。当時の大卒会社員の初任給が2万6000円程度であることを考えると、 現在の価値に換算すると約1800万円以上する高級車であった。しかし、それでも赤字だったと言われている。利益を出すというよりも、花形として超高級スポーツカーを君臨させることによる宣伝効果が主な狙いであったと言える。
「ヤマハ2000GT」という誤解
一般に「トヨタ・2000GT」として通っているこの車であるが、インターネットでは「トヨタは金出しただけ」「実質ヤマハ2000GT」と散々に言われている。
しかし実際には、ヤマハとの提携が始まる前からデザインとシャーシの設計はトヨタ側で完了していた。またヤマハの公式の言及でも「トヨタ2000GTの全体レイアウト計画やデザイン、基本設計などはトヨタ側でなされ、ヤマハは同社の指導のもとで主にエンジンの高性能化と車体、シャシーの細部設計を担当した」となっている。組立工場はヤマハなので、「ヤマハ製」が全くの間違いということでもないが、巷で言われている様な丸投げでは全く無い。
エンジンもトヨタ・クラウンの直6エンジンをヤマハがDOHC化したもので、巷で言われる「ヤマハ製エンジン」とは実態が異なっている。
そもそも当時市販できるレベルの自動車を一台も作れていなかったヤマハが、単独でいきなり日本自動車史上最高傑作とも呼ばれる2000GTを開発できるはずが無い。考えてみれば当たり前の話である。
ちなみに駆動系部品の設計や供給の多くもトヨタが行っている。またヤマハが鋼板フレームを制作するにあたって、引き抜いた日産の技術者である西岡幹夫に指導を受けている。
モータースポーツ
第三回日本グランプリに参戦、日本初のプロトタイプレーシングカーであるプリンス390相手に善戦、3位に入る。
グランドツーリングカーとして誕生した2000GTはスプリントより耐久で真価を発揮し、鈴鹿1000kmでは1-2、翌年鈴鹿500と富士24時間でも優勝した。また78時間1万マイルを走りきるスピードトライアルでも平均時速206.18km/hで走り抜くなど、3つの世界記録を樹立した。
希少性とその後
生産台数はわずか337台。100台ほどが国内に現存していると言われ、ファンの間では『幻の名車』『日本唯一のスーパーカー』等と称され伝説と化している。当然、普段は見かけることなどほとんどない。
ただし認知度の高い車なのでイベントなどにはしばしば雄姿を見せてくれる。会いたい人はそういったイベントへ行ってみよう。
気になる現在のお値段であるが、その伝説ぶりから中古車市場では驚異的な高値で取引されており、2013年に行われたオークションではなんと約1億1800万円で落札された。これは日本車としての最高値である。
希少性とファンの多さもあって、ユーノス・ロードスター等をベースにレプリカの製作・販売も行われている。本物はさすがに入手できないという方も、財布や奥さんと相談の上で検討してみてはどうだろうか。
なお以前はトヨタの工場見学に行くとおみやげとして2000GTのおもちゃがもらえたが、残念ながら今はプリウスになっているとのことである。
スペック
車両型式名 | MF10 |
---|---|
全長 | 4175mm |
全高 | 1160mm |
全幅 | 1600mm |
ホイールベース | 2330mm |
トレッド | 前後とも1300mm |
地上最低高 | 155mm |
室内長 | 720mm |
室内幅 | 1430mm |
室内高 | 950mm |
車両重量 | 1120kg |
乗車定員 | 2名 |
エンジン排気量 | 1988cc |
エンジン型式名 | 3M |
気筒数 | 直列6気筒 |
吸排気弁構造 | DOHC |
圧縮比 | 8.4 |
ボア×ストローク | 75mm×75mm |
最高出力 | 150PS/6000rpm |
最大トルク | 18kgmf/5000rpm |
燃料供給装置 | ミクニ製・ソレックス型3連キャブレター |
燃料タンク容量 | 60L |
トランスミッション | 基本的に5速MT、後期型で3速AT追加 |
駆動方式 | FR |
サスペンション | 前後ともダブルウィッシュボーン(コイルスプリング) |
ブレーキ | 前後ともディスク |
タイヤサイズ | 165HR15(165/80R15で代用可) |
最高速度 | 220km/h |
後継車
直接的な後継車は存在しないが、2012年に発売された86/BRZはデザインの時、常に2000GTの模型を横に置いていたと明言されている。またエンジン技術と生産を他社に頼ったFRスポーツカーという点でも2000GTと共通しており、正統な後継車ではないにせよかなり近い性格を持っている。また2010年に限定生産されたレクサス・LFAもトヨタとヤマハの共同開発したスーパーカーという点や、価格設定や製造理由などから後継車に近い扱いを受けている。
セリカXXやスープラも2000GTを彷彿とさせるデザインになっていたため、それに準ずる扱いを受けていた。またセリカ、カリーナ。コロナには2000GTと名付けられた車種が存在している。
このように「トヨタ史上最も美しいスポーツカー」2000GTは、昔から現在に至るまでトヨタのスポーツカーに少なからぬ影響を与え続けている。
関連動画
関連商品
登場作品
- クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲(敵リーダーが搭乗)
- 007は二度死ぬ(ボンドカーとして抜擢された)
- Dimension W(主人公「マブチ・キョーマ」の愛車)
- サーキットの狼(主人公のライバル「隼人ピーターソン」が搭乗)
- よろしくメカドック(ヒロインの女暴小町こと小野麗子が搭乗)
関連項目
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