トヨタ・クラウンとは、トヨタ自動車が1955年から製造・販売をしている乗用車である。
日本製の自動車の名称の中で最長寿である。2012年に登場したモデルで14代目となる。この車固有の形式は「S」である。
概要
車名の意味は英語の「王冠」から。初代モデルから現行型まで王冠のマークが付く。トヨタ車の量販車種の中でも上級のポジションを担っている。このため、公用車や企業の社用車としてのブランドがある。
また、1983年に登場をした七代目モデルの名キャッチコピー「いつかはクラウン」と言われるように一般オーナーが憧れる車種としても知られる。
初代モデルから八代目モデルまでは、モデルチェンジごとにタクシー仕様(カタログでは「営業車」と表記)、教習車仕様、ライトバン仕様、パトカー仕様も同時にモデルチェンジをしていた。そのため幅が広いラインアップが存在をしていた。
9代目モデル以後は車幅が3ナンバーモデルのみにモデルチェンジをするが、クラウンのネームバリューがあるおかげで、他車種がベースながらもクラウンの名称を名付けているのはそのため。
初代S30系(1955年~1962年)
開発は1952年に開始。当時の自動車メーカー各社は、欧米自動車メーカーの協力を受けて開発をされていたがトヨタ自動車が日本人の自らの力で開発をした。また、開発責任者を立ててマネージャー制となる「主査制度」で開発をされた初めての車種となった。またこの代の特徴でもあるリアドアが後ろに開くために「観音クラウン」という通称もある。後年、トヨタ・プログレをベースとしてこの初代クラウンをベースとしたトヨタ・オリジンと言う車が造られたが、初代クラウンの特徴である観音開きドアも再現されている。
1955年に発売。「トヨペット・クラウン」として発売をされた。当初は4気筒の1500ccのガソリンエンジンのみである。1959年には国産車初のディーゼルエンジン仕様が登場する。
ボディサイズは今よりも相当小さく、初代プリウスよりもほんの僅かに小さいくらいのサイズであったが、当時の小型車規格は全長4.3m以下、全幅1.6m以下と今よりも小さかったため、このサイズでも3ナンバー登録であった。その後1960年9月に小型車規格が現行の全長4.7m以下、全幅1.7m以下に改正されたため、これ以降に登録される車両は5ナンバー登録となった。
なお、当初はタクシー仕様として別車種で「トヨペット・マスター」と言う車種が同時にラインナップされた。マスターはクラウンに対する保険の意味合いでラインナップされた車両で過酷な使用と当時の道路状況を踏まえて、前輪のサスペンションがリジット式となっているなど、耐久性や実用性に重点を置いたものとなっていたのだが、独立サスが問題ないレベルとわかるとかえって乗り心地や走行安定性の面でネックとなり、トヨペット・マスターは生産中止の憂き目を見る。しかし設備を無駄にしない為にライトバン仕様とピックアップトラック仕様を設計し「トヨペット・マスターライン」として生産を開始した。
1959年に国産乗用車初のディーゼルエンジンを搭載。また、マスターラインのモデルチェンジが行われ、クラウンのコンポーネンツの大部分を流用したクラウンの姉妹車となる。
1962年にマイナーチェンジ。初のAT車が登場し、最上級グレードに4気筒の1900ccのガソリンエンジン仕様が登場。
1957年にはアメリカで海外販売をされるが、当時の完成度が低かったために惨敗。一時販売停止となった。
二代目S40系(1962年~1967年)
1962年に初のモデルチェンジ。デザインは当時の流行であったアメリカ車を意識したデザインとなった。小型車規格の改正を受けて、全長を一気に4.6m超まで拡大した他、性能面でも当時高速道路開発が進んできたために、高速走行に対応するために基本性能を高めた。エンジンも4気筒1900ccエンジンのみとなった。バリエーションにはステーションワゴン仕様も加わった。
また商用車仕様のマスターラインもこれに追随してモデルチェンジが行われた。名称こそ別であるが、エンブレムにはクラウンの王冠マークがあるなど実質クラウンといっても差し支えないものであった。
1963年にマイナーチェンジ。前後デザインの手直しが行われた。
1964年に最高級車種の日本初のV8気筒2600ccエンジンを搭載した「クラウンエイト」が発売。当時の考えられる豪華装備のパワーステアリング、パワーウインドー、電磁式ドアロックが標準装備となった。1967年に登場をしたセンチュリーはクラウンエイトの後継車種となる。
1965年にマイナーチェンジ。バリエーションに直列6気筒の2000ccエンジン搭載車が登場する。この6気筒エンジン車にはスポーティーグレードも存在した。
三代目S50系(1967年~1971年)
1967年にモデルチェンジ。法人需要が多かったクラウンを一般ユーザー向けのバリエーションとして、法人仕様のボディカラーが黒にあることに対して、一般ユーザー向けのイメージカラーとして「白」を前面に押し出した広告を展開した。『白いクラウン』にキャッチコピーで大ヒットとなった。エンジンも先代モデルと同様に2種類が用意される。1968年には個人ユーザー向けの2ドアハードトップ仕様が追加される。この代よりピックアップトラックやライトバン仕様もクラウンの名称となる。
1969年にマイナーチェンジ。フロントドアにあった三角窓が廃止となった。
この代よりイメージキャラクターとして、俳優・山村聰を起用した。
四代目S60系・S70系(1971年~1974年)
1971年にモデルチェンジ。この代より「トヨペット・クラウン」から「トヨタ・クラウン」となる。セダン、ステーションワゴン、ライトバンがS60系。2ドアハードトップがS70系となる。
この代よりピックアップトラックは廃止。先代モデルに比べて曲線を多用し、空力を意識したデザインとなり、通称「クジラ」と言われることが多い。エンジンも直列6気筒のみとなる。また日本初のABSシステムを上級グレードにオプション設定となる。バリエーションには小型車規格改正前の初代クラウン以来の3ナンバー登録となる直列6気筒の2600ccエンジン搭載車も後から追加がされた。
力が入ったデザインとなったが、それが災いとなり、空気導入口の問題でオーバーヒートが多発したり、ライバルの日産・セドリック&グロリアがオーソドックスなデザインであったために、日産にシェアを取られ販売が不振となった。
1973年にマイナーチェンジをして、大幅なデザイン変更をしたがそれでも販売台数は回復はしなかった。
販売面ではモデルライフを通じて不名誉にも唯一セドグロに負けたと言われているが、後年になってこのデザインが再評価されている。なお、このデザインはスピンドルシェイプと言われ、日本語で紡錘型と言われた。紡績が源流であるトヨタらしい発想である。
イメージキャラクターはデビュー当初にはいなかったが、テコ入れをした1972年から俳優・山村聰を再起用。1973年のマイナーチェンジには女優・吉永小百合も起用された。
五代目S80系・S90系・S100系(1974年~1979年)
1974年にモデルチェンジ。販売不振となった先代モデルと比較をして、直線基調の押し出しの強いデザインとなった。この代より4ドアピラードハードトップ仕様が登場となった。登場した当時の排ガス規制のために形式が変わったのもこの代の特徴でもある。ハードトップがS90系、それ以外がS80系、排ガス規制に適合をしたのがボディタイプに関わらずS100系となった。最高級グレード・ロイヤルサルーンもこの代から登場をする。ATもこの代から4速タイプも登場する。
1976年と1978年にマイナーチェンジが行われる。1979年に2200ccのディーゼルエンジン搭載車も登場。
イメージキャラクターには先代と引き続き俳優・山村聰と女優・吉永小百合を起用した。
六代目S110系(1979年~1983年)
1979年に登場。スタイリングはより直線的なデザインとなった。通称は「鬼クラ」と言われる由縁である。2ドアハードトップはこの代まで。後継に当たるのが1981年に登場をしたソアラである。3ナンバーのエンジンも2600ccから2800ccになる。
1980年に直列6気筒2000ccエンジン車にガソリンターボモデルが登場。1981年にマイナーチェンジをして前後のデザインが変更となる。
1982年に4気筒2400ccのディーゼルターボエンジン搭載車が登場。お買い得仕様車「エクレール」も登場する。
イメージキャラクターは先代と同様に俳優・山村聰と女優・吉永小百合であったが、後期型当初は俳優・山村聰と俳優・村井国夫が登場。モデル末期には吉永小百合のみとなった。この代でイメージキャラクターは終了となる。
七代目S120系(1983年~1987年)
1983年に登場。バリエーションも4ドアセダン&ハードトップ、5ドアのワゴン&バンとなる。2ドアハードトップはソアラに移行されて廃止された。当時、ハイソカーブーム真っただ中でホワイトの塗装にワインレッドの内装が人気で、現存車もこの組み合わせが多い。4ドアのリアピラーにはクリスタル・ピラーと呼ばれる樹脂処理がこの代の特徴でもある。同様の処理は同じくハイソカーブームを担ったX70系マークⅡにも見られた。最高峰グレードに「ロイヤルサルーンG」もこの代から登場をする。また、初めてグレード名として「アスリート」が登場した。元々はロイヤルサルーンのオプションであるSパッケージであり、足回りを固めにしたハーダーサスペンション、フロントスポイラー、専用パワステなど走りを前面に押し出した。この際は正式なモデルではなく、特別仕様車の位置づけで販売された。
1984年に一部改良。2800ccエンジンが3000ccにパワーアップされる。同時にディーゼルターボエンジン車にはAT車も登場する。
1985年にマイナーチェンジ。同時に直6の2000ccDOHCエンジンに日本初のスーパーチャージャーが搭載される。
イメージキャラクターはいないが、ナレーションは俳優・石坂浩二が担当をした。
八代目S130系(4ドアハードトップ1987年~1991年)、(セダン1995年まで)、(ワゴン&バン1999年まで)
1987年に登場。この代で5ナンバーサイズを基本とするのと、すべてのボディが同時にモデルチェンジをするのが最後となる。4ドアハードトップには3ナンバーサイズのワイドボディモデルが登場する。デザインも直線と曲線を巧みに合わせたものとなった。歴代の中でも最高の販売台数を誇り、モデルチェンジから25年程度たつが、現役で走っている姿も見られる。
1989年にマイナーチェンジ。ワイドボディ車にV8型4000ccエンジンの4000ロイヤルサルーンGが登場する。二代目モデル以来のV8のエンジンとなった。次代ではクラウンの上級版のクラウン・マジェスタとなる。同時にワイドボディには2000ccのスーパーチャージャー車も加わる。
1990年には直6気筒2500ccエンジンもハードトップ、セダン、ワゴンのラインアップに加わる。
1991年にハードトップのみが9代目モデルとしてモデルチェンジをするが、セダンとワゴンとバンは大幅にマイナーチェンジをする。全体的に丸みを帯び、フロントデザインが9代目を彷彿とさせるデザインとなる。また、この際にグレードが整理され、V8エンジン搭載車は廃止となった。
1995年にセダンの生産が終了、S150型にモデルチェンジをする。なお、タクシー向けの営業車は法人や個人タクシー向けに新たに設定されたクラウンコンフォートへ移行した。一方、ワゴンがマイナーチェンジをして、ABSと運転席エアバックが標準装備化がされる。
1999年にはワゴンとバンの生産は終了となった。バンの後継はカルディナバンとなる。ワゴンとバンはフレームシャーシゆえに架装性の高さから霊柩車用などで根強い人気があり、生産中止から15年以上経過した現在でも現役のところが多い。
九代目S140系(1991年~1995年)
1991年にモデルチェンジ。この代でハードトップのみがモデルチェンジをし、全車3ナンバーサイズのボディサイズとなった。クラウンの上級版として”クラウン・マジェスタ”も登場。普通のクラウンは”ロイヤルシリーズ”と分類される。マジェスタのみがクラウン初のモノコックボディとなる。ロイヤルは二代目以来のフルフレームボディである。エンジンも2000ccは廃止をされて、ロイヤルが2500ccと3000cc。マジェスタは3000ccと4000ccとなる。
登場をしたばかりの初期のスタイリングは丸みを帯びた押し出し感を少なくしたデザインであったが、それが災いとなり販売台数が落ち込む。セドグロとの販売競争では全体的な販売台数では負けはしなかったが、月単位の場合ではセドグロの方が販売台数が多い時もあり、劣勢に立たされることも少なくなかった。
1993年にマイナーチェンジ。先代モデルを彷彿とさせるデザインに変更。販売台数も回復するようになる。
十代目S150系(ハードトップが1995年~1999年 セダンは1995年~2001年)
1995年8月にモデルチェンジ。この代より二代目モデルの伝統であったフルフレームボディを廃止。歴代初のモノコックボディと進化をした。このおかげで従来よりも車重が100キロも軽量化がされる。廉価グレードも”ロイヤルエクストラ”の名称に統一される。同年12月にはセダンも久々にモデルチェンジとなった。セダンのみ法人需要を考慮をされて5ナンバー幅となる。同時に歴代初の4WDも登場する。4ドアハードトップはこの代で廃止となる。
1997年にマイナーチェンジ。安全装備が充実化がされる。同時にセダンのMT車が廃止となった。
なお、1999年に次世代モデルが登場して以降もハイヤー用途や法人や警察・道路公団向けにはセダンボディのS150系が継続生産されていた。
後期型のみイメージキャラクターとして、バレリーナ・草刈民代を起用。
十一代目S170系(セダンは1999年~2003年 エステートは2007年まで)
1999年にモデルチェンジ。この代より4ドアハードトップが廃止され4ドアセダンとなる。14年ぶりにターボエンジン搭載車も復活。スポーティーグレード”アスリート”も8年ぶりに復活となる。1977年以来続いたディーゼルエンジン仕様は廃止となった。ステーションワゴン仕様もモデルチェンジとなり名称も”エステート”となる。なお、S160型の形式は兄弟車・二代目アリストで使用されている。なお、先代のセダンモデルが継続生産されていたため、区別の為に「ロイヤルシリーズ」と「アスリートシリーズ」の名称が与えられ、以降はこの名称が定着する。
なお、本来形式がS160系となるところ、一つ飛んでいるのは兄弟車種であるトヨタ・アリストが2代目になった際に附番されたためである。
2001年にマイナーチェンジ。クラウン初のマイルドハイブリッド仕様が登場する。この年度よりパトカー仕様のベースはS170系ベースとなった。またこのマイナーチェンジを持って、継続生産されていたS150型はモデル廃止となり、ハイヤー用途はクラウンコンフォートベースのクラウンセダンにモデルチェンジされた。
前期型のみにイメージキャラクターとして、俳優・仲代達矢を起用。
十二代目S180系(2003年~2008年)
2003年にモデルチェンジ。エンジンが長く使われ続けられたきた直列6気筒エンジンから、V型6気筒に形式を変更となる。サスペンションからすべてを一新される。そのため新たな決意として、キャッチコピーを「ゼロクラウン」とする。ラインアップをラグジュアリータイプのロイヤル系とスポーティータイプのアスリート系に分類をされるが、広告では全面的にアスリート系をメインとし走行性能の高さをアピールし、客層の若返りに成功をした。
2005年マイナーチェンジ。アスリート系の3000ccエンジンを3500ccにパワーアップされた。
十三代目S200系(2008年~2012年)
2008年にモデルチェンジ。すぐにハイブリッドモデルも登場。先代モデルにまであった”ロイヤルエクストラ”が廃止となってすべて”ロイヤルサルーン”となった。スタイリングも先代モデルの良さを残すデザインとなった。ハイブリッドはリアテールがクリアケースランプになっており、デザインもアスリートベースとなっている。
2010年にマイナーチェンジ。仕様変更となった。またクラウン発売55周年特別仕様車が登場をする。ハイブリッドはベースの変更がされ、クラウンロイヤルシリーズがベースとなっている。これに合わせてテールランプもロイヤルシリーズの標準のものが採用されている。
十四代目S210系(2012年~2018年)
2012年12月にモデルチェンジ。「ロイヤル」と「アスリート」の二本立ては変わらず。エンジンは3000cc車が廃止をされ、「ロイヤル」シリーズは、V型6気筒エンジンの2500ccのみとなる。「アスリート」シリーズでは、V型6気筒の2500ccと3500ccの二本立てとなる。ハイブリットモデルは、エンジンをダウンサイジングをして、直4気筒2500ccとなり「より普及をさせる」事を目的としている。またスタイリングではバンパー下部まで突き抜ける大胆なフロントグリルがデザイン上の大きな特徴で、保守的なユーザーが多いクラウンオーナーからは反発の声も少なくなかった。
ボディサイズは先代より僅かに拡大されており、全長=4,895mm、全幅=1,800mmと切りの良い数値に収められている。クラウンの属するEセグメント車の全幅は世界的に見れば軒並み1,850mm以上、下手すると格下のDセグメント車ですら全幅1,800mmオーバーの車があるくらいで、日本特有の細長いデザインとなってしまっているが、これは銀座にある旧式の立体駐車場に収まるサイズが全幅1,800mm以下であり、この駐車場のスペースにクラウンのサイズを合わせて造ることが不文律となっていることや、日本市場がメインの車種であるゆえに日本特有の狭い道路をそれなりに取り回し良く走れるサイズが求められているなどの制約が課されているという理由によるところが大きい。このことから、S210系のボディサイズはクラウンなりのバランスを取ったひとつの完成形ということになるかもしれない。
また発表会では「アスリート」に特別仕様色のピンクを設定。2013年末までに販売が予定をされている。
翌2013年には上級モデルの「マジェスタ」がモデルチェンジ。この代からクラウンと基本コンポーネンツを共有することとなり、エンジンも先代のV8・4,300~4,600cc級エンジンを廃止し、3,500cc級のハイブリッド専用車種となる。
また「クラウンのホイールベース延長版」となったことで、先代より全長・全幅とも僅かに縮小された。
これまでの「クラウン」の上位に当たる別車種という位置付けから「クラウン」の中の一車種に取り込まれたような形となり、事実上の降格(Fセグメント→Eセグメント)を伴うモデルチェンジであると見て取れる。マジェスタシリーズの特徴でもあった縦型リアコンビランプや4人乗り仕様の廃止など、ボディ共通化・サイズダウンによって削られたものは少なくない。
またトヨタにおいてはハイブリッド専用車種はトヨタ系全チャンネルで販売されるのが通例となっているが、このマジェスタはクラウンの中の単なる上級グレードという扱いのなのか、他のハイブリッド車種と違いクラウンと同様のトヨタ店(それと東京トヨペット)のみでの販売となる。
2015年にマイナーチェンジ。この際に170系以来12年ぶりに2000ccが登場した。所謂ダウンサイジングターボである。アスリートのみのラインナップである。また特別仕様車の名称に「J-FRONTIER」と名付けたり、塗装をセンチュリーのような名称にしたりと日本らしさを前面に押し出したモデル作りが行わ2022年
15代目S220型(2018年~2022年)
2018年にモデルチェンジを敢行。170系以来アスリートとロイヤルシリーズとで分けていたモデル体型を一新。従来のロイヤルシリーズ相当のB・S・Gのグレード、アスリートシリーズ相当のRSに分けられた。また輸入車、特にドイツ車を意識したようでニュルブルクリンクで鍛えたとされる足回りが特徴であった。
エンジンは2000㏄の直4ターボ、2500㏄直4+ハイブリッド、3500㏄V6+ハイブリッドの3本建てとなっている。
16代目(2022年~)
2022年にモデルチェンジを敢行。モデル体型のみならず、派生車種が非常に多く登場予定という具合にクラウンの歴史の中でも最も大きな変化ともいえる。
このモデルから遂に国内需要における要請から据え置かれていた全幅1,800mmの殻を破り、全長が4,710~5,030mm、全幅が1,840~1,890mmへと、スポーツモデルの全長を除いて一気に拡大している。
多くは国外需要を意識してのものと考えられるが、4車種のうちクロスオーバーは全長4,930mm、全幅1,840mmと日本の道路事情や立体駐車場に対応可能なサイズに仕立てられており、今後日本市場ではクロスオーバーをメインに販売展開していくものと考えられる。
営業車
いわゆるタクシー仕様はカタログでは「営業車」と銘打たれている。初代よりその頑強さでタクシー車両として選ばれていた。姿かたちは通常のセダンモデルと変わりはない。
通常のクラウンと異なるのは以下の点である。カッコ内はモデル限定のもの
- 燃料はLPGかディーゼルのいずれか
経済性が重視されるので、LPGかディーゼルエンジンである。ディーゼルもノンターボ仕様が選ばれている。 - ハザードスイッチがウィンカーレバーの先端に取り付けられている
ハザードを使う機会の多いタクシーのため、体を動かすことなく、指の操作だけで操作できるようにウィンカーレバーの先に設置されている。 - トランク開閉スイッチの位置の違い(LPGのみ)
通常のモデルではドアの部分、肘置きの部分に電動式のトランクオープナーがあるが、LPGの営業車は膝元にボンネットオープナーと共にワイヤー式のオープナーがある。 - 各ドアにコーションプレートの設置
法令により設置が定められているので、「手前に引けば開きます」のプレートがある。分かり切ってるよ、とは言ってはいけない。 - 足回りの違い(上級グレード・S130型)
ロイヤルサルーンなど上級グレードは4輪独立サスであるが、タクシーグレードにおいてはリアサスペンションは信頼性重視のため、車軸式となっている。
通常のタクシー仕様はS130型まで、ハイヤー・個人タクシー向けにはS150型までラインナップされていた。
パトカー仕様
初代以来、クラウンはパトロールカー用の車種として選定されている。国産車の性能が低かった時代は追跡に耐えうるようにエンジンなどがトラックベースと一回り大きな車のものを使用していたが、性能向上に従って民生用と同様のものとなっていった。この時の名残で現在でもパトカーは特別のエンジンを搭載していると言う都市伝説がまことしやかに流れているが、実際には民生用と殆ど変りが無い。
かつては実用性とコストを重視していた為に低グレード車の内外装と大排気量エンジン+MTの組み合わせであったが、生産性を高める為か、現在では民生用に準じた仕様となっている。
ライバルのセドリックが営業車モデルのみになった2002年以降は唯一のカタログモデルとしてラインナップされている。但し、機密保持の観点から関係者以外のカタログ閲覧は厳しく制限されている。また、パトカーの例にもれず、廃車後はほぼ例外なく永久抹消の上でスクラップとなる。
なお、これと同じ仕様で道路公団向け(現・NEXCO)に専用モデルがあった。こちらのモデルは制限がないのか、たまに払い下げられて好事家が乗っている。
120型以前
初代よりラインナップされており、クラウンの名称こそなかったが車体は流用されており、クラウンベースであることは一目瞭然であった。しかし、初代クラウンが登場した当時の国産車は軒並みパワー不足であり、一方の犯罪者は出力も断然上な外国車、特にこの当時はアメリカ車を使用するケースが多かったので、その対策としてランドクルーザーやトラックで使用された4000㏄のF型エンジンを搭載した車両となっていた。この為、初代クラウンのベースの場合はフロント部分が延長され、一目で区別がついた。
2代目以降は大型化されたことやラインナップに直列6気筒が追加されたことで傍目には変わり映えするものではなかった。しかし実際は各部分が強化されており、これを流用した救急車も登場した。時代が下るごとに性能向上がなされたため、だんだんと民生用と大差がなくなってきた。
120系(1983年~1987年)
1983年に導入。初期導入車は4つ目ヘッドライトにワイドバンパーと言う組み合わせであり、特にこれが覆面パトカーともなると非常に違和感が漂うモデルとなった。後期モデルでは角目になり、多少は違和感が払しょくされた。
既に現役車両は存在しないと思われる。
130系(1987年~1995年)
1987年にモデルチェンジと合わせて登場。エクステリアはフロントは3ナンバー車、リアはタクシー仕様のテールランプにワイドバンパー、サイドモールなしという独特の仕様であった。民生用のモデルに合わせてマイナーチェンジを行っていった。
既に現役車両はないものとされる。
150系(1995年~2001年)
1995年に登場。マークⅡ廃止に伴ってそれまで3000ccのみだったものが2000ccが追加になった。また、それまで5速マニュアルのみだったのが、AT仕様も追加された。
タクシー仕様がクラウンコンフォートに移行した為、外観上の仕様は他のモデルとの差異が小さくなっていた。但し、サイドモールが存在しないという特徴があった。また、ホイールもキャップなしと言う民生用には存在しない大きな特徴もある。覆面仕様はドアミラー仕様が多い。一部にはオートカバータイプの前面点滅灯が採用されている。
おそらくは全廃と思われる。
170系(2001年~2005年)
2001年に登場。クラウンセダンがモデルチェンジでクラウンコンフォートベースとなった為、ベース車の変更が行われた。結果、170系クラウンロイヤルをベースとする事になった。その為、車体が大型化した。コストの絡みか、民生用に合わせた部分が多く、ホイールキャップやドアミラーのみの設定、全車ATとなる。一方で内装はロイヤルシリーズに設定のない黒の内装がチョイスされている。ナビミラーはピラーにくくりつけるタイプから教習車とほぼ一緒のミラー本体に据え付けるタイプに変更となった。2000cc、2500cc(4WD)、3000ccが設定された。
覆面仕様は前面点滅灯がグリル内部に設置するタイプからオートカバータイプに変更となった。サイドモールも存知され、覆面を見分けるポイントがことごとく潰されてしまった為、ぱっと見では普通のクラウンロイヤルと変わらないと衝撃を与えた。
なお、このモデルは登場がクラウンロイヤルのマイナーチェンジ後となった為、パトカー仕様と民生用のモデルチェンジのサイクルが2年ほどずれてしまう現象が発生した。その為、これ以降のモデルにおいては民生用がモデルチェンジした後も継続してパトカー仕様は前モデルを生産しているので前期モデルをベースとしたパトカー仕様は登場しない。
最終導入でも20年近く経過しているため、ほぼ全国の警察で全廃されている模様。
180系(2005年~2011年)
2005年に登場。クラウンがマイナーチェンジしたのと合わせて登場した。ゼロクラウンベースとなり、さらに車体が大型化した。2000ccが廃止となりV6の2500ccと3000ccのみとなった。当初、信頼性の問題から輸出用に設定されていた直噴機構なしのものが選択されているという説があったが、実際は民生用と同じ直噴エンジンである。大きな特徴として、民生用には設定のないホイールキャップ付きスチールホイールが採用されている。これはマークXのものと同一である。
覆面仕様は170系と同じような特徴を持つが、モデル末期になると前面点滅灯を製造してたメーカーの小糸製作所がオートカバーの生産を中止した為、グリル内にLED式の赤色点滅灯を設置する形となった。その為、隠匿性が格段に上がっている。
200系(2011年~2016年)
2011年に登場。このモデルもクラウンのマイナーチェンジと合わせて新型となった。制服仕様は車外は王冠マークと「CROWN」のエンブレムが消えている。地域課などに配属される2500ccと交通部門を中心に配属される3000ccは先代と同じである。
長らくスチールホイールを堅持してきたが、200系で初めてアルミホイールを標準化した。2500ccは16インチ、3000ccは17インチを採用している。これはわざわざスチールホイールを装備するよりもアルミホイールを履かせたままの方が調達コストが下がるからと言われている。また、当初は民生用には存在しないキーシリンダー式のスターターを採用していたが、後の導入車では同様の理由でスマートキーになっている。
覆面仕様は引き続き王冠マークと「CROWN」のエンブレムが存在している。アルミホイールを採用した関係でほぼ民生用との差がなくなっているが、アンテナがフィンタイプではなく、前期型のみに存在したユーロアンテナとなっている点がポイントとなっている。
石を投げれば必ず当たる程に多く見かけるパトカーと思われるが、最初期に導入された車両から廃車が始まっている。
210系(2016年~2020年)
2016年4月にパトロールカーモデルがモデルチェンジされ、10月頃より各地に配属が始まった。
今回は地域課向けと交通機動隊・高速隊向けとでグレードの選定に変化が起きた。具体的には地域課向けの2500ccはロイヤルシリーズ、交通部向けはアスリートシリーズが選ばれた。その為、交通機動隊・高速隊向けは3500ccのエンジンが搭載されていると思われる。再び制服仕様は「CROWN」のエンブレムが復活した。
今モデルよりナビゲーションやオーディオレスが選べるようになったので、インパネのナビ設置部分はオーディオレスを基本としている。細かいところであるが民生用との共通化がますます進んでおり、断熱材や防音材、エンジンカバーと言った装備がそのまま装備されている。下手に取っ払うとコストが上がると言ったところであろう。
交通機動隊・高速隊向けのモデルは3500ccのアスリートSがベースとなり、ホイールも18インチの物を採用しているが、市販モデルにはないシルバー塗装のものとなっている(本来、アスリートSのホイールはスパッタリング加工がなされている)また、グリルの形状の関係で白黒パトカーの前面警光灯は覆面と一緒でグリル内部への設置になっている。覆面パトカーは無線用にユーロアンテナが取り付けられている(民生用の同モデルはアンテナの設定なし)ほか、ハイマウントストップランプがどういうわけか4灯LED(制服パトカー・民生用は6灯)となっている特徴がある。
いずれにせよ、交通機動隊・高速隊向けクラウンパトロールカーはアスリートの3500ccを搭載している事で出力は315馬力と歴代最強と言っても過言ではない。
220系(2021年~)
2021年に登場。このモデルにおいては地域課と交通機動隊・高速隊は2000㏄のガソリンターボ、雪国など積雪地における地域課車両は2500㏄ハイブリッドとなった。
救急車
ハイエースが救急車モデルのメインになる以前はアメリカ車に範をとったステーションワゴン形態(「メトロポリタン型」の名称があった)の救急車が多かった。これらの車両はパトカー用の強化されたモデルをベースとしており、車体はクラウンであっても中身はパトカーのようなハイパワーなモデルであった。
どんなに新しくても40年以上は経過しているのだが、自治体所有だったので車自体の手入れがよく、救急車自体が払い下げ可能である車種の為、熱心なファンが所有するケースが散見される
関連・派生・兄弟車種
- トヨタ・クラウンコンフォート
1995年に登場したタクシーモデル専用車種で従来のクラウンセダンの営業車モデル(≒タクシー)のモデルチェンジ版として登場した。クラウンと銘打ってるものの、床下のコンポーネンツはX80系マークⅡのホイールベースを延長したものである。1995年以来、一貫してタクシーモデルのみである。なお2001年以降のクラウンセダンについてはこのクラウンコンフォートがベースになっている。 - トヨペット・マスター
初代クラウンが登場した時に同時にラインナップされた車両でタクシー仕様でいわばクラウンコンフォートのご先祖様ともいえる。クラウンの信頼性に問題がなかったため、1年少々しか生産されなかった。しかし、コンポーネンツはコロナやピックアップトラックに流用され、無駄にはならなかった。 - トヨペット・マスターライン
トヨペット・マスターのライトバン・ピックアップモデル。モデルチェンジでクラウンとコンポーネンツを共有する兄弟車種となる。名称こそマスターとなっているが、エンブレムに王冠マークがつくなど、クラウンとほぼ同一視される車両であった。3代目に至ってクラウンと統合した。 - トヨペット・クラウンエイト
2代目クラウンを十字に切って、その分の長さをつぎ足してV8エンジンを搭載したと例えられる車両。パッと見はクラウンと変わらないが、大型化されている点が注目される。形式はクラウンの「S」ではなく「G」となっている。そしてこの車両の後継として登場したのが、「トヨタ・センチュリー」である。 - トヨタ・アリスト(レクサス・GS)
トヨタオート店・ビスタ店(共に現ネッツ店)向けに販売された車両で初代クラウン・マジェスタの兄弟車種。エンジンは2JZ-GTE型を搭載し、そのハイスペックぶりが人気を博した。現在はレクサス・GSとして販売され、最新モデルではクラウンの系統から外れている。
輸出向け
長らく日本国内専用車と言う認識が強かったのだが、実際は中国大陸向けや東南アジア、中東などと地域は限定されているが、輸出も行われていた。この誤解は国外事情に関する情報はネットが普及する以前は乏しく、まして車のモデルともなると皆無に等しいものであった。無論、左ハンドルも存在している。また110型など、日本国内ではフェンダーミラーしか許可されていなかった時代、輸出用にはドアミラー車が既に存在していた。
主にセダンが輸出されていたが、エンジンは地域の特性上、信頼性や整備性に重きを置いたため、日本で使用されている最新・ハイエンドモデルではなく、1世代程度前の物や最新モデルでも電子制御関係を中心として一部機能をオミットした物が存在した。例えば130型を例にとるとエンジンには日本では商用車に採用されてる2000cc・OHVの3Y型エンジンの排気量アップ版の4Y型エンジンのキャブ仕様を搭載したモデルが存在した。
現在は中国で現地生産をするモデルがあるが、このモデルは直噴機能を省略したモデルとなっている。また並行輸入レベルで右ハンドル圏に個人輸入されるケースがある。
北米向けについて初代クラウンが輸出されてはいたのだが、黎明期の車両ゆえに故障多発で一時撤退と言う憂き目を見た。北米ではトップエンドモデルはその後にトヨタ・クレシーダ(トヨタ・マークⅡセダン)が担った為にクラウンは北米で販売されてはいなかったが、2022年に登場したクラウンクロスオーバーを北米仕様として輸出することとなった。1972年に中止してから半世紀後のお話である。
中国におけるクラウン
中国においてはクラウンの系譜に関係のないヴェルファイアであったり、クルーガーに対して車名の前にクラウンがつくという具合に、ある種の特別な意味合いが持たれている。
今でこそ中国における自動車生産にあたっては現地法人との合弁が義務となっているが、かつては本国より完成車輸入もあり、クラウンもその中の一つであった。当然のことながら高い関税が課されたので主に外交官であったりと言った特権層御用達の車であった。
日本車ということで非常に高い品質の仕上がりであることもあり、中古落ちした際でも腐っても鯛ではないが、その当時の中国車のクオリティを余裕で追い抜く出来にユーザーの心に強い印象を残した。
このため、中国本土ではクラウンは特別な存在であり、180系以降では現地生産も行われた。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 3
- 0pt