2004年日本プロ野球再編問題とは、2004年に起きたNPB史上最大規模の危機である。
概要
大阪近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブの2球団の合併を発端とした騒動で、選手はもとよりファンや政界までもを巻き込んだ大騒動となった。この騒動がきっかけでNPBに様々な問題があることが明らかとなり、その影響は現在もなお続いている。 問題解決せずにほっぽりぱなしとも言える。
前兆
パシフィックリーグの球団である大阪近鉄バファローズの親会社近畿日本鉄道は長らく赤字経営で、特にプロ野球チームを所有していることが大きな負債の原因となっていた。2003年には球団名の命名権を売り出す計画を立てたが他球団の猛反発を受け計画を取り下げることとなった。
その後も水面下で球団の身売りを画策していたが、オリックスの宮内義彦オーナーからの要望により2004年5月から球団合併の交渉に入った。
合併報道
2004年6月13日の日本経済新聞にて「近鉄とオリックスが球団合併の交渉をしている」と報道される。これが世に出た初の合併報道である。
伝統のある球団が減るかもしれない問題に対し、多くの野球ファンや選手は合併に反対した。特にプロ野球選手会は「まだ話し合いの余地があるのではないか」と見解を示し、「合併を一年間凍結し、選手と球団で話し合いの場をもうけさせて欲しい」との要望を出した。一方でプロ野球委員会では合併は「了承」されるも、フランチャイズはどこになるのかなどの具合案を示した12球団の代表者会議ではセリーグ側の球団から反発を受けた。
7月に入ると「パリーグでもう1つ球団合併がある」「千葉ロッテマリーンズとヤクルトスワローズが合併交渉をしている」「パシフィックリーグは消えて1リーグ制になる」などの報道がなされ、チームはおろかリーグ存続の危機に立たされる。(なお第二の合併は結局まとまらずに白紙となった)
ジャイアンとふる太くんとホリエモン
先述の通りプロ野球選手会は選手会長(当時)の古田敦也を代表に球団側との会話の機会を望んでいたが、読売ジャイアンツオーナー(当時)の渡邉恒雄氏が「無礼なことをいうな。たかが選手が」と真っ向から拒否。選手会とファンの合併への反発はますます強まり、合併やむなしの方向へ進みかけていたその時、ある企業が近鉄球団の買収を名乗り出る。堀江貴文が社長を務めるライブドアである。
当時まだ新進気鋭のベンチャー企業だったライブドアの球界参入に対し、球団代表者は歓迎する者もいれば猛反発する者もおり賛否両論だった。特に近鉄・オリックスの両チームはライブドアの申し入れを拒否し、合併を進める方針を示した。
この頃、選手たちは球場で合併反対の署名活動を行うようになる。当事者である近鉄・オリックスの両選手はもちろん、他球団の選手も一致団結するようになった。オールスター戦では12球団のイメージカラーを模したミサンガを選手が着用、のちに一般販売もされた。またオールスター戦ではパシフィックリーグの連盟歌「白いボールのファンタジー」が応援席で流れ、後半戦でもパリーグ6球団の応援席で流れるようになった。
また、時を同じくして福岡ダイエーホークスの親会社ダイエー本社も経営難による産業再生機構の活用案が持ち上がる。ホークス球団の合併案も浮上したが結局まとまらず、その後ソフトバンクへの売却を発表、福岡ソフトバンクホークスが誕生する。
ストライキ、そして新球団誕生
選手会とファンの思いもむなしく、2004年9月8日に近鉄・オリックスの球団合併が正式に承認。「オリックス・バファローズ」が誕生する。選手会の度重なる交渉も決裂し、2004年9月17日と18日、日本プロ野球選手会は初のストライキを敢行。
後日再度行われた団体交渉では「2005年はセパ12球団」となる方針で合意し、新規参入球団の受け入れを可能にするなど、再編問題にひとつの終止符を打った形となった。
新規参入には近鉄球団買収に名乗り出たライブドアと、同じくIT企業として成長しつつあった楽天が名乗り出る。どちらも宮城県仙台市の宮城球場を本拠地とし、ライブドアは「仙台ライブドアフェニックス」、楽天は「東北楽天ゴールデンイーグルス」とする旨などを公表。委員会による審査(企業の財務体制・経営の健全性などを審査)の結果、楽天を新規参入球団として承認し、新球団が誕生する。
その後
旧近鉄・オリックスの両選手を楽天・オリックスの両チームに分配する選手分配ドラフトが行われ、合併球団への分配を拒否した礒部公一、岩隈久志などは一旦オリックスに所属したのちにトレードで楽天球団へ移籍する、といった処理がなされた。
2004年は一場靖弘投手をめぐる裏金問題が発覚した年で、ジャイアンツの渡邉恒雄オーナーをはじめとした3球団の代表者が代表を辞任している。他、ダイエーが球団をソフトバンクに売却したこともあり、12球団中6球団の代表者が変わるという事態になった。
球団買収に名乗りを上げたライブドアはその後、社長の堀江が証券取引法違反で逮捕される事態になり、ある意味では審査の妥当性が証明された事件となった。
球団の消滅を受け、大の近鉄ファンであった俳優の藤田まことを始め、多くの野球ファンが野球を見ることをやめてしまったという。
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