概要
特急形として形式名が27x系となる車両の第2弾で、381系の後継車両として開発・導入された車両。
JR西日本が開発する特急形の振り子式車両としてはキハ187系以来であり、電車としては283系以来である。JR全体でみても振り子式車両の特急形電車は久々の導入となる。
381系単一で長らく運用されていた伯備線特急「やくも」であるが、ゆったりやくも化して10年以上経過し、かつ381系導入から40年が経過していることから老朽化取替を行うこととなった。また、本形式導入前には伯備線へのフリーゲージトレイン導入計画の断念に伴い地元選出の国会議員によりJRへ新車導入が要望されていた。
本来は2023年に導入予定であったが、新型コロナの影響もあり1年後ろ倒しになり2024年に導入された。
車体形状は683系4000番台や287系をベースとし、381系で掲示している「やくも」ヘッドマークをブラッシュアップしたデザインを先頭(貫通扉部分)と車体側面に掲示する。
一方の車体色はJR西日本の特急形電車に多い「白色の車体に運用線区をイメージした帯」ではなく、273系では沿線の大山の朝日や宍道湖の夕日、石州瓦の赤褐色などをイメージした「やくもブロンズ」を基調とし、287系など他の車両とは異なったカラーリングを施している。これはデザイナーの川西康之がJR職員へのインタビューを実施した結果、職員等の意見も踏まえて「従来塗装では利用者を呼び込めない」との結論に至ったことも塗装変更の要因である。
座席は沿線の山々をイメージした緑をベースに麻の葉柄をあしらっている普通車(2~4号車・6~8号車)と、黄色をベースに積石亀甲をあしらった半室グリーン席とグループ席としてセミコンパートメントが設けられた1号車(5号車)1両から成る(セミコンパートメントは普通車指定席扱いで、2号車乗降口が出入口となる)。なお、グリーン席・普通席の座席は「ゆったりやくも」の683系仕様からJR西日本初のリクライニング角度に合わせて座面角度が変化するチルト機構や可動式まくらの採用するなど細部が変更され、シートピッチは新幹線接続特急という性質から乗り換え客が違和感を覚えないよう東海道・山陽新幹線N700系の1040mmに合わせられた。
その他、トイレは1~3号車に設置され、うち3号車については多機能トイレとなる他、3号車はフリースペースや車椅子スペースが設けられる。また、271系と同様に車内Wi-Fiや座席コンセントの設置、車内案内表示器の拡張(ドア上のみから車端部までの一体化)を行うなど、381系比でサービス面の大幅な向上が図られた。
他方、381系スーパーやくも編成にあったパノラマグリーン車は不採用。これは紫外線対策など乗務員の安全確保よるものと言われている(381系パノラマ車でもやくも用では乗務員室設備に安全確保のための追加設備があった)。
2024年9月27日に締結されたグリーンローン契約
及び2025年2月25日のサステナビリティボンド発行
の使用用途のうち「在来線新型車両の導入」内に近郊形直流電車として273系が記載された。このため、今後増備される可能性がある。
なお、「やくも」沿線部で津波が関わるエリアはほとんどないが、津波の際の避難についてのステッカーが運用開始後に追加されている。
2025年に鉄道友の会が主宰する「ブルーリボン賞」を受賞した■
。
運用
381系「やくも」はモハユニットの組み換えによりフレキシブルな組成を行っていたが、273系は4両編成のみ。
新製発表時点では4両編成11本(製造:近畿車輛)の導入とされ、先代の381系より運用両数は少ない。ただし273系自体は併結が想定されており、運用開始後は381系で4+3の7両などを組成する多客期輸送時には貫通路を繋いで4+4の8両運転を実施している(ただし、増結による予備車不足から2024年度の最繁忙期には381系による代走が生じている)。停車駅には4両・8両の乗車位置案内が設けられている。
なお、先頭車(クモロハ272・クモハ273)は貫通形であるが、Y7・Y9編成のクモロハ272-7とY8・Y10編成のクモハ273-8が貫通路準備工事の状態で4月4日・4月22日・5月16日に近畿車輛を出場した。
運用開始の初列車は2024年4月6日の「やくも4号」(出雲市駅5:27発→米子駅6:23発→岡山駅8:35着)で、6月15日までに段階的に定期運用の381系を置き換えた。なお、運用開始の時点で全席指定席となっている。
車内チャイムはゆったりやくものR.シューマン「見知らぬ国から」から山陰出身のOfficial髭男dismの「Pretender」(岡山行き)、「I LOVE...」(出雲市行き)に変更された。
技術
開発に際し、JR四国から空気ばね式の8600系を借りて伯備線で走行試験を行うなどしていたが、伯備線の線形では空気消費量が多く、空気ばね式の導入を断念。制御付き自然振り子の精度をあげたJR総研・川崎車両と開発した「車上型の制御付き自然振り子」を採用することとし、振り子継続となった(なお、この車上型が導入されたのはJR総研が20年かけて開発していた機構の完成タイミングと車両導入の時期とが合致したため)。
この際に振り子アクチュエーターも改良。山陰エリアの韋駄天・キハ187系の3段階切り替え式から無段階切り替え式に変更し、より緻密な制御を行えるようにした。
また、JR西日本ではおなじみとなった0.5Mシステムの全電動車とし、381系の2M2T時に生山駅~新見駅間で頻発していた空転リスクにも対処できるようにしている。
前述の通り車上型制御付き自然振り子を採用したことでカーブ手前から振り子を作動させ、カーブ進入にあわせて振り子が作動する381系と異なり急挙動を解消した(但し元々線形の悪い伯備線の線路状況のから大きな縦揺れを感じる事もある)。振り子機構の作動は走行地域と世代の近いJR四国2700系(ただし気動車)より間隔は分かりやすい。
編成
2023年10月17日に大阪・近畿車輛にて第1編成となるY1編成が報道陣に公開された。その後、Y2編成とともに湖西線での試運転後に後藤総合車両所へ自力回送。松江駅~根雨駅間で試乗会が行われた。
287系と同様に半室グリーンを示す「クモロハ」がある他、中間車のモハはいずれも100番台となっている。また、側面の行先表示では隠しモードとして過去に381系で用いられていたヘッドマークを表示可能。
| 号車 | 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 新製年月日 |
備 考 |
| 編成番号 | クモロハ272 | モハ273-100 | モハ272-100 | クモハ273 | ||
| Y1 | 1 | 101 | 101 | 1 | 2023.10.25 | 2024.2.5宮原方転 |
| Y2 | 2 | 102 | 102 | 2 | 2023.10.25 | |
| Y3 | 3 | 103 | 103 | 3 | 2024.1.17 | |
| Y4 | 4 | 104 | 104 | 4 | 2024.1.17 | |
| Y5 | 5 | 105 | 105 | 5 | 2024.2.28 | |
| Y6 | 6 | 106 | 106 | 6 | 2024.2.28 | |
| Y7 | 7 | 107 | 107 | 7 | 2024.4.4 | クモロハ貫通路準備工事 |
| Y8 | 8 | 108 | 108 | 8 | 2024.4.4 | クモハ貫通路準備工事 |
| Y9 | 9 | 109 | 109 | 9 | 2024.4.23 | クモロハ貫通路準備工事 |
| Y10 | 10 | 110 | 110 | 10 | 2024.5.17 | クモハ貫通路準備工事 |
| Y11 | 11 | 111 | 111 | 11 | 2024.5.24 |
諸元
| Mc クモハ273 |
M'1 モハ272 |
M1 モハ273 |
M'sc クモロハ272 |
|
| 最高速度(km/h) | 120(設計・営業ともに) | |||
| 定員(名) | 50 | 32 | 58 | 29 |
| 空車重量(t) | 43.4 | 41.8 | 41.1 | 44.3 |
| 寸法(全長・全高・全幅)(m) | 21300・4090・2850 | 21300・3890・2850 | 21300・4090・2850 | |
| 主回路制御方式 | 2レベル電圧形PWMインバータ | |||
| 台車形式 | WDT72A WTR241A |
WDT72 WTR241A |
WDT72A WTR241A |
WDT72A WTR241A |
| 空調装置形式 | WAU708B | |||
| 主電動機形式 | WMT110 | |||
| 主電動機形式出力 | 1時間定格220kW | |||
| パンタグラフ形式 | WPS28F | |||
| 振り子角度 | 5度 | |||
| 保安装置種類 | ATS-SW・P形 | |||
関連動画
関連静画(行先表示器)
関連リンク
関連項目
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