この記事ではスイスの企業及び、同社に由来する銃器ブランドについて記述しています。その他のSIGについてはシグをご覧ください。
SIGとはスイスに本拠を置く工業機械・製品製造企業グループ。Schweizerische Industrie-Gesellshaftの略称でSIGである(日本語に訳すとスイス工業組合といった感じ)。過去に軍用・公用の銃器類を生産していたことがあり、それらは銃器部門の売却後もブランド名や別会社として存在しているため、日本でも一部に高い知名度を持つ。銃器以外のSIGブランド製品については日本では馴染みがないので割愛する。その高い性能は認めつつも無骨なデザインについては賛否両論あるようである。
概要
1953年、SIG社はスイスの鉄道車両メーカーとして出発する。その後、高い工作技術を生かしてスイス軍用及び輸出用の銃器も手がけるようになった。アサルトライフルのSG550シリーズ、拳銃のP220、P230シリーズなどが著名であり、その信頼性と精度(と値段)の高さで評判となっている。
中立国であるスイスが他国へ銃器を輸出することに対する問題を回避するため、SIGはドイツのザウアー&ゾーンを買収して系列会社化し、そちら経由で輸出を始める。1985年には世界最大の民間用拳銃市場があるアメリカで現地法人の子会社「SIGARMS社」を設立し一部を現地生産している(SIGARMSはアメリカ向けのガバメント系製品「GSR」なども開発している)。このとき製造を受け持っていたザウアー&ゾーン社に生産させていた銃につけられたブランド名が「SIG SAUER」である。SIGはこの他にもドイツの民生向けライフルメーカーであるブレーザーの買収などもしている。
2000年、SIG社本体は包装機器事業に集中するため鉄道事業と、銃器事業の部門を売却した。この時にSIGの銃器部門を取得した投資家によって設立されたのがSWISS ARMS社である。同社は旧SIG銃器部門の製品ラインナップとアメリカ法人であるSIGARMS社、「SIG」「SIG SAUER」の名称の権利などを引き継ぎ、現在もSIGの名を冠した製品を製造・販売しているが、SIG本体との資本関係は存在しない事に注意。買収後もSWISS ARMS社の子会社となったザウアー&ゾーン社が拳銃の製造及び開発を担当している。ちなみに2007年からアメリカ法人であるSIGARMS社は改名してSIG SAUER社を名乗っている。
日本では、直接SIG及びSIGブランドの製品を目にする機会は余りないが、これらの銃器は玄人好みとして、フィクションやホビー誌などを通して一定のイメージを得ている。また、自衛隊が採用している「9mmけん銃」はSIG P220のミネベアによるライセンス生産品である。後継として、改良型であるP226系列を採用するという噂もあるとかないとか。
値段が高く、手は出しづらいが他を圧倒する性能と言うのは日本人のハートを鷲掴みするような設定なのか、創作では美味しいポジションをとってることが多く愛好者が多い。キノの旅の作者である時雨沢恵一の名前の由来だったりする。(時雨沢→しぐさわ→SIG SAUER)
代表的な銃器
拳銃
P210
SIG社の基礎といって良い、超高性能、超高価な拳銃。その工作精度の高さと芸術品とも評される丁寧な仕上げにより、当時の拳銃としてはズバ抜けた命中精度を持つ。ただし、セミカスタムメイドである為に非常に高価であった(当時の米国価格で2000ドル以上)。P210の登場は後の拳銃開発に多くの影響を与えた、特にCz75は影響が強い。某ヤンマーニの人が使っている。
P220[1]
P210は削り出しを多用しているため価格が高く、軍用火器としては不適格と評価されていた。そこでSIGはスライド部をプレス加工に変更、ダブルアクション機構を導入し、軽合金のフレームを採用したP220を開発した。手動安全装置は無いが、撃針をロックする機構が組み込まれている。スイス陸軍では制式名9mmPist75として1975年に採用、自衛隊も1982年に9mm口径のP220をアメリカが供与していたM1911A1の後継として採用した。
P220はアメリカ向け輸出を念頭に置いているため、.45ACP、9mm×19、7.62mm×21、.38スーパー、.22ロングライフルなど5種類の弾丸を使用できるようになっている。
P226
P220を改良しシグ社の名を世界に広げた本物の名作銃。ダブルカラムマガジンの採用により装弾数が大幅に増加した。米軍が行った制式拳銃のトライアルでは、ライバルのベレッタM92Fより好成績であったものの、値段とマニュアルセーフティがないことが敬遠され、制式拳銃の座を譲ることとなる。軍の要求自体には合格しており、士官向けや特殊部隊などでは多く採用されている。人気モデルであるためバリエーションがものすごく多い。詳しくはP226の個別記事を参照
P230
.32ACP弾仕様で一回り小さく特異な形をした小型拳銃。日本警察に正式配備されているため、現在ではニューナンブに代わりメディアに登場する機会も多くなった。日本警察仕様ではマニュアルセーフティが追加されている。
P250
モジュラー・システムの採用により各部のパーツを組み替えることができ、多くのカスタマイズ性と拡張性を誇る。これまでのシグの拳銃における象徴であったデコッキングレバーを排し、完全なるダブルアクションオンリー拳銃となった。バレル交換で4種類の弾を撃ち分けたり、スライドやグリップを交換すれば拳銃の大きさを自由に変えることも可能。マガジンキャッチを左右で入れ替え可能で、スライドストップが両側にあるため、左手でも扱える。また部品点数が少なく、コストダウンだけでなくかなりの軽量化を実現している。
P320
米軍正式採用となったモデルについては後述のM17とM18の項目を参照。
同社が昨今力を入れている分野であるモジュラー式拳銃の新世代であり、2014年から販売。撃発方式にストライカー式を同社で初めて採用している。標準で数多くのアタッチメントやアクセサリーが装備できるようになっており、あらゆる大きさの手に対応できるように、グリップが3種類の中から交換できる仕様である。
P250がベースになっており、グリップやマガジンは共有が可能。9mmパラベラム弾、.357SIG弾、.40S&W弾、.45ACP弾とメジャーな口径に対応。(サブコンパクトのみ.380ACP弾にも対応)さらに銃自体も口径違いの他に、フレームの大きさが4種類から選べるようになっている。
M17とM18(P320の米軍制式採用モデル)
2017年1月に米軍はMHS(モジュラー・ハンドガン・システム)調達において、シグザウエルのP320MHSバージョンを採用、P320MHSは、M17(フルサイズ)、M18(キャリー)の採用番号とともに配備される。米空軍、米海軍、海兵隊でも採用が決まり、現在のところトータルで421000挺の調達が決まっている。[2]
厳密にはP320そのままではなく、親指操作のマニュアルセーフティが追加されたカスタムモデルとなる。
選定作業は米陸軍と米空軍の主導によるMHS(モジュラーハンドガンシステム)及び次期制式拳銃を決める、XM17計画により2年以上の歳月をかけて決定したものである。導入されるのはフルサイズとコンパクトの二種類であり、口径は9mm。
余談ながら、XM17計画には拳銃本体と併せて新たな9mm弾薬の採用も盛り込まれており、XM1152フルメタルジャケット弾とXM1153ホローポイント弾が導入される。ちなみにダムダム弾の禁止に関するハーグ宣言にアメリカは署名しておらず尊守する必要はないが、これまで国防省は同宣言に準じたガイドラインを設定していた。最新のモジュール式拳銃の導入、ホローポイント弾の採用など一連の流れについては
保守的な軍には珍しく革新的な出来事と言えるだろう。
GSR
P556
SG556を小さくしたサブマシンガン版。他にも516、522、716のショートが作られてる。
小銃
SG550
スナイパーライフルにも匹敵するといわれる命中率と高い耐久性を誇る。しかし、世界でも最も高価な部類のアサルトライフルとなってしまった。(日本の89式よりもやや高価である、世界一はFA-MAS G2の3000ユーロ)
SG552
550を短くしたカービンモデルだが命中率、耐久性、取り回しのよさと三拍子が揃いむしろ総合的な性能は向上したとされる。
SIG556
アメリカ市場用にM4に似せて作ったモデル。各種オプションもM4と同じ物を使いまわせる。
SIG516
SIG716
SIG製のAR10、7.62mmを発射できる。ライセンス生産品である。
SIG522
.22LR弾を発射できる。SIG製で名前が順番通りになっていないものは大体口径の違いによるものである。
SSG-3000
警察機構向けに開発されたボルトアクション式狙撃銃。精度に定評のあるシグが本物の狙撃銃を作ってしまった。あらゆるライフルの中でトップクラスの命中精度を示し、各国で採用が相次ぐこととなった。
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関連項目
脚注
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