ガーネツトとは、1955年生の日本の元競走馬・繁殖牝馬である。
牝馬として初のグランプリ制覇を果たした名牝。ある男のロマンの結晶でもあった。
ちなみに正しい表記は「ガーネツト」であり「ガーネット」ではないが読みは「ガーネット」で正解。あと2009年に廃止された重賞ガーネットステークスとは何の関係もない。
主な勝ち鞍
1959年:天皇賞(秋)(八大競走)、有馬記念(八大競走)
父は顕彰馬にも選ばれた超快速馬トサミドリ、母は小岩井農場の基礎牝馬の1頭フロリースカツプの子孫サンキスト、母父は戦前に帝室御賞典(現:天皇賞(秋))馬を出しリーディングサイアー争いに加わったということ以外情報が全くない英国産馬ミンドアーという血統。いいんだか悪いんだかよくわからない。まあ血統評価は置いておくとして、この馬の誕生にはちょっと長い前日譚がある。
1941年、畑江五郎という男が日高に牧場を開いた。この男、慶應法学部なのに学生時代から馬産を夢見ていたらしく、小岩井農場から譲り受けた良血牝馬フロラヴアース(フロリースカツプの子孫。父は名種牡馬シアンモア)を基幹牝馬にしようと努力していた。しかし折しも太平洋戦争の最中、畑江は1944年に召集。家族に牧場の牝馬を残しておくよう言い残して中国に出征した。その後シベリア抑留を経て帰国したのは1948年。日高に戻った時にはGHQの農地解放のあおりを受け牧場は消滅、馬もいなくなってしまっていた。
それでも畑江は折れず、出征直前に生まれていたフロラヴアースの娘サンキストを探し出し、ミンドアーを輸入した稗田牧場に預け馬主として再出発。サンキストは目黒記念馬や東京大賞典馬を送り出して畑江の期待に応えた。そして4頭目の産駒がガーネツトだった。
しかしこのガーネツト、デビューからしばらくは成績がパッとしない。4戦目でようやく初勝利を挙げ、旧3歳時は6戦2勝。年が明けて2連勝しクラシックに挑むが桜花賞6着、さらにオープンで2勝を加え臨んだオークスは5着。その後もオープンは勝つが重賞は勝てない、なんてレースを繰り返し、5歳夏までに34戦11勝。内9勝がオープン特別というなんともいえない成績だった。どうも気性が荒かったうえに出遅れ癖があったらしい。重賞に手が届かないまま、ガーネツトはこの年限りでの引退が決定する。
最後の秋、オープン戦で58㎏背負いながら勝つと目黒記念(当時は春秋の2回開催)で3着。引退の手土産にと天皇賞(秋)に挑む。レースは中団後ろから直線抜け出すが、外から1番人気オーテモンに強襲され最後は並んでゴール。写真判定の結果ガーネツトに軍配が上がり、初重賞で天皇盾を手にした。ちなみにこの写真判定の最中、畑江とオーテモンの馬主の永田雅一(トキノミノルとかの馬主)が鉢合わせ、永田氏が「俺の馬が勝ったぞ」と喜んでたのでガーネツト陣営は負けたと思いしょんぼりしていたら判定でガーネツトが勝ち陣営は大喜び、一方で肩透かしを食った永田氏はえらく落ち込んでいたらしい。まあ、オーテモンは翌年に天皇賞(秋)を快勝して雪辱できたからいいんだけど。
この勝利が効き、ガーネツトは滑り込みで有馬記念に推薦され出走。しかし不良馬場で割り引かれたか12頭中9番人気という低評価だった。おいおい、いくら牝馬で重馬場ダメだからって、天皇賞馬をなんだと思ってんでい…。
レースはやや後方から進め、逃げた1番人気ハククラマが轟沈するの尻目に外から仕掛ける。そして直線に向くと、鞍上の伊藤竹男は比較的状態のいい外ラチギリギリまでガーネツトを持ち出して一気にスパート。次元の違う末脚で内のハタノボル以下を4馬身彼方に置き去りにし圧勝。史上初の牝馬による有馬記念制覇を成し遂げた。天皇賞と有馬記念を連覇した牝馬は後にもトウメイがいるのみという偉大な勝利であった。馬主の畑江は友人との酒の席で「フロラヴアースを手放さなくて本当によかった」と涙したという。ガーネツトの活躍は畑江が追い続けた夢の結実でもあった。
繁殖牝馬としてもなかなかで、クラシックで善戦したタニノムーティエのカモウメノダイヤなどを送り出した。また、産駒の多くが牝馬だったために牝系が伸び、今でも一部は生き残っている。近年は在来牝系見直しの流れの中で二冠馬メイショウサムソンや福島記念を勝ったミトラなど活躍馬も出ており、まだまだ活躍できる…かもしれない。畑江の夢はまだまだ続きそうだ。
トサミドリ 1946 鹿毛 |
*プリメロ 1931 鹿毛 |
Blandford | Swynford |
Blanche | |||
Athasi | Farasi | ||
Athgreany | |||
*フリツパンシー 1924 黒鹿毛 |
Flamboyant | Tracery | |
Simonath | |||
Slip | Robert le Diable | ||
Snip | |||
サンキスト 1944 鹿毛 FNo.3-l |
*ミンドアー 1922 鹿毛 |
Spearmint | Carbine |
Maid of the Mint | |||
Lady Orb | Orby | ||
Lady Edgar | |||
フロラヴアース 1936 鹿毛 |
*シアンモア | Buchan | |
Orlass | |||
第弐フロリスト | *ラシカツター | ||
フロリスト | |||
競走馬の4代血統表 |
掲示板
1 削除しました
削除しました ID: ggretUlg/u
削除しました
2 ななしのよっしん
2016/02/14(日) 20:55:55 ID: lN6qFESBEs
シンザンが消えた!も有名だけどこっちも消えました。
シンザンはミハルカスの加賀の妨害があってやむを得ず外に出したんだけど、こちらは完全に逸走。
ノットナウケイトのエクリプスステークス(コアな話題だが)に近いものを感じる?
3 ななしのよっしん
2016/05/07(土) 14:04:23 ID: pSMCmIzaHD
記事作成者乙です。
20年前程に競馬のイロハを教えてくれた師匠がガーネツトの馬主関係者と知り合いだったので
本以外のエピソードは事細かく教えてくれました。
wikipediaのエピソード部分まで一緒に記載してくれるとは有難いです
(※wikipediaでの加筆・訂正は私がたまーにしてます)
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最終更新:2024/04/26(金) 01:00
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