フエアーウインとは (フェアーウインとは) [単語記事]

フエアーウイン（Fair Win）とは、1959年生まれの日本の競走馬。栗毛の牡馬。

勝ち馬より2着同着の方が有名な気がする1962年のダービーを制した、令和現在、青森産馬最後のダービー馬。皐月賞馬ではない。

主な勝ち鞍
 1962年：皐月賞、東京優駿(八大競走)

概要

父*ゲイタイム、母*フエアハネー、母父 Fairwayという血統。
父はエリザベス2世の所有馬で、1952年の英ダービーで斜行の被害を受け2位入線、異議申し立てをすれば通ったはずなのにゴール後放馬して脱走してしまったためチャンスを逃し着順通り確定してしまい2着という逸話で知られる。引退後は喘鳴症のため種牡馬として日本に輸出され、青森で繋養。フエアーウインとメイズイの2頭のダービー馬を輩出するなど活躍した。
母はイギリスで6戦未勝利だが、2歳上の全兄に英チャンピオンS・ジュライCなどを制したHoney wayを持つ良血馬。1953年に輸入され、フエアーウインは第8仔。
母父はNearcoの父 Pharosの全弟で、競走馬としては兄以上の実績を残し、種牡馬としても大成功したものの、その系統は兄の系統の大繁栄に駆逐されてしまった。

1959年 4月10日、青森県上北郡七戸町の濱中牧場で誕生した青森産馬。なんかnet keibaでは浦河町産にされてるけど。なんで？　当時の青森は北海道にひけをとらない馬産地だったが、60年代後半ぐらいから徐々に衰退していくことになる。
オーナーは天皇賞馬トサオー、南米に遠征した記録で知られるハマテツソなどを所有した溝本儀三男（昭和部品社長）。

なお馬名の発音は「フェアーウイン」であり、当時の中央競馬では馬名に小文字が使えなかったので大文字表記だが、当時の雑誌などでは「フェアーウイン」表記も使われている。

※この記事では馬齢表記は当時のもの（数え年、現表記＋1歳）を使用します。

公正なる勝利へ

尾形藤吉の門下生である東京競馬場・松山吉三郎調教師に預けられたフエアーウインは、1961年 9月3日、東京・芝1200mの新馬戦で野平祐二を鞍上にデビューしたが、勝ち馬から離されて5頭立て3着。中1週で向かった折り返し新馬戦をレコード勝ちして勝ち上がる。

続くオープンを2着、保田隆芳が騎乗した3歳ステークスを再びレコード勝ち、中山に移動して野平騎乗のオープンを2着、保田に戻したオープンを快勝、6戦3勝で3歳を終える。
3勝のうち2戦がレコードと素質は明らかな一方、フエアーウインは気難しいところがあったそうで、負けたり勝ったりの戦績にはそうした気性が影響していたのかもしれない。

3ヶ月休み、明けて4歳となり新たに高橋英夫騎手を迎え、3月の中山から始動。芝1600m、芝1800mのオープンを連勝。重賞実績無しながら、この年のクラシック有力馬の一角に挙がる存在となった。

というわけで迎えた皐月賞は10戦9勝の朝日杯馬カネツセーキが圧倒的な人気で一強ムード。朝日杯2着のシモフサホマレ、キャリア僅か2戦2勝のヒシフレームと続き、フエアーウインは4番人気に支持された。
レースはカネツセーキが快調に逃げて直線、後続が殺到してきたところでカネツセーキが二枚腰を発揮、振り切って逃げ込みを図る。そこになんか大外から1頭すごい末脚で突っ込んで来た！

おお、外からなんだ！？　外から誰かさらに追い込んで参りました！
外から猛然と追い込んだ……フェアーウインです！　フェアーウイン追い込んだ！
フェアーウインカネツセーキ！

フェアーウインカネツセーキ、それから6番の……

あっ、13番のですね（ヤマノオー！）、ヤマノオーですね！　13番です！
※？◆※☆△（聞き取れず）13番のヤマノオー！（ｗｗｗ）　ヤマノオーがカネツセーキを下しました！

……実況もまさか単勝92.1倍の13番人気が突っ込んで来るとは思わず、どうやらヤマノオーのゼッケン13番を、フエアーウインの3番と見間違えたらしい。フエアーウインは気難しさが出てしまったのか、何の見せ場もなく11着であった。

気を取り直し、NHK杯は使わず東京優駿へ直行。距離不安のカネツセーキと皐月賞馬ヤマノオーが人気を分け合う中、フエアーウインは32頭立て（！）の最内、1枠1番を引いたが、前走の大敗で評価を下げ、15.2倍の6番人気。平場のオープンで勝ってただけで一線級相手ではやっぱりどうか、という感じで地味な存在となってしまっていた。
しかしカネツセーキが今回も敢然とハナを切る中、フエアーウインは内枠を活かして好位のポジションを確保。3コーナー手前で虎視眈々と外に持ち出すと、カネツセーキはやはり距離が厳しく4角で力尽き、11番人気の伏兵コレヒサがまず抜け出す。そこに外から猛然と襲いかかるフエアーウイン！　今度は実況の見間違いではない、紛れもないゼッケン1番の白い帽子である。さらに外からはヤマノオーが追いかけてきたが、残り200mでコレヒサを捕まえたフエアーウインは、残り100mで完全に抜け出し、そのままヤマノオーの追撃も振り切って栄光のゴールへと飛び込んだ。

というわけで栄えあるダービー馬、世代の頂点に立ったフエアーウイン。……だったのだが、このレースはヤマノオーとコレヒサの2着争いが長い写真判定でも決着つかず、ダービー史上唯一の2着同着という結果になったことの方が有名かもしれない。フエアーウインの勝利は、6番人気という地味なポジションからの内枠先行好位抜け出しという派手さに欠ける勝ち方で、なんか地味な馬が地味に勝ったダービーみたいな扱いになってしまった。皐月賞の実況呼び間違いといい、なんかそういう星の下に生まれた馬だったのだろうか。
現代だったら皐月賞の実況呼び間違い事件の時点でネットで弄られまくり、その後ダービーを勝ってネタ馬から名馬へ！っていうダノンデサイルみたいなルートを辿ったかもしれないのになあ。

地味なダービー馬という評価をその後の戦績で払拭できれば良かったのだが、残念ながらこの後のフエアーウインの成績に語ることはほとんどない。秋の菊花賞は17着、有馬記念は10着に撃沈。この年の啓衆社賞最優秀4歳牡馬は貰えたが、皐月賞馬ヤマノオーも秋はパッとせず、菊花賞はダービー21着だった13番人気の伏兵ヒロキミが勝ったことによる消去法的な受賞だったことは否めない。
古馬となった1963年もオープンで2勝を挙げたが、重賞ではAJCC3着、アルゼンチンJCC3着、日本経済賞3着。複勝圏と言えば聞こえは良いが、どれも少頭数で勝ち馬からは離されての結果……とパッとしないまま、10月の中山のオープン7着を最後に現役引退。結局地味なダービーだけの一発屋という感じのままターフを去った。通算20戦8勝。

引退後は種牡馬入りしたものの、ほとんど牝馬を集めることすらできず、産駒は数えるほどで活躍馬は全く出なかった。1973年、15歳で死亡。その血は残っていない。
前述の通り、1950年代には5頭のダービー馬を出した青森県の馬産もこの後は衰退していき、このフエアーウインが最後の青森産ダービー馬となっている。

競馬史の中でもほぼ忘れられたダービー馬フエアーウイン。故郷の濱中牧場もとっくの昔に競走馬の生産からは撤退してしまっているが、地元七戸にとっては町が生んだ栄光のダービー馬であることに変わりはなく、現在は1957年のダービー馬ヒカルメイジとともに、道の駅しちのへに立像が飾られ、馬産地・七戸の栄光を伝えている。

血統表

*ゲイタイム 1949 栗毛	Rockefella 1941 黒鹿毛	Hyperion	Gainsborough
			Selene
		Rockfel	Felstead
			Rock lif fe
	Da ring Miss 1939 栗毛	Felic it ation	Color ado
			Felic ita
		Venturesome	Sola rio
			Orlass
*フエアハネー 1943 栗毛 FNo.9-h	Fairway 1925 鹿毛	Phalaris	Pol ymelus
			Bromus
		Sc apa Flow	Chau cer
			Anchora
	Honey Buzz ard 1931 栗毛	Papyrus	Tracery
			Miss Matty
		Lady Peregrine	White Eagle
			Lisma