ブルーノ・フォン・クナップシュタイン(Bruno von Knappstein)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
ヘルムート・レンネンカンプの分艦隊指揮官から転じてラインハルト・フォン・ローエングラム直属の部隊を率いることになった若き大将級の提督の一人。石黒監督版OVAにおける艦隊旗艦は<ウールヴルーン>で、赤みがかった髪に生真面目な(悪く言えば神経質そうな)外見の青年としてデザインされている。
同じレンネンカンプ麾下の出であるアルフレット・グリルパルツァーとともに「次代の双璧」として期待をかけられていたが、不運にもロイエンタール叛乱事件に巻き込まれ、戦場に命を落とすこととなった。
原作での初登場はグリルパルツァーと同じく”大親征”より。旧レンネンカンプ艦隊を二分した片方の指揮官・大将として登場した。石黒監督版OVAでは、レンネンカンプの葬儀直後にグリルパルツァーと揃ってミッターマイヤーに復仇戦を願いでたシーンからの登場となっており、”神々の黄昏”作戦時の陽動作戦での台詞での言及を除けば、同作戦でレンネンカンプの参謀長として既に登場していたグリルパルツァーに比べて遅くなっている。
マル・アデッタ星域会戦では前衛にあり、敵後方への繞回運動を開始したファーレンハイト艦隊の行動を隠す陽動として後退するグリルパルツァー艦隊に代わって回廊内に突入した。しかし狭い空間の中、精確な射撃で帝国艦を屠る同盟軍に前進を阻まれることになる。ファーレンハイトが繞回を果たしたのちには、回廊を迂回して帝国軍後方に向かう同盟軍本隊の後背を衝ける位置にいたものの、同盟軍が回廊内の機雷群による時差爆発戦法によって遅滞作戦に出たために対処に追われ、ついに回廊突破を果たし得なかった。
その後石黒監督版OVAでは回廊決戦にも顔を見せているが、こちらでは目立つ活躍は挙げていない。その後、新領土総督府の成立に伴いグリルパルツァーとともにロイエンタール元帥の麾下に入る。
ロイエンタール元帥叛逆事件においては、はじめロイエンタールに従うことを拒否し官舎で軟禁状態に置かれていたが、ウルヴァシー事件の調査ののち戻ってきたグリルパルツァーに誘われ、結局戦闘中の裏切りで戦功を挙げることを前提にロイエンタールの麾下で戦うという過ちを犯してしまう。しかし、この過ちが表に出ることはついになかった。
第二次ランテマリオ会戦の中盤、11月29日6時9分。ミッターマイヤーの猛攻の前に戦線を維持し得なくなった彼の部隊は瞬く間に崩壊。彼の旗艦<ウールヴルーン>も敵弾の直撃を受け、撃沈されたのである。
「ばかな……こんな、こんなばかな話があるか!!」[1]
彼は、「この内戦において、もっとも採算(わり)に合わない死に方」をすることとなった。彼は裏切りを決意しつつも、ついに実行することも出来ず、不本意にも宇宙に散ることとなったのである。
しかし、皮肉にも彼の名誉はその死によって救われることとなる。後に裏切りを実行したグリルパルツァーは二重の背信を咎められ後世にその汚名を残すことになったが、戦死したクナップシュタインは階級の剥奪すら行われずにすんだのである。そしてグリルパルツァーの裏切りの際、もっとも激烈に反撃したのがクナップシュタインの死を悼む部下たちであったことも、また皮肉かもしれなかった。
名有りの部下としては、参謀長ヴィーゼンヒュッター少将と副官レーゼル大尉の二名が存在する。いずれも石黒監督版OVAのオリジナルで、ヴィーゼンヒュッターは灰色の髪をした壮年の、レーゼルは黒髪の若い軍人である。
経歴の項目でも書いたように、司令官の決断を知らなかった部下たちは彼の死後のグリルパルツァーの裏切りに反感を抱き、突然の背信命令に混乱するグリルパルツァー艦隊に強かな打撃を与えた。このことは、クナップシュタインが部下の士心を得ていた証拠といえる。
彼はヘルムート・レンネンカンプの部下として出世してラインハルト麾下に転じた新進気鋭の提督であり、レンネンカンプの教えに忠実な正統派の用兵家であると評される。
明確な参加戦闘が少ないゆえ、その実力の程について具体的に原作で触れられることも少ないのだが、例えばマル・アデッタ星域会戦でファーレンハイトの行動を隠す陽動として動き、呼応して戦う役目を任せられたことは用兵家としての貴重な経験になるだろう、とされており、彼への評価のほどが窺える。また、回廊突入時に敵の集中射撃を受けて混乱したものの艦隊の秩序を失わずに持ちこたえることができていた点も、「むしろ非凡」と評価されている。
石黒監督版OVAでは彼の指揮する描写が増量されており、死の間際にミッターマイヤーの猛攻にさらされた際、戦力と速度の圧倒的な差によって戦線を維持できず混乱している中でも「各部隊ごとに100隻単位の小集団にわかれて密集隊形を取り、連携しつつ敵の分断を図れ」と具体的な指令を発している姿が見られる。もっとも、艦隊を再編しようとするその努力も虚しく、偉大すぎる名将の前に彼は命を落としたのであるが。
僚友グリルパルツァーとは「次代の双璧」として期待される仲だが、互いをライバル同士として見ていた節があり、石黒監督版OVAでもグリルパルツァーとの競争心を思わせる台詞を放っている。しかし、同じ立場の人間として共に行動していることも多く、裏切りを使嗾された時など、「なにしろ、卿とちがって、おれは無学者。あまり複雑な理論は、理解しかねる」などと皮肉を言う場面も見受けられた。ところで一応「フォン」がついてる人が平民相手に自称無学者ってどうなの、って思ったけど、食い扶持稼ぐために軍人やってるって公言してる貴族出身の上級大将がいたから何の問題もなかったよ
人格的には「いささか清教徒的なきまじめな性格」と評される。
その生真面目さゆえにグリルパルツァーの誘いで裏切りを決断した後もその行動に釈然としない思いが残り、能力を発揮しきれずに戦死することになってしまったのである。そもそも誘いを受けた時点でも「ほかに選択の余地もないように思えた」ために同調することになってしまったという経緯があり、グリルパルツァーへの同調という形であったために戦闘中いつグリルパルツァーが裏切るのかと気に掛け続ける羽目になってしまうなど、彼には決断しきれない優柔不断さがあったとも言えるだろう。
「超越者と人間と、その双方にむけてクナップシュタインは絶叫した。時空は不幸性にみちている。積極的な叛逆者でもなく、それにたいする積極的な背信者でもない彼が、なぜこんな無意味な戦いで、誰よりもさきに死ななくてはならないのか」という彼の叫びは、彼という人間自体を象徴するものであったかもしれない。
掲示板
31 ななしのよっしん
2021/02/26(金) 15:46:05 ID: dsJxcIElJW
>>29
そう考えると、大将閣下の個人旗艦というのは、旧王朝時代は最前線にそうそう出ないから成立していた習慣なのかもね。
クナップシュタインみたいな前線指揮官に個人旗艦を下賜すると無用な縛りが生じるともいえそう。
とはいえ、脱・貴族社会を国是とする軍事政権としてのローエングラム王朝においては、爵位に変わる臣下の功名心を刺激する材料だし、廃止も難しそう。
>>30
ヴァルハラでのロイエンタールとクナップシュタインも、そんな会話してそうだな。
32 匿名希望
2024/10/18(金) 14:26:47 ID: LIwuatJg/E
フジリュー先生の描くクナップシュタインは、中々のイケメンですね。
33 ななしのよっしん
2025/12/03(水) 01:18:04 ID: EwTKAORFML
密約の出典は直接にはメックリンガーの回想録かなにかだと思う。あとはクナップシュタインがメモか何かを遺していそう。口外しないための代償行為で直言していないにしても仄めかす程度に記録していたとか。
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最終更新:2025/12/13(土) 01:00
最終更新:2025/12/13(土) 01:00
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