ファンタジア(fantasia)とは、
- ファンタジー(fantasy)のイタリア語
- 幻想曲 - クラシック音楽のジャンル
- ファンタジア - ディズニー映画。詳細は下述参照。
- テイルズオブファンタジア - テイルズオブシリーズの第1作
- 富士見ファンタジア文庫 - KADOKAWA(富士見書房)のライトノベルレーベル
- ネクロファンタジア - 東方Projectの楽曲
- ゆかりんファンタジア - 6のアレンジ曲
- pop'n musicの楽曲 - Fantasia(BEMANI)
- pop'n musicの20作目のサブタイトル
- スタジオ・ファンタジア - かつて存在した日本のアニメ制作会社
- きららファンタジア - まんがタイムきらら系列のキャラクターを使用したスマートフォン向けRPG
本項では、3.に該当するディズニー映画「ファンタジア」と、その続編「ファンタジア2000」について解説する。
ファンタジア
1940年に公開された、ディズニー3作目の長編アニメーション映画。クラシック音楽の演奏とアニメーションを融合させた、ディズニーの歴史的名作の一つに数えられる。製作:ウォルト・ディズニー、演奏:フィラデルフィア管弦楽団、指揮:レオポルド・ストコフスキー。
当初は、ミッキーマウスが主人公の「魔法使いの弟子」だけを短編映画として製作する予定だったが、制作中に構想が広がり、最終的に全8曲・上映時間2時間にも及ぶ超大作となった。あまりにも斬新すぎる発想が観客から受け入れにくかったことや、当時映画館で上映できるだけの環境が十分に整っていなかったことから、興行的には芳しくなかった。しかし、後年になって再評価されるようになり、日本でもVHSが普及するまでは何度も公開されている。現在では映像と音楽をコラボレーションした作品は当たり前のように作られているが、今から70年以上前(しかも第二次世界大戦中)にこのような作品を生み出した、ディズニーの本気が伺い知れる。
現在日本で発売されているDVDは、ウォルト・ディズニー・カンパニーの公式版やシャフトのパブリックドメイン版などがあるが、曲の解説や後述の休憩がカットされている。2011年4月には、ファンタジアとファンタジア2000の二枚組として、初のブルーレイが発売予定。
ちなみに、上記のカットされた部分は今後何らかのソフトに収録される可能性もあるが、恐らく今後一切映像ソフト化されないであろうカットシーンもある。それは「田園」の楽曲の一部で、「黒人のカリカチュアのような見た目の小さなケンタウロスが、他のケンタウロスの小間使いとして働いている」というシーン。映画上映時には存在したが、人種差別的であるため後に削除されている。
ファンタジアの楽曲一覧
- トッカータとフーガニ短調(ヨハン・ゼバスティアン・バッハ、管弦楽編曲:レオポルド・ストコフスキー)
- 前半のトッカータでは、指揮者のストコフスキーや演奏者の影絵が、後半のフーガでは楽器の演奏をイメージしたさらに抽象的な絵となって、様々な色彩に変化する。曲の重厚さと相まって、黒や暗めの色が多く使われている。ストコフスキーは映画が製作される前から、この曲をオーケストラに編曲していたが、映画ではさらに細かなアレンジを加えており、他の曲でも大胆な変更が多数なされている。
- バレエ組曲「くるみ割り人形」(ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)
- 一部の曲を削除・変更しており、「金平糖の踊り」「中国の踊り」「葦笛の踊り」「アラビアの踊り」「トレパーク」「花のワルツ」の曲順で演奏される。ティンカー・ベルの原型とも言える妖精や、セクシーでエロティックな金魚が踊り出す。特に、中国の踊りをコミカルに踊るマッシュルームが人気。
- 交響詩「魔法使いの弟子」(ポール・デュカス)
- 該当記事を参照。演奏後は、ミッキーマウスとストコフスキーが夢の共演を果たす。
- バレエ音楽「春の祭典」(イーゴリ・ストラヴィンスキー)
- 当時の学術に基づき、地球誕生から恐竜の絶滅までを描く(そのため、ジャイアント・インパクトがなかったり、恐竜は高温による植物や水の枯渇で絶滅したと解釈している)。作品自体、初演当時賛否両論を巻き起こした難解かつ恐怖や不安を煽るような曲調であるため、後述の「禿山の一夜」などと共にディズニーのトラウマとして挙げられる。ファンタジア2000と合わせて、作曲者が健在だった唯一の曲でもあり、全く違う解釈や曲順の大幅な変更をストラヴィンスキー本人は不満だったらしい。東京ディズニーランドのアトラクション「ウエスタンリバー鉄道」終盤に見られる太古の世界のモデルでもある。
- 交響曲第6番「田園」(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)
- ギリシャ神話の神々やペガサス、ケンタウロスらが登場する、オリンポス山の一日を描く。「春の祭典」とは打って変わり、曲も穏やかでいかにもディズニーらしい柔らかみのある作画が特徴。時間の関係上大きくカットされているが、第1楽章から第5楽章まで通して演奏される。
- オペラ「ラ・ジョコンダ」より「時の踊り」(アミルカレ・ポンキエッリ)
- ダチョウ、カバ、ゾウのバレリーナや、ワニのダンサー達がコミカルな踊りを繰り広げる、ギャグ満載だがよく考えればかなりシュールな作品。特に後半、ワニのリーダーがカバのバレリーナに惚れてしまった辺りからは腹筋崩壊の連続である。ダチョウやカバのバレリーナは、時々東京ディズニーランドのショーやパレードに登場する。
- 交響詩「禿山の一夜」(モデスト・ムソルグスキー、編曲:レオポルド・ストコフスキー)
- 原曲のイメージにとても忠実だが、魔王チェルノボグと彼の闇の力で冥界から呼び集められた死霊や魔物が見せるおぞましい饗宴は、スティーブン・スピルバーグ監督が幼少期に見た時に恐ろしさで泣き出したという程、ディズニー屈指のトラウマとして名高い。チェルノボグは、ディズニー・ヴィランズとして東京ディズニーランドのショーにもよく登場する他、「キングダムハーツ」でもファンタジアの魔人として、ソラ達の前に立ちはだかる。なお、編曲はリムスキー=コルサコフ版が有名であるが、本作品はストコフスキー版を用いている。
- 歌曲「アヴェ・マリア」(フランツ・ペーター・シューベルト、管弦楽編曲:レオポルド・ストコフスキー)
- 禿山の一夜から、演奏が続いたままこの曲に繋がっていく。陽の光と教会の鐘で弱ったチェルノボグ達が眠りに就き、森の中を進みながら巡礼する修道士の行列が耐えることなく続き、木々をくぐり抜けた彼らの先に待っていたのは、神々しいまでに美しい夜明けと日の出であった。恐らく子供の観客にとっては退屈かもしれないが、大人になって初めて描写の素晴らしさがわかると思われる感動的なフィナーレで、ファンタジアは幕を閉じる。
この他にも、映像・演奏ともに完成されていながら、時間の関係でカットされた楽曲として、クロード・アシル・ドビュッシーの夜想曲「月の光」(ベルガマスク組曲より)がある。こちらは、別の曲を入れ直して1946年の長編アニメーション映画「メイク・マイン・ミュージック」に挿入されたが、後にオリジナル音源を入れたバージョンが、一部のDVDではファンタジアの特典映像として収録されている。
また、日本で発売されているDVDではカットされた映像として、春の祭典と田園交響曲の間にサウンドトラックの紹介映像がある。この映像化されたサウンドトラックは、縦に細長い棒のような形をしているが、楽器が演奏されるとそれぞれの楽器に応じて様々な形や色に変幻自在の活躍を見せる。東京ディズニーランドでも、かつてファンタジーランドにあったアトラクション「ミッキーマウス・レビュー」(現在は「ミッキーのフィルハーマジック」にリニューアル)のプレビューに登場しており、そちらの記憶が強い人も多いのではないだろうか?
ファンタジア2000
2000年に公開された、60年ぶりになるファンタジアの続編(正確には1999年12月にニューヨークプレミアで先行上映)。製作総指揮:ロイ・エドワード・ディズニー、演奏:シカゴ交響楽団、指揮:ジェームズ・レヴァイン(魔法使いの弟子のみ、「ファンタジア」と同じ)。
ウォルト・ディズニーは生前、十数年ごとに曲を少しずつ入れ替えて新しいファンタジアを作る構想を練っていたが、実現には至らなかった。それから半世紀以上経ち、ウォルトの甥、ロイ・エドワード・ディズニー(ウォルトのアニメーション製作をマネジメント面で支えた兄、ロイ・オリヴァー・ディズニーの息子)が中心となり、新たなるファンタジアを創りだした。
通常のスクリーンの10倍近いIMAXシアター(建物に直すと約4階建て分)限定の上映だったため、日本でも実際に映画館で鑑賞した人は少なかったと思われる。テレビ画面ではなく、IMAXの桁外れに超巨大な映像で見ないと本作の真価はわからないという声もあり、一般的な知名度の低さも合わせて、まさにもっと評価されるべき隠れたディズニーの名作である。前作に比べて上映時間は75分と大幅に短くなっている。
ファンタジア2000の楽曲一覧
- 交響曲第5番「運命」(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)
- 蝶のように舞う三角形の目まぐるしい動きが、IMAXシアターならではの迫力となって観客の度肝を抜くプロローグ的な作品。カラフルで明るい色彩の善が、膨大な数で迫ってくる漆黒の悪を打ち破る構図をしており、前作のトッカータとフーガニ短調に比べてストーリー性を持たせている。曲自体は非常に短く、第1楽章の冒頭からいきなり再現部に入るため、3分にも満たない。
- 交響詩「ローマの松」(オットリーノ・レスピーギ)
- ローマ三部作の中でも、オーケストラで最も人気の高い作品(吹奏楽では「ローマの祭り」の方がポピュラーだが)。全4曲中、2番目の「カタコンブ付近の松」を除く、「ボルゲーゼ荘の松」「ジャニコロの松」「アッピア街道の松」の3曲が使用されている。星の光によって空を華麗に飛ぶクジラの親子の描写を中心に、クライマックスの「アッピア街道の松」では、何十頭にも及ぶクジラの大群が北極海から森や雲を越え、最後は宇宙へと飛び出していく。
- ラプソディ・イン・ブルー(ジョージ・ガーシュウィン、管弦楽編曲:ファーディ・グローフェ)
- 日本でも「のだめカンタービレ」などでお馴染み。冒頭でクラリネットのソロが一本の線となって、徐々に1930年代のマンハッタンの町並みを描いていく。ビッグバンドのドラマーを夢見る青年、失業したサラリーマン、塾ばかり通わされて両親と一緒にいるひとときが欲しい女の子、愛犬の方が大事で奥さんに虐められる中年男の4人を中心に、街の人々の悲喜劇を時にはコミカルに、時にはシリアスに展開され、ラストでは主役の4人はめでたく夢が叶って大団円となる。
- ピアノ協奏曲第2番(ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチ)
- アンデルセンの童話「すずの兵隊」を元に、「人魚姫」(「リトル・マーメイド」)同様、悲劇で終わる原作をハッピーエンドにアレンジした作品。錫でできた片足のおもちゃの兵隊は、カラクリ時計のバレリーナが自分と同じ片足だと思って恋をする。しかしバレリーナに横恋慕するびっくり箱が邪魔をする。主題部・再現部と展開部の曲のギャップが激しく、まさにこのアニメーションのためにあるような独特な構成に仕上がっている。
- 組曲「動物の謝肉祭」より「終曲」(カミーユ・サン=サーンス)
- 個性豊かな小曲が揃った本曲の中から、これまで登場した動物たちが大集合するフィナーレのみ使われている。一糸乱れることなく規律正しく舞う6羽のフラミンゴに対し、ヨーヨーを手に入れた別の1羽が遊び出す。6羽は自分達と同じ動きを強制させようとヨーヨーを没収するが、手痛い反撃を食らうハメになるなど、短いながらも風刺の効いた短編。
- 交響詩「魔法使いの弟子」(ポール・デュカス)
- 前作と全く同じだが、デジタルリマスターによって映像がより鮮明になっている。ストコフスキーとの対面後、ミッキーはレヴァインとも共演。次に登場するドナルドダックに出番を知らせる間に、レヴァイン自ら威風堂々の解説を行っている。
- 行進曲「威風堂々」(エドワード・エルガー)
- 旧約聖書のノアの方舟を元にした、ドナルドダックが主役のお話。第4番・第2番・第1番・第3番の順番に曲が使われており、卒業式などでおなじみの第1番はラストに再び歌付きで演奏される。ノアから動物たちを箱船に案内する仕事を任されたドナルドは、洪水の直前になって愛妻のデイジーダックが乗り遅れたと勘違いしてしまい、途方に暮れる。一方、実は既に箱船にいたデイジーもまた、ドナルドが逃げ遅れて洪水に巻き込まれた光景の目の当たりにして(もちろん実際には助かってる)、絶望のどん底に叩き落とされる。一夜明け、オリーブの葉を持ってくる前にいちゃつくハトのバカップルにリア充爆発しろとブチ切れたり、陸地が見つかってからも箱船から外に出るゾウに踏みつぶされたり酷い目に遭いながらも、何とか役目を果たしたドナルド。けれども、愛するデイジーはもういない。失意のドナルドは、デイジーとのツーショット写真が入ったロケットを見つける、とその時ドナルドの目に映ったのは…。一応ギャグがメインのコミカルな内容で、選曲の時点で既にオチが読めるにもかかわらず、ラストシーンでは涙腺崩壊して号泣する人が続出。エンドクレジットでも最後にこの曲が使われるなど、「ファンタジア2000」一番の傑作と呼び声が高い。必見。
- バレエ組曲「火の鳥」(イーゴリ・ストラヴィンスキー)
- 組曲の中から、後半の「王女たちのロンド」「魔王カスチェイの凶悪な踊り」「子守歌」「終曲」が使われている。雪深い森の中、春の訪れを知らせる
ディズニー版春ちゃん妖精スプライトが、草や花を目覚めさせて辺りは緑に包まれる。しかし草木も生えない火山の中に眠る、炎と溶岩の化身である火の鳥の怒りに触れ、焼き尽くされた大地は焦土と化す。悲しみに暮れるスプライトは、バンビの父を彷彿させるヘラジカに励まされ、彼女の流した涙は雨となって、再び大地に命が蘇っていく。スタジオジブリと親交の深いウォルト・ディズニー・カンパニーは、「もののけ姫」のラストに構想を得て、死と再生の物語を創りだした。スプライトは、実は東京ディズニーランドのパレード「ジュビレーション!」にも登場するが、作品の知名度の低さからディズニー通でも知らない人が多い。
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