SCP-4804 単語

カクウノカニク

8.8千文字の記事

SCP-4804とは、シェアード・ワールドSCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。

名は『架空の果肉( The Pulp is Fictional ) 』。

はじめに。このアノマリー異常性の多面的な性質により、いくつかの競合する文書が存在しており、本報告書においてはそれらのうち最も広く受け入れられている4つを公式文書として表することに対する賛否とともに掲載するという体裁をとっている。では、順に見ていこう。

論文01:カルヴィン博士の提言

SCP-4804
基本情報
OC Keter
収容場所 サイト-32の防音収容室
著者 notgull
作成日 2019年3月12日
タグ jam-con2019
k-クラスシナリオ
反ミーム
敵対的
文書
未収容
異次元
精神
食物
リンク SCP-4804exit
SCPテンプレート

SCP-4804は世界の人口の約0.7%を及ぼしている現象であり、この下にある人はオレンジは存在しないと信じている。彼らは、オレンジの木と果実にとどまらず、ジュース洗剤ポップカルチャーにいたるまでの全てのオレンジに関係するものを認めなくなる。この内容は「オレンジリンゴの変種である」というや、「オレンジの存在を疑問視する」レベルまで様々である。

SCP-4804の発生は不明であり、拡散の分析ではミーム災害か伝染性のアノマリーであろうと推定されている。実験では伝染性は否定される一方で、フィールドエージェントによる調では伝染性を裏付けている。この現象の発見が遅れた背景に、SCP-4804の閉鎖的な農地域で広まったことが理由として上がっている。

者の一部はサイト-32の防音収容室に収容されている。財団はこの被者になにをすべきか決めあぐねている。

この論文の長所:

この論文の短所:

  • SCP-4804の発見の欠如は孤立のせいではないと考えられている。
  • ラヴクラフトの "オレンジ"文書について言及していない。
  • 文書は多くの点が曖昧のままである。
  • テレサインデントに言及していない。

最初に読んだのはカルヴィン博士の論文である。

財団の評価者たちは、カルヴィン博士の論文を、SCP-4804の効果と拡散の様子を説明していると評価しているものの、「SCP-4804の発見が遅れたのは被者が孤立しているからではない」と述べている。SCP-4804がミーム効果である場合、そのが被響コミュティからの孤立によって全に遮断されるというわけではないというのが財団の見立てなのだろう [1]。また、ラヴクラフトの『オレンジ』文書とテレサインデントなる事案に言及していないこと、そして多くの点で曖昧であると述べている。SCP-4804を説明する上で、評価者はそのラヴクラフトの『オレンジ』とテレサインデントの説明は不可欠と考えているのだろう。

ともあれ、4つの論文が存在している本報告書において、ひとつだけで議論をするのは不可能に近い。とりあえずのまま置いておいて、次の論文を読んでいこう。

論文02:ミダエス博士の提言

SCP-4804はアメリカホラー作家H.P.ラヴクラフトによって不明な時期に執筆された、『ザ・オレンジ』と題された短編小説である。内容は、青年たちのグループ洞窟内を探索し、別の時間軸へと抜け出す。そこには、『オレンジ』と名付けられたオレンジ色の実体が自分たちの次元へと侵入を試みている、というもの。物語ラストは、グループの一人だけが、彼だけに見える最初のオレンジ世界に入るのを見る前に脱出する、というもの。

この小説の15%以上を読むと、その読者の周囲30m以内に1 - 9個のオレンジ自然発生し、読者オレンジという果実はラヴクラフトが作成したフィクションの作品であると確信する。そして、たまに知覚不能な実体、SCP-4804-2が出現する。

オレンジラヴクラフトの作品と認識した人物は、「オレンジリンゴの変種である」というや、「オレンジの存在を疑問視する」レベルを開始する。

SCP-4804-2は知覚不能であるが、オレンジフィクションであるという情報の媒介を行い、人間内出血を引き起こさせる力を持つと考えられている。

この小説ラヴクラフトの死後に発見され、不特定多数のパルプ・フィクション誌に掲載される。そしてこの物語は他の作者によってしばしば盗用されたために高い曝露率を持ったと考えられている。長期間検出されなかった理由は不明であり、反ミームが疑われている。

財団は、SCP-4804のを取り除くための反ミーム兵器開発中である。

この論文の長所:

この論文の短所:

つづいて読んできたのはミダエス博士の論文である。

カルヴィン博士の論文と異なり、ミダエス博士の論文ではSCP-4804は具体的なもの――ラヴクラフトの書いた『オレンジ』という小説そのものになっている。また、カルヴィン博士の論文では出てこなかったSCP-4804-2実体についても言及がある。一方で、カルヴィン博士の論文で『オレンジ』と同じく摘されていたテレサインデントについての言及はやはり欠している。

評価ポイントとして、カルヴィン博士の提言では『被者は皆田舎者だから伝わらなかったんです』という雑な推論ではなく、『反ミームの可性がある』と踏み込んだ点であろう。反ミームと仮定すれば知覚不能実体についても自然にその存在は受け入れやすい。これは評価者も高く評価している。一方で、今でこそラヴクラフトといえば有名な小説家ではあるが、生前のラヴクラフト名な三文雑誌の1ライターにすぎない。同業者がそれを自作盗用した程度でSCP-4804の現実での膾に理由付けができるのか、と問われてしまっている。もうひとつ、SCP-4804-2の説明がラヴクラフトの解釈に基づいていると表現されているのも気にかかる。

論文03:ウェストリン博士の提言

SCP-4804は、2019年3月11日以前のある時点で発生したCK-クラス:再構築シナリオである。要は、2019年3月11日以前のどこかのタイミング歴史が書き換えられてしまったのだ。その結果として、これ以前のタイムラインでは存在しなかった『オレンジ』という果実ができあがった。一部の人々はこの現実改変が何らかの形で作用しなかったのか、オレンジ実在しないとして、その考えを正当化しようと様々な根拠を述べる。財団は特別収容プロトコルとして、このような人々にはオレンジに関する偽の記憶を埋め込むことを行う。

この現実改変を引き起こしたと見られている性質不明の実体SCP-4804-1は、クラスW記憶補強を摂取したエージェントからは不定形のオレンジ色の非晶質実体であると報告されている。この実体は不定の間隔でオレンジを出現させるため、特殊なしで容易に知覚でき、かつ長く知覚している人はオレンジ実在しないことを悟るようだ。

SCP-4804が起きた正確な日付は判明していないが、財団はH.P.ラヴクラフトがSCP-4804-1をテーマにした小説オレンジ』を執筆していることから、その命日である1937年3月15日より前であると推測している。また、[データ編集済み]が起動された1927年9月19日はSCP-4804の起きた最も可性の高い日であると考えられている。

この論文の長所:

この論文の短所:

3つに読んできたのはウェストリン博士の論文である。

先行する2つの論文と異なる点として、まずSCP-4804事Euclid定していることが挙げられよう。現実改変は財団の守るべき世界を根底から変更する事でありながら、とりあえず何をする必要もない、というように考えているようだ。特別収容プロトコルでは『SCP-4804に免疫を持つ人たちには、オレンジ実在性を信じ込ませるための偽の記憶を埋め込む』ことになっている。財団が現実改変を追認する形を取っているのだ。また、SCP-2000 - 『機械仕掛けの神』が起動された日をSCP-4804事が起きた日と仮説を提示している。

SCP-4804のを受けない者が高いヒューム値を持つことについて言及していることがこの論文では評価点となっている。言わずもがな現実改変に対する抵抗力があることを示しているからだ。また、先の2論文では示されていないテレサインデントについての言及が部分的に存在することも評価されている。この文章からするに、テレサインデントとはSCP-4804事によってオレンジが出現した事件なのだろうか?

この文章はいろいろと奇妙である。オレンジを知覚できない人に、オレンジ記憶だけを埋め込んだところで、問題は解決できない。むしろ、「昔は存在していたはずのオレンジ」を知覚できないのだから、ますます混乱することが予想されよう。また、歴史が改竄されたことを明確に理解していながら、その現状を追認している点も奇妙である。本来現実改変は財団世界において守るべき世界を根底から壊してしまう一大事なのである。「果物がひとつ増えただけだからあるべき現実として受け入れる」のだろうか?通常であればオレンジの出現は現実改変のあったという跡として捉え、むしろ別の現実が危険な方向に変わっていないか探るはずである。

そして最後に、やはりSCP-4804を引き起こした実体についての説明はラヴクラフトのそれの引用であり、事実に基づいていないという。しかし、なぜウェストリン博士にしろ、ミダエス博士にしろ、SCP-4804を引き起こした実体についての説明に三文雑誌の1ライターのそれを引用したのだろうか。

論文04:O5-1の提言

SCP-4804
基本情報
OC Keter
収容場所 未収容
著者 notgull
作成日 2019年3月12日
タグ jam-con2019
k-クラスシナリオ
反ミーム
敵対的
文書
未収容
異次元
精神
食物
リンク SCP-4804exit
SCPテンプレート

SCP-4804は基底現実に立ち入ろうとする敵対的次元実体である。SCP-4804の的は不明だが、人間の全個体を征せんとしているようだ。このSCP-4804はふたつの形態を基底現実で取りうる。

ひとつはオレンジと呼ばれる柑橘類果物。これを消費することで、その人々はSCP-4804に『感染』してしまい、SCP-4804は彼らを物理的に支配できる。大多数の人はオレンジに『感染』してしまっている。

他方で、一部の人々はこのSCP-4804に免疫を持っており、オレンジを視認できない。代わりに、SCP-4804-2と呼ばれる不定形の反ミーム実体を認識する。人間の精神ではSCP-4804-2の全な形態を理解し得ないため、撃した人は常に合理的な説明付を試みる。

2019年3月11日、財団定名称:テレサインデントという事件が起きた。これは、イリノイ州、SCP-4804-2がの下に降りてきた事件である。大多数の人はこれを知覚できなかったが、免疫のある人はそれを『神』や『オレンジ』、その他様々に形容し、あわてて逃げた。この集団ヒステリーはインターネット上で拡散され、財団のWebクローラー情報削除する必要に迫られた。

財団はH.P.ラヴクラフトが『オレンジ』と題した短編小説を書くことが出来たため、SCP-4804に免疫を持っていたことを推察している。

SCP-4804は収容されていない。そのため、財団職員全員はSCP-4804のを受けていないかチェックされている。また、そのための防衛システムを構築している。――にもかかわらず、SCP-4804を緊急の脅威とする要請は保留されており、直ちに機密扱いとする要請は却下されている。

この論文の長所:

この論文の短所:

[O5]

[12-1の投票により編集されたデータ]

最後はまさかのO5-1の論文である。

  • SCP-4804 - 基底現実に立ち入ろうとする敵対的な次元実体。人によって以下のどちらかに見える
  • SCP-4804-1 - 柑橘類果物オレンジ
  • SCP-4804-2 - 不定形の反ミーム実体。実体を全に理解することは出来ないので、それを見た人は合理的な理由付けをしようとする

オレンジは食べるとSCP-4804がその食べた人を支配下におけるというとんでもないとして描かれている。しかし、一部の人はSCP-4804を見たときオレンジと認識せず、その本当の正体を見ることができる。ただし、正体は人間にとって理解できないものであるらしく、それを見た人は合理的な理由付けをしようと試みる。

そして、この論文はラストで奇妙なことが書かれている。短所が「全会一致で」編集され、折りたたまれており、開くと「12-1の投票により編集された」データであると記される。そして、「O5-1O5評議会メンバーではない」とも。

はたして、O5-1は狂ってしまっているのか、なんならば、O5-1こそは虚偽を記しているのか?いや、読者らもそうは考えてはいまい。財団の理念を鑑みればわかることがあろう。ということで、ここまでの4つの論文をもとに考察をしていこう。

SCP-4804の正体考察

SCP-4804は、O5-1、そしてラヴクラフトが示唆したように、「この世界」を支配しようと「よその世界」からやってきた敵対的な実体である。ただし、大多数の人にとっては本来「この世界」に存在しないはずの果実・オレンジとして理解され、あたかも有史以来オレンジという果物はあったと刷り込まれる。これは現実改変によるものであるため、現実改変抵抗力のある人々はオレンジという果実自体の存在がないことを理解しており、SCP-4804の本来の姿を見ることができる。O5-1もその一人であり、故に彼は「オレンジ」という果物を見たことがない (ので、「オレンジと呼ばれる柑橘類果物」と表現している)。

とはいえ、SCP-4804を正しく知覚しようとしても、次元実体であるため3次元々には見たところで正しく理解できない。具体的なイメージに仮託して説明付けようとする。

ラヴクラフト小説家クトゥルフ神話という神話体系を作り上げた男であり、それゆえにそういったコズミックホラーの狂える神としてSCP-4804を知覚した。また、ミダエス博士ウェストリン博士ラヴクラフトの描写を引用することでSCP-4804を理解した気になっている。O5-1は「理解しきれないことを理解した」という点でSCP-4804視点で言えばかなりの脅威と言えただろう。

SCP-4804はもう一つ、ミーム的な伝播によって広まっているが、そのミームの媒体こそがSCP-4804の仮初の姿であるオレンジである。オレンジを出現させているというよりオレンジという形でこの世に顕現し、それを食べることで、そしてそれを食べさせるためのテレビラジオ雑誌などの広告宣伝で自身を広めているのだ。通常のミームの形式では考えにくい形をとったため、拡散は異様にく、そして財団からの発見が遅れたのである。

SCP-4804がこの世界び込もうとしたのは2019年3月11日。SCP-4804はこのとき現実に存在していなかったオレンジをあたかも過去から存在したかのように世界を作り変えた。しかし過去にわたって改変をしたことで、過去にわたって現実改変に対する抵抗力のある人達が違和感からその本質についてヒントを記すことを許さざるを得なかった。つまりラヴクラフトある意味未来に来るはずのバケモノを改変された過去タイムラインで気付いてしまったことになる。ラヴクラフトからしても3次元の住人故にSCP-4804を全には理解できなかったものの、SCP-4804の本質はうまく捉えている。ラヴクラフトの著作は自分の存在をほかの人類に気付かせる可性があるためにSCP-4804はとりあえず底的に焚書することにした。

O5-1はSCP-4804について気付いており、それゆえにSCP-4804を摘し、対応しようとした。しかしSCP-4804からしたらO5-1は脅威でこそあるが、一方でいくらでも対処しようとすればできた。なぜなら、地球70億人と言えど、敵はたかだか5000万人。全体の0.7%しか自身に気づけるものはいない。現に、カルヴィン博士もミダエス博士ウェストリン博士も、オレンジ実在する、あるいは実在するようになったという前提で論文を記述している。つまり、カルヴィン博士もミダエス博士ウェストリン博士もSCP-4804の支配下にあるのだ。

そして、それはO5評議会でさえ例外ではなく、評議会員のうちO5-1を除く全員はSCP-4804に支配されているのである。支配下の彼らはO5-1オレンジの支配下にないとしてO5から追放したのだ。管理者の記した財団の理念は以下の通りである。

人類が健全で正常な世界で生きていけるように、他の人類がの中で暮らす間、々は暗闇の中に立ち、それと戦い、封じ込め、人々のから遠ざけなければならない。


SCP財団とは - SCP財団exitより,2023/04/12閲覧

O5は暗闇には入らないことを選択した。そして、オレンジを認識しないものには理矢理オレンジの偽記憶を植え付け、概念的にオレンジを『知らない』人をなくすことで違和感を他者に伝達できないようにし、人類をSCP-4804に差し出そうとしているのだ。人類の未来はお先っ暗、ならぬお先オレンジと言えよう。

ところで、ここまで読んできては疲れていないかな?休憩に、オレンジジュースでもいかがかな。

関連動画

動画では、『2019年3月11日はSCP-4804が自分たちに対する耐性を持つ人たちがいることに気付いた日』としており、各博士の論文にある発見事例をSCP-4804が財団の力で調べあげた「自分たちの力の及ばない者がいる拠」であるとしている。

オレンジは紀元前から存在する」という偽史を信じる人類をSCP-2000再生した、というのがSCP-2000に対する言及の理由であるとも推察している。

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脚注

  1. *情報伝達はミーム媒介の有用な手段だが、財団世界に登場するミーム災害のなかには実際に情報そのものを伝達しなくても媒介されるものもいくつか存在している。代表格はSCP-3002 - 『思考抹殺計画』等。また、世界人口の0.7という数字も、被者が5000万人はいるというわけであり、被者の全員田舎にいたから広まりませんでした、というのは理はある。
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