tipbotとは、
本記事では上記の1.について記載する。
表記ゆれがあり、「tip bot」「tip-bot」と間にスペースや-が付けられることもある。また「そういったサービスの総称」として使われる場合は「tipbots」「tip bots」と複数形で表記される。
そのSNSや掲示板の他のユーザーからは単なる一アカウントであるかのようにも見える。しかしその受け答えは人間が行っているわけではなく、プログラムが自動的に返答している。すなわち、いわゆる「bot」である。
2018年2月現在、多くのtipbotがTwitter上で、またRedditやDiscordやTelegram上で稼働している。
それらの多くに共通する特徴としては、botに単純なキーワードで話しかけるだけで送金を行えてしまう事、登録などが不要であり誰でもいきなり使う事ができる事、そして面識が全くない相手だろうと「誰にでも」お金を送れてしまう事である。
例えば、安倍晋三内閣総理大臣やドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領のTwitterアカウントに暗号資産を送り付けている人も複数いる[1]。
少額を誰かに送り付けるために便利であるため、主に名前の通り「チップ」「投げ銭」「ちょっとしたお礼や賞賛の気持ちを込める」ために気軽に利用される。
おそらく2013年にアカウントが始動した「ChangeTip (@ChangeTip)」がこの分野の開拓者だと思われるが、暗号資産(当時の呼称は「仮想通貨」や「暗号通貨」)が急速に知名度を増した2017年に一気にその数を増やした。いくつかのtipbotはオープンソースで開発されており、そのソースコードを参考にして別の通貨で同様のbotを作ることも可能。
例えば「モナコインちゃんbot (@tipmona)
」という、暗号資産「Monacoin」(単位はmona)を送金するtipbotを例にとって説明すると
というコマンドを自分がツイートすると、モナコインちゃんbot (@tipmona)がそのツイートに反応して
@[自分のTwitterユーザー名] さんの[送金するMonacoinの枚数(半角数字)]monaを @[送り先のTwitterユーザー名] さんにどんどこわっしょーい!
などとリプライを返し、これでMonacoinの送金が完了する。このとき自分や送り先が何かに登録しておく必要はないし、互いに知り合いである必要もない。
他のTwitter上のtipbotの多くも同じように「tip」コマンドで送金可能であり、上記の例の「@tipmona」をそのtipbotのTwitterユーザー名に変更すればよいだけである。
もちろん自分が所持していない金額を送ることはできないので送り主は事前に「deposit」コマンドで入金しておく必要はあるし、送られた金額を使ったり別の場所に移すには「withdraw」コマンドでtipbot内から出金せねばならないが、これらの操作も非常に簡単である。
普通、銀行などで日本円などの法定通貨を送金する時は相手の口座番号を知らなければならない。何故、TwitterアカウントやRedditアカウントしか知らない相手にお金を送ることができるのか?
それは、こういったtipbotが、TwitterアカウントやRedditアカウントをまさに銀行で言う「口座番号」であるかのように見なして動作しているからである。
つまり、実際には「相手に送っている」というより「相手のアカウントの口座を作成し、その口座に送金する」という動作を行っているわけだ。
注意すべき点は、送られた相手が送られたお金をその口座から引き出してくれるかどうかの確実性はないということ。送られたことに気づかなかったり、なんだか怪しいと感じて触らなかったら、送った金額はその口座に死蔵されることになる(一定期間の経過でなんらかの処理をするtipbotもある)。
また、相手のTwitterユーザー名や送り先Redditアカウントを間違えたら、何しろbotであり自動応答なので、容赦なくその間違えたユーザー名に送金してしまう。
他にも、Twitterユーザー名を口座番号がわりにしているため、ユーザー名(@------の部分)が変わればそれまでのユーザー名のアカウントに貯められていた金額は自分のものではなくなるし、そのユーザー名を誰かが取得してしまえば、その金額は奪取されてしまう。
さらにtipbotには個人が運営しているものも多く、銀行のような信頼性があるわけではない。例えば運営者に突発的な事故・病気などが降りかかってとあるtipbotのメンテナンスが不能になったら、ある日突然そのtipbotの中に貯められていた暗号資産が取り出せなくなる、といった可能性もあるだろう。あるいはシステムに不正アクセスされて誰かに盗まれる(いわゆるGOX)というリスクもある。
これらの点を踏まえると、あまり大きな金額をtipbotから送ったりtipbotに預けたままにすることは危険である。少額のチップを送る程度に控えた方が無難であろう。
気づいた人も居るかもしれないが、上記のサービスは原理的には暗号資産でなくてはいけないわけではない。
「TwitterやRedditアカウントを口座代わりに使う」「簡単なコマンドで口座から口座への送金を可能にする」と言うところがこのtipbotというアイディアの核心部分であるので、「暗号資産ならでは」と言う部分は実はない。日本円などの法定通貨でも同様の事は技術的には可能だろう。入金(depositコマンド)の時に表示される暗号資産アドレスを銀行の専用口座にでも変更して、出金(withdrawコマンド)の時に入力する暗号資産アドレスを銀行の店番号と口座番号にでもすればいい。
しかし、法定通貨でこのサービスを行うためには制度の壁が立ちはだかる。通貨のやり取りを仲立ちし、保存するこのサービスは言ってみれば銀行のような金融業ということになるわけで、そういった業種は法律の規制の縛りが強い。現在のようなtipbotらがそういった縛りにとらわれずに運営していける理由は、「暗号資産が法律上は通貨として認められていない」ためである。
では、既存の銀行であれば法定通貨での類似サービスに参入できるのか?というと、実は前例があり、イギリスに本拠を置くバークレイズ銀行がTwitterを介した送金サービスを始めたことがある[2]。しかしこのサービスは送る側も受け取る側も登録が必須であり、またアプリ「Pingit」との連携が必要だった[3]。さすがに銀行ともなれば「誰からでも誰にでも簡単に送れるし、そのため簡単に送り間違える事もできてしまう」というtipbotのようなゆるゆるの運営方法は取れなかったようだ。
Twitter上で稼働するタイプのtipbotの多くは、Twitter社が無料で提供するAPI機能「User Streams」を利用してリアルタイムにTwitterタイムラインを取得していた。この手法により自らのアカウントへのリプライ/メンションツイートを即座に取得し、そのツイート内に「tip」などの各種コマンドが含まれていればそれに対応したアクションを行っていた。
しかしTwitterは2018年5月16日に新しいAPI「Account Activity API」を公開、それに伴って旧来の「User Streams」は2018年8月16日に廃止するとアナウンスした[4](当初は6月16日廃止の予定だったが延期された)。
「User Streams」の廃止後にも、別のAPI「REST API」を使用してタイムラインを取得することはできるが、「15分に15回まで」(つまり実質1分に1回まで)という制限がある[5]ためリアルタイム性に劣る(コマンドをツイートしてから該当tipbotが反応してくれるまで、最高で1分待たされる)。
そのため少なくないTwitter上のtipbotが、この2018年8月16日のUser Streams廃止以後の運用について何らかの対策を迫られることになった。
中にはMonacoinのtipbot「モナコインちゃんbot」(@tipmona
)のように企業による引継ぎを募集したtipbotもある。[6]その後企業からの協力を得ることに成功したようだ。[7]
一部の運用開始時期が比較的最近のtipbotの中には、「User Streamsの廃止について事前に知っていたために元々REST APIで稼働するよう作っており、2018年8月16日以後も変わらず運用継続する」といった内容を表明しているものもある[8]。
Kotoのtipbot「ことね」(@tipkotone
)は元々User Streamsで稼働しており、当初は2018年8月16日のUser Streams廃止をもっての機能停止を告知していた。しかしその後新しいAPI「Account Activity API」への対応に成功し、停止告知を取り下げた。さらに「ことね」開発・運営者の「あかリンS」(@akarinSS
)氏は「Account Activity API」を導入するまでの過程をqiitaにて公開している。
また、XRP (Ripple)のtipbot「Tipple」(@tipxrp
)の開発者「Cryptcoin Junkey」(@cryptcoinjunkey
)氏もTippleを「Account Activity API」に対応させることに成功しており、Tippleのソースコードの該当部部分をgithubで公開している。[9]
2019年5月31日、日本の国会において「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律
」が成立した。この法律により「資金決済に関する法律」、通称「資金決済法」が改正される。
この改正によって、これまで「暗号資産交換業者」(いわゆる「仮想通貨取引所」)と比べて規制が緩かった「暗号資産の管理のみを行う業者」に対しても規制が厳格化される。tipbotの運営もこの「暗号資産の管理のみを行う業者」に該当してしまう可能性が危惧されたため、複数の日本語tipbotが運営の終了予定をアナウンスしている。
通貨名のラテンアルファベット表記順。特に記載がない場合はTwitter上のtipbotである。
※わかりやすさを優先して、通貨としての正式名称にこだわらずに知名度のある名称で並べてある。「Ether」ではなく「Ethereum」として、「XEM」ではなく「NEM」として、「XRP」ではなく「Ripple」として並んでいる。
※複数の通貨に対応したものは末尾に。
、tipmona realDonaldTrump - Twitter検索


」の記事より
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