【ミラー】荒ぶる高校球児たち

時は2098年

高野連はある重大な決定を下した。

“ボークの廃止”

高校球児の創造性を尊重するためのその決定が

甲子園を魔境へと変えたっ・・・!!

ルール改正

27.投手の投球フォームについて

規則8.01【原注】における、ワインドアップポジション、セットアップポジションでの正規の投球法、およびそれに伴うペナルティについて、全てを適用しない。
規則8.05【原注】における、ボークの定義、およびそれに伴うペナルティについて、全てを適用しない。

（2098年度改訂　高校野球特別規則より）

このルール改正により、投球フォームに対しての全ての規定罰則が事実上廃止されたことになる。
自由度が増し、投球の幅が広がったことで、これまで持て余していたマウンドをより有効活用できるようになった反面、いくつかの問題点も浮上した。

1. 怪我人が絶えない - 勝利への執念から、無茶なフォームでの投球を試みる球児が多く、投球練習で骨折するケースも珍しくない。
2. 打者に不利である - これについては高野連も認めているところであり、近く打者のフォームについてのルール変更も実施される見込みであるという。
3. 全国と地方でのレベルの格差が著しい - 地方で負け知らずであっても、甲子園一回戦に大差で敗退した高校は数知れない。選ばれた者のみがその舞台に立てるということであろうか。
4. ふざけているのではないか - 投球へのこだわりからどうしても不恰好の投球フォームになってしまう球児も多くいるため、こういった批判も多い。寝・戯・怠という特殊な三原則もおそらく影響しているものと思われる。
5. 子供が真似をしたら危ない - この苦情は特に多かったが、不思議なことに真似をして児童が怪我をしたとの報告はいまだに一件も入ってきていない。容易に真似できるものではないということだろうか。
6. プロでは通用しない - このルールは高校野球での特別ルールであるため、プロでは当然反則である。しかし選手の中には格闘家やスパイへ転身する者も見られ、高校球児の新たな進路を見出すことができたとして、評価する向きもある。また、最近ではメジャーリーガーを目指すものも現れた。

このルール改正の効果は凄まじく、上記の問題点を補って余りあるほどのものだった。
選手達の向上心は目覚しく飛躍し、現在では一日に十個以上の新しい魔球が誕生している、と言われるほどである。
試合展開もよりエキサイティングなものとなり、観客の興奮度も異常なほどに高まった。
スタンドには“白い頂き”すなわち「聖なる高み」を意味するソフトクリームのような模様をした横断幕が掲げられることが、いつしか通例になっていた。

マウンドで跳躍する彼らの活躍にはメジャーリーグも注目しており、MLB.comでも紹介された。

有名な投法

甲子園で活躍した有名な投法についてその一部を紹介する。※決して真似はしないように

変則回転投法

直立した状態のままで体全体を変則的に回転させる投法。通常回転投法に比べて遥かに打ちづらい。

ボクサー投法

両手で絶え間なくパンチを繰り出す投法。本動画に収録されているボクサー投法は、どちらかというと空手投法に近いか。

こっち見んな投法

体は一塁を向いた状態で、顔のみを三塁、二塁へと向ける投法。この投法の投手相手に盗塁を成功させた選手は皆無である。

コサック投法

ロシア出身の投手が編み出した投法。鍛え抜かれた強靭な足腰がこの投法を可能とする。

三肢独立回転投法

片足を軸足とし、右手、左手ともう片方の足をそれぞれ別々のリズムで回転させることによって打者を惑わせる投法。二肢独立は良く見る投法だが、三肢独立は甲子園でしかお目にかかれないだろう。

ゴキジェット投法

マウンドに仰向けで転がり、体を多少縮こませながらピクピクと動く投法。これを見た打者は投手が瀕死であると勘違いして油断してしまう。

バレリーナ投法

つま先立ちでくるくると回転してから、片足を大きく上げた「アティチュード」の状態で投げる投法。その優雅な様はまるで甲子園という名の湖に降り立った白鳥のよう。

開脚挑発投法

両足をがに股で大きく広げ、グラブを持った手を上げながら足をじたばたとさせて「やーいやーい」と打者を煽る投法。煽り耐性のない打者はこれだけでリタイアである。

トランスフォーム投法

仰向けの状態から起き上がり、上半身のみを後ろに回転させたのち下半身も後ろに回転させてから投げる投法。巷ではメカではないかとささやかれている。

メトロノーム投法

頭を地面に付き、倒立した状態で、揃えた両足を左右に激しく振る投法。打者のリズムを狂わせる。

キャピ☆キャピ投法

打者に背を向けた状態で両肘を曲げ、脇を閉じたり開いたりすることで球の出所を見えづらくする投法。さらに打者のタイミングをはずす効果もある。

アシガラ・スピンキック投法

頭を地面に付き、倒立しながらブレイクダンスのように回転しながら投げる。ある漫画作品を元に編み出された投法らしく、名前もその漫画からとっている。

サーセン投法

マウンド上で何度もお辞儀をする投法。打者は謝罪を受けているような気分になり、打つことをためらってしまう。

真・サーセン投法

マウンドで両膝を付き、両手を伸ばし土下座を何度か繰り返してから投げる。効果はサーセン投法と同じだが、威力は数倍といわれている。

極・サーセン投法

両足を大きく広げ固定、そのまま上半身を前後に回転することでお辞儀を繰り返す投法。これにより打者はむしろ逆に謝罪したくなるほどの恐怖を感じる。

考案したのは作者の父親である

むずむず脚投法

マウンドに仰向けで転がり、両足を大きく上げ、かゆいところを掻く投法。一見難易度は低いように見えるが、熟練者となると仰向けで転がったまま守備ができるという。

卍解投法(別名:サボテンダー投法)

体を卍の字のように折り曲げ、そのまま風車のようにぐるぐる回ってから投げる。S難度の高位技である。
実はよく見ると卍の形にはなってない。

とれたて投法

水揚げされたばかりの鮮魚のごとくビチビチと跳ね回る投法。これを修得するために、毎朝日が昇る前から築地でトレーニングをしたという。

高速3D回転投法

変則回転投法と要領は似てるが、何より速さが違う。生半可な選手ではその挙動を目に収めることすらできない。

スピニングバード投法(別名:サンジ投法)

ボールを持った手を地面に付き、片手で逆立ちをした状態で、両足を180度開脚したままぐるぐると回す投法。いつどうやって投げるのかは誰にもわからない。

その姿は、某海賊アニメに出てくるコックのような容姿に似る。

荒ぶる鷹投法

最強の猛禽類の力を借りた投法。バックスクリーンに向けて「荒ぶる鷹」のポーズを行う。

真空片手ゴマ投法

ボールを持った手を地面に付き、体を水平に保ちながら、地面に付いた片手を軸に体全体をぐるぐると回す投法。達人がこの投法を行うと、回転する体の周りに真空が発生することからこのように名づけられた。

テトリス投法

体をF字(手を抜けばTまたは凸)に曲げたまま回転する投法。名前は有名なゲームから。

サタデーナイトフィーバー投法

マウンド上で華麗に踊って見せた後、手を高く掲げるそのときに球を投げる。一見華やかで、何も悩みがないように見えるこの投法だが、終盤は鬱展開へと突入する。

アミノ式投法

伸身の前転を繰り返すアクロバティックな投法。ただし魔球は尻から出る。

横寝エアロビ投法

横に寝そべった状態で片足を開いたり閉じたりする投法。エクササイズ効果が得られる。

ヘリコプター投法

マウンドに直立し、両手を広げた体の上半身のみをぐるぐると横回転させる投法。下半身をしっかりと固定し、動かさないことがコツ。

天翔十字投鳳(別名:イエス・キリスト投法)

相手に背を向け、手を広げ十字を作り出し、首を曲げ顔を天に向ける投法。鳳凰及び神の力を借りることができる最強候補の投球でもある。南斗鳳凰拳を習得した選手、及び、信仰心高きキリシタンのみが使える奥義ともいえる投法。ただし天候が悪いと顔が痛い。

伝説のオーバースロー

かつて滅び、失われたと言われている投球法。  その使い手は、とある高校を優勝へ導いたという。

普通のオーバースローである。

名場面集

「監督・・・俺どうしても皆と勝ちたい！」
「・・・見せてみろ。お前の力を」

「貴様・・・盗塁しようとしたな・・・？」

「必殺の変形は！最後まで取っておくモンなんだよ！！」

 

　　　　　　「アイツ、序盤では使うなとあれほどッ・・・！」

「私の起こす風に耐えられるとでも？」
「なんだこの風は・・・！飛ばされるッ！」

「起動カンリョウ・・・投球モードヘ移行シマス・・・」
「あれはNASAの最新兵器・・・すでに完成していたのか！」

「ボクが音楽と過ごした三年間は無駄じゃなかった！」

「あれほど浮かれるなと
　　　　　言って聞かせたのに・・・」

「世界は俺を中心に回っている」

「回れ・・・回れ！俺の身体！俺の運命！」

　　　　　　　　　　「すぐに謝る。あいつの悪い癖が出たな・・・」

「卍投法は禁断だったはず・・・！アイツ、一体！？」

「これが甲子園の土・・・いい具合だ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　「その程度で打ち取れると思ったか？」

「打たれたくなければ投げなければいい」　　　　　「鮮度が・・・鮮度が足りない！」
「もっとだ！鮮度をもっと！」

　　　　　　「今年も・・・活きの良いのがいるじゃねェか」

「見えねえ・・・拳も球も・・・！！」

「見えるッ・・・去年までは見えなかったやつの動きが見える！」
「見えただけでは絶対に打てんぞ・・・、打ちたければこの動きを見切ってみな！」


「・・・ぐっ・・・無駄な動きしかない・・・だとッ！！」　　　　　　　　「最後にお前とバッテリーが組めてよかった」

宇宙の法則が乱れる！！

　　　　　　　　「やはり止めても聞かぬか・・・」
「くれてやる・・・俺の体なんかいくらでもくれてやるよ！」

　　　　　　　　　　「これが・・・全国・・・！」

「監督、今なら超えられそうな気がするんです・・・！」

「風が吹いてきた・・・
　　　　　　　　どうやら私に運が向いてきたようだな」

「行ける・・・この風なら・・・飛べるッ！！」

「ボールを投げるだけが投手じゃないんだぜ？」

  「もっと・・・もっと速くなれる！」

「ふふ・・・アイツ今日はノッてるな！」

「お前のスイングより速い俺の脚を・・・見ろッ！！」

「一度も罪を犯したことのない者が、この球を打ちなさい・・・」

「その球は一度しか投げられん・・・この意味がわかっているのか！？」

「嘘だろ・・・アイツの球がピンポン玉みたいに軽々と・・・」

「甲子園・・・すばらしい・・・」　　「万物には全て綻びが在る。その死角を俺は己の角度を以て測るのさ」

「悪いな。エアロビクスの時間なんだ」

　　　　　　　　　　「キャプテン！もうやめて！」

「フッ・・・準決勝が楽しみになってきたぜ」
　　　「どう？あの子。あなたの相手になりそう？」

「俺たちの三年間・・・この一球に懸ける！」

「やめろ！俺はもう一度お前と野球がしたいんだ！」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「悪い・・・一緒にプロに行く約束は・・・果たせそうにない・・・」

俺が変えてやる！この野球界も、世界さえも！！

「はよ投げろ」

 

「”彼”には、特別な力など何もない。
普通の少年が、ひたすら投げ抜いて、頂点に立っただけだ。」

 

「なんだッ、あの投球フォームは！？」

  

 

「あれは、伝説のッ・・・！！」

   
  
 
   
   
   
                                           　　      才能の限界はまだ先・・・！！　―TO BE CONTINUED―

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関連項目

• 98甲子園
• 五体大満足