米(こめ)とは、植物のイネからとれる穀物。お米。うるち米ともち米に分類される。
曖昧さ回避
- 米(コメ)- コメントを表す当て字。「米非表示推奨」「作者米」「米職人」のような用法がある。
- 米(べい)- アメリカ合衆国の略称。亜米利加の2文字目から。北米・南米のようにアメリカ州を指すこともある。
- 米(めーとる)- 長さの単位。アルファベットではmで表す。
- もち米については「もち米」にて記載。
概要
米とは、イネの種子の総称である。
さらに分けるとイネの実から殻を除いたものを玄米といい、これを処理して要らん部分を除いたものを白米という。米というと、普通はこの白米を指す。さらにそれを粉にすると上新粉になる。
米を炊いたものを飯といい、特に白米の飯を白飯という。これがお米族たる日本人の主食である。
アジアやアフリカの一部でもこれを主食としている。日本では単に「ごはん」と言った時に食事のことを指すことも多い。
歴史
その起源や詳しいことは分かっていないが、日本においては縄文時代中期頃に中国から「耕作」とともに伝来したというのが定説である。
以来、手間はかかるものの多産かつ何にでも合うその食味から、日本における主食として現代まで確固たる地位を得た。
主食であるがため、またイネが小麦以上に気候の変化に敏感なため、米価は、特に農村部の人々の生活事情を大きく左右するようになった。
かつては飢饉や豪商の買い占めにより跳ね上がり、民衆の怒りが「打ちこわし」や「米騒動」という暴動に発展したり、戦後の暗黒期に米を求めて都心部の人々が米農家に詰めかけるようなこともあった。
日本人は、ごはんに何のおかずが合うのかを常に考えながら生活してきたので、その結果すさまじいバリエーションのおかず料理が生まれた。一方、欧米では主食は小麦とそこから作られるパンであり、米は野菜として前菜やサラダに使われている。しかし、イタリアのリゾット、スペインのパエリアとそこから派生したアメリカのジャンバラヤなどは米をベースにした料理として広く好まれている。
近年、米粉を使用したパンも登場しており日本人好みなもっちりとした食感を生みだしている。
米の化学
ヒトは炊いていない米を食べても、硬くてまずい思いをする上に、ほとんど消化することができない。
なぜなら米に含まれるデンプンは、常温ではβデンプンという糖の分子構造が長く繋がった結晶状態にあり、人間の味覚はこれを「まずい」と認知するからである。水分を加え、加熱すると米内の分子構造の一部が、飽和した水分と熱により細かく破断され、αデンプン(アルファ化デンプン)に変化する。水分を多く含むので柔らかくなり、おいしいごはんになるのである。また白飯を噛み続けることで甘みを呈するのは、このαデンプンが唾液の作用で糖に変わるためである。
通常、炊いた飯はほっとくと水分を失って再度βデンプン化してしまう。加工してαデンプンのまま乾燥させたのが干飯(糒)である。
アミロペクチンの含量が多いものを糯米(もちごめ)、少なく粘り気が少ないものを粳米(うるちまい)という。糯米を炊いた後に臼に入れてつくことで餅になる。
日本や中国では、米はそのまま食べるほか、A・オリゼーなどの菌のはたらきによって米を発酵させて醸造酒・醤油・味噌・酢(米酢)などにする。また、米のデンプンは糊や飴の材料として利用される。中国やベトナムでは米を加工してビーフン(米粉)をつくる。
種の違い
いわゆるイネから収穫される米は、現在では含有するアミロペクチンの量により2つの種に分けられている。
- ジャポニカ種
- 中国東部を起源とし、中国~日本で主に食べられる品種。世界流通量の20%を占める。
- 粘り気のもとであるアミロペクチン含有量が多いため、粘り気を呈する。蒸して炊く食用法が主流。
- スペイン固有種も存在し、それらはパエリアに特化している。
- インディカ種
- 中国西部を起源とし、東南アジア~インドで主に食べられる品種。世界流通量の80%を占める。
- アミロペクチン含有量が少ないため、粘り気に乏しい。大量の湯で煮て、湯を捨てた後で蒸らす食用法が主流。
特に欧米で「サラダ」として認識され、使用されているのは下のインディカ種であり、そのため世界流通量ではこちらの方が多い。
性質も食味似て非なる物なので、迂闊にインディカ種をジャポニカ種のように炊いてはいけない。2020年代より、企業努力の甲斐もあって、長粒米モードで炊くことが出来る炊飯器が少数だが流通している。
生産
食料自給率はほぼ100%である。しかし、減反政策やパンや麵などの小麦粉食品の増加が原因で需要も生産も落ちている。「100%だから安心である」という考えは持つべきではない。
日本では、年ごとに差はあるが、北海道・新潟県・秋田県・宮城県・山形県・茨城県などが生産量上位のランキングの常連である。2007年度は北海道が生産量1位であった。
地域によって異なる多数の品種があり、新潟県を初め多くの県で主要品種であるコシヒカリや、宮城県と岩手県のひとめぼれ、九州のヒノヒカリ、秋田県のあきたこまちなどが特に有名。現在、日本では新潟・魚沼産のコシヒカリが最も高級な米とされる。
品種名 (主要20品種) |
作付面積比率 (H21年産) |
国内の 主な生産地 |
品種名 (50音順) |
主な生産地 |
---|---|---|---|---|
コシヒカリ | 37.3% | 北海道・東北北部を除く全域 | アキニシキ | 東京都 |
ひとめぼれ | 10.6% | 東北/中国の一部・岐阜県・奈良県 | あきろまん | 広島県 |
ヒノヒカリ | 10.3% | 近畿より西の全域 | アケボノ | 岡山県 |
あきたこまち | 7.8% | 秋田県・岩手県・福島県 茨城県・長野県・愛媛県 |
イクヒカリ | 福井県 和歌山県 |
キヌヒカリ | 3.3% | 関東南部・長野県・静岡県・近畿 | いわてっこ | 岩手県 |
ななつぼし | 3.0% | 北海道 | きぬむすめ | 大阪府・島根県 |
はえぬき | 2.8% | 山形県・香川県 | 黄金錦 | 高知県 |
きらら397 | 2.4% | 北海道 | 五百万石 | 新潟県・富山県 |
つがるロマン | 1.6% | 青森県 | ゴロピカリ | 群馬県 |
まっしぐら | 1.3% | 青森県 | さとじまん | 神奈川県 |
あさひの夢 | 1.2% | 栃木県・群馬県・山梨県・愛知県 | ちゅらひかり | 沖縄県 |
夢つくし | 1.1% | 福岡県 | つくしろまん | 福岡県 |
こしいぶき | 1.1% | 新潟県 | 天使の詩 | 佐賀県 |
ほしのゆめ | 1.0% | 北海道 | てんたかく | 富山県 |
あいちのかおり | 0.9% | 愛知県・静岡県 | なすひかり | 栃木県 |
ハナエチゼン | 0.6% | 福井県・島根県 | にこまる | 長崎県 |
ハツシモ | 0.6% | 岐阜県 | 日本晴 | 滋賀県・鳥取県 |
ササニシキ | 0.6% | 宮城県 | 能登ひかり | 石川県 |
彩のかがやき | 0.6% | 埼玉県 | はなさつま | 鹿児島県 |
おぼろづき | 0.6% | 北海道 | ふさおとめ | 千葉県 |
ふさこがね | 千葉県 | |||
主要10品種 合計 |
80.4% |
まいひかり | 宮崎県 | |
まなむすめ | 宮城県 | |||
主要20品種 合計 |
88.6% |
みえのゆめ | 三重県 | |
むつほまれ | 青森県 | |||
めんこいな | 秋田県 | |||
森のくまさん | 熊本県 | |||
夢しずく | 佐賀県 | |||
データ出典元 米ネット(社団法人 米穀安定供給支援機構) |
ゆめひたち | 茨城県 | ||
ゆめみずほ | 石川県 |
※『上の表に載っているもの=全ての品種』ではないので注意
米の最大の生産国は中国。インド・ベトナムがそれに続く。また、最大の輸出国はタイで、ベトナム・中国がそれに続く。日本が輸入する米として最も多いのはアメリカ産のもので、その多くは備蓄用になる。
アフリカの食糧事情を改善するためにネリカ米が開発された。
ネリカ米は多収性のあるアジアのイネと、乾燥や病気に強いアフリカのイネを交配させたもので、お互いの良いところを持ち合わせるイネである。さらに成長が早い利点もある。この開発には日本も関わっている。
その他・豆知識
- 米は米の品種と状態、加える水の質、米と水の分量が決め手となる。特に米と水の分量は重要で、多すぎても少なすぎてもまずくなってしまう。
- 米飯は強い風味を持たないため、基本的にほとんどの料理を「おかず」にできる。これが日本食の主原動力である。
- 上記風習から、萌えを感じた時には必ずそれを「おかず」にして飯を食べるという日本独特のしきたりがある。そのためか近年の日本では肥満人口が増加傾向にあるとかないとかあるとか。※一部ネタですが、運動不足での肥満はあり。
- 注釈をつける時に使われる記号「※」は米印というが、これは漢字の「米」に由来する日本語に特有の記号である。アスタリスク(*)とは似ているが用法が異なる。
ニコニコ動画における米
真田弦一郎
漫画「テニスの王子様」の登場人物。テニミュにおいて彼を演じた兼崎健太郎がお米好きであることが知られたのをきっかけに、真田自身も米とよばれるようになった。詳しくは真田弦一郎の項目を参照。
お米うまい
テニミュの動画の一つ。米のおいしさを讃える歌詞が、日本に生まれたことを感謝させてくれる。この動画では、「吹いたwww」の代わりに「炊いたwww」と米するのが通例である。
お米食べろ!
松岡修造の叫び。素材として使われる動画によって、強制とも推薦とも懇願ともとれる。しじみと一緒にいただこう。
米を抱いて溺死しろ!
Fateのキャラクター・アーチャーの有名なセリフをもじったもの。詳しくは当該項目を参照。
人名
実在の人物
- 米芾(1051年 - 1107年) - 北宋末の書家
- 神尾米(よね、1971年 - ) - 日本の女子テニス選手
- 日本米 - 「歌ってみた」の歌い手。
- 事故米P - アイドルマスターのプロデューサー。
- 玄米P - アイドルマスターのプロデューサー。
- 吉米P - VOCALOIDのプロデューサー。
- 米将軍 - 「歌ってみた」の歌い手。「米好きが~を歌ってみた」シリーズの作者。
- 無洗米 - 「演奏してみた」の演奏者。使用楽器はベース。
- 米男 - ゲーム実況プレイヤー。
漢字として
- Unicode
- U+7c73
- JIS X 0213
- 1-42-38
- 部首
- 米部
- 画数
- 6画
- 意味
- 穀物の皮をとったもの、とくに稲の実、少し、小粒の、糞の形、という意味がある。〔説文解字〕に「粟の實なり」とある。粟は五穀のこと。
- 字形
- 穀物に実があるところの象形。〔説文解字〕に「禾實の形に象る」とある。
- 音訓
- 音読みはマイ、ベイ、訓読みは、こめ、よね。
- 規格・区分
- 常用漢字であり、小学校2年で習う教育漢字である。JIS X 0213第一水準。
- 1946年に当用漢字に採用され、1981年に常用漢字になった。
- 部首
- 米は部首である。米に関連する字が属する。
- 声符
- 米を声符とする漢字に、迷、敉、眯、䍘、㝥、麋、鬻などがある。
- 語彙
- 米飲・米塩博弁・米菓・米穀・米食・米寿・米賊
異体字
- 𡭝は、〔字彙〕にある古文。〔正字通〕は訛字とする。
互換文字
関連動画
関連項目
子記事
兄弟記事
- なし
- 12
- 0pt