かちかち山(カチカチ山)とは、日本古くから伝わる民話の一つである。老婆を騙し惨殺したタヌキをウサギが老爺に代わり成敗する話。
あらすじ
畑を荒らしに毎日やってくる性悪なタヌキを老爺が捕まえ、老婆に狸汁にするように言い残し畑仕事へ向かう。タヌキは「もう悪さはしない」と老婆を騙し、解放されると杵で撲殺するだけに飽き足らず、殺した老婆の肉を鍋に入れ「ばばぁ汁」を作る。
残った老婆の皮を被り化けたタヌキに狸汁(※ばばぁ汁)を食べさせられた老爺はタヌキを追いかけるが逃げられてしまうのであった。
タヌキに老夫婦共々騙され屈辱を受けた一連の顛末について相談をされたウサギは、タヌキの成敗を約束し出掛けた。
まずタヌキを柴刈りに誘ったウサギは、タヌキの背負った柴に騙す形で着火し、タヌキは背中に火傷を追う。(この際、火打ち道具のカチカチ音を聞きつけたタヌキが「ウサギくん、なんかカチカチ聞こえないかね?」と問うたところウサギが「この山はかちかち山と言って、かちかち鳥がかちかちと鳴くのだよ」と答えた。この問答が童話の題号にも繋がっていると考えられる)
続いてウサギは火傷によく効く薬と称してタヌキに唐辛子入りの味噌を渡すが、これを塗ったタヌキはさらなる苦痛を受ける事となった。
タヌキの火傷が治った後は、木の船と泥の船(大きめ)を用意し漁に誘い出す事にする。
「この方がたくさんの魚を乗せられる」と欲張りなタヌキは案の定泥の船を選択するが、沖へ出てしばらくし泥の船は溶けて沈んでしまう。木の船に乗っているウサギに助けを求めるタヌキだが、ウサギの持った艪で追い打ちをかけられ、遂に溺れ死ぬ事となり、こうしてウサギは老夫婦の雪辱を果たしたのであった。
概要
日本の中でもメジャーな部類に入る民話であり、絵本などを通して物語を知った人も多いと見られる。ストーリー中に出てくる「泥の船(舟)」は、「結局駄目になってしまう信頼のおけないもの」の比喩として定着している。
日本の様々な地方で昔話として語られる。地方によっては「タヌキ」ではなく「ムジナ」の話として伝わっていた場合もあるという。もっとも、「ムジナ」はどの動物を指すのかはあいまいな言葉であり「タヌキ」を指して使われることもあるので、「タヌキではなくムジナ」というより同じものに対して別の言い方をしているだけかもしれない。
本物語には様々な寓意を汲み取る事ができるが、戦前では桃太郎のように「敵討ち」「勧善懲悪」といった部分がクローズアップされ教育の現場でも伝えられていたようだ。
しかし戦後である現在ではそれが必ずしも教育に適しているとは判断がされにくく、物語の改変がされていっているのではないかという見解も強い。
特に、殺人だけではなくいわゆる「カニバリズム(食人)」が取り扱われているなど、民話の中でも残虐性が強い物となっているため、児童向けの本などでは物語の内容が平和的にマイルドになって伝えられている事も多い。
このことが「最近の絵本では……」と語られることもあるが、しかし2018年にブログ「ネットロアをめぐる冒険」においてかちかち山の絵本97冊を集めて調査した結果が発表され、実際には戦前より前から内容の変更はあったことが確認されている(「関連リンク」にブログ記事へのリンクあり)。また、沼賀美奈子『江戸期から現代までの「かちかち山」の絵本の変遷』(白百合女子大学児童文化研究センタ-研究論文集 (5), 56-85, 2001-03)、神立幸子『日本の昔話絵本の表現―「かちかち山」のイメージの諸相』(2004/10/1、てらいんく社より発売。「関連商品」参照)などによる類似の先行報告もある。[1]
来歴
詳細な来歴は不明。
2018年8月18日現在時点のWikipedia日本語版の「かちかち山」の項には、「室町時代末期には現在の形で成立していたとみるのが一般的」と記載があるが、この記載には出典が無い。
小学館の百科事典『日本大百科全書』の「かちかち山」の項には民俗学者小島瓔礼(「礼」はしめすへんに豊。禮の異体字)の記述として「赤小本の『兎(うさぎ)の手柄』(1673~80ころ)が最古の記録といわれる。」とある[2]。この項によれば諸外国にも類話があるとされる。
関連動画
関連商品
関連項目
関連リンク
- かちかち山は現代風にアレンジされているのか、ばばあ汁の味 - ネットロアをめぐる冒険
- むぢなのかたきうち - 国立国会図書館デジタルコレクション (江戸時代初期の書籍の画像ファイル)
- むじなの敵討ち ~最古(?)のカチカチ山~ - うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~ 上記「むぢなのかたきうち」の解説、現代語訳
- 太宰治 お伽草紙 (青空文庫。文豪太宰治の作だが、うさぎを「残酷な十六歳の美しい少女」、たぬきを「その少女に恋している三十七歳の中年醜男」として描いている。)
脚注
- *ネットロアをめぐる冒険さんのツイート: "少し補足をするなら、記事内にも記載しましたが、かちかち山のイメージの変遷は私が初めに目をつけたわけでもなく、先行研究があります。私が読んだのは二つだけですが→"
- *かちかち山(かちかちやま)とは - コトバンク
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