わたしはおまえの「兄」だからだ単語

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わたしはおまえの「兄」だからだとは、突然の兄である事の告白である。

あなた…『覚悟して来てる人』…ですよね。
この記事を読むって事は、逆に「ネタバレ」を見せられるかもしれないという
危険を、常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね…

この記事は、ジョジョの奇妙な冒険・第6部「ストーンオーシャン」についてのネタバレを擁してます。

概要

漫画「ジョジョの奇妙な冒険」Part6ストーンオーシャンに登場する、エンリコ・プッチの台詞。

本編中の悪役であるエンリコ・プッチ神父は、主人公に協力する記憶喪失の囚人「ウェザー・リポート」の記憶を封じ込めたDISCを常に自らの懐に隠し持っていた。その封印されていたウェザーの記憶とは…。

ウェザー・リポートの本名は「ウェス・ブルーマリン」。彼の家族は母親と二人きりの貧しい環境であるが、アルバイト禁止の高校に通いながらジュース配達のアルバイトで家計を助ける好青年で、どこまでも純粋だったしどこまでも正義を信じていた。そんな彼のそよ風のような性格に彼に近しい人間は「ウェザー」というあだ名で呼んでいた。

あるカフェに配達に来た日、バッグを盗まれそうになったペルラ・プッチを助けて出会い、その際に店のウインドーを割ってしまった件を庇ってくれた事で、のちに二人は恋人同士になる。ペルラの実家は裕福な家庭であるが、二人の間にはそんなものは関係なく、別れのあいさつに控えめの口づけを交わすなどとても心が通じ合った交際を続けていた。

ところがある日の夜、KKK(白人至上主義)の残党たちがウェザーとペルラを囲い、ペルラの目の前でウェザーはリンチを受けた。彼らは、ウェザーの母親がウェザーを産んだ当時都会で黒人と結婚していたことから、ウェザーの肌は白く見えても黒人の息子と断定して集団で襲ってきたのだ。彼らはここに来る前にウェザーの母の家にも放火して来ており、そしてこの件はペルラの兄エンリコ・プッチが二人を別れさせようとして依頼されたものだった。

ウェザーはリンチされた後、崖の上の木に首を吊らされ放置された。一部始終を見せられたペルラは、ウェザーを木から下ろした後、彼の後を追って崖の下の湖に身を投げて自殺してしまう。ウェザーがまだかすかに脈がある事も知らずに…。

意識を取り戻したウェザーは、ペルラの事を知ると彼女を追って崖から飛び降りたが、何故か突風が吹き壁面にたたきつけられて助かり、湖に飛び込んでも波が起こって押し戻され、一向に自殺できない。ウェザーの心は怒りで満ちていた。自分が生きてる事や自分をこんな目に遭わせたヤツらに、そしてペルラを死なせてしまった自分自身に…。自分の生まれ育った町に限らず、全ての人々を憎み始めていた。

彼が自殺できない原因は、彼が意識を取り戻すまでに発現してしまった天候を操るスタンド能力「ウェザー・リポート」が勝手に動いて阻止している為だったが、その為にウェザーの怒りはオゾン層に影響を及ぼして全ての生物をカタツムリ化させてしまう「ヘビー・ウェザー」となって町中の人間たちがカタツムリ化する現象を起こしてしまう。

そんな怒りに満ちたウェザーの前に、ペルラを死なせてしまった元凶となる彼女の兄エンリコ・プッチが現れ対峙する。自身の怒りとペルラの仇をとるべくウェザーは闘争心を露にするが…。

ウェザー「満足か？」
　　　　「あんたの妹ペルラはあんたの依頼でこうなったんだ」
　　　　「そして…怒りはおさまらない…このケリはつけさせてもらう」

エンリコ「違う」
　　　　「わたしはおまえの「兄」だからだ」

ウェザー「？」

違う省いたのは説明すると「長く」なるからだ(クリックで詳細を表示)

実は、エンリコ・プッチとウェザー・リポートは双子の兄弟だった。しかし、同じ日に赤ん坊を産んだウェザーの母親はその赤ん坊が誰にも知られる前に息を引き取ってしまい、その子の死を受け入れられない母親は誰にも気づかれる事無く死んだ我が子とプッチ兄弟の弟(ウェザー)とをすり替えてしまう(つまり、ウェザーは黒人の子ではなくペルラとは実の兄妹)。

すり替えに気づかなかったプッチ家はそのまま長兄エンリコに死んだ弟がいた事を伝えると、「運命はなぜ自分ではなく弟を選んだのか？」という気持ちから、エンリコはその真実を知る為に神学校へ行くと決心。そしてウェザーとペルラが出会う2カ月ほど前、ウェザーの養母は自らの死期を悟り懺悔室で赤ん坊をすり替えていた事実を告白したが、神父と勘違いして修行中のエンリコに話していたのだ。

信者の告白には守秘の義務がある為、この件について誰にも相談できずエンリコは思い悩んでいたが、妹のペルラに出来たボーイフレンドが実の弟のウェザーである事を知ってしまったエンリコは、実の兄妹と知らず恋人同士となった二人に事実を伝えずに別れさせようととった手段が、ゴロツキを雇って二人を脅すしかなかった。だが、雇った男がKKKの意志を色濃く受け継いでいた事も、ウェザーの養母が黒人と結婚していた事とそれを調べ上げる彼の地獄耳も全く知らず、事を急いでしまった為にペルラを失う悲劇を起こしてしまう。

エンリコ自身も抜き差しならぬ状況ではあったが、それが巡り巡って罪もない大切な妹を失った事にとても心を痛めてしまう。しかし、「ペルラを返してほしい」という願いに1年前に出会ったDIOから譲り受けた「弓と矢」が反応し、失った生命は元に戻す事はできないが「記憶」は手元に残せるように心をDISCに封じ込める「ホワイトスネイク」が発現。それと同時にウェザーも「ウェザー・リポート」が発現していた。

そして町を襲ったカタツムリの現象がウェザーの無意識である事を理解したエンリコは、『人はなぜ出会うのか？』の「答え」を知っているであろうDIOに会いに行く事を決心し、その為ならたとえ殺人だろうとなんでもやる決意の下、現象の元である弟・ウェザーを始末するために彼の前に姿を現したのである。

ウェザーの言う通り、エンリコ・プッチがこんな依頼をしなければペルラは死ぬ事はなかっただろう。それをウェザーはエンリコがペルラの恋を許さなかったか、或いはウェザーの出身が貧しく黒人の息子だから許さなかった事に起因すると思い、堪えきれない怒りをエンリコに対して向けているのだが、エンリコも決して悪意があったわけではない。少なくともペルラを傷つける事は絶対に避けなくてはならないと思っていたが、同時に神職を目指す身でもあった為両者に事実を打ち明けるわけにもいかなかった。

エンリコも純粋に人を愛すが故にそうせざるを得なかった。そういった誤解を解くために出た発言が「違うわたしはおまえの「兄」だからだ」である。

…なのだが、パッと見ただけまたは冷静に見れば前後の会話に脈絡のない台詞であり、確かに端的に言えばそれが理由なのだが、あまりにも端的に言いすぎていて理解が及びつかない台詞となっている。

しかも、この台詞の直後にエンリコはホワイトスネイクで攻撃してウェザーから「記憶 DISC」を奪い取るシーンでこの回想エピソードは締められているが、あまりにも意味不明な話でウェザーを混乱させたスキに攻撃したようにしか見えなくなっている。間に挟まれたウェザーの顔がアップされた丸コマに書き文字で「？」が挿入されているので、なお一層不意打ちしたかのように見えてしまう。

この事件の渦中にあるウェザーに対して「もう少しわかりやすく説明できんのか」と人情を求める読者の気持ちもあるが、この台詞が出た時点でこの回の誌面が残り1～2ページである為、強引ではあるがまとめに入らなけらばならないという都合もある為に、このような超端的な台詞にせざるを得なかったと思われる。

その為、緊迫した状況やシリアスな過去とは裏腹にエンリコ・プッチ神父の迷言として認識されている台詞である。

しかし、エンリコの思惑がうまくいけば明かす事の無かった告白の内容である、「実の兄弟だった」という秘密を(直後にその記憶を奪うとはいえ)打ち明けてしまうという事は、聖職に携わる者として失格である事を承知のうえで、エンリコが心に決めた「DIOに会い『人はなぜ出会うのか？』の答えを知りたい」為に、「殺人だろうとなんでもやる」という決意が如実に現れた発言でもあるだろう。

2023年放送(2022年 12月配信)のTVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険ストーンオーシャン」では、「違うわたしはおまえの「兄」だからだ」の台詞の後にアニメオリジナルの台詞とモノローグだった部分の台詞を追加したため、原作を読んだだけでは強引に感じられた若きプッチ VSウェザーの決着を緩和させている。