サンライン(Sunline)は、1995年生まれのニュージーランドの元競走馬・元繁殖牝馬。
オセアニアを中心にGI13勝・ステークス競走27勝を挙げ、当時のオーストラリアにおける最高獲得賞金記録・ステークス競走最多勝利記録を塗り替えた、20世紀末オセアニアの名牝。
※オセアニアでは8月からシーズンが始まり、馬齢の加算もそのタイミングで行われる。本項でもそれに従って記述する。
概要
父Desert Sun、母Songline、母父Western Symphonyという血統。父デザートサンと母ソングラインはいずれも重賞未勝利、母父ウエスタンシンフォニーも2歳時にGIIIを含む3勝を挙げただけで、近親に活躍馬は見られない。ただし7代母フォーチュンズホイールはオーストラリアが誇る歴史的名馬ファーラップの全姉に当たり、同馬の牝系子孫自体はGI馬が多く出ている。
ニュージーランド・ケンブリッジで生産され、生産者夫妻からトレヴァー・マッキー調教師ら3名にリースされた。そのままマッキー師の管理馬となったが、ゲート練習で出遅れ、調教で再三放馬するなど強情さから来る気性難で問題行動を連発し、デビューに漕ぎ着けたのは2歳シーズン終盤の1998年5月のことであった。
2~3歳時
2歳時をデビューから3戦3勝で終え、シーズンが変わった8月のステークス競走でも勝利してデビュー4連勝としたサンラインは、このレース後に拠点をオーストラリアに置くこととなった。オーストラリアでの初戦となったフューリアスS(GIII)では、しばらく主戦騎手となるラリー・キャシディ騎手を背に5馬身3/4差で圧勝した。
続くティーローズS(GII)ではデビュー以来初の良馬場となったことに加え、スタートで躓いてキャシディ騎手が落馬寸前になったものの、態勢を立て直して4馬身差をつけ勝利。返す刀で挑んだフライトS(GI・1600m)を3馬身差で逃げ切り、7戦7勝でGI初勝利を挙げた。しかし1ヶ月後のMRC1000ギニー(GI)は腱の負傷のため回避となった。
翌年2月にニュージーランド・エラズリー競馬場のハンデ競走で復帰し、62.5kgという3歳牝馬のそれとは思えない斤量を背負いながらこれを勝利。再びオーストラリアに渡ってアンガス・アルマナスコS(GII)に出走したが、ゴール寸前でローズオウォーに短首差差されて2着となり、デビューからの連勝は8で止まった。しかしキャシディ騎手の先約のためグレッグ・チャイルズ騎手との新コンビで出走した2週間後のA.V.キューニーS(GII)では、ローズオウォーを破って勝利した。更に、GI3勝を挙げていたグランドアーチウェイとの対戦となったムーニーバレーオークス(GIII)では、初の距離となる2040mにも臆せず軽快に逃げ、そのまま4馬身半差で逃げ切って完勝した。
続いて、キャシディ騎手との再コンビでドンカスターハンデキャップ(GI・1600m)[1]に出走し、これを勝利。2週間後のクイーンエリザベスS(GI・2000m)では前々年のこのレースを含めGI4勝を挙げていたインターゲイズなどを抑えて6頭中1番人気・単勝1.5倍の支持を集めたが、終盤で失速してインターゲイズの5着に敗れた。
このシーズンの年度表彰ではニュージーランドの年度代表馬・最優秀3歳牝馬・最優秀マイル/短距離馬に選出されたが、オーストラリアの年度表彰では最優秀牝馬もムーニーバレーオークスの後にAJCオークス(GI)を勝ったグランドアーチウェイに取られて無冠に終わった。
4歳時
4歳(99/2000シーズン)初戦のウォーウィックS(GII)では、既にGI7勝を挙げていたタイザノットという強敵を半馬身退けて逃げ切り、幸先の良い滑り出しを決めた。しかし続くテオ・マークスクオリティ(GII)は逃げたアダムの短首差2着、ジョージ・メインS(GI・1600m)はショーグンロッジに差され短首差2着、エプソムハンデキャップ(GI・1600m)はGI未勝利だったアレスーの4着と精彩を欠いた。
続くコックスプレート(GI・2040m)ではキャシディ騎手が他馬に先約があったためチャイルズ騎手が再び騎乗し、以降の鞍上はチャイルズ騎手で固定された。本馬は4番人気で、1番人気はGI3勝を含む6戦4勝のリダウツチョイス、2番人気はタイザノット、3番人気はコーフィールドカップ(GI)を2連勝で勝ったスカイハイツとなっていた。レースではスタートから逃げた本馬がそのままタイザノットに1馬身半差を付けて押し切り、牝馬として史上5頭目の優勝馬となった。
続いてニュージーランドのGII・オークランドブリーダーズSを快勝した後、香港カップを目指して渡航。単勝2.1倍の1番人気となったが、オリエンタルエクスプレスと競り合う格好になったのが災いしてジムアンドトニックの7着に大敗した。
しかし帰国後は復帰戦のアポロS(GII)を勝ち、クールモアクラシック(GI・1500m)では60.5kgという斤量を跳ね除けて勝利。57.5kgを背負ったドンカスターハンデキャップこそオーヴァー(51.5kg)のクビ差2着だったが、翌週のオールエイジドS(GI・1600m)では4馬身3/4差で逃げ切って圧勝し、シーズンを終えた。このシーズンはオーストラリア最優秀牝馬・最優秀中距離馬に選ばれ、オーストラリア・ニュージーランド両国の年度代表馬となった。
5歳時
5歳時(00/01シーズン)はコックスプレートと香港国際競走を大目標として、まずは始動戦のマニカトS(GI・1200m)を3馬身1/4差で圧勝。続くメムジーS(GII)とジョン・F.フィーハンS(GII)も逃げ切ったが、ターンブルS(GII)では逃げ切りを図ったフェアウェイを番手から追い詰めたところで差し返されアタマ差2着に惜敗した。
それでも、続くコックスプレートではタイザノットやスカイハイツなどを抑えて1番人気に支持された。ここでは折からの大雨で馬場が重くなったことも手伝い、先行からあっさり抜け出して7馬身差で圧勝。1990年代中期に大活躍した「Big O」ことオクタゴナルが持っていたオーストラリアにおける最高獲得賞金記録を更新した。
その後は前年同様、オークランドブリーダーズSを勝って香港へ遠征。今回は香港マイルに挑戦すると、スタートから逃げ、直線でただ1頭追い込んできたフェアリーキングプローンを短頭差退けて優勝した。
続けてオセアニアに戻って出走したワイカトドラフトスプリント(GI・1400m)とアポロSを連勝し、ドバイデューティーフリーに出走したが、後ろから競りかけられたのが災いしてジムアンドトニックの3着に惜敗。帰国後のオールエイジドSもエルミラーダの3着に敗れてシーズンを終えた。それでも、前年受賞した年度表彰4賞をこの年も連続で受賞した。
6歳以降
6歳時(01/02シーズン)は前年と同じくマニカトSから始動したが、ここでハナを叩かれた影響で2着に敗れると、続くメムジーSこそ勝ったものの、ジョン・F.フィーハンSでは再びハナを叩かれ、GI2勝を挙げていたノーザリーに差されて5馬身差の2着と完敗。続くターンブルSも勝つには勝ったが道中暴走気味になるというイマイチな内容であった。3連覇がかかったコックスプレートでは単勝2.6倍の1番人気に推されたが、ゴール前でノーザリーに3/4馬身差されて2着に惜敗した。
しかし休養を挟んで出走したワイカトドラフトスプリントを快勝すると、クールモアクラシックでは再び60.5kgを背負って勝利。ドンカスターハンデキャップでは牡馬相手に58kgという斤量を背負いながら逃げ切った。
この斤量の後ではオールエイジドSの55.5kgは裸同然であり、6馬身半差で圧勝。オーストラリア・ニュージーランド両国の年度代表馬とオーストラリア最優秀牝馬を受賞し、現役でありながら豪州競馬の殿堂入りを果たした。豪州年度代表馬3回受賞と現役競走馬の豪州競馬の殿堂入りはどちらも史上初の記録だった。
7歳時(02/03シーズン)は、ニュージーランドのGII・マッジウェイパーツワールドS(現:チャレンジS・GI)から始動し、これを勝利した。しかし、ジョージ・メインSではスローペースで逃げたもののディファイヤーに交わされて3着に敗れ、ヤルンバSではこの頃急激に伸びていたロンロのクビ差2着と敗退。引退レースとして出走したコックスプレートではノーザリーの激しいプレッシャーを受けて失速してしまい、香港カップ以来約3年ぶりの着外に敗れ、これを最後に現役生活にピリオドを打った。
最終成績は48戦32勝2着9回3着3回。GI13勝はキングストンタウン(14勝)に及ばないものの、ステークス競走27勝は豪州新記録である。チャイルズ騎手は2009年に本馬が死亡した際の記事において、サンラインを長距離路線で活躍したマカイビーディーヴァともども「現代最高クラスの牝馬」とした上で、「マカイビーディーヴァは最高のステイヤー、サンラインは最高の中距離馬」と高い評価を与えている[2]。2006年にはニュージーランドでも殿堂入りを果たしている。
引退後はマッキー師所有で繁殖入りし、4頭の仔を産んだが、残念ながら活躍馬は出なかった。2008年7月に疝痛の手術を受けた後に蹄葉炎を発症し、闘病生活の末、衰弱の激しくなった2009年5月に13歳で安楽死措置となった。
血統表
Desert Sun 1988 鹿毛 |
Green Desert 1983 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer |
Pas de Nom | |||
Foreign Courier | Sir Ivor | ||
Courtly Dee | |||
Solar 1973 栗毛 |
Hotfoot | Firestreak | |
Pitter Patter | |||
L'Anguissola | Soderini | ||
Posh | |||
Songline 1987 鹿毛 FNo.2-r |
Western Symphony 1981 鹿毛 |
Nijinsky II | Northern Dancer |
Flaming Page | |||
Millicent | Cornish Prince | ||
Milan Mill | |||
Mcangus 1979 黒鹿毛 |
Alvaro | Rockefella | |
Aldegonde | |||
Honey Carlyle | Better Honey | ||
Nora Crena | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.5%)
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *リアルインパクトなどが遠征した「ドンカスターマイル」と同じ競走である。ここではRacenetの記述に基づき「ドンカスターハンデキャップ」としている。
- *後に生涯25戦無敗の成績を残したブラックキャビアはこの頃まだデビューしたばかりである。
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