諸君は 証言や──
本件に適用される法律を聞いた
後はウソと事実を 見分けるのが仕事だ1人が死に もう1人が裁かれる
被告人の有罪に 疑いがあれば──
それが妥当な疑いなら 評決は無罪であるしかし 妥当な疑問がない場合には──
有罪となるいずれにせよ 評決は全員一致であること
そして評決が有罪の場合──
裁判所は情状を酌量しない
当然 死刑の宣告となるだから諸君の責任は重大だ
十二人の怒れる男(原題:12 Angry Men)とは、アメリカのドラマ・映画である。
法廷もの/密室劇の傑作として知られる。
概要
初出は1954年に製作されたドラマ版。原作はレジナルド・ローズ。殺人事件の陪審員を務めた体験を元に本作を構想、脚本を執筆したという。
当時は録画技術が確立しておらず、放送時は生放送だった。その卓越した内容によって高く評価され、同年のエミー賞では脚本賞・演出監督賞・最優秀男優賞の三冠に輝いたほか、複数の賞を受賞している。
ほぼ一つの部屋の中で物語は進行。父親殺しの罪に問われた少年の陪審を巡り、12人の陪審員が議論を交わすうちに、当初は有罪支持が有力だったのが少しずつ変化していく。
登場人物である12人の陪審員は「1番」「2番」......と番号で呼ばれ、本名は不明。しかしそれぞれの職業や信条などによって、キャラクターづけがなされている。
ドラマ版の反響を受け、1957年に映画版が製作・公開。
撮影自体はわずか2週間、当時の映画としては破格の低予算(35万ドル)だった。「映画は脚本と構成が面白ければどんな場所でも成立する」という主張を証明する具体例として挙げられる作品でもある。
同年アカデミー賞では3部門にノミネートされるも、作品賞は『戦場にかける橋』が受賞し、惜しくもオスカーを逃した。しかしベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞する栄誉に輝いている。
その後も映像化は続き、1997年にリメイク、テレビ映画として放送。ジャック・レモン、ウィリアム・ピーターセンらが出演し、同年のエミー賞にノミネートされた。
2007年には現代のロシアに舞台を置き換えた「12人の怒れる男」が、ニキータ・ミハルコフ監督によって制作・発表。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞やアカデミー外国語映画賞の候補となり、高く評価された。
テレビドラマ版の翌年、レジナルド・ローズは舞台用の脚本を発表。世界中で広く上演されており、キャスト全員を女性が演じるバージョンなどもある。
日本でもこれをオマージュした作品は多く、筒井康隆「12人の浮かれる男」、三谷幸喜「12人の優しい日本人」、佐藤祐市「キサラギ」などがある。
また、裁判員制度の説明時にこの映画を引き合いにだすこともあり、「一般人が議論して裁判の行方をどう左右するのか」「人間の意見がいかに周りに流されて変わりやすいものか」ということについての解説に用いられることもある。
あらすじ
舞台はアメリカ・ニューヨーク。誰もが早く家に帰りたいと思うような、蒸し暑い夏の日。
父親を殺害したという容疑で、18歳の少年に死刑判決が下ろうとしていた。
被告の少年はスラム街に住んでおり、前科があり、粗暴な性格で知られていた。裁判の内容からも少年の有罪は確定的だと思われたが、12人の陪審員の意見が全員一致しなければ、判決は出す事が出来ない。
有罪か、無罪か。しかし投票結果は有罪11、無罪1。無罪に票を投じた陪審員8番は、怒り、困惑し、迷う11人に訴える。
人の生死がかかっているこの局面で、固定観念にとらわれる事なく、疑わしい証拠を一つ一つ再検証しよう。それを踏まえてもう一度投票し、自分以外の全員が有罪を支持するならば、その時は諦めると。
当初は少年の有罪を信じていた他の陪審員も、証拠について議論するうちに、少しずつその心境に変化が生じていく……。
登場人物
- 陪審員1番
中学校の体育教師。陪審員長として議事進行を担当。 - 陪審員2番
銀行員。気弱な性格。8番の唱える無罪説に得心し、無罪支持に回る。 - 陪審員3番
会社社長。最後まで被告は有罪だと強硬に主張するが、その理由は…… - 陪審員4番
株式仲介人。冷静沈着な性格で、筋道を立てた論理によって意見を主張する。 - 陪審員5番
工場労働者。スラム育ち。経験則から、ナイフの使い方に関して意見した。 - 陪審員6番
塗装工。義理人情に篤いおじさん。物証よりも心情に注目する。 - 陪審員7番
セールスマン。裁判には無関心。野球の試合を観戦予定なので、時間ばかり気にしている。 - 陪審員8番
建築家。検察の主張に疑問を抱き、ただ一人被告の無罪を主張した。この物語の発端。 - 陪審員9番
老人。8番の意見を聞き、無罪支持に回った。鋭い所があり、証人の信頼性に疑問を覚える。 - 陪審員10番
自動車修理工場経営者。傲慢な男で、貧困層への偏見を隠そうともしない。 - 陪審員11番
時計職人。ユダヤ移民。誠実な性格で、責任感が強い。弱者ゆえに心の痛みには敏感。 - 陪審員12番
広告代理店宣伝マン。浅薄な性格で、ころころ意見を変える。 - 被告
18歳の少年。父親を殺害した容疑で死刑の瀬戸際に立たされている。実際に登場する事はない。
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関連項目
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