茶道(さどう、ちゃどう)とは、茶を点てて振る舞う行為、およびその芸道である。
概要
茶の湯とは主と客との抹茶を介した精神交流である。そのため主は様々な気配り、もてなしをして、ただただ茶が美味しくなるようにと模索し、客はその心使いを隅々まで感じとりながら茶をいただく。このように茶による主客一体を目指すことが茶道である。
茶道とは美しいお点前を目指すこと、と勘違いしている人が多いがそれは誤りで点前や振る舞いの美しさはあくまで一要素であり、抹茶の味、菓子・懐石料理の味、道具・花の選択、建物・庭、季節時間に合わせた工夫、などの要素も重要となる。このように様々な分野によって空間・時間を演出することから総合芸術としての見方もある。
一般的に茶道というと抹茶を用いたもののことを指すが、煎茶を用いた煎茶道もある。
歴史
鎌倉時代に栄西禅師が中国から禅宗の抹茶法を持ち帰ったことが始まりである。
初めは薬用として扱われていたが、後に嗜好品となり室町時代頃には禅宗での儀式、民間での賭博、武家での芸能といった面も持つようになる。この武家の豪奢で格式高い抹茶法を習った珠光はそこに禅やわびの思想を取り入れ茶道の深い精神性の基礎をつくった。そして武野紹鷗を経て千利休によってわびの茶の湯が完成する。
その後、利休の子孫や弟子などにより茶の湯は様々に展開し、発展と衰退を繰り返しながら今に至る。
なお良く耳にする表千家、裏千家、武者小路千家はどれも利休の子孫による流派であり、合わせて三千家と呼ぶ。
茶事・茶会
茶事とは茶を介して主が客をもてなす正式な場であり、茶道の醍醐味である。ごく少数の客を招待し、懐石料理、茶菓子、濃茶、薄茶をふるまい、4時間近くかけて行なわれる。
茶会とは茶事を簡略化したものであり、大勢の客が参加することができる。茶会によって異なるが茶菓子と薄茶によるもてなしが一般的で一席30分程で終わる。
- 薄茶→一般的な抹茶。もこもこと泡立っている薄茶は大抵が裏千家のもの。泡立つかどうかは流派によりけり。
- 濃茶→どろりとした非常に濃い抹茶。薄茶は点てると表現するが、濃茶は練ると表現する。こちらが茶道において正式な抹茶であり、茶葉の質も薄茶と比べて良いものとなる。茶事のメインであり、一碗の濃茶を数名で飲みまわす。
茶事・茶会では主は席の趣向(テーマ)に沿ってもてなし方を決めることが多く、客はそれを敏感に感じ取り趣向の先にある主の気持ちを読み取ることが必要となる。
茶道具
茶道具とは茶の湯のための道具である。伝統工芸技術の結晶であり、美術品、骨董品にも成り得る。
茶事・茶会を行なうためにはいろいろな用途の茶道具が必要になり、一つ一つに数々のバリエーションがある。それらの組み合わせにより、席の趣向を表現することができる。
- 掛物→床の間に掛けるもの。席の趣向を決定づける重要な道具。一行の禅語が書かれた掛軸が多いが、絵画、短歌、手紙、短冊、色紙、扇子などもある。何が書いてあるかはもちろん、誰が書いているかも大切な要素となる。茶事の際は前半のみ利用する。
- 花入→花を飾るための器であり、これも床の間に置く。花との相乗効果で季節感を高める。材質では金属、陶器、竹、籠等、飾り方では置く、掛ける、吊るすとバリエーションは豊富。茶事の際は後半のみ花を飾る。ついでに花は夏にムクゲ、冬にツバキがよく使われる。
- 風炉・炉・釜→お湯を沸かす為の道具。七輪のようなものが風炉、囲炉裏のようなものが炉。どちらも中に灰を盛り炭火をくべて、その上から釜をのせる。この灰の盛り方にも様々な種類があり、これだけでかなりの修練が必要になる。風炉は夏頃、炉は冬頃と使い分ける。
- 茶碗→客に抹茶を振舞うための道具。客と密接に触れ合う道具であり、茶道具の中でも特に注目を集める。無数の種類の茶碗があるが、中でも特別な存在が樂茶碗である。樂茶碗とは黒か赤の手捏ねによる茶碗であり、利休によって公案された。それまでは中国や朝鮮の器を転用し使っていたが、樂茶碗は茶の湯の為の器として生み出された。
- 茶器→抹茶をいれておく道具。濃茶では茶入、薄茶では薄茶器を使う。茶入は陶器の小壺に象牙の蓋をのせたもので、戦国時代では特に注目され一国一城に匹敵する価値もあった。薄茶器は蒔絵ものが多く、雅な雰囲気をもつ。形は棗形がよく見られる。
- 茶杓→抹茶をすくう道具。基本的にはどれも竹製で同じような形状をしている。茶人や禅僧が自作したものが多く、掛物と同じく誰が作ったかが重要になる。また銘がついていることが多い。
- 茶筅→抹茶をかき混ぜる道具。シャカシャカするやつ。流派や点前によって微妙な違いがあり、良く見かける白竹の茶筅は裏千家のもの。茶筅に限った話ではないが、茶事の度に新品を用意する。
茶人
- 千利休→わび茶の完成者。茶人の中の茶人。禅思想を基礎として新しいものを創造し、無駄なものは省いていった。
- 古田織部→利休の弟子。利休の茶を基礎としながら武家に合う茶道を生み出した。利休に比べ遊び要素がある。
- 小堀遠州→織部の弟子。建築家、作庭家。織部より一層軽快になり、綺麗さびといわれる明るく華やかな茶道を行う。
和敬清寂
和敬清寂(わけいせいじゃく)。茶道において大切な心構えを四文字に要約した言葉。
- 和→お互いに心を開き仲良くすること。
- 敬→お互いを敬い合い、また自身を慎むこと。
- 清→清らかなこと。清潔というだけでなく、心の清らかさも含む。
- 寂→どの様なことにも動じないこと。
海外の茶道
中国
中国では「茶芸」と言われる。一般的に烏龍茶を淹れる方法として「功夫茶(工夫茶)」という方法がある。
日本の茶道が精神的な交流を目的とするのに対して、茶芸は美味しいお茶を淹れる方法という実用的な目的がある。
韓国
韓国では「茶礼」(タレ) と言われる。もともとは先祖を供養をする儀礼でお茶を飲むことはなかった。
日本に併合されてからお茶を飲む習慣が取り入れられ、それとともに煎茶道をもとにした茶礼が広まるようになった。
しかし、茶器を温めるなどお茶をおいしく飲むことに対して見よう見まねで行った感が強く、単なる儀式的なものにとどまっており、日本や中国と異なりお茶をおいしくいただく論理性に欠けている。
ニコニコでの茶道
茶道をしているキャラクター
関連動画
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関連項目
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