鉄道営業制度の未解決問題とは、いわゆる「きっぷのルール」に関して、鉄道事業者や旅客の間で解釈が定まっていない問題である。
乗車券類の発売に関する問題
こどもの国問題
東急電鉄の旅客営業規則では鉄道線の普通乗車券の発売区間を限定していないにも関わらず、大倉山~横浜間の各駅および新横浜駅では恩田およびこどもの国までの普通乗車券を発売していないという問題。
注:普通乗車券を長津田駅で分割して購入しても運賃は同額であるため、実害はない。
運賃・料金に関する問題
原木中山問題
新宿(都営地下鉄)~原木中山(東京メトロ)のIC運賃が、更に長い区間の新宿(都営地下鉄)~西船橋(東京メトロ)よりも高く設定されているという問題。
※詳細な解説はこちらを参照
分岐点問題
運賃計算上の分岐点が駅以外の地点に設定されている場合、分岐点を通る定期券などで分岐方向に乗り越すときに別途乗車運賃計算の起点をどこにするかという問題。
※京成電鉄の駒井野分岐点および本線成田空港線接続点、小田急電鉄の相模大野分岐点、名古屋鉄道の枇杷島分岐点などが該当する。
乗車券類の効力に関する問題
6の字経路大回り乗車問題
ICカード乗車券のSFを使用した乗車や大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券・普通回数乗車券を使用した乗車で、実際の乗車経路をいわゆる「6の字」にすることが許容されるか否かという問題。
連絡乗車券途中下車問題
JRなどの連絡運輸規則により、連絡乗車券を使用する場合は券面に「下車前途無効」と表示されていても異なる事業者の接続駅では無条件に途中下車が可能になっている。しかし、改札を出ないで乗り換えが可能な接続駅では途中下車の取り扱いを拒否される場合があるという問題。
定期券選択乗車問題
定期券を使用する場合は原則として選択乗車制度の対象外である。例外としてJRの旅客営業取扱基準規程第153条に定められている区間のみ定期券使用時の選択乗車が可能になっているが、その具体的な内容が公式に一切公表されていないという問題。
終夜運転問題
乗車券の有効期間最終日は24時を過ぎても最終列車まで有効として扱われるが、終夜運転実施日の深夜はどの時点まで有効かが定義されていないという問題。
その他の問題
西船橋問題
総武線・地下鉄東西線直通電車の西船橋以東と武蔵野線・京葉線を乗り継ぐとき、西船橋駅の乗り換え改札を通る必要があるが、ここで以下の問題が存在する。
・ICカード乗車券のSFを使用する場合、西船橋駅の前後で運賃が通算されるのか打ち切られるのかが案内されていない。
・磁気乗車券を使用する場合、JR線のみの乗車券単独では西船橋駅の乗り換え改札を通過できない。
東京メトロ片道乗車問題
自社路線に環状部分を持つ鉄道事業者のほとんどは、旅客営業規則に「環状線一周を超える経路の片道乗車券は発売しない」または「乗車経路が環状線一周を超える場合は環状線一周になる駅で運賃計算を打ち切って合算する」のいずれかの規定が存在しているが、唯一東京メトロだけはどちらの規定も存在していない。このことにより、東京メトロでは片道乗車券やICカード乗車券のSFを使用して環状線一周を超える経路を約款に違反しないで乗車できてしまうという問題がある。実際にICカード乗車券のSFを使用して恵比寿→銀座→虎ノ門(60分以内に乗り換え)虎ノ門ヒルズ→中目黒と乗車しても、環状線一周になる虎ノ門ヒルズで運賃計算が打ち切られずに全区間のIC運賃が178円で済んでしまうことが確認されている。
ICカード時間超過問題
一部の事業者では、ICカード乗車券のSFを使用して乗車する場合に入場から出場までの経過時間が長すぎると出場時にエラーが発生する。通常は駅員に処理してもらうことにより出場可能になるが、無人駅で出場時にエラーが発生すると詰んでしまうという問題。
運行不能問題
列車が運行不能になった場合、旅行中止や発駅まで引き返すことにより運賃を無手数料払い戻しできると定められているが、実際に運転見合わせ状態がどれだけの時間以上継続した場合に該当するのかが定められていないという問題。
ICカード通り抜け乗車問題
ICカード乗車券のSFを使用して途中で改札を通らずにA事業者→他の事業者→A事業者と乗車する場合、A事業者のICカード乗車券取扱規則には「途中で他の事業者を経由しても良いが運賃はA事業者の路線のみを経由したものとして計算する」という規定があるが、他の事業者のICカード乗車券取扱規則には実質的に無料で通り抜け乗車できる規定が存在しないという問題。
青春18きっぷ第三セクター乗車問題
青春18きっぷでJRの飛び地路線と他のJR路線の間を乗車する場合、間にある第三セクター路線を通過できる特例が存在しているが、ここで以下の問題が存在する。
・JR→第三セクターの接続駅で一旦出場した場合、第三セクター路線に乗るために再入場するときに、この駅までJR路線の普通列車に乗って来ていたことを証明する必要がある。
・第三セクター→JRの接続駅で一旦出場した場合、当日中にこの駅からJR路線の普通列車に乗らないと不正乗車扱いになってしまう。
大回り乗車の倫理的な是非
ルール上では全く無問題であるが、「不正乗車として扱うべきだ」という一部の意見が存在する。
近年解決した問題
用土問題
用土~新宿間などに実際に設定されている運賃とJRの旅客営業規則に基づく運賃計算結果に差異が存在していたが、JRの旅客営業取扱基準規程第115条の制定により解決された。
山科問題
分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例において、下車前途無効でない乗車券(定期券を除く)を使用して折り返し区間を往復する場合(以下「この場合」という)に折り返し区間内で途中下車不可と規定されていることにより、この場合に分岐駅で途中下車が可能か否かの解釈に関する問題。
途中下車不可と解釈する派の主張:「区間」は両端の駅を含むため、分岐駅が乗車券の経路上にあるにもかかわらず、この場合に分岐駅で途中下車不可である。
途中下車可と解釈する派の主張:分岐駅は乗車券の経路上にある駅のため、「区間」が両端の駅を含むにもかかわらず、この場合に分岐駅で途中下車可である。
分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例が2024年4月1日に旅客営業取扱基準規程第151条から旅客営業規則第160条の4に移行し、同時に途中下車不可駅に分岐駅を含まないことが明文化されたため、本問題は解決された。
将来発生が見込まれる問題
なにわ筋線問題
なにわ筋線開業後にICカード乗車券のSFを使用して大阪~りんくうタウン・関西空港間を乗車する場合、大阪~りんくうタウン間の実際の乗車経路を判別できないため、この区間の運賃収入がJR西日本と南海電鉄の安い方の総取りになってしまうという問題。解決するためには、りんくうタウン駅を改札分離する必要がある。
関連項目
- 2
- 0pt