Raspberry Piとは、低コストかつ小型のシングルボードコンピュータである。
超小型PCの側面を持ちながらも、ディジタルIOやPWM、SPI通信などを基板上のコネクタから出力できるため、センサやモータなどのハードウェアと、PC用OSが持つ豊富なアプリケーション(特にネットワーク関係)を組み合わたデバイスを比較的手軽に作り上げることができる。
概要
元は英国のラズベリーパイ財団が初等教育向けに開発したものである。…が、名刺サイズにパソコンの機能を一通り備えている本機は当初からギークの注目を浴び、発売当初は世界中からの注文により品薄状態が相次いだ。
OSは基本的にはLinux系を想定しているが、マイクロソフトから第二〜三世代向けにWindows 10 IoTが無償提供されている(Windows 10 on ARM64も限定的ではあるが一応動作する)。ラズベリーパイ財団のホームページからはDebian系のRaspberry Pi OS(旧称Raspbian)が提供されているが、こちらの方は数式処理ソフトMathematica(PC版は10万円近くする)が付属している。
なお、よく誤解されることだが、Raspberry Piは専用のカスタムチップセットを使用しているので、Arduinoと違いオープンソースハードウェアではない。
ニコニコ動画ではLチカやポケットミクの自動化、無人偵察機等を作っている動画が存在する。
ラインナップ
Raspberry Piはこれまでにスペックやサイズなどが異なる製品をリリースしている。
以下にそのラインナップをまとめている。
表の太字は前の世代から追加・変更された部分を示す。
Raspberry Piシリーズ
2013年に発売された初代Raspberry Piを源流とする、クレジットカードとほぼ同サイズのシングルボードPC。
Raspberry Pi 1 Model A / Model B (第一世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARMv6 シングルコア 700MHz | |
メモリ | Model A:256MB Model B:512MB |
|
USB | Model A:1ポート Model B:2ポート |
いずれも全てUSB2.0 |
ストレージ | SDカード | |
Ethernet | Model A:なし Model B:10/100Mbps ×1ポート |
初代Raspberry Pi。シングルコア,700MHzと性能的には控えめで、無線も標準搭載していなかった。
使用するストレージがシリーズ中では唯一フルサイズのSDカードで、その大きさ故に使用時はカードの半分がはみ出してしまう。
さらに、GPIOのピン数や配置が第二世代以降と異なるため、回路を移植する際は要注意。
現在では後継のA+,B+へ移行し販売終了。
Raspberry Pi 1 Model A+ / Model B+ (第一世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARMv6 シングルコア 700MHz | |
メモリ | Model A:256MB Model B:512MB |
|
USB | Model A:1ポート Model B:4ポート |
いずれも全てUSB2.0 |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | Model A:なし Model B:10/100Mbps ×1ポート |
初代のマイナーチェンジモデル。
基本スペックは無印版と変わらないが、GPIOが26ピンから40ピン仕様になっていることや、使用するストレージがmicroSDになっている点が異なる。
第二世代以降もGPIOの仕様は共通であるため、回路はそのままにRaspberry Pi本体だけを交換して使用することも可能。
Raspberry Pi 2 Model B (第二世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | 初期:ARM Cortex-A7 32bit クアッドコア 900MHz Rev1.2~:ARM Cortex-A53 64bit クアッドコア 900MHz |
|
メモリ | 1GB | |
USB | 4ポート | 全てUSB2.0 |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | 10/100Mbps ×1ポート |
初代から大幅なスペックアップを遂げた第二世代モデル。Model Aは省略されModel Bのみの販売。
2016年10月以降のVer1.2リビジョン以降、CPUが64ビットのものに変更されている。
Raspberry Pi 3 Model B (第三世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A53 64bit クアッドコア 1.2GHz | |
メモリ | 1GB | |
USB | 4ポート | 全てUSB2.0 |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | 10/100Mbps ×1ポート | |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n 2.4GHz | |
Bluetooth | 4.1, BLE |
第二世代からCPUがスペックアップし、クロック数が1GHzを突破した。
さらに、ユーザー待望であった無線モジュールを標準搭載。Bluetoothも標準で使えるようになった。
その代償として消費電流が2.5Aを超えるので、大容量のUSB電源が必須に。
また、CPUの発熱も凄まじいのでヒートシンクを使用することが推奨される。
コネクタ周辺の配置に変更がなかったため、第二世代とケースを共用することができる。
Raspberry Pi 3 Model B+ (第三世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A53 64bit クアッドコア 1.4GHz | |
メモリ | 1GB | |
USB | 4ポート | 全てUSB2.0 |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | 10/100/1000Mbps ×1ポート | over USB2.0,PoE対応 |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz | |
Bluetooth | 4.2, BLE |
第三世代のマイナーチェンジモデル。
基本スペックはほぼ変化がないが、無線が5GHz帯に対応したことで電子レンジなどからの電波干渉を抑えることができるようになった。
また、Power over Ethernet(PoE)に対応し、イーサネットケーブルからの電源供給が可能になった(ただし、追加で専用のボードが必要)。
Raspberry Pi 3 Model A+ (第三世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A53 64bit クアッドコア 1.4GHz | |
メモリ | 512MB | |
USB | 1ポート | USB2.0 |
ストレージ | microSDカード | |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz | |
Bluetooth | 4.2, BLE |
Raspberry Pi 3 Model B+のダウングレードモデル。
イーサネットポートが省略され、USBも1ポートに削減。これにより基板の全長が短くなった。
メモリも1GB > 512MBに半減している。
映像/音声出力は3.5mmプラグのコンポジット信号なので、PC用ディスプレイに表示する際は工夫が必要。
Raspberry Pi 4 Model B (第四世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A72 64bit クアッドコア 1.5GHz | |
メモリ | $35モデル:1GB $45モデル:2GB $55モデル:4GB $75モデル:8GB |
|
USB | 4ポート | USB2.0 ×2ポート USB3.0 ×2ポート |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | 10/100/1000Mbps ×1ポート | PoE対応 |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz | |
Bluetooth | 5, BLE |
主に通信周りの高速化が図られた第四世代のRaspberry Pi。
メモリは1GB/2GB/4GB/8GBからの選択式となった。容量で価格が変わるため、使用目的にあわせた最適な選択ができる。
USB3.0に対応し、高速なデータ通信を可能とした。
また、イーサネットも真のギガビット通信が可能となり(3B+はover USB2.0での対応だったため480Mbpsが上限だった)、こちらも高速通信が可能となった。
映像出力は4K60fpsに対応。1080pを超える大画面ディスプレイでも快適に使用できるようになった。ただし、その影響で標準サイズのHDMIポートが廃止されmicro HDMIポート×2に置き換えられたため、第三世代以前からの乗り換え時は要注意。ケースも流用できない。
消費電流が3Aと第三世代をさらに上回ったため電源コネクタはUSB Type-Cになった。
Raspberry Pi 400 (第四世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A72 64bit クアッドコア 1.8GHz | |
メモリ | 4GB | |
USB | 3ポート | USB2.0 ×1ポート USB3.0 ×2ポート |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | 10/100/1000Mbps ×1ポート | |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz | |
Bluetooth | 5, BLE |
公式キーボードとほぼ同型のキーボード付きケースにRaspberry Pi 4とほぼ同等のスペック(クロック数が少し上がった)のマザーボードを内蔵した一体型超小型PC。
Raspberry Pi 5 Model B (第五世代)
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A76 64bit クアッドコア 2.4GHz | |
メモリ | $50モデル:2GB $60モデル:4GB $80モデル:8GB |
|
USB | 4ポート | USB2.0 ×2ポート USB3.0 ×2ポート |
ストレージ | microSDカード | |
Ethernet | 10/100/1000Mbps ×1ポート | PoE対応 |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz | |
Bluetooth | 5, BLE | |
PCI-Express | 2.0x1 |
CPUをはじめとしたスペック強化が進み、それと引き換えに価格と消費電力が大幅に上がった第五世代のRaspberry Pi。
第四世代からの変化点としては、メモリ1GBモデルが廃止され、2GB/4GB/8GBの3種類になった。
また、USB3.0はポート数の変化こそないものの、2つのポートで同時に5Gbps通信を行うことが可能となった。さらに、PCI-Expressに初めて対応し、専用のライザーカードを接続することでPCIeカードやM.2 NVMe SSDを搭載することができる。
一方で、価格は前モデルから各メモリサイズとも$5値上げされた。昨今の円安傾向もあり、実売価格は最安の2GBモデルでも税抜9,000円前後となっている。また、消費電力も第四世代をさらに上回り、5A(25W)を要求する。
Raspberry Pi Zeroシリーズ
2015年に最初のモデルが発売された、より安価で小型なRaspberry Pi。
そのサイズ故にUSB機器の接続や画面出力にはひと手間を要するが、それらを必要としない組み込み用途には最適なシリーズである。
Zero W以降では無線モジュールが標準搭載されるようになったため、電源を接続するだけでリモート制御が可能になった。
Raspberry Pi Zero
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARMv6 シングルコア 1GHz | |
メモリ | 512MB | |
USB | 1ポート | USB2.0,microUSB |
ストレージ | microSDカード |
5ドルという破格の価格で登場したミニサイズのRaspberry Pi。
価格もさることながらサイズも通常のRaspberry Piの約半分の大きさと、非常に小さい。
その分性能は初代並み、機能も基本的なもののみが搭載されている。
また、USBポートはmicroUSBのみであるため変換ケーブルorコネクタとハブは必須。
画面出力がmini HDMIという少々特殊なポートであることにも注意。
専用カメラインターフェースが搭載されたVer1.3も存在する。
Raspberry Pi Zero W
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARMv6 シングルコア 1GHz | |
メモリ | 512MB | |
USB | 1ポート | USB2.0,microUSB |
ストレージ | microSDカード | |
Wi-Fi | IEEE802.11 b/g/n 2.4GHz | |
Bluetooth | 4.1, BLE |
Raspberry Pi Zeroに無線機能を搭載したマイナーチェンジモデル。
無線を搭載した分、価格は少し高くなったがそれでも10ドルと通常のRaspberry Piより安い。
無線に対応したことで、電源以外のケーブルを全て外してネットワーク越しに操作、といったことも可能となった。
ピンヘッダが実装済みのRaspberry Pi Zero WHも存在する(ただし、その分少し高くなる)。
Raspberry Pi Zero 2 W
項目 | 概要 | 備考 |
CPU | ARM Cortex-A54 64bit クアッドコア 1GHz | |
メモリ | 512MB | |
USB | 1ポート | USB2.0,microUSB |
ストレージ | microSDカード |
CPUが64bit対応&クアッドコアになったことで処理性能が大幅に向上した、2024年現在Raspberry Pi Zeroシリーズの最新版。
性能としてはRaspberry Pi 3 Model Bあたりとほぼ同等レベルまで進化している。
価格も$5上がって$15となったが、Raspberry Piシリーズの価格が徐々に上がってきているため、価格差はむしろ広がってきている。
また、性能向上の代償として消費電力が大幅に上がっている(150mA → 600mA)ため、24時間稼働する用途で、かつ性能を必要としない場合はZero/Zero Wの方がより適しているといえる。
Raspberry Pi Picoシリーズ
2021年に発表された、Zeroシリーズよりも更に小さいマイクロコントローラ。
シングルボードコンピュータに分類される他シリーズとは異なり、Raspberry Pi OSを動かすといったことはできず、Arduinoなどのようにプログラム(ファームウェア)を書き込んで動作させる。
Raspberry Pi Pico
項目 | 概要 | 備考 |
SoC | RP2040 ・ARM Cortex-M0+ 32bit デュアルコア 133MHz |
|
SRAM | 264KB | |
Flash | 2MB | |
USB | 1ポート | USB1.1,microUSB ※Flash書込用 |
2021年に発表された、Raspberry Pi Picoシリーズ最初の製品。
ソフトウェアは専用SDKを用いてC/C++、あるいはMicroPython(組み込み機器向けPython)で開発、出来たファイルをUSBを通して内部ストレージに書き込む。
SoCにはラズベリーパイ財団が独自開発したチップRP2040を使用。このチップは後に単体での販売も行われている。
ディスプレイ出力や有線/無線ネットワークは持たないが、GPIOを始めとした汎用I/Oは充実している。
2022年には、無線接続が可能なRaspberry Pi Pico Wが発表された。
Raspberry Pi Pico 2
項目 | 概要 | 備考 |
SoC | RP2350 ・ARM Cortex-M33 32bit デュアルコア 150MHz ・RISC-V Hazard3 32bit デュアルコア 150MHz |
アーキテクチャはいずれかを選択して使用可 |
SRAM | 520KB | |
Flash | 4MB | |
USB | 1ポート | USB1.1,microUSB ※Flash書込用 |
2024年に発表。初代と比較してCPU性能が強化され、SRAM/Flashの容量もそれぞれ倍になった。
搭載SoCはRP2350で、このSoCで注目すべきはARMコアとしてもRISC-Vコアとしても使用できること。
2024年末以降、無線接続が可能なRaspberry Pi Pico 2 Wが発売予定となっている。
Raspberry Pi Compute Moduleシリーズ
産業用で組み込み向けのRaspberry Piで、名前が示す通りモジュールにまとめられている。
本体には小型のコネクターが取り付けられているだけで、USBやHDMIなどの入出力ポートは一切持たず、接続先のボードがコネクターを介して必要なI/Oを取り出す形になっている。専用のボードを設計して、そこにCompute Moduleを挿して使用するイメージとなる。
Compute Module (産業用)
Compute Module 3 (産業用)
Compute Module 4 (産業用)
- CPU ARM Cortex-A72 64bit クアッドコア 1.5GHz
- メモリ 1GB/2GB/4GB/8GB
- USB2.0 (オプション)
- ストレージ eMMC (オプション)
- Wi-Fi (選択可) IEEE802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz
- Bluetooth 5,BLE (アンテナ別売)
- Ethernet (オプション)10/100/1000Mbps
- PCIe Gen 2 (オプション) x1
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