エネイブル(Enable)とは「可能にする」「できるようにする」「有効にする」という意味の動詞である。
父Nathaniel、母Concentric、母父Sadler's Wellsという血統。父はGⅠ2勝のGalileo産駒で、エネイブルの世代が初年度産駒。母は7戦3勝。Sadler's Wells 3×2という強烈なクロスがかかっているのが血統面での特徴である。近親にはGⅠ5勝のシルコレ欧州支部長Flintshireがいる。
2歳11月の未勝利戦でデビューしこれを快勝。3歳4月まで休養するが初戦の条件戦で3着に敗れる。
しかし続くリステッド競走をランフランコ・デットーリを鞍上に迎えて勝ち、英オークスに駒を進めると、雨をものともせず先団を追走、直線で2着馬Rhododendronとの長い叩き合いから残り1ハロンで独走し5馬身差で圧勝。初重賞でGⅠ馬となる。
ここで覚醒したか、エネイブルは一気に本格化。続く愛オークスは2番手から余裕綽々に後続を突き放し5馬身差の圧勝。歴戦の古豪Highland Reelや本格化したUlyseesなど一気に相手関係が強化されたはずのキングジョージも、先団から直線であっさりと先頭に躍り出ると突き放すだけ突き放して4馬身半差の圧勝。こうなると牝馬限定戦のヨークシャーオークスなど遊び場も同然、影も踏ませず5馬身差で逃げ切り勝ち。合計20馬身差をつけるという衝撃の競馬でGⅠ4連勝を決め、堂々1番人気で凱旋門賞に挑む。
GⅠ4勝の1000ギニー馬*ウィンター、前年3着馬Order of St George、そして日本からサトノダイヤモンドなど18頭が揃った凱旋門賞。いつも通り逃げ馬を見る絶好の位置につけて追走する。最終コーナーで一列外に出して仕掛けると、これに応えて重馬場も関係ない力強さで後続を置き去りにし、Cloth of Starsに2馬身半差をつける完勝。欧州最高峰の舞台でGⅠ5連勝を飾った。
2018年も現役を続行したが、膝の故障で一向に戦列に復帰できず、結局11ヶ月の休養を余儀なくされてしまう。凱旋門賞を見据えた復帰戦のセプテンバーステークス(GⅢ)は楽勝したものの、通常凱旋門賞のステップにはまず使わないオールウェザー戦。しかもその後の調整も難航し、凱旋門賞連覇を期待する声が大きい一方で、不安視する声もまた大きくなっていた。
凱旋門賞では、ここまで順調さを欠いたとはいえ実力を評価されての1番人気。前年の自身同様ヨークシャーオークスを勝って臨んできたSea of Class、前哨戦フォワ賞を楽勝し4連勝中の地元馬Waldgeistなどが人気を集めた。
本番、エネイブルは日本馬クリンチャーの外につけ4,5番手を進む好位置を確保。前年は積極的に仕掛けたが、今度は体調もあってかギリギリまで仕掛けを待ち、直線半ばで先頭に躍り出る。そこへ外から3歳牝馬Sea of Classが強烈な末脚で追い詰めたが、短頭差振り切って勝利。Treveに続き史上7頭目の凱旋門賞連覇を果たした。鞍上のデットーリは単独最多の凱旋門賞6勝目。まさしく天才である。
陣営は続けてBCターフ遠征を決行。前走破ったWaldgeistに加え、前年覇者の*タリスマニック、GⅠ英チャンピオンフィリーズ&メアズS勝ち馬Magicalなどの欧州勢、Channel Maker、Robert Bruceなどの地元GⅠ馬が出走。しかし当然エネイブルほどの大物はおらず1番人気に支持される。
雨でやや渋った馬場の開催となったチャーチルダウンズ競馬場。エネイブルは普段よりやや後ろの中団前目というポジションになった。鞍上のデットーリが馬場のわりにペースが速いと感じたことも一因だが、それを差し引いても走りがぎこちなかったらしい。レース後にデットーリは馬場が合わなかったようだと振り返っている。
それでも道中で体勢を整え、3コーナーでゴーサインに反応しえげつない勢いで進出。大外ぶん回しにも構わず直線で先頭に立つ。そこへずっとエネイブルをマークしていたライアン・ムーア騎乗のMagicalが連れて浮上し、エネイブルの内に入って真っ向勝負を仕掛ける。後続は大きく離れマッチレースの様相となったが、エネイブルは最後まで譲らず3/4馬身差をつけて優勝。3着にはさらに9馬身差をつける圧勝劇だった。凱旋門賞とBCターフの連覇は史上初の快挙。ウイニングポストではいともあっさりと連勝されるローテだが、実際はそう簡単にはいかないのである。鞍上のデットーリはBCターフ5勝目。まさしく大天才である。
凱旋門賞3連覇を目標とし、5歳シーズンも現役を続行。今度は体調不良に悩まされることもなくたっぷり半年休養し、夏の英GⅠエクリプスSで戦列に復帰する。
8頭の少頭数ながら、英国の中距離戦線を代表する大レースとあって、前年のBCターフ後3連勝でGⅠ2勝目を挙げてきたMagicalなど好メンツが揃う。2400mが主戦場のエネイブルにとって芝の中距離競走はかなり久々だったが圧倒的人気に推される。そりゃそうだ。
レースも自身の型通り、2番手追走から直線で力強く先頭に躍り出る。BCターフ同様背後からMagicalが迫ってきたが、またしても3/4馬身振り切り勝利。自身10連勝でGⅠ8勝目を挙げる。
続いてエネイブルは2年ぶりとなるキングジョージに出走。前走プリンスオブウェールズSで念願のGⅠ勝利を上げた堅実派Crystal Ocean、前年の対戦後ガネー賞でGⅠ勝利を加えたWaldgeist、英ダービー馬Anthony Van Dyck、そして日本代表としてシュヴァルグランが出走するなど前走に劣らぬ強力なメンバーが揃う。
本番、エネイブルは珍しく中団後方に控える。しかしそれもターゲットを1頭に絞った鞍上デットーリの作戦であり、視界に唯一の標的である2番人気のCrystal Oceanを捉える位置を手にしたことで作戦は図に当たる。ペースも流れ、後方の馬にはおあつらえ向きの流れになった。
直線、Crystal Oceanが流れに乗って前に出たところで外から並ぶように仕掛け、外から被せるようにマッチレースに持ち込む。双方凄まじい根性で互角の叩き合いを展開したが、じわりと前に出たエネイブルが最後はクビ差で封じて勝利。連勝を11に伸ばし、2年ぶりのキングジョージ制覇を果たした。牝馬がキングジョージを2勝したのは1973年、74年に連覇したフランスの伝説的名牝Dahlia以来であった。
続いて公開調教のためヨークシャーオークスに出走し2馬身3/4差のセーフティーリードで勝利する。
重馬場で行われた本番の凱旋門賞では、直線で一度は抜け出すもパリロンシャンで前哨戦フォワ賞を勝利したWaldgeistに差され2着となり3連覇の夢は潰えた。
新型コロナウイルスの影響で競馬の日程が大幅に狂うことになったこの年、それでも陣営は凱旋門賞3勝の夢を諦めきれず現役続行を決定した。
初戦は7月のエクリプスSを選択したが、逃げていたGhaiyyathを捉えきることはできず2着に屈した。
この年のキングジョージは新型コロナウイルスで日程が狂ったためか異例の3頭立てでレースが行われ、5馬身半差で危なげなく勝利した。同レースの3勝は史上初となった。
その後、万全を期すためセプテンバーステークスを調整で使い7馬身差で勝利した。
2020年の凱旋門賞はGhaiyyathやLove、Serpentineなどの有力馬がいろいろな理由で次々と回避し圧倒的1番人気となったが、それでも不良馬場で11頭立てと波乱を予想される模様となった。
レースでは3番手で先行していた去年の3着馬Sottsassが直線で粘り勝利する一方で、エネイブルはいつもの手ごたえがなく6着に敗れた。
通算19戦15勝(うちGI11勝)。10月12日に引退が発表され、13日には初年度の配合相手が8戦7勝(うちGI4勝)のKingmanと発表された。
Nathaniel 2008 鹿毛 |
Galileo 1998 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer |
Fairy Bridge | |||
Urban Sea | Miswaki | ||
Allegretta | |||
Magnificient Style 1993 鹿毛 |
Silver Hawk | Roberto | |
Gris Vitesse | |||
Mia Karina | Icecapade | ||
Basin | |||
Concentric 2004 鹿毛 FNo.4-m |
Sadler's Wells 1981 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Fairy Bridge | Bold reason | ||
Special | |||
Apogee 1990 鹿毛 |
Shirley Heights | Mill Reef | |
Hardiemma | |||
Bourbon Girl | *イルドブルボン | ||
Fleet Girl |
クロス:Sadler's Wells 2×3、Nearctic 4×5×5、Hail to Reason 5×5
強い、強すぎる。
掲示板
84 ななしのよっしん
2022/07/23(土) 08:41:42 ID: cJ86GAIYym
85 ななしのよっしん
2022/08/30(火) 10:22:27 ID: jFbVL9Yh4d
凱旋門のターフでレース開始を待つこの仔に一目惚れしたのが
競馬って言うか競走馬にハマった理由だった
馬も競争の開始を認識してレースに向けて集中する、って出来るんだと
周りの騒動完全にシャットアウトした姿が本当にかっこよかった
お母さん業頑張れ、子供も応援する
86 ななしのよっしん
2023/11/23(木) 01:09:54 ID: c1DNIh3P4m
アニメでサトノダイヤモンドが凱旋門賞走るなら、ウマ娘でもワンチャン出てくるかもしれんな
ジュドモントが許すならだが
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/31(火) 01:00
最終更新:2024/12/31(火) 00:00
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