キョウエイタップ(Kyoei Tap)とは、1987年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
横山典弘にりゃいあんのクラシックで獲り損ねた初GⅠを贈った馬。
主な勝ち鞍
1990年:エリザベス女王杯(GⅠ)、サンスポ賞4歳牝馬特別(GⅡ)
父*タップオンウッド、母キョウエイレッド、母父*アラナスという血統。
父は1979年の英2000ギニー馬。1986年から日本で種牡馬として供用されたが、300頭ちょっとの産駒のうちキョウエイタップ以外には中央でオープンを勝った馬が2頭いるだけで、地方を含めてもキョウエイタップが唯一の重賞馬である。キョウエイタップはその初年度産駒。
母は中央で6戦3勝。勝った3戦は4歳未勝利戦を9馬身差、続く400万下で大差(1.9秒差)、連闘で出たフリージア賞(400万下)も大差(2.3秒差)という勝ちっぷりを見せたが、デビュー2戦目のハギノトップレディ(3着)もいた阪神の4歳オープンを5着に敗れたあと引退した未完の素質馬であった。オーナーの経営するインターナショナル牧場で繁殖入りしたのち、経営に苦しんでいた出口繁夫牧場に提供され、出口牧場での3頭目の仔(第7仔)がキョウエイタップである。
母父はフランスの馬で、自身は4戦1勝。種牡馬としては1980年の菊花賞馬ノースガストのほか、1986年の南関東三冠馬ハナキオーなど地方で多くの活躍馬を出し、1986年の地方リーディングサイアーにも輝いている。
半兄には1991年のフェブラリーH2着など重賞で活躍したインターシオカゼ、近親には1994年の新潟大賞典勝ち馬ゴールデンアワー(いとこ)や、2009年の京都牝馬S勝ち馬チェレブリタ(いとこの仔)などがいる。
1987年3月17日、様似町の出口繁夫牧場で誕生。オーナーはキョウエイプロミス、キョウエイマーチなど「キョウエイ」冠名を用いた松岡正雄。
※この記事では時代に合わせ、馬齢表記を数え年(現表記+1歳)で記述する。
開業4年目の美浦・稗田研二厩舎に入厩したキョウエイタップは、1989年8月12日、蛯名信広を鞍上に新潟・芝1000mの新馬戦でデビュー。単勝1.5倍という断然人気に支持されたが、逃げて捕まり5着。
一休みして10月、東京・ダート1400mの未勝利戦にて、当時デビュー4年目、売り出し中の若手であった横山典弘を鞍上に迎え、5馬身差で楽勝。以後、若きノリさんが主戦となる。
しかしここからトントン拍子に上手くいったわけでもなく、続く400万下の赤松賞(当時は東京・ダート1400m)では2番人気に支持されたがブービー8着撃沈。
明けて4歳となり、重賞初挑戦のクイーンカップ(GⅢ)では24.0倍の8番人気で4着。続く自己条件のうぐいす賞(500万下、東京・ダート1600m)にて7馬身差の圧勝で2勝目を挙げる。牧場にとっては20年ぶりの特別競走勝ちだったそうな。
ところが、桜花賞を目指して乗りこんだ報知杯4歳牝馬特別(GⅡ)(現:フィリーズレビュー)では朝日杯2着馬サクラサエズリに次ぐ2番人気に支持されたが、そのサクラサエズリ(12着)ともども10着撃沈(ちなみに11着はイクノディクタス。勝ったのは後のオークス馬エイシンサニー)。
賞金が足りず桜花賞は断念し、桜花賞と同日の忘れな草賞(OP)へ。桜花賞を抽選漏れになった「華麗なる一族」の良血馬ダイイチルビーが断然の支持を集める中、10.4倍の3番人気に支持されたが、伏兵トーワルビーの逃げ切りを3番手で追って4着(ダイイチルビーは2着)。
まだまだ賞金が足りないので、続いてオークストライアルのサンスポ賞4歳牝馬特別(GⅡ)(現:フローラステークス)へ。ここでも1番人気はダイイチルビー。キョウエイタップは前走より侮られ、17.0倍の9番人気であった。
レースは人気薄のパトラッシュが逃げ、ダイイチルビーは外枠から4番手で追走。キョウエイタップは控えて後方に構えた。迎えた直線、キョウエイタップと横山典弘は大外に持ち出す。残り300mでダイイチルビーが先頭に踊り出て、そのまま後ろを突き放して押しきる態勢、実況も完全にダイイチルビーが勝つ流れで喋っていたが――そこに大外末脚一気にで襲いかかったのはキョウエイタップ! ゴール板のところで狙い澄ましたようにダイイチルビーをクビ差捕まえ、良血馬を蹴散らして重賞初制覇を飾った。稗田師も出口繁夫牧場も嬉しい重賞初制覇となった。
ところが、トライアルを勝って意気揚々としていた横山典弘に対し、父の横山富雄が「本番はあんな後ろから行ったら届かない」とぼそっと一言。「嫌なこと言うな……」とムッとしたというノリさんだったが、迎えた本番の優駿牝馬(GⅠ)では桜花賞馬アグネスフローラをマークして中団に構えるも、やはり父の言葉が気になって仕掛けを早まってしまい、最後の伸びを欠いて6着。ノリさんは父に対して「やっぱり俺の乗り方が合っていたのに、オヤジが余計なこと言いやがったせいで」と思ったそうである。
夏休みを挟み、当時は9月の4歳牝馬限定戦、中山・芝2000mだったクイーンステークス(GⅢ)から始動。しかしあまり見せ場なく6着に敗れる。続いて牝馬東京タイムズ杯(GⅢ)(現:府中牝馬ステークス)ではノリさんが京都に行っていたので柴田善臣が騎乗したが、最後方から脚を伸ばすも9着まで。
迎えた本番、エリザベス女王杯(GⅠ)。この年のエリ女はダイイチルビーも桜花賞馬アグネスフローラも故障で不在であり、オークス馬エイシンサニーも前走ローズSを惨敗したため、ローズSを上がり最速で3着だったトウショウアイが5.1倍で押し出された1番人気という大混戦ムード。ノリさんが鞍上に戻ったキョウエイタップは、前週の菊花賞でメジロマックイーンの3着に敗れたメジロライアンと同じ大外8枠18番、単勝13.6倍の8番人気であった。
レースはユキノサンライズが1000m59秒8の当時としてはハイペースで逃げ、ヌエボトウショウやイクノディクタスが前目でそれを追走。1番人気トウショウアイ、2番人気ウィナーズゴールド、3番人気エイシンサニーら人気どころは後方に構えた。キョウエイタップはさらにその後ろに構える。
ウィナーズゴールドが早めに上がっていき、トウショウアイとエイシンサニーも4角で外から仕掛けていく。一方、キョウエイタップと横山典弘は直線で果敢に馬群の中へ突っ込んでいった。前目にいたイクノディクタスが先に先頭に立ったヌエボトウショウをかわして先頭に踊り出るが、そこに外から一気に襲いかかる1番人気トウショウアイ。当然、中継カメラも外のトウショウアイへと向けられる。
――だが次の瞬間、馬群を縫ってインから一気に突き抜けてきたのは、横山典弘とキョウエイタップ!
大外!大外を通りまして、7枠からもう1頭か!
大外から、大外から7枠トウショウアイ!
トウショウアイが大外から完全に先頭に立っている!
そして、おおおおっ、キョウエイタップだ!! 18番のキョウエイタップ!
キョウエイタップが完全に先頭に立った! キョウエイタップだキョウエイタップだ!
18番、おおゴールに入る前から横山典弘ガッツポーズ! キョウエイタップ~!
内をすくったキョウエイタップ!
トウショウアイは大外から、しかし内をすくったキョウエイタップ!
1週間遅れの18番です! 1週間遅れの18番!
ゴールに入る前から横山典弘ガッツポーズ! あっと言わせたキョウエイタップ!
勝利を確信したノリさんは、ゴールの数十メートル前から完全なフライングガッツポーズ。「1週間遅れの18番」という杉本アナの実況通り、前週の菊花賞、ひいてはメジロライアンと無冠に終わったクラシック三冠の悔しさを晴らし、GⅠ初勝利を飾ったのだった。そしてもちろんフライングすぎるガッツポーズに対しては戒告を食らった。仕方ないね。
GⅠ馬となったキョウエイタップは、果敢に有馬記念(GⅠ)に参戦。ここではさすがにノリさんはメジロライアンに騎乗したため柴田善臣が騎乗したが、オグリキャップの劇的ラストランの後ろで13着。
明けて5歳はAJCC(GⅡ)、目黒記念(GⅡ)、日経賞(GⅡ)、オールカマー(GⅢ)と果敢に中長距離で牡馬に挑んだが、10着、11着、7着、7着と牡馬の壁は高く、東京スポーツ杯(OP)では1番人気に支持されたが9着。距離短縮を試みた富士ステークス(OP)で4着と久々に掲示板入りすると、1年以上ぶりの牝馬限定戦となったターコイズステークス(OP)でトップハンデをものともせず久々の、そして最後の勝利を飾った。
明けて6歳は金盃(東)(GⅢ)、中京記念(GⅢ)と再び牡馬に挑むが8着、12着に終わり、この中京記念を最後に現役引退となった。通算22戦5勝 [5-0-0-17]。
引退後は松岡オーナーのインターナショナル牧場で繁殖入り。9頭の仔を産んだが目立った活躍馬は出ず、インターナショナル牧場も松岡オーナーの死去に伴い廃業してしまったため、2頭の牝馬も繁殖入りすることはなく、その血はあっさり途絶えてしまった。
キョウエイタップは2008年限りで用途変更、その後の消息はわかっていない。
| *タップオンウッド 1976 栗毛 |
Sallust 1969 栗毛 |
Pall Mall | Palestine |
| Malapert | |||
| Bandarilla | *マタドア | ||
| Interval | |||
| Cat O'Mountaine 1967 栗毛 |
Ragusa | Ribot | |
| Fantan | |||
| Marie Elizabeth | Mazarin | ||
| Miss Honor | |||
| キョウエイレッド 1977 鹿毛 FNo.11-c |
*アラナス 1965 鹿毛 |
Right Royal | Owen Tudor |
| Bastia | |||
| Arbencia | Arbar | ||
| Palencia | |||
| ミスマンジュザン 1973 鹿毛 |
*ヴェンチア | Relic | |
| Rose O'Lynn | |||
| *ミスハワイ | Bel Canto | ||
| Alae |
エリ女の単品の動画はないので、下記動画の4:46あたりから(最終直線のみ)。
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