この小説には暴力シーンやその他過激な表現が含まれます。 未成年の鑑賞に関しては、周囲の大人、保護者の皆様のご配慮をお願い致します。 |
武林クロスロードとは、著:深見真、イラスト:Rebisのジュヴナイルポルノ武侠ふたなり百合アクション小説である。二次元ドリームノベルスではなくガガガ文庫刊。全4巻。
武侠。それは一騎当千にして国をも揺るがす、無双の拳士たち。
邪悪な朝廷の圧制に、人々が苦しむ時代。可憐な少女道士・リョウカは、世界を変える力を持つ「双天武王」を目指して旅に出る。危難に陥ったリョウカは、偶然にも一人の武侠を甦らせた。
彼女こそはレイ・シュンライ――かつて反乱軍を率いて朝廷を苦しめた、最強の武侠だった!
立ち上がる二人の下に、集うは美貌の知将・豪傑。しかし朝廷の刺客が、無敵の女将軍率いる軍勢が、二人を狙う!
迸るエロスとバイオレンス。活劇の新次元! ここが武林の分かれ道!1巻裏表紙より
2007年5月、小学館の新ライトノベルレーベル・ガガガ文庫の創刊ラインナップの1冊として登場。
現在も何かと尖ったレーベルとして知られるガガガ文庫だが、ここは創刊ラインナップからゴリゴリに尖っていた。自前の新人賞の受賞作2作をいきなり創刊ラインナップに突っ込むのはともかく、自社人気作『ハヤテのごとく!』『ぼくらの』のノベライズという手堅い商売の他は、
という濃い面々。さらには「跳訳」とかなんかよくわからない企画の話も聞こえており、歴戦のラノベオタクたちも「いったいどういう方向性のレーベルなんだ?」と怪しんでいた。
そんな中にあって、表紙イラストが公開されたあたりから一際異彩を放ち始めたのが本作である。
なんといっても、作者が「あの」深見真。
……現在でこそアニメ『PSYCHO-PASS』や『ゆるゆり』、アニメ化もされた漫画『魔法少女特殊戦あすか』などを手掛ける人気脚本家・漫画原作者として知られる彼であるが、2007年当時の彼の扱いは今とはだいぶ異なっていた。
何しろデビュー作が、あの伝説の密室トリックで富士見ミステリー文庫というレーベルの立ち位置そのものを決めてしまったと言っても過言ではない『ブロークン・フィスト』。その後『ヤングガン・カルナバル』シリーズで一定の評価を得たが、銃と格闘技と腹筋の割れた女の百合をこよなく愛する彼は、ラノベオタクたちの間ではその濃すぎる作風を指して「深見汁」と称される、超個性派作家という扱いだった。
そして、その深見自身の希望でイラストに起用されたのがRebis。
彼の名前を知る者にとっては説明不要だろうが、これまたかなり濃い作風のエロ漫画家である。
この2人のタッグという時点で「ヤバそう」という気配を嗅ぎ取った者も少なからずいたが……いざ出されたものは、読者の想定を超えてヤバかった。
さて、本作はいわゆる武侠ものである。香港の小説家・金庸に代表される、「武侠」と呼ばれる一騎当千の達人の活躍を描いた、中華圏では絶大な人気を誇るアクション小説である。香港映画の大ファンで、『カンフーハッスル』のノベライズも手掛けた深見真が正面から武侠小説に挑んだ作品……であるわけだが。
そこに深見真の百合エロバイオレンス趣味が悪魔合体し、同じ趣味を持つRebisとともにやりたい放題やった結果、生まれてしまったのが本作であった。
そのヤバさは本作を手に取り、パラパラとページを捲れば一目瞭然。「迸るエロスとバイオレンス」というあらすじのキャッチコピー通り……というか「これ一般レーベルで出してええんか」という感想を抱くのが普通であろう。
何しろ、そもそも主人公がふたなり少女である。他に登場するのはほぼ全員、申し訳程度に胸と股間を隠しているだけの腹筋がバキバキに割れたムキムキマッチョの女性キャラ。そして内容はひたすらアクション&ふたなりレズセックス! 一撃で100人とか1000人とかを倒す女武侠たちが血みどろバトルを繰り広げる合間に、純愛イチャラブセックスから媚薬を使っての大乱交、拷問凌辱調教に快楽堕ち、欠損に母娘のふたなり近親相姦までやりたい放題。Rebisの挿絵も局部の直接描写をしていないだけで、そのままジュヴナイルポルノとして刊行しても全く違和感がない。さすがにセックス描写自体は挿絵の濃さのわりには比較的あっさり流してはいるものの、だいたい20ページに1回は誰かしらヤッているし、何か問題が起こればだいたいふたなりレズセックスして解決する。
なお、男キャラは存在自体が死亡フラグであり、ほぼ死ぬためだけに登場する。ここまで性癖に潔くていいのか。
おかげで刊行当時、ラノベ読者よりも二次元ドリームノベルス読者の間で話題だったとかなんとか。
あんまりやり過ぎたためか、2巻以降は本記事冒頭の注意書きが最初に書かれるようになった。当たり前だ。
……と、こう紹介すると単なるトンデモエロラノベみたいだが、中身はさすがに『ヤングガン・カルナバル』でブレイクした後の深見真、作品の名誉のために言っておくがちゃんと面白い。様々な武侠たちが繰り広げる迫力あるアクション描写はもちろんのこと、深見真なりの純愛百合小説としても楽しめる。いやホントだよ。
しかしいくらガガガ文庫とはいえよくこんな作品通したな、と思わざるを得ないが、あとがき等によると編集者から「なんでもやってもいい」という言質を取って書いたそうである。
自分が学生の頃呼んでいた(原文ママ)本は、大体過激なものでした。好きな作家は、山田風太郎、鳴海丈、平井和正、秋津透――以上敬称略。性と暴力の描写が満載の作品に惹かれていました。で、自分もいつかそういうのをやろうと。五年くらい前に出した拙著『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ』がそんな感じだったんですが、それ以降「性と暴力路線」の作品を書くチャンスがなく、なんだか色々なものが溜まってきて大変なことになってました。で、ある日ガガガ文庫編集部から原稿の依頼がありまして。担当の編集者さんから「なんでもやっていい」と言われて、じゃあもうやりたいことなんでもやってみよう、と。性と暴力の世界に、大好きな香港映画と武侠小説も足してみて、この『武林クロスロード』が完成しました。
1巻あとがきより
言質を取ったとはいえ、これが送られてきて、それをそのままレーベルの創刊ラインナップとして出す小学館が一番ヤバかったのかもしれない。
その他、本作の成立に至るまでの経緯は、著者の深見真とイラストのRebisが特設ブログ「ロード・トゥ・武林クロスロード」で詳しく語っているので、そちらも参照されたい。
なお、シリーズは4巻で第一部が終わったところでストップしており、残念ながら打ち切りということになってしまっているようだ。残念である。
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最終更新:2024/04/19(金) 19:00
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