清少納言(せいしょうなごん、966?~1025?)とは、平安時代中期の女流作家・歌人である。
日本最古の随筆「枕草子」の作者。百人一首62番の作者で、中古三十六歌仙の一人。清原元輔の娘で、清原深養父の曾孫。
清少納言の名は、清原氏の出であることと、親族に少納言を務めた人がいたことに由来する(誰なのかは不明)。陸奥守を務めた中流貴族・橘則光に嫁ぎ一子・則長をもうけたが、後に離婚。一条天皇の中宮・藤原定子の女房として宮中に仕える。
出仕を始めた頃は、定子の実家・中関白家の全盛期だったが、定子の父・藤原道隆が病死したことによって家運が傾く。定子の兄・藤原伊周が藤原道長との権力争いに敗れて失脚すると、道長は自分の娘・彰子も強引に一条天皇に入内させ、定子の地位は危うくなってしまう。そんな不安定な情勢の中でも、清少納言は「枕草子」の中で暗さを全く見せず、定子の明るく華やかなサロンを書き綴った。「枕草子」の中では、藤原斉信や藤原行成との交流が描かれている他、藤原実方とは恋仲だったとも言われている。
中宮定子が難産で若くして亡くなると、定子との思い出が積もった宮中への未練が無くなり、宮仕えを止めて引退した。この前後に、摂津守の藤原棟世と再婚して、夫と共に赴任、一女・上東門院小馬命婦をもうけた。清少納言の晩年も不明な点が多い。兄・清原致信の元に身を寄せたが、致信が源頼親(酒呑童子退治や、坂田金時の主君である源頼光の弟)に殺されると、落ちぶれた老婆になったという話もあるが、小野小町の伝説同様、信憑性に乏しい。実際には、旧知の藤原公任たちと交流を続けながら、ひっそり余生を送っていたらしい。
「春はあけぼの」に始まる序文や、「香炉峰の雪」の話など、「枕草子」は数多くの逸話や清少納言の嗜好が沢山記されている。百人一首にも入選した「夜を込めて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」も、「枕草子」の有名なエピソードのひとつである。夜更けまで清少納言と話がはずんでいた藤原行成が突然帰ってしまい、後日「鶏の鳴き声が聞こえたから、夜明けになったと思った」と弁解したのに対して詠んだ歌である。
この歌は、古代中国の賢君として知られる斉の孟嘗君が、敵国の秦から脱出する際に、大勢抱えていた食客の中から、鶏の鳴き声が得意な者に声真似をさせ、夜中の函谷関を通り抜けたというエピソードを基にしている。こうした歴史的背景を知った上で、清少納言は「函谷関の鶏の声真似はだませても、逢坂の関(蝉丸の和歌にも登場する交通の要所)はだませないわ」と行成をやりこめていることからも、彼女の教養の高さが窺える。紫式部は自分の学才をなるべく隠していたが、清少納言は自分の才能をフルに活用して、宮中の貴族と対等以上に渡り合っていたのだ。
紫式部は、自身の紫式部日記で清少納言を「いつも得意げな顔をしていて、自慢げに字を書いていているが、よく見るとところどころ間違っている(中略)こんな人間だから、どうせロクな人生にならないわ」と徹底的にこき下ろしている。このため、紫式部と清少納言は時々ライバルと言われているが、紫式部が出仕したのは清少納言が引退した頃とちょうど入れ違いであり、両者が直接出会ったことはないと考えられる。
なぜ、紫式部がこれほどまでに清少納言を嫌っていたのかは諸説あり、清少納言が紫式部の夫・藤原宣孝やいとこの藤原信経を批判したから、紫式部が仕えた彰子と清少納言が仕えた定子のサロンが対立関係にあったからなどと言われる。一方、清少納言は紫式部をどう思っていたかは、記録に残されておらず、まったくもって不明である。
「枕草子」が現代人にもわかりやすく共感できる内容であることや、清少納言が明るく社交的な性格だったこともあり、古典を題材にした漫画では彼女を主役にした作品はかなり多い。最近の作品では「暴れん坊少納言」「姫のためなら死ねる」などがあり、前者では破天荒なツンデレ、後者では定子に百合感情を抱く変態淑女にされてしまっている。また、「うた恋い。」の3巻は事実上彼女が主人公である。
30代以上の世代になると、清少納言はNHKの教育番組「まんがで読む古典」のイメージが強いかもしれない。橋本治の「桃尻語訳 枕草子」をベースにしたこの番組では、当時のOL風のショートカットで描かれており、ナゴンちゃんと呼ばれている。清少納言の名前の由来は、清原氏出身であることと、彼女の親族に少納言まで出世した人がいるからと言われており、「清・少納言」と読むのが本来なら正しいのだが、この呼び名が定着したせいか、「清少・納言」と読んでしまう人も結構多いので注意したい。
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最終更新:2024/09/18(水) 21:00
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