アーバンシー(Urban Sea)とは、1989年生まれのフランスの元競走馬・繁殖牝馬である。
競走馬としても大きな勲章を得た一方、20世紀末~21世紀にかけて、繁殖牝馬として最も成功した牝馬の1頭。
1989年、アメリカ生まれ。父は名種牡馬Miswaki、母Allegratta、母父Lombard。母はイギリス馬だが西ドイツ生まれで、母の側には何やら見慣れない種牡馬が並んでいる。母系はイニシャルがAの馬が並んでいるので、要はドイツの土着血統である。半弟に英2000ギニー馬King's Best(*キングズベスト)がいるほか、半姉妹もGI馬の母となる良血である。さらに、2021年の凱旋門賞を勝ったトルカータータッソは、本馬の半妹Turbaineの曾孫で、かつ本馬の叔母Alyaと母Allegrattaの3×4の全姉妹クロスを持つという、母系で非常に関係の深い馬である。
1歳時のセールでジャン・レスボード調教師に見初められたアーバンシー。元は日本人が購入したのだが、デビュー前に破産してしまい、香港の実業家デヴィッド・ツイの所有馬となる。2歳秋の2戦目で初勝利を飾るが、3歳時はリステッドを2つ勝ったのみで終わる。
4歳初戦でGIIIを勝ち重賞初制覇すると、夏にリステッドとGIIIを連勝。この時陣営は何を思ったか、凱旋門賞挑戦を決定してしまう。たったGIII2勝なのに。だが評価は低く13番人気だった。たったGIII2勝だし。ちなみにこの年の人気どころは仏ダービー馬Hernando(*エルナンド)、英オークス馬Intrepidity、夏にGI3連勝でキングジョージを勝ったOpera House(*オペラハウス)などであった。
ところがこの凱旋門賞、アーバンシーは不良馬場ながら直線で内をぬるりと抜け出し、そのまま粘り勝ってしまうのである。牝馬の凱旋門賞勝利は10年ぶりだった。2着にはさらに低人気の伊ダービー馬White Muzzle(*ホワイトマズル。17番人気)が突っ込み大波乱となった。
荒れすぎたためか案の定この勝利はフロック視され、ジャパンカップではなんと10番人気。まだまだ海外勢が強かったJCで、凱旋門賞馬がこれほど人気を集めないなんて異常である。前走負かしたホワイトマズルは2番人気なのに。どんだけ信用ないんだよ……。まあ、結果8着だったし文句の言いようもないが……(一応ホワイトマズルには先着した)。
翌年はGIIを勝つが、その後牡馬相手のGIで2戦して健闘はするものの勝てずに引退。通算24戦8勝。競走馬としては、一流馬というより一発屋、という言葉のほうが似合う感じである。一部では史上最弱の凱旋門賞馬なんて不名誉な称号も頂いたが、ガネー賞は牡馬相手に3着だったしまあそれなりだと思う……けど、調べるとこの馬より戦績が悪い馬って確かにほとんどいないような……。ソレミアが肩を並べるかもしれないけど。
アイルランドで繁殖入りしたアーバンシー。初年度産駒が重賞を勝ち順調なスタートを切ると、その後も活躍馬が出るわ出るわ。英愛ダービー馬Gallileo(父Sadler's Wells)、伊ダービー馬Black Sam Bellamy(父Sadler's Wells)、GI6勝にして2009年年度代表馬Sea the Stars(父Cape Cross)などを輩出し、空前の大成功を収めた。11頭の産駒のうち未出走が2頭、出走した9頭のうち8頭が勝利を挙げ、6頭が重賞馬、4頭がGI馬、2頭がカルティエ賞(日本でいうJRA賞だが、カルティエ賞は欧州全土から各賞1頭選出のためより受賞が難しい)を受賞。GIを勝てなかった4頭もうち3頭はクラシックで2着に入っている。色々とおかしい。
子供たちは繁殖としても大活躍し、Gallileoは8年連続で英愛リーディングサイアー、Sea the Starsは初年度から活躍馬を複数輩出。出走馬の中で唯一未勝利に終わったCherry Hintonは愛オークス馬Breceletを産み、あの大失敗種牡馬名馬Lammtarra(*ラムタラ)との間に生まれた愛オークス2着馬Melikahの牝系からは史上8組目となる英ダービー父子3代制覇を達成したMasarが現れた。このMasarは父がGallileo産駒のNew Approachなのでアーバンシー3×4のクロスを持っている。他にも牝系から重賞馬がゾロゾロと出てきている。やっぱりおかしい。
アーバンシーは2009年3月、出産後の合併症がもとで死亡。Sea the Starsの活躍を見ることはできなかった。だが、彼女の血脈はGallileo、Sea the Starsら孝行息子、娘たちを通じてこれからも生き続けていくだろう。その象徴的な結果となったのが2018年の凱旋門賞で、このレースの1着から8着までがアーバンシーの血を持つ馬(人間の血筋で言う孫とひ孫)で独占されたのである。
繁殖牝馬なんてGI馬が1頭出れば一流、2頭で超一流、3頭目が出た日には伝説的名牝である。それが4頭、しかもそのうち2頭は欧州競馬史に残るレジェンドである。世紀末~新世紀において最強の繁殖牝馬であることに異論を挟む余地はないだろう。
また、彼女の直系子孫ではないが、彼女の半妹Turbaineの曾孫に2021年の凱旋門賞を勝ったトルカータータッソがおり、牝系の価値をさらに高めるものとなっている。
| Miswaki 1978 栗毛 |
Mr. Prospector 1970 鹿毛 |
Raise a Native | Native Dancer |
| Raise You | |||
| Gold Digger | Nashua | ||
| Sequence | |||
| Hopespringseternal 1971 栗毛 |
Buckpasser | Tom Fool | |
| Busanda | |||
| Rose Bower | Princequillo | ||
| Lea Lane | |||
| Allegretta 1978 栗毛 FNo.9-h |
Lombard 1967 栗毛 |
Agio | Tantieme |
| Aralia | |||
| Promised Lady | Prince Chevalier | ||
| Belle Sauvage | |||
| Anatevka 1969 栗毛 |
Espresso | Acropolis | |
| Babylon | |||
| Almyra | Birkhahn | ||
| Alameda | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス:Nasrullah 5×5(6.25%)、Prince Rose 5×5(6.25%)、Alchimist 5×5(6.25%)
4:11~
掲示板
22 ななしのよっしん
2025/10/06(月) 15:39:58 ID: BRCV2J3ff2
>>21
ガリレオ、凱旋門賞出てればほぼ勝てただろうに、出なかったせいでここまで達成が遅れてしまったか
ナザニエルの子やフランケルの孫まで勝ってるんだから
23 ななしのよっしん
2025/10/10(金) 00:11:21 ID: QnR5ehVva4
>>22
いやサキーと戦うことになる以上ほぼ勝てたとは言えないと思うが…
条件不適だったとはいえBCクラシックではサキーに完敗しているし、それこそシーザスターズぐらい圧倒的実力差がないと勝ち確は宣言しづらい
まあシーザスターズの初年度産駒が走り出してから凱旋門賞を勝つまでにかかった時間はガリレオのそれと比べて1年遅いだけなので、両馬の年齢差の分時間がかかったという意味ではそうだが
24 ななしのよっしん
2025/10/10(金) 08:29:29 ID: pEaMPigv0A
2001年はサキーを除けば相手は楽な感じだったけど、そのサキーが強敵だったよね
凱旋門賞は最初にガリレオが不出走の方針を決めて「今年はファンタスティックライトが8年ぶりの古馬凱旋門賞馬になるか?」って言われてたけど、そのファンタも不出走になって代わりにファンタの僚馬サキーが英チャン予定から凱旋門に代打出走、そんで蓋を開けたら史上最大の6馬身差圧勝
ガリレオは愛チャンのあとマイル挑戦かダート挑戦かと悩んでダートのBCクラシックを選択して6着大敗、出なかったマイルのQE2Sは比較的手薄なメンバーかつ勝った馬もパッとしない馬で「こっち出てればチャンスあったんじゃねぇの?」と言われる選択に
BCも最初はファンタがクラシックでサキーがターフの予定だったのが、ダートでの調教の動き見て急遽スイッチしてファンタがターフ勝利とサキーがクラシック2位
秋の選択次第では勢力図が大きく変わっていたかもしれない「タラレバ」が考えたくなる年ではあった
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最終更新:2025/12/26(金) 08:00
最終更新:2025/12/26(金) 08:00
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