島田荘司(しまだ そうじ)とは、日本を代表する小説家の一人。人呼んで「ゴッド・オブ・ミステリー」。愛称は「島荘」。
概要
- 1948年、広島県福山市に生まれる。
- 1981年、前年の江戸川乱歩賞の最終選考で落ちた『占星術殺人事件』でデビュー。本作が与えた影響についてはそちらのページを参照のこと。
- バリバリの本格ミステリでデビューしたが、当時はまだいわゆる「本格冬の時代」であったため、商業的な実績作りのため当時大ブームになっていたトラベルミステリー方面に進出。吉敷竹史シリーズなどをコンスタントに発表してヒットを飛ばし、小説家としての地位を確立する。
- 小説家として大成してからは新人の発掘にも力を注ぎ、綾辻行人・法月綸太郎・歌野晶午・我孫子武丸・麻耶雄嵩らを送り出して、新本格ムーヴメントを起こした最大の立役者。いわば新本格のゴッドファーザーで、彼らのペンネームの名付け親でもある。文字通り、日本のミステリーの歴史を変えた作家と言える。
- その後も各種新人賞などで新人発掘を進めるほか、最近は日本の本格ミステリの海外への訳出や、中国方面での本格ミステリの普及にも尽力している。
- ちなみにデビュー作の『占星術殺人事件』が乱歩賞落選作であるのをはじめ、作品で選ばれる文学賞は現在に至るまでひとつも獲っていない(日本推理作家協会賞は候補入りを辞退している)。なので受賞歴は個人への功績賞である日本ミステリー文学大賞のみ。
- 「ミステリー」や「推理小説」の定義にこだわりがあり、独自の「本格ミステリー論」を展開している。ただ、それらの本格ミステリー論の中で提示された新本格に対する状況認識に対しては、デビューの面倒を見た新本格作家たちからも強く批判されたりした。
- また801系の同人にも理解を示しており(もしかしたらよく理解してないのかも)、彼女たちの背中を積極的に押す姿勢がある。というか島田荘司監修で同人を商業出版しちゃったり……
- 死刑反対派でもあり、自ら死刑囚と対談したりと精力的に活動している。
- 車オタクで、初期にはパリ・ダカのノンフィクションを書いたり、自動車エッセイ集を何冊も出しており、ガチのクルマ本もある。
作品
占星術師の御手洗潔(みたらい・きよし。オテアライではない)と助手の石岡君が活躍する御手洗潔シリーズ、刑事の吉敷竹史が奔走する吉敷シリーズが両輪(吉敷シリーズは99年の『涙流れるままに』で一旦完結していたが、2019年に新作長編が出た)。基本的に御手洗シリーズが純粋な本格ミステリで(そうでない作品も結構ある)、吉敷シリーズが社会派やトラベルものと本格を融合させた作品になっている。
不可解極まりないいくつもの謎を提示し、時にバカバカしいまでに大がかりなトリックでそれを一掃するというというパターンを最も得意とする。幻想的な謎が論理的に解決されることによる「段差の美」に酔うものこそが本格ミステリーである、という独自の理論を持っている(通称「島荘理論」)。その実践例として書かれたのが『奇想、天を動かす』であり、以降の作品も基本的にその論理に基づいたものが多い。
『眩暈』あたりからは脳科学に傾倒し、21世紀に入ると最新鋭の科学知識をどんどん使ってミステリの幅を広げよう、という趣旨の「21世紀本格」なるものを提唱したりしている。
代表作は、御手洗シリーズでは『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』、
吉敷シリーズでは『北の夕鶴2/3の殺人』『奇想、天を動かす』、
ノンシリーズでは『死者が飲む水』『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』『切り裂きジャック・百年の孤独』など。
御手洗潔は当初はただの怪しげな占星術師だったが、長編が続くに従って能力設定が増えていき現在では超人の域に達している。最近では助手の石岡君が一人で解決に乗り出すことも。
作品リスト(刊行順)
小説
★は御手洗潔シリーズ、◇は吉敷竹史シリーズ。共著・全集・再編集本・アンソロジー・傑作選などは除く。
赤太字は2020年7月現在新品かつ単品で入手可能なもの。なお『夜は千の鈴を鳴らす』までは南雲堂から不定期刊行されている《島田荘司全集》(既刊7冊)で読める。
- 占星術殺人事件 (1981年、講談社→1985年、講談社ノベルス→1987年、講談社文庫→1988年、講談社[愛蔵版]→1990年、光文社文庫) ★
→ 占星術殺人事件 改訂完全版 (2008年、講談社ノベルス→2008年、南雲堂→2013年、講談社文庫)
- 斜め屋敷の犯罪 (1982年、講談社ノベルス→1988年、講談社[愛蔵版]→1989年、光文社文庫→1992年、講談社文庫) ★
→ 斜め屋敷の犯罪 改訂完全版 (2008年、講談社ノベルス→2008年、南雲堂→2016年、講談社文庫)
- 死体が飲んだ水 (1983年、講談社ノベルス)
→ 死者が飲む水 (1987年、光文社文庫、改題→1992年、講談社文庫)
→ 死者が飲む水 改訂完全版 (2008年、講談社ノベルス→2008年、南雲堂)
- 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 (1984年、カッパ・ノベルス→1988年、光文社文庫) ◇
- 嘘でもいいから殺人事件 (1984年、集英社→1987年、集英社文庫)
- 出雲伝説7/8の殺人 (1984年、カッパ・ノベルス→1988年、光文社文庫) ◇
- 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (1984年、集英社→1987年、集英社文庫→1994年、光文社文庫→2009年、光文社文庫[改訂完全版])
- 北の夕鶴2/3の殺人 (1985年、カッパ・ノベルス→1988年、光文社文庫) ◇
- 高山殺人行1/2の女 (1985年、カッパ・ノベルス→1989年、光文社文庫→1999年、徳間文庫)
- 殺人ダイヤルを捜せ (1985年、講談社ノベルス→1988年、講談社文庫)
- 消える「水晶特急」 (1985年、カドカワノベルス→1987年、角川文庫→1991年、光文社文庫→1998年、角川文庫[新装版]) ◇
- 確率2/2の死 (1985年、光文社文庫→1995年、南雲堂) ◇
- サテンのマーメイド (1985年、集英社→1990年、集英社文庫)
- 夏、19歳の肖像 (1985年、文藝春秋→1988年、文春文庫→2005年、文春文庫[新装版])
- 火刑都市 (1986年、講談社→1988年、講談社ノベルス→1989年、講談社文庫)
→ 火刑都市 改訂完全版 (2020年、講談社文庫)
- 消える上海レディ (1986年、カドカワノベルス→1987年、角川文庫→1992年、光文社文庫→1999年、角川文庫[新装版])
- Yの構図 (1986年、カッパ・ノベルス→1990年、光文社文庫) ◇
- 網走発遙かなり (1987年、講談社→1989年、講談社ノベルス→1990年、講談社文庫)
- 展望塔の殺人 (1987年、カッパ・ノベルス→1991年、光文社文庫)
- 御手洗潔の挨拶 (1987年、講談社→1989年、講談社ノベルス→1991年、講談社文庫) ★
- ひらけ!勝鬨橋 (1987年、カドカワノベルス→1992年、光文社文庫→1999年、角川文庫)
- 灰の迷宮 (1987年、カッパ・ノベルス→1991年、光文社文庫) ◇
- 毒を売る女 (1988年、カッパ・ノベルス→1991年、光文社文庫)
→ 毒を売る女 改訂完全版 (2020年、河出文庫)
- 異邦の騎士 (1988年、講談社→1990年、講談社ノベルス→1991年、講談社文庫) ★
→ 異邦の騎士 改訂完全版 (1997年、原書房→1998年、講談社文庫)
- 切り裂きジャック・百年の孤独 (1988年、集英社→1991年、集英社文庫→2006年、文春文庫)
- 嘘でもいいから誘拐事件 (1988年、集英社→1994年、集英社文庫)
- 夜は千の鈴を鳴らす (1988年、カッパ・ノベルス→1992年、光文社文庫) ◇
- 幽体離脱殺人事件 (1989年、カッパ・ノベルス→1992年、光文社文庫) ◇
- 見えない女 (1989年、光文社文庫)
→ インドネシアの恋唄 (1995年、南雲堂、改題)
- 奇想、天を動かす (1989年、カッパ・ノベルス→1993年、光文社文庫) ◇
- 羽衣伝説の記憶 (1990年、光文社文庫→1995年、南雲堂) ◇
- 御手洗潔のダンス (1990年、講談社→1992年、講談社ノベルス→1993年、講談社文庫) ★
- 踊る手なが猿 (1990年、カッパ・ノベルス→1993年、光文社文庫)
- 都市のトパーズ (1990年、集英社→1995年、集英社文庫→1999年、原書房[改訂愛蔵版])
→ 都市のトパーズ2007 (2007年、講談社文庫、改題)
- 暗闇坂の人喰いの木 (1990年、講談社→1993年、講談社ノベルス→1994年、講談社文庫) ★
- ら抜き言葉殺人事件 (1991年、カッパ・ノベルス→1994年、光文社文庫) ◇
- 水晶のピラミッド (1991年、講談社→1994年、講談社ノベルス→1994年、講談社文庫) ★
- 飛鳥のガラスの靴 (1991年、カッパ・ノベルス→1995年、光文社文庫) ◇
- 眩暈 (1992年、講談社→1995年、講談社ノベルス→1995年、講談社文庫) ★
- 天国からの銃弾 (1992年、カッパ・ノベルス→1995年、光文社文庫)
- アトポス (1993年、講談社→1996年、講談社ノベルス→1996年、講談社文庫) ★
- 天に昇った男 (1994年、光文社文庫)
- 龍臥亭事件 (1996年、カッパ・ノベルス[上下巻]→1998年、光文社→1999年、光文社文庫[上下巻]) ★
- 御手洗潔のメロディ (1998年、講談社→2001年、講談社ノベルス→2002年、講談社文庫) ★
- 涙流れるままに (1999年、カッパ・ノベルス[上下巻]→2002年、光文社文庫[上下巻]) ◇
- Pの密室 (1999年、講談社→2001年、講談社ノベルス→2003年、講談社文庫) ★
- 最後のディナー (1999年、原書房→2001年、講談社ノベルス→2002年、角川文庫→2012年、文春文庫) ★
- ハリウッド・サーティフィケイト (2001年、角川書店→2003年、角川文庫) ★
- ロシア幽霊軍艦事件 (2001年、原書房→2004年、講談社ノベルス→2004年、角川文庫→2015年、新潮文庫nex) ★
- 魔神の遊戯 (2002年、文藝春秋→2005年、文春文庫) ★
- 吉敷竹史の肖像 (2002年、カッパ・ノベルス) ◇
→ 光る鶴 (2006年、光文社文庫、改題)
- セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 (2002年、原書房→2004年、講談社ノベルス→2005年、角川文庫→2015年、新潮文庫nex) ★
- 上高地の切り裂きジャック (2003年、原書房→2005年、講談社ノベルス→2006年、文春文庫) ★
- 透明人間の納屋 (2003年、講談社ミステリーランド→2009年、講談社ノベルス→2012年、講談社文庫)
- ネジ式ザゼツキー (2003年、講談社ノベルス→2006年、講談社文庫) ★
- 龍臥亭幻想 (2004年、カッパ・ノベルス[上下巻]→2007年、光文社文庫[上下巻]) ★
- 摩天楼の怪人 (2005年、東京創元社→2009年、創元推理文庫) ★
- エデンの命題 (2005年、カッパ・ノベルス→2008年、光文社文庫)
- 帝都衛星軌道 (2006年、講談社→2008年、講談社ノベルス→2009年、講談社文庫)
- 溺れる人魚 (2006年、原書房→2009年、講談社ノベルス→2011年、文春文庫) ★
- UFO大通り (2006年、講談社→2008年、講談社ノベルス→2010年、講談社文庫) ★
- 犬坊里美の冒険 (2006年、カッパ・ノベルス→2009年、光文社文庫) ★
- 最後の一球 (2006年、原書房→2009年、講談社ノベルス→2010年、文春文庫) ★
- リベルタスの寓話 (2007年、講談社→2010年、講談社ノベルス→2011年、講談社文庫) ★
- Classical Fantasy Within (2008年-、講談社BOX、全12巻予定) ※8巻で中断中
- 写楽 閉じた国の幻 (2010年、新潮社→2013年、新潮文庫[上下巻])
- 追憶のカシュガル 進々堂世界一周 (2011年、新潮社) ★
→ 御手洗潔と進々堂珈琲 (2015年、新潮文庫nex、改題)
- ゴーグル男の怪 (2011年、新潮社→2018年、新潮文庫)
- アルカトラズ幻想 (2012年、文藝春秋→2015年、文春文庫[上下巻])
- 星籠の海 (2013年、講談社[上下巻]→2015年、講談社ノベルス[上下巻]→2016年、講談社文庫[上下巻]) ★
- 幻肢 (2014年、文藝春秋→2017年、文春文庫)
- 新しい十五匹のネズミのフライ (2015年、新潮社→2020年、新潮文庫)
- 屋上の道化たち (2016年、講談社) ★
→ 屋上 (2018年、講談社ノベルス[改題]→2019年、講談社文庫)
- 御手洗潔の追憶 (2016年、新潮文庫nex) ★
- 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース (2018年、新潮社) ★
- 盲剣楼奇譚 (2019年、文藝春秋) ◇
エッセイ・評論・ノンフィクション・その他(単著)
- 砂の海の航海 パリ・ダカール・ラリー (1987年、新潮文庫) - 観戦記
- ポルシェ911の誘惑 (1989年、講談社→1992年、講談社文庫)- 車エッセイ
- 異邦人の夢 (1989年、PHP研究所) - エッセイ
→ 新・異邦人の夢 (1998年、徳間文庫[改題])
- 本格ミステリー宣言 (1989年、講談社→1993年、講談社文庫) - ミステリ評論
- エンゼル・ハイ スポーツカー王国日本の誕生 (1990年、PHP研究所) - 車エッセイ
- 島田荘司の名車交遊録 機械仕掛けのエクスタシー (1990年、立風書房) - 車エッセイ
→ 名車交遊録 (2005年、原書房[上下巻])
- パリダカ漂流 1991死闘 砂漠への挑戦 (1991年、芸文社) - 観戦記
- 自動車社会学のすすめ (1991年、講談社→1995年、講談社文庫) - 車エッセイ
- 世紀末日本紀行 (1994年、講談社→2000年、徳間文庫) - フォトドキュメンタリー
- 秋好事件 (1994年、講談社→1999年、徳間文庫) - ノンフィクション
→ 秋好英明事件 (2005年、SSKノベルス[改題]→2007年、文春文庫)
- 本格ミステリー宣言Ⅱ ハイブリッド・ヴィーナス論 (1995年、講談社→1998年、講談社文庫) - ミステリ評論
- 島田荘司読本 (1997年、原書房→2000年、講談社文庫) - 個人読本
- アメリカからのEV報告 (1997年、南雲堂) - 自動車技術書
- 三浦和義事件 (1997年、角川書店→2002年、角川文庫) - ノンフィクション
- 聖林輪舞 セルロイドのアメリカ近代史 (2000年、徳間文庫) - ノンフィクション
- ミタライ・カフェ (2002年、原書房) - エッセイ
- 21世紀本格宣言 (2003年、講談社→2007年、講談社文庫) - ミステリ評論
- 「異邦」の扉に還る時 (2004年、原書房) - エッセイ
- 島田荘司のミステリー教室 (2007年、SSKノベルス) - エッセイ
- 本格からHONKAKUへ 21世紀本格宣言Ⅱ (2018年、南雲堂) - ミステリ評論
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