モビリティリゾートもてぎとは、栃木県芳賀郡茂木町120-1にあるモータースポーツ施設である。
MotoGPの日本GPやSUPER GTやスーパーフォーミュラが開催される。
1997年8月1日に「ツインリンクもてぎ」として開業。2022年3月1日に名称を「モビリティリゾートもてぎ」に変更した。
オーバルコースとロードコースという特色の違う2つのコースをもつ世界でも珍しいサーキットで、このため「ツインリンクもてぎ」と名付けられた。ツイン(twin)は英語で2つという意味で、リンク(ring)はドイツ語でサーキットという意味である。
オーバルコースは、またの名をスーパースピードウェイという。楕円形(オーバル)に近い形をしたアメリカ合衆国で多く見られる形状のトラックで、全長が2,414m(1.5マイル)となっている。2003年から2010年までオーバルコースでインディカー・シリーズの日本ラウンドが開催されていた。2008年の第3戦はダニカ・パトリックが優勝し、インディカー史上初の女性優勝者誕生の舞台となった。2011年3月の東日本大震災でコースが破損して路面に段差が生じたため、レース専用車両による周回レースを開催できなくなった[1]。2017年5月28日のインディ500を制した佐藤琢磨が同年12月3日にインディカーでデモランを行った(記事)。しかし、レース専用車両による周回レースができるほどの改修が行われずに日々が過ぎている[2]。2021年10月時点では300mの直線部分を使うもてぎストリートシュートアウトだけを行っている。
ロードコースは、様々なコーナーを配したヨーロッパ風のトラックで、全長が4,801mとなっている。日本に6ヶ所だけ存在するFIA国際公認サーキットのうちの1つである。四輪ではSUPER GT、スーパーフォーミュラ、世界ツーリングカー選手権、スーパー耐久など、二輪では全日本ロードレース選手権、MotoGPが開催されている。
サーキットのほかにもホンダコレクションホールやモビリティリゾートもてぎホテル、遊園地、アスレチック施設などを備えている。また、森林設備を活かして二輪のトライアル世界選手権も開催される。
大型イベント開催時には場内無料ループバスが運行され、トイレや飲食も充実しており、国内では珍しい軽装で観戦にいけるサーキットである。
何気に『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』でのレースシーンのロケ地として使われていたり、『ばくおん!!』に至っては制作協力として関わり、劇中で使用するバイクのエンジン音収録をここで行っていたりする。
モビリティリゾートもてぎを運営しているのはホンダモビリティランド株式会社で、本田技研工業が100%の株主になっているホンダ系企業である。また、ホンダモビリティランド株式会社は鈴鹿サーキットも運営している。このため「もてぎや鈴鹿はホンダのサーキット」と表現される。
モビリティリゾートもてぎや鈴鹿サーキットにはコチラというマスコットキャラがいる。恐竜をモチーフとしていて、手塚治虫がデザインした。誕生日は9月23日である。MotoGPなどのイベントでライダーと触れ合う姿が目撃されている(画像1、画像2)。
コチラの他にもマスコットキャラがいて、コチラファミリーと称されている。
ホンダは熊本県大津町に大きな工場を持っていて、熊本県と関係が深い。そのため、熊本県のマスコットキャラであるくまモンがモビリティリゾートもてぎや鈴鹿サーキットにやってくることがある(画像1、画像2)。
2022年2月28日まで使われていたツインリンクもてぎのロゴは、オーバルコースを連想させる灰色の楕円形の中に、もてぎ(Motegi)のMを連想させる3本の白い縦線が入り、森を連想させる緑色と、川を連想させる青色が塗られているものである。
2022年3月1日から使われているモビリティリゾートもてぎのロゴは、青緑色の葉っぱを連想させるものである。
モビリティリゾートもてぎはこの場所にある。
モビリティリゾートもてぎは北関東・栃木県東部の山岳森林地帯にあり、茨城県との県境に近い。周囲はうっそうとした森林が広がっていて、イノシシやタヌキが駆け回っている。
東京駅から直線距離で103km離れていて、東京駅から自動車で移動するときは渋滞が全くない状態で2時間かかり、東京駅から鉄道とバスで移動するときも最短で2時間ぐらいかかる(資料)。東京都などの南関東から少し遠い位置にある。
関東地方より西の人がレース観戦するにはホテルに泊まった方がいいだろう。モビリティリゾートもてぎは宇都宮と水戸という2つの県庁所在地の中間地点にある。宇都宮と水戸のどちらからも直線距離30km程度の位置にあるので、好きな方を選ぶことができる。水戸の方が僅かに近いので、レース関係者は水戸のホテルを優先的に予約するそうだ。県外からの出張者を多く受け入れる県庁所在地らしく、宇都宮も水戸もホテルの数に余裕がある。宇都宮からも水戸からも国道123号を走るだけで辿り着けて、それなりにアクセスは良い。
レース関係者ならレンタルバスを借りて、宇都宮や水戸から国道123号を走ってサーキットに入る。観戦者なら宇都宮や水戸から路線バスを使ってモビリティリゾートもてぎまで行くことになるが、ビッグレース開催時には路線バスが臨時増発となり、さらに宇都宮や水戸から予約制直通シャトルバスが運行される。
ちなみにビッグレース開催時の予約制直通シャトルバスは、新宿駅や東京駅やつくば駅からも発着することがある(記事)。
真岡鐵道(もおかてつどう)の沿線のホテルに泊まり、レース当日に真岡鐵道を使って終点の茂木駅に行き、茂木駅から路線バスやタクシーか徒歩で4km移動してモビリティリゾートもてぎに入るという方法もある。しかし、真岡鐵道の沿線はいずれも小規模な街で、ホテルの数が少ない。
モビリティリゾートもてぎ公式サイトでは、来場の方法や、混雑を避ける迂回路を紹介している(ページ1、ページ2)。
モビリティリゾートもてぎで事故が起こったら、まず、この場所にあるメディカルセンターに運ばれる。設備が立派なので、ここで手術することも可能である。レースに帯同する医師の判断により危険と判断されたら、Hのマークのあるヘリポートからドクターヘリを飛ばし、獨協医科大学病院に緊急搬送することになっている。36km離れているが、ヘリコプターなら最高速度250km程度なので所要時間10分程度で運ぶことができる。
この獨協医科大学病院には2008年にエクトル・バルベラ、2015年にアレックス・デアンジェリスが入院した。
モビリティリゾートもてぎは標高150mほどの山間部にあり、その東には標高250m程度の山が連なっていて、その山々を超えると標高30mの水戸市に辿り着くことができる。また、モビリティリゾートもてぎの西には標高70mの真岡市や標高110mの宇都宮市がある。つまり、市街地があるようなところよりも高いところにサーキットが位置している。
以上のことはGoogleアースで調べることができる。また、Google地形図でも事情を把握することができる。
山間部にあるサーキットなので上昇気流が発生しやすく、雲が起こりやすく雨が降りやすい。平野部にある宇都宮市や水戸市のホテルでは晴れていたが、国道123号線を移動すると雲が多くなり、モビリティリゾートもてぎではポツポツと雨が降っていた・・・この手の体験談が多く聞かれる。
山間部にあるサーキットなので霧が発生しやすい。霧が発生してドクターヘリが飛べないと判断されると、レーススケジュールが遅延する。2013年と2015年のMotoGPは霧が発生してレーススケジュールが大きく変わってしまった(2013年動画、2013年記事、2015年動画、2015年記事)。2015年のMotoGPは日曜日になって雨が降って霧が立ちこめ、なかなか霧が晴れなかったが、「緊急時は警察の協力を得て救急車で50分以内に病院へ搬送する体制が整った」として、レース決行が宣言された。
北関東の山間部にあるので、冬になると雪が降り積もる(画像)。このため冬季のテストには使用できない。
こちらやこちらやこちらやこちらが現地の天気予報。
モビリティリゾートもてぎの近くには自動車テストコースが3つある。
モビリティリゾートもてぎから7km北東に日野自動車茨城御前山テストコース、モビリティリゾートもてぎから5km南西にUDトラックス茂木試験場(グーグルマップには日産自動車茂木試験場としても登録されている。UDトラックスと日産自動車が共用しているのだろう)、モビリティリゾートもてぎから9km南東に日本自動車研究所(JARI)城里テストセンターがある。
モビリティリゾートもてぎのすぐ北には、関東随一の清流とされる那珂川(なかがわ)やその支流の逆川(さかがわ)があり(地図)、鮎(あゆ)を釣ったりカヌーで遊んだりすることができる。
ちなみに那珂川や逆川には鮭(シャケ)が遡上して産卵するので、その卵を集めて、モビリティリゾートもてぎ内の水生生物研究室で孵化の様子を観察している(記事)。
モビリティリゾートもてぎで大レースが行われるとき、那珂川や逆川で釣れた鮎の炭火焼きが観戦客に販売される(記事)。
車で来場する人は、北ゲートか南ゲートのどちらかを通ってモビリティリゾートもてぎに進入する。東ゲートもあるが、大レースのときには開かれない。
進入した車はモビリティリゾートもてぎ内の駐車場に留まる。駐車場はいくつかあるが、最大のものは5,000台ほどが駐車できるN5駐車場である。ここで車中泊・テント泊に挑む人たちも多い(記事)。大レース開催時にはコンビニが臨時の出張店舗を開いている(画像)。
大レース開催時には、場内ループバスが20分おきに運行される。中央エントランスと、モビリティリゾートもてぎホテルの前の「のぞみの湯」と、N5駐車場をつないでいる(記事)。
メインスタンドからロードコースの5コーナーの方を向くと、緑色の山の中に白い建物が見えるが(画像1、画像2)、この場所にあるモビリティリゾートもてぎホテルである。家族連れをメインターゲットにしたリゾートホテルで、お料理が好評。大レースが開催されるときはレース関係者の予約でびっしりと埋まり、一般客が利用できない。モビリティリゾートもてぎホテルの前面のこの場所に、のぞみの湯があり、栃木県宇都宮市の大谷町で産出される大谷石を使った大浴場がある(動画)。大レースのときは、N5駐車場で車中泊・テント泊に挑む人たちが行列を作っている。
この場所にあるホンダコレクションホールには300台ほどの名車がずらりと展示されている。多くがホンダのマシンだが、ホンダ以外の企業のマシンも展示されている。ほとんどを動態保存しており、エンジンに火を入れてサーキットを走らせることができる状態を維持している。
この場所に巨大ネットの森 SUMIKAという日本最大級の屋内遊技場がある。以前はファンファンラボという名称で、ホンダが開発したASIMOなどのロボット技術を展示していた。
この場所に森感覚アスレチックDOKIDOKIというアスレチック施設がある。
この場所に迷宮森殿ITADAKIというアスレチック施設がある。
この場所にオフロードアドベンチャーDEKOBOKOがあり、オフロード四輪車を運転して過酷な道を走り抜く体験をすることができる。
この場所にモビパーク レーシングカート受付があり、カート(小型レース用四輪車)を借りて手軽に走行することができる。
この場所にモトレーサーがあり、小学生3年以上向けのミニバイクで遊ぶことができる。MotoGPのプレイベントとしても定番の場所で、GPライダーたちがレースをする(画像1、画像2、画像3)
この場所からこの場所を経てこの場所を滑空する561mのジップラインがあり、メガジップライン つばさという。
この場所に森と星空のキャンプヴィレッジというキャンプ施設がある。すぐ近くに のぞみの湯があるのでお風呂に困らず、気軽にキャンプを体験できる。
この場所に北ショートコース、この場所に南ショートコースがある。カート(小型レース用四輪車)やミニバイクでのレースが行われる。
北ショートコースの隣のこの場所に、アクティブセーフティトレーニングパークがあり、安全運転の講習を受けることができる。
花火の祭典と呼ばれる花火大会が年2回、夏と冬に開催される。夏はお盆休みの最中、冬は大晦日あたり。
広いサーキット敷地で行われるので、都会の河川敷では使えないような大型の二尺玉花火を使ったり、目線の高さで炸裂する花火を仕掛けたりと、圧巻の演出が目を楽しませてくれる。
花火を提供しているのは菊屋小幡花火店という群馬県高崎市の花火メーカーで、全国各地の花火競技大会で優勝や上位入賞の常連になっている名門企業である。
この花火大会は1998年から始まった。その当時から音楽と花火をシンクロさせる演出に取り組んでいた。音楽と花火を同調させるのはなかなか難しいが年々腕前が向上し、最高峰の花火大会と称されている。
駐車場・観覧席があり、飲食店もトイレも豊富にあるので花火大会の開催地としては理想的な場所の一つ。
毎年12月初旬に、ホンダレーシングサンクスデーという催しがモビリティリゾートもてぎで行われる。
ホンダと契約を結んでいるモータースポーツ選手達がモビリティリゾートもてぎに勢揃いし、トークを行ったりデモランを行ったり、様々なイベントを行う。
F1ドライバー、レプソルホンダのマルク・マルケスやダニ・ペドロサなど、スーパースターが一堂に会する貴重な光景を目撃することができる。
ロードコースは全14コーナーから成り立つが、6コーナー以降のコーナーの多くには異名が付いていて、その異名で呼ぶのが慣例となっている。
「(数字)コーナー」とコーナー名の対応表は以下の通りになっている。
コーナー名 | 異名 |
6コーナー | 130R |
7コーナー | S字1つ目、S字1発目 |
8コーナー | S字2つ目、S字2発目 |
9コーナー | V字 |
10コーナー | ヘアピン |
11コーナー | 90度コーナー |
12コーナー | |
13コーナー | |
14コーナー | ビクトリーコーナー |
オーバルコースは2011年3月の東日本大震災で大きく損傷し、それ以来はレース専用車によるレースが全く行われなくなった。
地震に弱いというのがモビリティリゾートもてぎにとって玉に瑕(たまにきず)である。「工事の際に建設発生土が発生するが、敷地外に一粒の土も出さないようにする」との意図のもと、山を削った土を谷に埋める作業を繰り返してモビリティリゾートもてぎが建設された。つまり、モビリティリゾートもてぎは切土と盛土でできあがっている。盛土の部分は地盤が弱く、地震が起こるとその上にあるものを大きく揺らして傷つけてしまう。2011年3月の東日本大震災のときはオーバルコースが大幅に損傷し、ロードコースも路面にうねり・段差・ひび割れが発生した[3]。
ロードコースで大レースが行われるとき、オーバルコースは駐車場になる(画像1、画像2、空撮動画)。無観客イベントのときの写真と見比べるとよくわかる。
ロードコースで大レースが行われるとき、オーバルコースの西側直線には仮設スタンドが置かれ、V席とかビクトリースタンド席と呼ばれる席になる。MotoGP開催時には各メーカーの応援席となる(記事)。
ロードコースで大レースが行われるとき、モビリティリゾートもてぎのメインスタンドはA席やB席やS席となる(記事)。A席やB席やS席のすぐ後ろには食事処などの様々な設備があって居心地がいい。しかし、メインスタンドとロードコースの間にはオーバルコースがあるので、メインスタンドからロードコースがかなり遠くに感じられる。メインスタンドに座って観戦する人たちからは「オーバルコースが邪魔だ」という言葉が漏れることが多い。この画像やこの画像を見ても「ロードコースが遠い」という印象を受ける。
ロードコースは2ヶ所でオーバルコースの下をくぐる。
5コーナーを立ち上がった直後でオーバルコースをくぐる(空撮画像)。ここをファーストアンダーブリッジという。2015年までのMotoGP開催時はBridgestoneの看板が付き(画像)、2016年以降のMotoGP開催時はTISSOT(スイスの時計メーカー)の看板が付いている(画像)。
11コーナー(90度コーナー)を立ち上がった直後でオーバルコースをくぐる(空撮画像)。ここをセカンドアンダーブリッジという。MotoGP開催時ではDunlopの看板が付く(画像)。
何かの下をくぐるトンネルを疾走するのは、世界的に見て珍しい光景である。MotoGPの映像撮影班はファーストアンダーブリッジやセカンドアンダーブリッジにカメラマンを配置し、穴からライダーの姿を撮影している(画像1、画像2)。
大雨が降っているときもファーストアンダーブリッジやセカンドアンダーブリッジの路面は乾いたままである。2017年のMotoGP・Moto3クラスにおいて、ここでバーンナウトを行った選手がいる(画像)。
パドックに物資を運ぶトレーラーは、この場所でオーバルコースをくぐる。道なりに走って突き当たりを右に90度旋回し、この場所で「ロードコースの2コーナーと3コーナーの間の直線」をくぐり、さらに右に90度旋回して、やっとパドックに辿り着く。
「ロードコースの2コーナーと3コーナーの間の直線」の手前の90度コーナーは、トレーラーの運転手にとって難関である。レース期間にはここを器用に曲がっていくトレーラーの姿が見られる(画像1、画像2、画像3、特集動画)
S字1つ目(7コーナー)の外側の丘の上に巨大な3本の旗を立てている。4コーナーを走るときに目の前に見えて(動画)、セカンドアンダーブリッジをくぐってから6コーナーを走っているときに右側に見える(動画)。
MotoGP開催時は、モビリティリゾートもてぎの旗、日本国旗、MotoGPの旗が並ぶ(画像)。
鯉のぼりが立てられることもある(画像)。
モビリティリゾートもてぎには様々な観客席が用意されているが、なかでも最も人気があるとされているのがZ席である。90度コーナー(11コーナー)の目前に設置されていて、激しいブレーキングを行う車両の姿を間近で観察できる。
コース全長は4801mで、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から9番目である。コーナー数は14ヶ所で、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から9番目である。
ストップ&ゴーのサーキットで、ブレーキングの上手さと加速力を問われる。
一方で、コーナーが2つ連続する複合コーナーが多く、コーナリング性能も求められる。
山の中のサーキットなので上り下りの勾配がある。かなり長く続く上り勾配と、短い距離の中で一気に下る強烈な下り勾配がある。そうした勾配はGoogleアースを開いて路面にカーソルを当てて右下に標高を出現させることで調べることができる。
こちらがMotoGP公式サイトの使用ギア明示動画である。1速ギアを使うのはヘアピン(10コーナー)のみである。
主なパッシングポイントは1コーナー、5コーナー、S字1発目(7コーナー)、V字(9コーナー)、バックストレートエンドの90度コーナー(11コーナー)。
モビリティリゾートもてぎの路面のグリップは非常に良い。
サーキットに使われるアスファルトの品質は世界共通ではなく各地域で分かれている。「日本のサーキットのアスファルトのグリップは非常に良く、欧州のサーキットのアスファルトのグリップは日本のものよりも劣り、米国のサーキットのアスファルトのグリップは欧州のものよりも劣る」と言われている。
モビリティリゾートもてぎの路面のグリップは日本のサーキットらしく非常に良く、タイヤががっちりグリップしてツルッと滑る危険性が少ない。抜群のグリップがあるため目一杯バイクを傾けて高速コーナーリングすることができる。
その反面、タイヤの摩耗が激しいサーキットとしても知られている。ザラザラしたグリップの良い路面がタイヤを削ってしまい、タイヤが摩耗しやすい。
雨が降った場合に各ライダーが使用する溝付きレインタイヤは摩耗しやすい。2017年の最大排気量クラスの土曜日予選ではレインタイヤの摩耗が話題となった。日曜日の決勝においてもアンドレア・ドヴィツィオーゾのマシンのレインタイヤに摩耗が発生し、タイヤの中央部分がツルツルになってハイドロプレーニング現象に近い状態となり、最終ラップのダウンヒルストレートでマシンを左右に振るわせながらブレーキングすることになった(動画)。
ちなみに、モビリティリゾートもてぎを始めとして多くの日本のサーキット路面を作っているのはNIPPO(ニッポ 日本鋪道)という会社である(記事)。
このサーキットはホンダのテストコースとして使用されている。モータースポーツに関する投資を惜しまない世界最大の2輪メーカーホンダが、金に糸目を付けず路面の補修をちょくちょく行っていて、路面の状況は常に良好である。陥没や凹凸やうねりが非常に少ない。
このため最大排気量クラスで使われている電子制御にとって理想的な路面環境になっており、トラクションコントロールが完璧に機能しやすく、マシンが大きく傾いている状態でもガバッとアクセルを開けることが可能であり、スムーズな加速が完璧に行われ、短い直線でも相当な車速に到達することができる。
ちなみにモビリティリゾートもてぎはホンダが建設してホンダが所有してホンダがテストに使うコースだが、ヤマハやスズキといった他のメーカーもテストコースとして盛んに利用している。
「ライバルメーカーの手助けをしてはいけないからコースを貸し出さない」とか、そんなことはない。むしろヤマハやスズキはコース使用料を払ってくれる大事なお客さんになっている。
ホンダ、ヤマハ、スズキといった日本のメーカーはモビリティリゾートもてぎでさんざん走り込んでいて、走行データを山のように持っており、マシンに最適な電子制御を上手く組むことができる。このため日本メーカーは総じてモビリティリゾートもてぎでの成績が良い。
ヴァレンティーノ・ロッシはドゥカティワークスに在籍していたとき、「モビリティリゾートもてぎでの日本メーカーのマシンは速い。サテライトチームでさえ信じられないほど速い」と語っていた。ドゥカティ、アプリリア、KTMといった外国勢にとってモビリティリゾートもてぎは難関で、ここで日本メーカーを負かすのはなかなか難しい。
ブレーキへの負担が強烈で、世界一ブレーキに過酷なサーキットといわれるほど。2012年MotoGPでは、昼間のレースであるにもかかわらず、グレッシーニレーシング所属のアルヴァロ・バウティスタのブレーキディスクが赤熱する様子がTVカメラにとらえられた。
2013年のMotoGPクラスはディスク板の直径が320mmまでと規制されていたが、モビリティリゾートもてぎのレースだけは制動力の高い340mmのディスク板を義務づけられることになった。
ブレンボ(イタリアのブレーキメーカー。MotoGPクラスのほとんどのマシンにブレーキを供給する)が選んだ「ブレーキに厳しいサーキット」の中で、モビリティリゾートもてぎはトップ4の一角に入っている(記事1、記事2)。
2015年には再びブレーキディスク赤熱の様子がカメラに捉えられた(動画)。雨が降って走行速度が落ちてもブレーキディスクが赤熱する(動画)。資金力が高くて高額の最高級部品を使用するヤマハワークスのマシンですらブレーキディスクが赤熱する。
このため、ブレーキにダクトを付けて空気を当てて冷却する動きが広がっている。こんなダクトを前輪の横に付け、空気を吸い上げてブレーキキャリパー(ブレーキディスクを挟む部品)を冷やすのである。
本来なら、空気抵抗が増して走りに悪影響が出るのでこのような部品は付けないのだが、モビリティリゾートもてぎのブレーキ過熱は深刻なレベルなので背に腹は代えられない。
アクセルを目一杯開ける時間が多いレイアウトなのでガソリンの消費が激しく、燃費の向上が大きな課題となる。
2012年のMotoGPではカル・クラッチローが最終ラップでガス欠を起こし、S字区間でスローダウンしてリタイヤした(動画)。
スリップストリームの恩恵を受けない単独走行をしすぎたり、リアタイヤが消耗して空回りの割合が多くなったり、それらが重なってのガス欠だったとされている(記事)。
ハードブレーキングサーキットである本サーキットにおいては硬いフロントタイヤが推奨される。
フロントタイヤというのはブレーキング時にマシンの荷重を全て受け止める場所なので、硬くて剛性が高いほど安定したブレーキングを行うことができる。
ただ、硬いフロントタイヤを選ぶと、フロントタイヤが変形しにくく、フロントタイヤと路面の接触面積が小さいままで、フロントタイヤが路面にグリップしない感じになり、思い切ってマシンを傾けることが難しくなる。
硬いフロントタイヤと柔らかいフロントタイヤの違いについては、タイヤ(MotoGP)の記事も参照のこと。
路面のカント(左右の傾斜。バンクともいう)が少ないフラットなコーナーがとても多い。路面のカント(傾斜)が強烈なのはS字1発目(7コーナー)ぐらいで、あとはフラットな路面が続く。カント(傾斜)がしっかり付いているコーナーが多い鈴鹿サーキットとは対照的なサーキットと言える。
カント(傾斜)がついていないフラットなコーナーは、 リアタイヤが滑りやすい上にフロントタイヤもグリップしづらく、なにもかもグリップが薄く感じられ、ライダーにとって難しい。
カント(傾斜)がしっかり付いているコーナーはタイヤのセンター部分を使うことができるのだが、カント(傾斜)がついていないフラットなコーナーはタイヤのエッジ部分を使わざるを得ない。モビリティリゾートもてぎは直線区間が多いが、意外とリアタイヤのエッジ部分を消耗するのは、フラットなコーナーが多いためである。
また、路面のカント(傾斜)が少ないことで、コーナーがのっぺりとしていて立体感がなく、コーナー旋回最中に進行方向に目を向けても様子がわかりづらい。コース幅が非常に小さく見え、縁石が見えづらく、コーナー形状がわかりづらい。
路面のカント(傾斜)が大きい擂り鉢(すりばち)のようなコーナーだと、コーナーに立体感があるので、コーナー旋回最中に進行方向にちらっと目を向けるだけでしっかり把握できるのだが、そういうコーナーが少ない。
ライダーは視覚情報に頼らず、想像力を駆使してコーナーリングしなければならない。こういうことからもモビリティリゾートもてぎは少し難しいサーキットなのである。
グラベル(砂)が広くて安全性が高い設計のサーキットとなっている。
5コーナーや130R(6コーナー)やヘアピン(10コーナー)やダウンヒルストレートエンド90度コーナー(11コーナー)のグラベル(砂)には外に進むにつれて上りになる傾斜があり、コースアウトして突っ込んでくるバイクやライダーを受け止める構造になっている。
2013年のMotoGPクラスでは、アレイシ・エスパルガロのマシンにブレーキトラブルが発生した。よりにもよって車速が最高速になるダウンヒルストレートでブレーキが効かなくなってしまい、異常を察知したアレイシは即座にマシンから飛び降りることを決断した。アレイシはアスファルト路面からグラベル(砂)へ高速で滑走することになってしまったが(動画)、傾斜の付いているグラベル(砂)に受け止められ、無傷で済んだのだった。
グラベル(砂)が広くて、ところによっては傾斜まで付いているので、安全性は高い。
しかしながら、そういうグラベル(砂)の形状が、ライダーを幻惑させることもある。グラベル(砂)が広く大きく見えて圧迫感を感じ、ブレーキ操作を誤ってしまうことがある。
5コーナー、ヘアピン(10コーナー)、90度コーナー(11コーナー)、いずれも「砂の壁」がそそり立っているように見える。この「砂の壁」が急に視界に入ってびっくりし、僅かにブレーキレバーを握るタイミングが遅れることでコースをオーバーランしてしまう危険性がある。
近ごろのMotoGP最大排気量クラスのマシンにはダッシュボードという液晶パネルがあり(画像)、走行中に情報を表示する(画像)。直線を走っているときにダッシュボードを見て、それから前に視線を戻すと「砂の壁」がいきなり目に入る。ビックリしてブレーキ操作をわずかに誤り、そのせいでオーバーランしてグラベル(砂)に突っ込んでしまうライダーもたまに出現する。
ブレーキングするときも視覚情報に頼りすぎてはならず、やはり少し難しさがあるサーキットと言える。
MotoGPのベテランライダーから「モビリティリゾートもてぎは多くの場所で壁が近いので安全性がいまいちだ」と批判されている(記事)。
危険とされるのがV字(9コーナー)のあとのコース左側である(航空写真)(動画)。2015年のMotoGP最大排気量クラスでアレックス・デアンジェリスがV字(9コーナー)を立ち上がったあとコース左側の壁に当たった(記事)。
また、4コーナーの立ち上がり直後の直線も危険とされている(航空写真)(動画)(記事)。
最終コーナーはかなりの上り勾配で、ここを駆け上がるライダーがヌッと出現するように見える(画像)。
メインストレートは上下の勾配がほとんど無い。1~2コーナーには上下の勾配があり、わずかな距離で2mも下る。
1~2コーナーは直角コーナーが2つ結合したコの字型コーナーで、旋回速度が高めである。2013年に1~2コーナーのアウト側のアスファルトが拡張され、コースアウトしにくくなった。
1コーナーは有力なパッシングポイントで、インに入ってずばっと抜いていくシーンが数多く見られる。
2コーナー立ち上がりは各ライダーが目一杯外を攻める。外の縁石をはみ出して土埃を上げることもある。
2コーナーから3コーナーまでの直線も、上下の勾配がほとんど無い。
次の3~4コーナーが勝負どころになっている。3コーナーはきつく、4コーナーは緩やかになっている。3コーナーを上手く止めて、4コーナーを絶妙なラインで上手く立ち上がり、前の車の背後にぴたりと付けてスリップストリームを利用して車速を伸ばし、5コーナーでインに入って抜くというのが非常によく見られるシーンである。
3コーナーはコース幅が狭く、普通に走るだけでも難しい。
4コーナーが高速コーナーで、4コーナーから5コーナーは3mほどの下り勾配になっている約500mの直線で速度が乗りやすく、5コーナー自体がキツい角度の低速コーナーであるといった条件が重なり、5コーナーが本サーキットで最も激しいブレーキングの場所になっている。フロントサスペンションやフロントブレーキのデータに表れている。ゆえに各ライダーは5コーナーをしっかり止められるマシン作りを目指すことになる。
5コーナーは地味なコーナーに思われるが、パッシングも多く、マシンセットの基準にもなり、最も重要な場所となっている。
5コーナーで抜きにかからず上手く立ち上がることに専念するのも選択肢の1つとなる。
5コーナーを上手く立ち上がってファーストアンダーブリッジを抜け、その次の130R(6コーナー)でしっかり速度を乗せ、前の車の背後に付いてスリップストリームの恩恵を受け加速し、S字1発目(7コーナー)でズバッとインに入ってパッシングする。
5コーナーから130R(6コーナー)は上下の勾配が無いが、S字1発目(7コーナー)は急激な上り坂で(動画)、ここから長い間上り勾配になるので、進入速度を目一杯速くしたほうが得をする。S字1発目の進入速度がその後のS字区間全体のコーナーリング速度を決めてしまう。
S字1発目(7コーナー)には擂り鉢(すりばち)のようにカント(左右の傾斜)がしっかり付いているので、あまりブレーキを掛けずオーバースピード気味に飛び込む。
S字からV字(9コーナー)を経てヘアピン(10コーナー)に至るまで非常に長い上り坂になっている。
S字は特に勾配がキツく、ライン取りや操縦が下手なライダーが地球の重力によってさらに遅くなる。S字区間はライダーの上手下手がハッキリ鮮明になる。
「この上り坂区間、それも特にS字区間で速いライダーは全体のラップタイムでも速い」と言われる。
S字区間で近づいてV字コーナー(9コーナー)でズバッと抜くのはマルク・マルケスが得意としている。
S字2つ目(8コーナー)からV字(9コーナー)への距離が短い。また、S字2つ目で右にバイクが傾いた状態から左に切り返してV字に進入する。「距離が短い」「切り返しがある」といった2条件のため、S字からV字へは車速を乗せづらい。
車速を乗せづらいので先行ライダーを抜き去るパッシングは非常に難しい場所の1つのはずなのだが、マルク・マルケスはV字でのパッシングを繰り返している(動画)。マルク・マルケスは身体能力が抜群なので切り返しもやたら速く、その分、車速も速い。
マルク・マルケスが何度もパッシングを披露したので、他のライダーもパッシングを挑むようになった。2017年からはV字の前に観客席が設置されるようになった。
V字(9コーナー)を立ち上がってもまだ上り勾配が続く。V字からヘアピン(10コーナー)までは390mの直線で7mの勾配を駆け上がっていく。
ヘアピン(10コーナー)のあたりが標高178mでモビリティリゾートもてぎの頂点となっている。上り勾配なのでマシンを止めやすい。
ヘアピンでは早めにブレーキングしてゆったり回り、次のダウンヒルストレートの加速に備える。低速コーナーだがパッシングシーンは少ない。パッシングを仕掛けると走行ラインが崩れ、立ち上がりの加速が鈍り、ダウンヒルストレートで置き去りにされてしまう可能性が高まる。
ダウンヒルストレートは本サーキット最長の762mとなっている。
アーチ看板まではごく緩やかな下り勾配だが、アーチ看板をくぐってから急激な下り勾配が始まり、谷底に落ちるような感覚になる。
アーチ看板の地点と90度コーナー(11コーナー)の高低差は21mである。ビル7階建て分の高さを一気に下る。ダウンヒルストレートを下から見た写真を見ると、悪い冗談としか思えないような傾斜になっている。
ヘアピンの立ち上がりはコースの外側で、ダウンヒルストレートの中間地点でコースの内側へ移り、ダウンヒルストレートエンドの90度コーナーではコースの外側へ移る、このようなコースを2回横切る蛇行が最大排気量クラスで一般的である(2013年動画)。
近年のMotoGP最大排気量クラスは、電子制御のトラクションコントロールが発達していて、バイクが深く傾いている状態から一気にガバッとアクセルを開けることができる。そうするとバイクが勢い余ってコース内側にまで移動する。「マシンを起こしてからアクセルを開けて真っ直ぐ走って距離を得する」よりも、「一瞬でも早いタイミングでアクセルを開けて加速力を伸ばす」ことが有効と各チームが判断している。
2002年の最大排気量クラスの記録映像がある(動画)。この年は4ストロークエンジンの初年度で、電子制御のトラクションコントロールがまだ未発達だったため、バイクが深く傾いている状態からアクセルをガバッと開けることができなかった。それゆえ、ダウンヒルストレートの蛇行が現在よりかなり控えめになっている。
ちなみに、雨が降って路面が濡れるとタイヤが滑りやすくなるため、バイクが深く傾いている状態からアクセルをガバッと開けることをあまり追求しなくなるし、そもそもコーナーリングでバイクを深く傾けない。このため、ダウンヒルストレートの蛇行が晴れのレースよりも控えめになる(動画)。
電子制御のトラクションコントロールが無いMoto2やMoto3のレースだと、最大排気量クラスよりも蛇行は控えめである(Moto2動画、Moto3動画)。
ちなみに、蛇行には「ウィリーを抑制できる」という利点がある(青山博一解説)。
このため、「なぜダウンヒルストレートで蛇行するの?」と質問されたら、「MotoGPクラスはトラクションコントロールがあり、その影響を受けるため。Moto2クラスやMoto3クラスはウィリーを抑えるため」と答えておくとよい。
ダウンヒルストレートエンドの90度コーナー(11コーナー)は難易度が高く、テクニックを要する。
ブレーキングの初めは優しくソフトにブレーキレバーを握らねばならない。そして徐々に握りを強める。いきなりガツンとブレーキを握ると一気にリアタイヤが浮いてしまう。
2014年金曜の練習走行で、ダニ・ペドロサがいきなりガツンとブレーキレバーを握ってしまい、リアタイヤを思いっきり浮かせてしまった(動画)。リアを浮かせたまま130メートルも走ったらしい。
恐怖を感じるほどの急激な下り坂をアクセル全開で走る状態から激しいブレーキを行うので、多くのマシンがリアタイヤを1~2cm浮かせるジャックナイフとなる。
2011年のケーシー・ストーナー(動画)、2013年のヴァレンティーノ・ロッシ(動画)がここで止まりきれずにオーバーランしてグラベル(砂)に突っ込んでいる。MotoGPの歴史に名を残すレジェンドライダーもコースアウトする厳しいコーナー。
MotoGPでは、ガソリンを満タンにした状態で決勝レースを始める。このため1周目は車重がやたらと重く、ただでさえ難しい90度コーナーにおけるブレーキングがますます難しくなる。MotoGPで活躍した元ライダーが「1周目の90度コーナは本当に難しい」と苦渋に満ちた声で解説することがある。
また、ブレーキしすぎてスピードを殺しすぎてもいけない。角度のきついコーナーではなく90度コーナーなので、ある程度のスピードを残してコーナーに入りたい。このため、「もっとも強くブレーキングする場所」の座を僅差で5コーナーに譲っている。
90度コーナーを過ぎてもまだ下り勾配が続き(動画)、セカンドアンダーブリッジまで同じ傾斜の下りが続く。下り勾配が続くせいでグリップが薄く感じられ、なんとも走りにくい。
このように90度コーナー周辺は難しい。
90度コーナー(11コーナー)を脱出したら可能な限りマシンを右に寄せる。Dunlopの看板があるセカンドアンダーブリッジの中できちっとコース右に寄っているのが望ましい(動画)。
左コーナー1発目(12コーナー)はかなりの高速コーナーで、橋をくぐってここを高速で駆け抜けるライダーをピット側から写すのがテレビ中継の定番である(動画)。
左コーナー1発目を過ぎた後はアスファルトが広がっており(航空写真)、転倒したライダーが滑ることがある(動画)。
ちなみに、左コーナー1発目(12コーナー)が標高147mで、本サーキットの最底辺となっている。ヘアピン(10コーナー)がサーキット最高峰の標高178mなので、サーキット全体の高低差は31mとなる。
左コーナー1発目(12コーナー)を過ぎてからグイグイと登っていく。左コーナー2発目(13コーナー)と最終14コーナー(ビクトリーコーナー)はS字になっていて、そのS字の最中も上り勾配である(動画)。最終14コーナーを過ぎたところの標高は153mなので、短い距離で6mも駆け上ることになる。
最終14コーナー(ビクトリーコーナー)は隠れた難所となっている。
ここは急激な上り勾配になっていて、上りきった頂点で直線にさしかかるので、思い切りアクセルを開けたくなる。
しかしながら上り勾配を上りきった頂点はリアタイヤの荷重が抜けて滑りやすくなっているものであり、そこでアクセルをガバッと開けるとリアタイヤが滑ってしまう。そして急にグリップが回復してライダーがマシンからはじき出され、絵に描いたようなハイサイド転倒になってしまう。
だから最終コーナーの立ち上がりは慎重にアクセルを開けなければならないが、それを忘れた軽量級の若いライダーがガバッとアクセルを開けてハイサイド転倒する例が後を絶たない。
2013年のMoto3決勝でランキング2位のアレックス・リンスが3位走行中にハイサイド転倒したのもこの最終コーナーだった(動画)。3位で終わっていればランキング1位になって最終戦に進んでいたのに、転倒でランキング3位へ転落してしまった。まさに運命を変える転倒になってしまった。
最終14コーナー(ビクトリーコーナー)はイン側の狭い場所だけにカント(傾斜)が付いており、
アウト側にはカント(傾斜)が付いていない。針に糸を通すような感じでカント(傾斜)が付いているイン側の狭い場所を通らなければならない。走行ラインはたった1本だけで、パッシングは不可能に近い。
モビリティリゾートもてぎはハードブレーキングサーキットであり、ライダーの両腕筋肉への負担が大きい。MotoGPに帯同する医師によると、モビリティリゾートもてぎで腕上がりの症状を訴えるライダーは非常に多く、世界トップクラスに腕を酷使するサーキットであるとのこと(記事)。
最大排気量クラスにおいて5コーナーや90度コーナーでのブレーキレバーへの入力は約8kg。2リットルペットボトル4本を右手の指3~4本で引っ張り上げるのと同じ操作を行う。それに加えて強烈そのものの減速Gがかかり、「重りを背負って腕立て伏せをする」と形容されるような激しい負荷が上半身にのしかかる。
また、ハードブレーキングサーキットであるがゆえに、ライダーへの精神面への負担も大きい。バイクを止めるというのは素人目には簡単そうに見えるのだが、2輪のバイクをしっかり止めて、コーナーの中でコントロールしつつ減速して、しっかり向きを変えて立ち上がっていくのは非常に難しい作業なのである。バイクの操作にほんのちょっとの狂いもミスも許されず、非常に正確な操作が必要になる。そうしたブレーキングが絶え間なく延々と続くので、ライダーの精神的な消耗も激しい。
モビリティリゾートもてぎは厳しいコースで、肉体面でも精神面でも充実していないと好成績を収められない。
MotoGPライダーのなかでも、モビリティリゾートもてぎがとても大好きだというライダーは非常に少ないらしい。
ライダーにとってはまさに過酷そのもの、試練の場所といえるだろう。
ここを得意としていたのはロリス・カピロッシで、最大排気量クラスで3連覇を達成した。また2002年には非力な2ストローク500ccマシンで4ストローク990ccマシンに競り勝ち、1位から7秒差の3位に入賞するという偉業を達成している。
モビリティリゾートもてぎでキャリア初優勝を飾ったライダーは5人いて、中野真矢、青山博一、ヨハン・ザルコ、ダニー・ケント、アレックス・マルケスである。そして、この5人のうち4人が後に世界チャンピオンになっている。世界チャンピオンになれなかった1人も、7ポイント差のランキング2位を獲得した。
モビリティリゾートもてぎは難しいサーキットであり、まぐれで好成績を収めることができない。このため、このサーキットで好成績を収めたライダーは翌年以降に注目すべきである。マルコ・ベッツェッキというライダーがいて、2017年はフル参戦1年目で下位をさまよっていたが、シーズン後半のモビリティリゾートもてぎのレースでいきなり3位表彰台になった。その翌年の2018年に大躍進してチャンピオン争いをずっと続けるライダーになった。
掲示板
9 ななしのよっしん
2021/11/16(火) 10:40:09 ID: Tu5fh/uKsq
仮面ライダーアギトの配信より
10 ななしのよっしん
2022/03/01(火) 19:49:50 ID: XTFEtG3Gb/
記事名変更
https://
https://
11 ななしのよっしん
2023/08/19(土) 20:17:57 ID: 7yMx6n5HcB
コレクションホールの展示すごいな
国宝と言っても過言ではないマシン達が並んでるわ
急上昇ワード改
最終更新:2024/05/13(月) 01:00
最終更新:2024/05/13(月) 01:00
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