Vやねん!(ぶいやねん!)とは日本野球史上に残るネタ逆転劇であり、阪神ファン最大のトラウマである。
元ネタは「Vやねん!タイガース」という、日刊スポーツ出版で2008年9月3日に発売された、阪神タイガースの優勝を祝うはずだった本である。
そしてこの本は、プロ野球史上最大の負けフラグとして、今もなおネタにされている。
2008年の阪神タイガースは春先から好調を保ち続け、一時期は2位に13ゲーム差を付けて独走。レギュラーシーズンの優勝はほぼ間違いないと思われていた。それを受けて日刊スポーツ出版社が9月の頭に発売したのがこの本である。
しかし、後半戦になると2位の読売ジャイアンツが破竹の勢いで接近。逆に首位の阪神は先発が長いイニング持たないこと、好調だった新井貴浩が疲労骨折の影響で戦線離脱したことで春ほど打線が繋がらなくなったことなどで失速。夏場以降は1位をキープしているもののマジック点灯→消滅を繰り返し、巨人に直接対決で大きく負け越すなどじわじわとその差を詰められていた。また、この本が発売された時点で巨人には5ゲーム差まで詰め寄られていた(マジック24は点灯していたものの既に3度消滅済み)ため、ファンは「(『Vやねん!~』の発売は)見切り発車過ぎでは?」と不安をつのらせた。
そして10月3日の東京ヤクルトスワローズ戦で、5点リードをひっくり返されての敗戦を喫し、ついに巨人が同率の首位に並びかける。一旦単独首位に戻ったものの、10月8日の直接対決で敗北。首位陥落と同時に巨人にマジック2が点灯した。その2日後、10月10日の横浜ベイスターズ戦。巨人がヤクルトに勝ち、阪神が横浜に敗れたため巨人のレギュラーシーズン優勝が確定。13ゲーム差をひっくり返した巨人は11.5ゲーム差をひっくり返した96年の逆転劇「メークドラマ」になぞらえて「メークレジェンド」を残す。同時にひっくり返された阪神は「歴史的V逸」として名を残すことになった。後に残ったのは本商品の存在、および微妙な気まずさだけである。
しかし「メークドラマ」達成時と違い、今のプロ野球にはクライマックスシリーズ(以下:CS)があることから、阪神ファンはCSでの逆転日本シリーズ進出(2007年の中日ドラゴンズが好例)に期待を掛けた。
CS1stステージ、中日との勝負は第3戦までもつれこんだ。0対0で迎えた9回表、この回から登板した阪神の守護神、藤川球児がタイロン・ウッズに痛恨の被弾。これが決勝点となり阪神は0-2(第1戦に続く完封負け)で敗北。同時にCS敗退が決定した。藤川は岡田彰布監督(当時)が絶対の信頼を寄せるストッパーであり、ペナント終盤では同点の時(セーブが付かない時)でも8回・9回から藤川が登板するケースが多かった(更に言えばCS第2戦においても、4点リードがあったにもかかわらず藤川が登板した)が、ここ一番でそれがアダとなる形となってしまった。
かくして巨人にリベンジする機会すら与えられないまま、阪神の2008年シーズンは閉幕。そして岡田監督はこのV逸の責任を取って逃げるように辞任した。
「絶対的守護神が打たれて敗北」「全くかみ合わない打線」「結局V逸」「MAKE(まけ)レジェンド」とあって、この日の2ちゃんねるの実況板や各所のブログ・掲示板はお祭り騒ぎだった。そして事あるごとに本商品をネタとして宣伝・投下された。本商品の表紙をこのV逸後から「何がVやねん!タイガース」や「V逸やねん!タイガース」と改変された画像が出回り、物笑いの種となった。
またこれ以降、ネット上では野球に限らず「縁起物を出した結果、かえって悪い結果を招いた」ケース(下記参照)や、「前半は圧倒的な強さで独走するも、徐々に失速して最終的に逆転負け」という展開になったケースを、本書にちなんで「Vやねん!」と揶揄することがある。他にも、表紙に書かれていたフレーズ「(胴上げ)待ったなし!」も汎用性が高くしばしばネタにされる。
なお、全ての元凶となった日刊スポーツ出版社は、巨人の優勝が決まるや否や「原巨人奇跡の逆転V」という本をいけしゃあしゃあと出版している。
この“Vやねん事件”以降に、日本プロ野球をはじめとするスポーツ界では縁起物を出して逆効果になった事例がいくつも起きている。この事象から抜け出せているのは、2013年優勝した東北楽天ゴールデンイーグルスの「楽天 いくぞ初V」(サンケイスポーツ、8月5日発売) などごくわずかにとどめられている。
6月24日、神宮球場でのヤクルト戦に勝利し、一番乗りでセ・リーグ40勝を達成する。
その翌日、サンケイスポーツが「日本中のG党のみなさま、リーグ4連覇は“当確”でございます!!」という序文とともに、66試合終了時点での40勝到達は過去27度、うち26度が優勝なのでV率は96.3%であるというデータを用いて巨人の優勝を予見する記事を掲載する。(この「ただ1度きり優勝を逃した例」は前述のVやねんである)
しかし、この年リーグ優勝したのは中日ドラゴンズで、巨人はV逸どころか3位に終わり、CSでは2位阪神を破って第一ステージを突破するものの最終ステージで敗退。これにより、「当確(でございます)」というフレーズはなんJにおけるそっ閉じの定番スレッドでよく用いられるようになった。
8月に野手陣の不振で中日と巨人に追いすがられたが、9月に9連勝で優勝を決定的にした。
…と思われた矢先、日刊スポーツ出版社がおめでとうヤクルトスワローズなどという本の発売を決定する。
この後悪夢のように故障者が続出し、最終的に中日に優勝を攫われた。この他、公式でも「Vロード」キャンペーンを張っており、関連グッズを積極的に売り出してしまっていた。
ロンドンオリンピック男子サッカーは、メンバー入り濃厚とみられていた香川真司や大迫勇也が落選する中、直前の練習試合で金メダル候補のメキシコ(実際に決勝でブラジルを破り金メダルを獲得)や同じく予選で金メダル候補のスペインを1-0で破るなどして、メダル獲得の機運が高まっていた。
そんな中、「週刊サッカーマガジン」2012年8月21・28日号(ベースボール・マガジン社)にメダルだ!メダルだ!メダルだ!などという見出しが出た。当然Vやねんを初めとした前例が数多く残っているため、サポーターが不安がらない訳がない。
案の定、しかもよりによって竹島問題でちょうど険悪ムードにあった韓国に敗れてメダルを逃した。
一方、見出しで大きく取り上げられなかった「なでしこジャパン」こと女子サッカー日本代表は、並み居る強豪を撃破して初の決勝に進出し、 FIFAランキング1位のアメリカにこそ惜敗したものの見事銀メダルを獲得した。
序盤こそやや苦しい戦いが続いていたカープだが、交流戦あたりから阪神とヤクルトが不振に陥った隙に3位を奪取、久々に前半戦をAクラスターン。
しかし、8月後半に何を血迷ったのか公式がCSスペシャルグッズを発売。
「優勝じゃなくてCSなら大丈夫だろう」という意見もあったが、やっぱり駄目だった。9月に入ってから打撃陣が不振に陥り点が取れなくなり、故障者だらけでボロボロなはずのヤクルトに3タテを喰うなどし、結局15年連続のBクラスが確定した。
シーズン最終節、J2所属の京都サンガはJ1自動昇格圏の2位につけていた。しかし首位甲府との対決は痛恨のドローに終わり、三位の湘南が勝利したため順位が逆転。京都は昇格プレーオフにまわることになった。
…はずだったのだがその翌日、京都公式サイトはJ1昇格記念特設ページをオープンする。「監督からの感謝のたより」には「テキストテキストテキストテキスト」…という文字列で埋められており、どうやら予め用意していた昇格記念ページを誤って更新したものと思われる。
なお、その後京都はプレーオフ初戦で有利な条件(京都ホーム、90分間で決着がつかなければ京都勝利扱い)に恵まれていたにも関わらず、6位大分に0-4という大敗を喫してプレーオフを早々に敗退。J1昇格の夢は潰え、特設ページが正式な形で更新される機会も失われてしまった。
「海の向こうのVやねん!」とも言われる大リーグでの事例。
2012年のレンジャーズは開幕から絶好調で、2位に対し13ゲーム差と圧倒的な強さで独走、地区優勝は間違いなしと見られていた。
ところが最後の9試合で5ゲーム差を詰め寄られ、さらに「1つ勝てば地区優勝」となる2位オークランド・アスレチックスとの直接対決3連戦でも2連敗、あっという間に同率首位で並ばれてしまう。
そして10月3日のシーズン最終戦において、レンジャーズは3回に5点を取りセーフティリードを奪ったと思われたが、4回に連打であっさり追いつかれ、なおも二死1・2塁の場面で中堅手のジョシュ・ハミルトンが平凡なフライを痛恨の落球。そのまま5-12で敗れ、歴史的V逸となった。
その後のボルティモア・オリオールズとのワイルドカードゲームにも敗れ、ポストシーズンにも進めなかった。
そして最終戦でフライを落としたジョシュ・ハミルトンは、世界の野球の歴史に刻まれし人類の超特大超特別A級最終戦犯ジョシュ・ハミルトン特別終身名誉死刑囚と呼ばれることとなった。
ついにWBCでも発生。日本の準決勝進出が決まり、後2試合勝てば優勝となった時にデイリースポーツが『侍ジャパンWBC3連覇特集号』という敗北フラグの塊を3月21日に発売することを決定する。もちろん、優勝できなかった場合は発売されない。
そんな中迎えた3月18日の準決勝戦、侍打線からの快音はなく、1-3で敗戦。当然だがWBCの3連覇とはならなかった。試合終了後はTwitterなどで戦犯はデイリーなどと言われる。
なお、この事件によって「Vやねん!タイガース」もデイリースポーツの仕業であった(神戸に本社を置くデイリーは過度の阪神への傾向報道で知られておりそう取られても仕方がなかろう)と勘違いしている事実誤認者が見受けられるが、そちらは日刊スポーツ出版社の発行であり、デイリーと日刊は全くの別会社である。
2013年シーズンでは、2004年以来の上位争いを展開し、第33節で15位の新潟に引き分けるか勝てば9年ぶりの優勝確定・・・!と言う所まで来ていた。ちなみに前節32節の時点では、横浜Mは勝ち点62、広島は勝ち点57。もしも横浜Mが2連敗すれば、広島勝ち点1点差で逆転されてしまう位置でもあった。そんな緊迫した状況の中、何と週刊サッカーダイジェスト(日本スポーツ企画出版社)が、増刊「Jリーグ横浜Fマリノス優勝記念号」を12月12日に発売する!と予告を出してしまった。
そんな中迎えた11月30日の第33節新潟戦、新潟に攻め込まれ0-2で敗戦。優勝の行方は12月8日に行われる最終節となる第34節に持ち越されるも、ACL出場権がかかっていた5位川崎フロンターレに0-1でまさかの敗戦し等々力劇場に。そして広島が鹿島アントラーズに2-0で勝利し2連勝した為、勝ち点57からの+6点で勝ち点63とし、横浜Mが勝ち点1点差で広島に逆転優勝を許す結果となった。
なお、横浜Mと広島は後に第93回天皇杯全日本サッカー選手権大会の決勝(2014年元旦)で直接対決するが、この時は2-0で広島を下し、21年ぶりの優勝を果たしている。
ソチオリンピック日本代表で、女子スキージャンプの高梨沙羅も残念ながら悪夢のフラグからは逃れられなかった。
高梨はワールドカップ、世界選手権などで金メダルを多く獲得しており、悪い時でも銅メダルであったため、大会前からNHKをはじめ民放マスコミや各メディアなどがこぞってメダル獲得の大本命にあげていた。
特にNHKは大々的に取材攻勢をかけ、五輪開幕前から高梨に密着取材。開幕後は海外メディアからも「高梨は金だろう」という声を流し、過去の成績や当時の今季シーズン結果から予想して金メダルの獲得率95%という盛大なフラグをぶっ立てる。全国地上波、それもNHKの鶴の一声に加え、各種メディアの後押しもあり、「高梨の金メダルは95%、万が一ダメでも銀か銅でメダルは確実」という風潮が世間やメディアには流れていた。
しかし、いざ本番を迎えてみると高梨は度重なる取材攻勢もあったのか本来の力を出せず、またジャンプ台のシステムやジャンプ時の風にも嫌われ、合計243.0点の4位に終わる。くしくも2位3位の選手とは僅差であり、本人にとって非常に悔いの残る結果となってしまった。試合後には涙を我慢しながらコメントする高梨の姿が流され、視聴者の涙を誘った。一部の一般人やインターネットユーザーでは、不本意な結果になった高梨や、異常なまでに取材攻勢をかけて期待をかけていたマスコミを叩く声があったものの、Vやねんの悪夢を知る野球ファンからはおおむね同情的な対応をされており、取材攻勢を不安視する声は大きかった。
ちなみに、ソチオリンピックは終わってみれば高梨に限らず波乱の多い大会となってしまい、他にも金メダルは間違いなしと言われたアメリカ代表のショーン・ロジャー・ホワイトが、こちらも4位という結果に終わってしまっている。一方、メディアの取材攻勢をほとんど受けなかった男子ハーフパイプ(スノーボード)では、日本代表の平野歩夢、平岡卓両選手がそれぞれ銀メダル、銅メダルを獲得し、日本人選手初の同競技・種目におけるメダル獲得となった。
他にも、アイススケートの男子個人戦ショートプログラムでは、前日自己ベストを叩きだし首位にたった羽生結弦選手が、前日の冴えが嘘のようにミスを連発。演技終了後に「金メダルはダメかな」と思ったと言われるほど落胆。しかし2位につけていたカナダ代表のパトリック・チャンが、金メダルへのプレッシャーからか、こちらも本来のコンディションであれば軽く成功するであろうと思われるようなささいなミスを連発してしまい、結局羽生選手は冬季五輪では日本人初となる金メダルを獲得している。
阪神の2014年シーズンは、ペナントレースこそ1位の読売ジャイアンツに7ゲーム差を付けられ2位でフィニッシュするも、クライマックスシリーズでは、ファーストステージで3位の広島カープを1勝1分(規定により、引き分けの場合は上位球団の勝利となる)で下し、ファイナルステージでは1位の巨人に4勝1敗(※アドバンテージによるもので、実質全勝)と、破竹の勢いで日本シリーズへと駒を進める。
一方のパ・リーグのCS勝者は、福岡ソフトバンクホークス。こうして、10月25日から甲子園球場で開幕した鷹虎対決は、25・26両日の時点で1勝ずつと言う膠着状態で、10月28日の福岡ドーム戦へ・・・
…ところが、その28日に阪急阪神ホールディングスが「日本一の記念グッズ・企画・セールを用意する!」と予告してしまう。6年前のあの悪夢の再来を誰しもが恐れた・・・が、ものの見事にその予感は的中してしまう。
28日の第3戦では、先発出場したキャッチャーの鶴岡一成が捕逸を繰り返したり、西岡のフィルダースチョイスなどで5-1で敗北。続く翌29日の第4戦でも、2対2で迎えた10回表に1・3塁の状態でゴメスがダブルプレーに倒れ、同裏にピッチャーを呉昇桓へと変え、2アウトとした所で中村にサヨナラ3ランホームランを打たれて5-2で敗北を喫し、まさかの3連敗を喫してしまう。
そして、阪神にとっては後が無い10月30日に行われた第5戦。この日は両軍投手戦となり、8回まで0行進を続けるが、8回裏に2アウト1・3塁の状態で、先発のメッセンジャーが松田にセンタータイムリーを打たれてしまい、1-0とされてしまう。しかし、9回裏に登板したソフトバンクの守護神サファテが大乱調、上本がフォアボールで出塁。鳥谷が三振に倒れるも、続くゴメス・福留が連続でフォアボール出塁、満塁となる。
ここで6番西岡に廻り、1ストライク(ファール)で3ボールと、ストライクが全く入らないサファテ。同点・逆転も有り得る場面であった。
しかし、悪夢は唐突にやってきてしまう。
西岡は、ストレートド真ん中へ来た5球目をファーストゴロとしてしまい、ホームへ向かっていた上本が本塁憤死。ここで、細川がファーストの明石へ送球した際に、球が西岡を直撃。
ところがこの際、西岡はスリーフットレーン(一塁線上に並行に引かれている長方形のライン。打球走者は守備の邪魔にならないよう原則ここを走る必要がある)から外れて、一塁線の内側を走った末に送球が当たっていた事から、球審の白井一行審判に「守備妨害」を宣告されてダブルプレーとなり試合終了。福岡ソフトバンクホークスの日本一が決定し、当の阪神タイガースにとっても後味の悪い最期となってしまった。
カープは、2012年まで実に15年連続Bクラスと低迷していた。しかし、2013年・14年に2年連続でAクラス入りを決めたこと、さらには14年オフにニューヨーク・ヤンキースからかつてのエース・黒田博樹が復帰したこと、何よりカープ女子ブームを初めとするマスコミの猛プッシュもあって、2015年は多くの野球関係者がカープを優勝候補に挙げていた。
そしてこの流れに乗ったサンケイスポーツが、開幕前の3月23日に「おかえり!黒田 カープ優勝するんじゃけぇ」という本を発売した。
しかし、これが見事にフラグとなってしまう。
前年本塁打王のブラッド・エルドレッドの故障などもあって、開幕直後から早速躓いてしまい、3・4月で実に7つの借金を作ってしまう。話題の黒田は11勝をあげるなど好投し、前田健太らも先発の柱として活躍したが、打線が振るわない時期が長く、貧打で投手を見殺しにしてしまうケースも多かった。
結果、なかなか借金を完済することができず、9月24日には優勝の可能性が完全に消滅してしまった。その後は阪神とCS出場をかけて3位争いを繰り広げたが、シーズン最終戦、勝てばAクラス入りという大事な試合を1安打で完封負け。
この年の阪神は5月までは低迷したが、交流戦ではセ・リーグ球団で唯一勝ち越しを決めるなど徐々に復調。後半戦は巨人、ヤクルトとの首位争いを繰り広げ、8月8日以降は首位をキープ、一時は2位のヤクルトに3.5ゲーム差をつけていた。
とはいえ、この年のセ・リーグは稀に見る混戦であったため、阪神ファンは決して楽観視できない状態にあった。
しかし、そんな中動いたのが週刊ベースボールだった。9月14日号(9月2日発売)で、あろうことか阪神の大特集を組んでしまう。タイトルは「セ界制覇へ突き進め Vやで!タイガース」。
既視感しかないタイトルに、多くのファンは不安を感じたが、それは見事に的中してしまう。
この号発売から数日は持ちこたえたが、徐々に黒星を重ねていき、9月11日には2位に転落。翌日には一旦首位に戻ったが、その後は見る見るうちに貯金を減らしていき、最終的な成績は借金1の3位。
見事に第二のVやねん!と言える状況を作り上げてしまった。
ちなみに週刊ベースボールは同年の6月8日号でも「17年ぶりのVへ突き進め! 熱き星たちよ!!」という、当時首位をキープしていたDeNAの特集記事を掲載した。
こちらもこの特集以降、交流戦で10連敗するなど低迷し、最終的には「前半戦を首位でターンしたが、最終的な順位は最下位」という史上初の不名誉な記録を残してしまった。
これらのことから、この年には週刊ベースボールの呪いというジンクスが生まれ、敵対するチームが好調な場合、「週ベ(敵チームの)特集はよ」と懇願する人も少なからず見られた。
この年のホークスは開幕当初は若干低迷していたが、4月中旬以降は徐々に復調し、交流戦では2年連続となる最高勝率となるなど一気に勢いが加速し、さらには3位の北海道日本ハムファイターズに11.5ゲーム差をつけ、一時は日本球界史上最速のマジック点灯の可能性すら出るほどの圧倒ムードだった。
そんな中、7月25日号の週刊ベースボールでは福岡ソフトバンクホークスの特集が組まれる。
この雑誌が発売された当初は何とか持ちこたえたが、徐々に失速していき、最終的には11.5ゲーム差あった日本ハムに逆転優勝を許した。
前年J2へ降格した松本山雅FCであったが、1年でのJ1復帰を目指しシーズン前半を3位で折り返す。そしてシーズン後半早々昇格圏内の2位に順位を上げ、第25節から第40節までの16戦で9勝7分と勢いに乗り、首位のコンサドーレ札幌と勝ち点で並び、J2優勝まで見えるようになった。
そんな中、11月20日に信濃毎日新聞が「松本山雅FCJ1昇格記念信濃毎日新聞特別セット」と称し、昇格を伝える号外、昇格を伝える日付の新聞、昇格を伝える日付のタウン誌の3点セットの販売を告知。完全に昇格が決まったかのようなお祭り騒ぎであった。
しかしこの告知が出た直後の第41節・町田ゼルビア戦で17試合ぶりの黒星を喫し、3位の清水エスパルスに得失点差で抜かされてしまう(ちなみに清水エスパルスは第33節での直接対決に敗れてから8戦全勝と松本山雅FC以上に勝点を積み上げてきており、本来であれば浮かれられる状況ではなかったのだが、松本山雅FCのファンだけでなくフロントもそれが見えていなかった)。そして最終節では勝利するも清水エスパルスも勝利したためシーズン3位に終わり、自動昇格を逃してしまう。
それでも昇格プレーオフに回り、引き分けでも勝ち上がる有利な状況であった…が、初戦のファジアーノ岡山にまさかの逆転負けを喫し、昇格を逃してしまった。
2016年のアメリカ大統領選挙において、多くの世論調査で民主党候補のヒラリー・クリントン優勢とみなしており、一般投票を目前に控えた11月初旬、読売新聞国際部は12月に『ヒラリー、女性大統領の登場』を出版することを告知した。
ところが蓋を開けてみれば、ヒラリーは投票数こそ上回ったものの、獲得選挙人は304-227の大差で共和党候補のドナルド・トランプに敗北となってしまった。
この年は西武の長年のエース岸孝之が加入。前年活躍の茂木栄五郎を1番、2番ペゲーロ・3番ウィーラー・4番アマダーという攻撃的オーダーを組み絶好調。7月7日まで首位の座を守り続ける。その後2戦ホークスに首位を明け渡すも再び取り返し首位を守る。
そこで7月21日にサンケイスポーツから特別版として発売されたのが、
『2017 4年ぶりリーグ制覇&日本一へ 楽天V進撃』という本である。
その後楽天は故障者が相次ぎ、勢いを無くしていく。故障者が戻ってきた後も得点力が大幅ダウン。8月15日に西武に17失点で負けた後、糸が切れたように負け続け、6連敗のあと1勝を挟むもさらに5連敗。14日に首位だったはずが翌週の27日には9.5ゲーム差をつけられてしまう。
最終的には西武にも追い抜かれ、3位でレギュラーシーズンを終えることになってしまった。
秋場所11日目終了時点で豪栄道は10勝1敗と他の力士に2差を付け、一方日馬富士は序盤の3連敗もあって7勝4敗と優勝争いから脱落したものと思われた。
ところが12日目・13日目と豪栄道は連敗、14日目時点で日馬富士に1差まで付けられる。そして千秋楽、本割での直接対決で豪栄道は日馬富士に寄り切られ、優勝決定戦に。そして決定戦でも豪栄道は良いところなく寄り切られ、「11日目時点で3差からの逆転V逸」という史上初の不名誉な記録を残してしまった。
金本知憲政権の3年目、落ちぶれ掛かっていた中堅・ベテランの復活に加えKBOで素晴らしい成績を残した大砲ウィリン・ロサリオを獲得。金本が関わったドラフト組も頭角を現しており、期待を持たれていた。
これに便乗したサンケイスポーツが開幕直前に84頁にも及ぶ「Vやったるで!!タイガース」を発売。するとオープン戦は最下位に終わり、開幕後も貧打は治らず。ロサリオは三振と併殺の山を積み上げ、戦力にならなかった。結局終盤にベテラン陣の相次ぐ故障で失速すると、中日ドラゴンズとの逆デッドヒートの末最下位フィニッシュ。親会社の意向により、戦犯とされた片岡篤史打撃コーチ共々金本は更迭された。
2019年の第95回箱根駅伝において、青山学院大学は箱根総合5連覇及び二度目の大学駅伝三冠達成は確実と多くのスポーツ雑誌が書き立てていた。
ところが4区の岩見秀哉が失速して3位に転落すると、キーマンとされていた5区の竹石尚人がさらに失速し、東洋大に往路優勝をさらわれ6位に終わる。翌日の復路では6区で区間新記録、7区・9区で区間賞と怒涛の追い上げを見せ、復路優勝こそ成し遂げたものの、総合優勝を東海大に奪われ2位に終わってしまった。
2020年オフ、大赤字に苦しむ親会社をよそに次々と大型補強を成立させ、ドラフト会議では4球団競合の末に大学No.1スラッガー・佐藤輝明を獲得した阪神タイガース。流石にこれだけ金を積めば勝てるだろう…との期待通り、2021年シーズンは開幕から首位を独走。補強組は目立った活躍を見せられなかったものの爆発力こそないが勝負強い打線と鉄壁の先発投手陣が噛み合い、一時は2位に8ゲーム差をつけていた。
…しかし、やはり敵は身内に居た。6月20日、地元ABCテレビが『虎バンSP #あかん阪神優勝してまう』なる特番を放送。タイトルこそ願望表現だが中身は案の定見切り発車的なものだった。この時点で既に阪神は失速気味であり、身に覚えのある展開に不安を覚えたファンも多かっただろう。すると中々貯金を増やせない間に下位球団をカモった読売ジャイアンツと東京ヤクルトスワローズに詰め寄られ、ゲーム差は1.5に。そこから首位陥落の危機を14度も凌いだ阪神だったが、前述の佐藤がケガで急激に調子を落とすと藤浪晋太郎・西勇輝・齋藤友貴哉・中野拓夢・梅野隆太郎・サンズの不振に加え開幕から低空飛行の続く岩貞祐太・糸原健斗・大山悠輔の更なる失速が重なった8月29日、遂に勝率差で3位に転落してしまう。
それでもこの年の阪神は諦めない。中野・大山は打棒が戻り、投手陣も奮闘。1点をもぎ取る泥臭い野球で激しい首位争いを繰り広げ、10月に入っても全く先が読めない混セに持ち込んだ。ところがABCテレビも諦めていなかった。10月3日、今度は『虎バンSP 16年ぶりに阪神優勝してまう?』を放送。するとこれに前後してヤクルトが連勝街道に乗ってしまい、お得意様の広島東洋カープと強烈な逆噴射をかました巨人を立て続けに3タテ。一方の阪神は広島に被3タテされ、戦況は悪化していった。そして10月8日、阪神はヤクルトとの直接対決に敗れ、ヤクルトにマジック11が点灯。両軍合わせて15人の投手と6人の代打を注ぎ込んだ「10.10決戦」にも敗れるとその後もヤクルトの勢いは止まらず、マジック2として迎えた10月26日にヤクルトが勝ち、阪神が敗れたためヤクルトのリーグ優勝が確定。下馬評通りの好発進と過剰なまでの盛り上がりの先にあったのは、2008年に次ぐ規模のV逸という屈辱だった。更にこの日は阪神のリーグ最終戦、そして岩田稔の引退試合だったため、輪をかけて後味の悪い幕切れとなってしまった。
リーグ優勝を決めたものの、ヤクルトは残りの2試合に連敗。シーズン成績はヤクルトが73勝52敗18分(勝率.584)、阪神が77勝56敗10分(.579)。両チームのゲーム差は「0」で、勝率差は僅かに0.05だった。しかも、かつて採用された『引き分けを0.5勝&0.5敗』として勝率を計算すると、ヤクルトは上記の成績に+9勝9敗、阪神は+5勝5敗となり、82勝57敗で完全に同率になるのである[1]。延長なしルールだっただけに、阪神は引き分けの少なさに泣くこととなった。
悪夢はまだ終わらない。ポストシーズンで挽回したい阪神だったが、今度はあろうことかNHK大阪がパ・リーグ優勝を果たしたオリックス・バファローズとの関西ダービーを期待する『あるで!?阪神×オリックス』なる企画をCS直前に放送した(虎バンでも同様の特集が組まれていた)。これがフラグとなってしまったのか、怪我を抱えながらシーズンを戦い抜いた大山がフル出場できず火力不足を露呈。失策がことごとく失点に繋がり、頼みのジェフリー・マルテも冷温停止した阪神はCS1stステージで巨人に2連敗し終戦。屈辱的なシーズンのV逸に加えてリベンジの機会すら得られずに終了と正しく2008年の再来となった。とばっちりを食らったオリックスはCSは2勝1分で難なくCSを突破しフラグを回避した…かと思いきや日本シリーズでABCテレビが第三戦を前に牛バンTVなる特番を組みまさかのフラグの追撃。こちらはしっかり効果を発揮し放送後オリックスの二連敗であっという間にヤクルトに王手をかけられ一戦は取り返したもののオリックスは日本一を逃したため、改めてネタにされるとともに「二度と特番組むな」「ABC停波しろ」などと批判され、普段そこまでオリックスに関心のない関西メディアが都合よくオリックスに便乗したことに呆れる声も聞かれた。(なおこの年の日本シリーズ第3戦はABCテレビが準キー局のテレビ朝日系列での放送だったのでそれを狙って行なったと思われる。また、ABCラジオは阪神が出場しないクライマックスシリーズは一切放送していない上に2019年以降は阪神が出場しない日本シリーズは一切放送しない方針を取ってる。)
なお槍玉に挙げられた虎バンSPであるが、現役時代にVやねんを経験した下柳剛氏・関本賢太郎氏・矢野燿大監督がノリノリで出演していたことを付記しておく。
自由民主党は新型コロナウイルス対応で求心力を失った菅義偉政権が退陣するなど世論の逆風に晒されており、2021年10月に行われた衆議院議員総選挙でも終始苦戦が伝えられていた。一方立憲民主党は日本共産党と閣外協力を結んだ他国民民主党や社民党とも小選挙区候補の一本化を調整し、過去最大規模となる野党共闘を実現。ある程度の躍進が予想されていた。この構図は選挙戦終盤になっても変わらず、投票締切時にはほとんどの報道機関が「自民単独過半数ギリギリ、立憲・共産議席増」と報じた。
しかし、今回はVやねんの法則が働いてしまう。
自民は甘利明と石原伸晃の新旧幹事長が落選するという波乱こそあったものの激戦区を次々と制し、比例代表区で大幅な上積みを達成。結果微減に留まり単独過半数を大きく上回った上、公明党と日本維新の会を合わせた「改憲勢力」に至っては改選前より議席を伸ばし、保守・与党陣営は更に勢い付いた。一方で共闘の旗振り役となった立憲・共産は議席を大幅に減らし、大物幹部が次々と落選。報道機関の最低予想獲得議席すら下回るまさかの歴史的大敗を喫した他、現代に於ける世論調査の正確性に疑問が持たれる結果となった。なお朝日新聞のみほぼ正確に的中させている。意外に思われるかもしれないが、議席数予想は報道機関の能力が最も問われる要素の一つであるため、どの報道機関も普段の論調は考慮せずに予想を発表する。また前述の改憲勢力の獲得議席数を合わせると、334議席(自民261、公明32、維新41)となる奇跡まで起きたが、細野豪志が自民入りしたため首班指名前に解消された。更に大阪10区では同選挙区を地盤にしてきた立憲副代表の辻元清美が比例復活も果たせず落選するという波乱が発生したが、同選挙区における辻元の得票率は33.4%だった(厳密には33.35%)。
懲りない朝日放送はCS放送のスカイAが放送する毎年恒例の番組「猛虎キャンプリポート」に「#今年こそ優勝してしまう」という副題を付け、開幕前からお祭りムードを演出した。更に西勇輝と糸井嘉男は「予祝」としてキャンプ中に矢野燿大監督の胴上げを企画・実行。矢野本人もキャンプ前日に退任を発表するなど、チーム内外で既に優勝したかのような空気が醸成されていた。とはいえ小幡竜平や島田海吏らスーパーサブの活躍もあってオープン戦を2位で終えるなど、開幕前の雰囲気は決して悪いものではなかった。
が、蓋を開けてみると阪神は開幕から怒涛の9連敗を喫し、セ・リーグのワースト記録を更新。10連敗こそ西の完封勝利で阻止したがその後も黒星が先行し、開幕14戦で借金を独り占めする異常事態に。借金は最大で16に達した。当然数々のワースト新記録を打ち立てるなど悪い意味で歴史に名を刻んでしまい、早くも終戦ムードとなった。
ところが4月下旬以降はリーグ屈指の先発投手陣が揃い、崩壊していたブルペン陣も湯浅京己のブレークで立て直したことで普通に勝ち始める。交流戦に入ると大山悠輔の打棒が爆発、更に糸原健斗も息を吹き返し2位フィニッシュに貢献。最下位を脱出した。最大13.5ゲームあった読売ジャイアンツとの差も詰まっていき、巨人の大失速もあって7月に逆転。メークレジェンド越えを果たす。勢いそのままにオールスター前に借金も完済し、東京ヤクルトスワローズの独走を許すものの2位で前半戦を折り返した。
後半戦もヤクルト・巨人相手に勝ち越すなど上々の滑り出しを見せたが、この頃から阪神も集団感染に見舞われ、更に守備が崩壊。前年に続き外国人選手はあまり戦力にならず、糸原・島田も下降線を辿った。「死のロード」で8連敗を喫した阪神に最早初夏の勢いはなく、9月17日にV逸が確定。土壇場でポストシーズンには進んだが、CSファイナルステージでヤクルトに3タテされた。
世界陸上で18個のメダルを掻っ攫ってきた女子陸上界のレジェンドも、気付けば36歳。老いには勝てず、初の母国開催となったオレゴン大会を花道に引退することが決まっていた。個人種目を終え、迎えたラストランは混合1600mリレー決勝。当然アメリカは優勝大本命と見られていた。
期待通り1走がロケットスタートを決め、会場は早くも楽勝ムード。しかし2走のアリソンが大量リードをあっさり吐き出してしまい並ばれる。それでも3走で抜き返し、アンカーもじりじりと後続を引き離していく。この時点で実況も観衆も勝利を確信。スターの最後に相応しい金メダル獲得の瞬間を称えるべく、スタンディングオベーションで迎え...
...られたアンカーは残り200mでまさかの逆噴射。10m以上あったリードを捲られてしまい、あれよあれよと抜かされ3位フィニッシュ。観衆総立ちだった会場は一瞬にして微妙な空気に包まれてしまった。
なおこのままでは終われないアリソンは女子1600mリレーに急遽出場。予選で会心の走りを見せると、決勝では後輩達がきっちり金メダルを獲得。1日遅れで有終の美を飾ったのだった。
大阪桐蔭は2度の春夏連覇を含む春夏の甲子園通じて9度の全国制覇を誇る名門で知られ、この年の大阪桐蔭はエース川原・別所・前田の投手3枚看板に松尾・丸山・海老根ら強力クリーンナップを擁し明治神宮大会と選抜高等学校野球大会の2冠を達成。特に春のセンバツでは準々決勝以降では3試合で48-5と圧倒的なスコアで制覇を果たした。
その夏の甲子園よりもキツい大阪大会では7試合で7本塁打54得点1失点と圧倒的な力を見せつけ、難なく甲子園への切符を掴み取る。本大会では史上2校目となる秋春夏3冠と史上初の3度目の春夏連覇がかかっており、各メディアでの展望記事でも「どこが優勝するか」ではなく「どこが大阪桐蔭を倒すか」を論点とした内容が多かった。
そして迎えた夏の甲子園。初戦の旭川大高戦こそ被弾含む3点ビハインドと苦しい試合運びとなるが、後半に地力を見せ逆転勝利。2回戦からは本来の調子を取り戻し、大量得点&最少失点で勝ち進んだ。しかし、準々決勝の下関国際戦では7回終了地点で3-4と1点リードで迎えた9回表に逆転タイムリーを許すと、そのまま5-4で敗戦。ちなみに勝った下関国際は初出場の2017年夏大会から5年で初のベスト4入りを果たすと、続く準決勝でも強豪・近江高校を大差で破り決勝進出を果たす。決勝こそ仙台育英高校に1-8で敗戦するも準優勝という快進撃をみせた。ベスト4入りは山口県勢としても2005年の宇部商業以来である。一方で対抗馬と目されたディフェンディングチャンピオン・智辯学園和歌山高等学校(智辯和歌山)は強打で県大会を勝ち上がるも、本戦では早打ち凡退が際立ちまさかの初戦敗退を喫した。
圧倒的な優勝候補と言われていた大阪桐蔭があっけない幕切れで終戦を迎えたことでなんGでは一時サーバーがダウンするほどのお祭り騒ぎとなった。
斜め上の試合運びと有力選手の獲得失敗、お家騒動が絶えない東のお笑い球団・メッツだが、大富豪スティーブ・コーエンのオーナー就任を機に積極補強を開始。特に2021年オフにはマックス・シャーザーを3年総額$1億3000万(単年当り$4333万、史上最高額)で引っこ抜き、オークランド・アスレチックスとのトレードでクリス・バシットを獲得。更にはベテランリリーバーのアダム・オッタビーノに日本でもお馴染みジョエリー・ロドリゲスも追加し、怪我に苦しむ投手陣の強化に動いた。打線でもOAKから5ツールプレーヤーのスターリング・マルテを補強した他、既存選手にも次々と高額年俸を提示し繋ぎ止め。前年のフランシスコ・リンドーアとの10年総額$3億4100万契約に続き金にものを言わせた立ち回りで、チーム総年俸はあのニューヨーク・ヤンキースをも上回り30球団トップに躍り出る。多額の贅沢税支払いも厭わない金満球団...いや邪悪帝国と化したメッツは開幕から地区首位をひた走り、36年振りのワールドチャンピオンも視界に入っていた。
ところが夏場に入ってアトランタ・ブレーブスの猛追を受け、最大10ゲーム以上あった差をひっくり返される。これは7月に打者陣が集中して調子を落としたことが大きいが、その後は弱点だった指名打者にトレード加入のダニエル・ボーゲルバックを据えたのがハマり再び突き放す。が、9月に入ると再び詰められてしまった。というのもエースのジェイコブ・デグロムは怪我で8月まで復帰が遅れ、38歳のシャーザーも年には勝てず小さな故障離脱を繰り返しており、両輪を欠くことの多かった投手陣は特にブレーブス打線に苦戦を強いられていた。更に9月にはマルテが死球骨折で攻撃力が低下。デグロムとシャーザーは飛翔癖が悪化し、下位球団相手にまさかの敗戦を重ねた。この結果僅か1ゲーム差で最後の首位攻防戦を迎えることになる。
結果は悪夢そのものだった。9月30日、初戦に先発したデグロムは奪三振ショーを繰り広げるも一発攻勢に泣き敗戦。続く1日にはシャーザーが2被弾4失点でノックアウト、2日はバシットが制球難で試合を壊しまさかの3タテを喫してしまう。マット・オルソンに3試合ともホームランを打たれる(前カードを含めると4戦連発)など、流れを止められなかった。これでブレーブスに優勝マジック1が点灯。翌々日ブレーブスは勝利し、メッツは101勝しながらV逸してしまった。勝率で並んだため直接対決で負け越したのが響いた。
ポストシーズンではワイルドカードからの下剋上を目指し、ビッグネームを揃える割に結果が伴わない西のお笑い球団サンディエゴ・パドレスを本拠地で迎え撃ったメッツ。しかし、金満球団の威厳はもうなかった。初戦のマウンドに上がったシャーザーは4本のホームランを浴びてノックアウトされると、打線も手負いのダルビッシュ有から1点しか奪えず大敗。翌日こそデグロムの粘投に打線が応え五分に戻したが、3戦目のバシットは制球難に機動力野球も絡められ試合を作れない。遂には相手先発ジョー・マスグローブの松脂使用を疑い、耳を調べさせるお笑い野球を炸裂させるも当然認められず、7回1安打無失点に抑えられるとロベルト・スアレス→ジョシュ・ヘイダーと繋がれ完封負け。史上初となるシーズン100勝チームのワイルドカード敗退という不名誉な記録を作ってしまった。
なおこの後はメッツと同じくシーズン100勝以上していたブレーブスとロサンゼルス・ドジャースもそれぞれ2桁以上のゲーム差をシーズン中つけていたフィラデルフィア・フィリーズとパドレス(ブレーブスとフィリーズは14ゲーム差、ドジャースとパドレスは22ゲーム差)に一勝しかできずに敗退。ナ・リーグでシーズン100勝した3チームが優勝決定シリーズにすら出れずに全チーム敗退し大盛り上がりになった。
雪辱を誓う翌年は守護神エドウィン・ディアスと攻守の柱ブランドン・ニモの残留交渉、前年の首位打者ジェフ・マクニールの契約延長に成功すると、返す刀で前年サイ・ヤング賞のジャスティン・バーランダーを$2年8666万+オプション1年(年平均でシャーザーと同額)、復活のベテラン左腕ホセ・キンタナを$2年2600万、東京オリンピックで就活に成功した老兵デービッド・ロバートソンを1年$1000万、更に日本から千賀滉大を5年$7500万で獲得するなど贅を尽くしたチームを作り上げたが、負けが込むとあろうことかシャーザー・バーランダー・ロバートソンを立て続けに放出し再建へシフト。ドリームチームは1年半で解散してしまった上、この年に期待通りの働きを見せたのは千賀とロバートソン、リンドーアのみという惨状だった。
詳細は「10.2決戦」を参照。なお、開幕直後に快進撃を見せていたはずの東北楽天ゴールデンイーグルスは5月10日地点で最大18あった貯金から借金2の4位でフィニッシュという異次元の逆噴射を見せた。最大貯金18からの借金フィニッシュ・CS逸は史上初。
この年のドジャースはオフにFAとなる大谷翔平の獲得に備え、贅沢税回避を意識した年俸削減を図っており、目立った補強には動かず。主な獲得選手は前年にシカゴ・カブスから戦力外となったジェイソン・ヘイワードや成績低下が目立つJ.D.マルティネスにライアン・ブレイシアといった程度で、むしろジャスティン・ターナーやタイラー・アンダーソンなど投打の主力がごっそり抜けており、「繋ぎの一年」になると見られていた。更に開幕直前には正遊撃手候補ギャビン・ラックスがACL断裂の大怪我を負い、開幕後もダスティン・メイやトニー・ゴンソリンが相次いでトミー・ジョン手術を受けるなど多くの不運に見舞われた。
ところが、大方の予想を覆し中盤以降は圧倒的な強さを見せる。ノア・シンダーガードを除いて獲得した面々が軒並み復活の一年を送り、更にムーキー・ベッツとフレディ・フリーマンの二大巨頭がMVP級の活躍を見せたことで球界屈指の強力打線へと変貌。ベッツ、フリーマン、J.D.、マックス・マンシーの4人で100打点カルテットを形成した。先発ローテーションはやや崩壊気味だったが、若手有望株を学徒出陣総動員することで乗り切り、終わってみればシーズン100勝、16ゲーム差付けての圧勝。これによって評価も急上昇し、アトランタ・ブレーブスと並ぶワールドチャンピオンの最右翼と目された...しかし。
16ゲーム差付けられたアリゾナ・ダイヤモンドバックスとのNLDSに臨んだドジャースは初戦で絶対的エースのクレイトン・カーショウが大炎上し、1死しか奪えず6失点でノックアウトされるなどいいところなく惨敗。2戦目はルーキーのボビー・ミラーが先発したが、初回から無死満塁→3失点と不安定な投球で2回持たず降板となる。中継ぎが踏ん張ったもののこの試合も落とすと、後がない3戦目は飛翔王ランス・リンが案の定3回に捕まり4本のホームランを浴びる体たらくで、先発が悉く燃えたドジャースはまさかのプレーオフ3連敗であっさり敗退した。
しかしより酷かったのは打線で、ベッツは11打数ノーヒット、フリーマンは10打数1安打、マンシーは11打数2安打、復活したはずのヘイワードも7打数ノーヒットと沈黙。レギュラーシーズンのヒーローが一転して戦犯となってしまった。
ちなみに同じくワールドチャンピオンの最右翼と目されたアトランタ・ブレーブスも14ゲーム差つけていたフィラデルフィア・フィリーズにドジャースと異なり一戦は取ったが投手はスペンサー・ストライダーが孤軍奮闘したもののそれ以外の先発が悉く打ち込まれる、打線もオースティン・ライリーは孤軍奮闘するもののそれ以外は完膚なきまでに封じ込められてしまうと全く同じような有様でこちらも撃沈。ナ・リーグ100勝チームが2年連続で優勝決定シリーズに行くこともできずに姿を消してしまった。
これでプライドを傷つけられたのかオフにドジャースは巨額の資金をぶち込んで大谷、山本由伸、タイラー・グラスノー、テオスカー・ヘルナンデスといった目玉選手を総取りするなど、FA・トレード戦線で大暴れ。異次元の大補強へと突き進んでいくことになる。
前年度大学駅伝三冠を成し遂げた駒沢大学は2023年もその力は衰えず、出雲駅伝・全日本大学駅伝を圧勝。多くのスポーツ誌も「歴代最強チーム」として史上初の2年連続大学駅伝三冠は確実と書き立てていた。
ところが3区で駒沢擁する10000mU20日本記録保持者の佐藤圭汰が青山学院大学の太田蒼生に4秒差で躱されると、4区で区間賞・5区で区間新を取った青山に突き放され、2分24秒差の2位に終わる。翌日の復路でも6区の帰山侑大が区間12位で失速すると、8・9区で区間賞の青学にさらに突き放され、最終的には大会新記録で優勝した青学に6分35秒差をつけられる2位に終わってしまった。
Vやねんという伝説が世に生み出されて以降、阪神は1985年の栄光を知る真弓明信・暗黒期の生き証人和田豊・現役選手としてVやねんの苦杯を嘗めた金本知憲と矢野燿大が指揮官としてリベンジに挑むも一歩及ばず。前回のリーグ優勝から18年・あの悪夢からは節目の15年を迎えた2023年は再び岡田彰布が監督となった。
監督に返り咲いた岡田は「最早再建期ではない」と見るやスタメン・守備位置・打順を固定。様々な可能性を試した金本・矢野路線から大きく転換した。また伝統的にお粗末な守備にもメスを入れ、守り勝つ野球を徹底した。この年のスローガンは明らかにどん語を意識した「A.R.E.[2]」。決して「優勝」の二文字を口にすることはなく、チーム内外で引き締めを図った。
こうして始まったペナントレースでは派手さはないものの堅実な試合運びで順当に勝ち続け、8月16日には早くもマジック29が点灯。不調時であろうとリーグダントツの四球をもぎ取る嫌らしい打線が勝利の源だった。しかしここから足踏みが続き、8月29日には広島東洋カープの猛追を受けてマジックが消滅してしまう。誰もが悪夢の再来を覚悟した。
しかし、18年揉まれた猛虎は簡単には折れなかった。
阪神は9月1日にマジック18を再点灯させると、ここから連勝街道に乗り広島との直接対決3連戦をスイープ、怒涛の10連勝でアレが決定的となる。遂にマジック1として迎えた9月14日の伝統の一戦では、2年前のV逸の一因となった佐藤輝明のホームランなどで投手戦の均衡を破ると、最後は1点差に詰め寄られながらもセカンドフライで試合終了。アレを知る選手は移籍組の大竹耕太郎と加治屋蓮を除いて誰一人居らず、ほとんどが再建期からの叩き上げ。数えきれない屈辱に涙、血の滲むような努力が実を結んだ球団史上最速優勝の瞬間だった。
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最終更新:2024/04/27(土) 21:00
最終更新:2024/04/27(土) 21:00
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