以下は3について記述。
概要
WW2末期にイギリスが開発した戦車。戦後長らくイギリスをはじめ各国で使用された。
それまで「歩兵戦車」「巡航戦車」と分かれていた英国戦車の分類を一新し、走・攻・守を高いレベルで均衡させられる車両として設計・開発された。センチュリオンの高い性能と優れたコンセプトは、イギリスにおける戦車の運用を変えるに留まらず、世界的に戦車の区分や運用に関する考え方を変える切っ掛けとなった。その結果として主力戦車(MBT)という概念が生み出され、今日に至っている。
開発・特徴[1]
第二次大戦中、イギリスはドイツの重戦車に対して効果のある、牽引式の17ポンド(76.2ミリ)対戦車砲を持っていた。しかしイギリスで戦前に開発された戦車は鉄道輸送が前提で、戦車の車幅はイギリスの狭軌鉄道の貨車に合わせていた。そのために砲塔リングの直径が制約され、結果的に砲塔や戦闘室の容積も小さく、17ポンド砲の後座長や排莢スペースを納めることは難しかった。装甲を捨てた「自走対戦車砲」も試したが戦車の代わりにはならないことを思い知らされたイギリスは鉄道輸送を諦め、前線まではトランスポーターで運搬する「重厚長大」な戦車の開発を決意、これが17ポンド砲と重装甲を両立させたセンチュリオン(49t)となった。
戦線に投入されたのは1945年で、ドイツの敗北はほぼ確定していた。しかしセンチュリオンは設計時に持たせた「余裕の大きさ」という特徴を活かし、戦後も使われ続けた。センチュリオンは17ポンド砲のみならず、もっと大きな大砲にも対応できる余裕があったため、1957年に完成した105ミリ砲L7にも即座に換装できた。また、エンジンルームにも余裕を持たせていたため、馬力をさらに上げる必要が生じればより強力なエンジンに交換できた。こうしてセンチュリオンは第二次大戦中の設計であるにもかかわらず、第四次中東戦争でも使用された。ヨーロッパでは1990年代初頭まで一線で使っていた国もあるという。
戦史
大規模な戦争への初の参加はT-34-85が主敵となった朝鮮戦争。性能的に決定的な差をつけられないM4シリーズ、山がちの朝鮮半島での行動に制約が伴ったM26、登場が遅かったM47・M48といった米軍車両をよそに、火力・防御力・機動力のすべての分野においてT-34-85を上回ったセンチュリオンは「国連軍最優秀戦車」と評されている。
この成功によって販路は大英連邦諸国にも広がり、印パ戦争でインド軍が運用したセンチュリオンがパキスタン軍のM48を圧倒したり、アンゴラに侵攻した南アフリカ軍のセンチュリオンがT-54/55やT-62相手に奮戦したりと実戦での高い評価も受けている。
また、英国等から中古の車両をかき集めたイスラエルでは当初は信頼性に欠けるポンコツ扱いされていたものの、お家芸の魔改造でそれらの問題をクリア。「ショット」と命名された改修センチュリオンはソ連がアラブ諸国に供与した戦車を次々と打ち破りイスラエル戦車軍団の威名を世界に轟かせるに至った。→ベングリオン
生産と改修
生産型として最終タイプとなったMk-10は1962年まで生産が続き、各型合計の生産数は4600両ちょい。さらにこの後3段階の改修が行われ、最終的に本国仕様はMk-13まで存在する。このあいだに主砲は初期型の17ポンド砲から20ポンド砲に、そして西側第二世代戦車の標準主砲である105ミリ砲L7A1に換装。エンジンは航空機用エンジン・マーリンが原型となったミーティアエンジンを使用、600馬力から650馬力へわずかに強化されている。英国では後継のチーフテンと共に、1970年代末期に至るまで現役車両として運用されていた。また、その足回りの性質はチーフテン(と、基本構造を同じくするチャレンジャー・チャレンジャー2)にも受け継がれている。
さらに、センチュリオンを語る上で欠かせないのが販売先の国々での改修である。もっとも名高いのがイスラエルである。導入当初の「航続距離が短すぎる」「主砲の20ポンド砲が遠距離砲戦で役立たず(アウトレンジ砲戦で味方の損害を抑えるのが大前提のイスラエル軍にとって、致命的な問題だった)」「砂塵を吸い込んですぐにエンジンがダメになる」「ブレーキが熱ダレして下り坂で止まらない」等々の問題で前線兵員からの乗車拒否すら起きていた惨状であった。
これに対しイスラエル軍はセンチュリオンの「余裕ある頑丈な車体」を生かし、大規模な改修を行う。「燃費のよいディーゼルエンジンに換装」「主砲を英国本国仕様並みのL7A1に換装」「砂漠対応の吸気系/冷却系に改修」することで問題をすべてクリア、元々の美点である「路外機動性の良さ」もあいまって、戦後第二世代クラスの実力を持つ戦車としてセンチュリオンを蘇らせることに成功した。アラブ側の対戦車兵器に対抗する爆発反応装甲を世界で初めて装備したのもこの「ショット」である。また、これらの改修技術を同様にセンチュリオンを次期主力戦車としてかき集めていた南アフリカ共和国にも提供、「オリファント」として南アフリカ軍の主力に成長させている。
さらにイスラエルは自国生産戦車の原型としてもセンチュリオンを使用したため、その成果となったメルカバシリーズにもセンチュリオンの血脈は受け継がれているといえよう。
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関連項目
- イギリス / 英国面
- 軍事 / 戦車 / AFV / 軍用車両の一覧
- ベングリオン 『生産と改修』で出て来たイスラエルのセンチュリオン魔改造戦車。
- メルカバ 試作車はセンチュリオンを改造して作られた。
脚注
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