ディーゼルエンジンとは、ディーゼル機関とも呼ばれ、ドイツの技術者ルドルフ・ディーゼルが1892年に発明した内燃機関の一つである。
概要
乗用車などに数多く搭載されているガソリンエンジン(4サイクル)は、吸気(燃料と空気の混合気)→圧縮→点火、爆発、膨張→排気、という行程を繰り返して動いている(オットーサイクル)。
一方、ディーゼルエンジン(4サイクル)は、吸気(空気)→圧縮→燃料噴射、爆発、膨張→排気、という行程を繰り返して動いている[1]。
ガソリンエンジンと異なる点は、吸気のときは空気のみで点火用のプラグはなく、高温になった圧縮空気に燃料を直接噴射、自然発火させて爆発させる、と言った所である。また、熱効率がよく、軽油・重油などの複数種の燃料を使用する事が可能で汎用性が高いといった特徴がある。このことを指して、かつて国内のディーゼルエンジン研究の第一人者であった関敏郎は「豚の胃袋」と例え、至言として広く浸透した。
もっとも、最近の自動車用ディーゼルエンジンに限って言えは燃料噴射装置(インジェクター)がひっじょーーーーーーーーーに繊細に出来ているので、妙な燃料をぶち込んだらすぐ壊れるだろう。
ガソリンエンジンとの比較
同排気量のガソリンエンジンと比べると、だいたい次のような特徴を持っている。
- 回転域が狭く、馬力はやや低め
- 低回転域でガソリンエンジンよりも高トルクを得られる
- 熱効率が良い(ガソリン機関が30%程度なのに対し、40(自動車)~50(船舶)%くらいの効率)
- 重い
- 振動が出る・うるさい(奇数気筒だと余計酷くなる)
- 火災が起きにくい
- 燃料代は経済的
- ガソリン車よりも車両代が高くなりがち
日本における自動車用ディーゼルエンジンと、世間のイメージ
前述のようにディーゼルエンジンは効率が良く、二酸化炭素排出量は少ない。しかしながら、NOx(窒素酸化物)とPM8(粒子状物質)という有害物質を発生してしまう。燃料に硫黄が含まれているとSOx(硫黄酸化物)も発生する。さらに排気ガスを浄化するために触媒などをつけようにも、硫黄酸化物によって早々にダメになってしまうため付けられない、など排ガスの低公害化にはハードルが高かった。結果としてディーゼル車は煙モクモクさんになってしまい、大気汚染が本格的に問題になり始めた70年代以降、自動車のディーゼルエンジンがやり玉に挙げられるようになった。
そうした流れを受けた90年代後半、こと日本国内においては排ガス規制強化の流れが急速に強まる。1999年の東京都知事選で当選し、同年に知事に就任した石原慎太郎の指揮の下、東京都がディーゼル車NO作戦を実施。石原がPMを入れたペットボトルを持ち出して記者の前で振って見せるパフォーマンスを行い、ディーゼル車の公害とその是正を訴え始める。この結果、ディーゼルエンジン=悪というイメージが強く人々に印象付けられた。実際当時はまだ青白い煙をもうもう吐きながら走っているトラック多かったし、仕方ないね。
これ以後、東京とは周辺県と共に独自の排ガス規制を実施。また硫黄分の低減を石油連盟に働きかけ、さらに他の油と混ぜた不正軽油(脱税軽油)の取り締まり強化などを行った。こういったこともあって国を挙げてディーゼル車への規制強化へ動き、日本のディーゼル車は急速にクリーン化していく。とられた規制及び対策は以下のようなものである。
業界各社がこれら厳しい規制へ対応したことで、ディーゼルエンジンの排気ガスは15年くらい前とは見違えるほどにクリーンになった。そして00年代中盤以降、欧州で乗用車を積極的にディーゼルエンジン化する動きが明らかになってくると、国内でもディーゼルエンジンに対する見方に変化が生じつつあった。
2009年から[2]ポスト新長期規制が開始すると、これに対応したディーゼル乗用車も徐々に増えてきた。2012年には新型車が相次いで市場投入され、また2013年以降に市場投入の以降を示す会社も出てきている。
メーカーも積極的に「クリーンディーゼル」という言葉や各種企業努力もあり、イメージは良くなりつつあった。
市場のディーゼル車に対するイメージの改善の要因は、これまで述べた規制及び対応に加え、ディーゼルエンジン自体の性能向上も考えられていた。
国産車 | トヨタ自動車 | ランドクルーザープラド (4代目・150系) |
三菱自動車工業 | パジェロ デリカD:5 |
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マツダ | CX-5 アテンザ アクセラ デミオ CX-3 |
|
輸入車 (正規輸入車) |
BMW | 1シリーズ (118d) 2シリーズ アクティブ ツアラー(218d) 3シリーズ(320d) 5シリーズ(523d) X5(X5 xDrive 35d) X3(X3 xDrive 20d) |
DS オートモビル | DS 4 BlueHDi DS 4 CROSSBACK BlueHDi |
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MINI | COOPER D CROSSOVER COOPER SD CROSSOVER COOPER D PACEMAN |
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アルピナ | D3 BITURBO D4 BITURBO D5 TURBO XD3 BITURBO ALLRAD |
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シトロエン | C4 FEEL BlueHDi | |
プジョー | 308 Allure BlueHDi / 308 SW Allure BlueHDi 308 GT BlueHDi / 308 SW GT BlueHDi 508 GT BlueHDi / 508 SW GT BlueHDi |
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ボルボ・カーズ | V40 D4 V40 Cross Country D4 S60 D4 V60 D4 XC60 D4 |
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メルセデス・ベンツ | Cクラス(C220d) CLSクラス(CLS220 BlueTEC) Eクラス(E220/E350 BlueTEC) Sクラス(S300h) Vクラス(V220d) Mクラス(ML350 BlueTEC) GLクラス GLEクラス(GLE350d 4MATIC) Gクラス |
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ジャガー | F-PACE(20d) XE(20d) XF(20d) |
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マセラティ | ギブリ ディーゼル |
クリーンディーゼルを支える技術
排気ガスの低公害化、性能の向上などもあり、イメージが良くなりつつあったディーゼル車。ではこれらの車はどういった技術によって支えられているか?主に車両それ自体に関わる技術に関して記述する。
- コモンレール式直接噴射装置
-
NOx後処理装置
- 知っての通り、ディーゼルエンジンは高い圧縮によって燃料を着火させている。その為、どうしても高圧化において不均一な燃焼が発生し、NOxが発生してしまう。そこで排ガスの通り道に後処理装置をつけることで、NOxを窒素と酸素に分けて排出するようにしている。後処理装置にはNOxトラップと呼ばれる触媒を使うものと、尿素SCRと呼ばれる尿素を噴射するものの二つがある。
尚、ディーゼルの圧縮をわざと下げることでNOxを減らす方法もあり、こうすれば後処理装置なしでもNOxを基準以下に下げることも可能。但しこの手法を取ると、冷間時の始動性が悪化するという諸刃の剣であり、始動性に対する何らかの対策が必要となる。今のところこの手法を取っているのはマツダのSKYACTIV-Dのみ。
- 知っての通り、ディーゼルエンジンは高い圧縮によって燃料を着火させている。その為、どうしても高圧化において不均一な燃焼が発生し、NOxが発生してしまう。そこで排ガスの通り道に後処理装置をつけることで、NOxを窒素と酸素に分けて排出するようにしている。後処理装置にはNOxトラップと呼ばれる触媒を使うものと、尿素SCRと呼ばれる尿素を噴射するものの二つがある。
- 尿素SCRシステム
- DPF (ディーゼル微粒子捕集フィルター)
2015年、スキャンダルにより再びイメージ悪化
実は、ドイツのフォルクスワーゲン社においては上記の技術だけでは規制基準をクリアし、なおかつ実用的な自動車を開発することは技術的に難しかった。そこで、フォルクスワーゲンでは排ガス規制をクリアするために、ドイツのボッシュ社が開発した「試験であることを自動検知すると、排気ガスを自動的にコントロールして試験の時だけ有害物質の量を大幅に少なくすることが出来るソフト」をこっそり導入していた。
このソフトが売るためのその場しのぎだったのかは不明だが、後にアメリカの環境団体が実施した調査、堀場製作所の作った精密測定器を使用した検査、更にアメリカ環境保護庁の綿密な調査によって、通常走行する場合には環境基準の40倍もの排ガスを出していることが2015年に発覚した。なおかつこの技術はフォルクスワーゲンではガソリン車にも応用されていたとか。
改善しつつあったイメージも、少なくともフォルクスワーゲンにおいてはいわゆる虚像に過ぎなかった。このような不正がバレてしまえば大量リコールとブランドのイメージ悪化、更には巨額の賠償金が待っている。フォルクスワーゲンの不正ソフトスキャンダルによって、フォルクスワーゲンのブランドどころかディーゼルエンジンの信頼すらも非常に低下してしまった。
さらに「日本人自動車評論家に賄賂を送ってハイブリットをdisらせ、ディーゼル賞賛記事を書かせようとしていたのではないか」という疑惑が同じ2015年に日本のネット上で騒ぎになった……ただしこれは確たる証拠が挙がったわけではなく、「そのように憶測はできる」程度の材料しか出なかった。だが「これはクロ確定だ」と信じ込んだネットユーザーらが、根拠が曖昧なままに特定の自動車評論家を集団でバッシングするというお寒い事態にも発展した。
また同時期に、ディーゼル車を排除した日本と受け入れた欧州の大気の比較画像、大気汚染が深刻なパリと済んだ空気の東京との比較画像が出回った。これも「その原因はディーゼル車である」と結論できるような根拠があったわけではなかったし条件を揃えた科学的データなどではなかったが、科学的素養が無い人々にとっては「わかりやすい」画像であったために、「ディーゼルは悪だ」といった論調が一部で加速した。それと同時に、石原慎太郎の行ったディーゼル車NO作戦が再評価されることになり、石原に批判的なものでも、この作戦に関しては評価する人々も出てくるほどであった。
2018年現在
しかし、仮に2015年に一部で囁かれたようにフォルクスワーゲン以外の会社のものも含めてディーゼルエンジン自体が汚いものであり「クリーンディーゼル」という技術自体が夢物語であるならば、フォルクスワーゲンスキャンダル発覚後の規制強化や再検査で、各メーカーのディーゼルエンジン車は規制や検査を突破できずに早晩全滅しているはずであろう。
だがそうはならなかった。その後もディーゼルエンジンを搭載する車種は各社から発売されていき、環境基準や検査もクリアしていった。
スキャンダルの震源地であったフォルクスワーゲンでさえも、改良したディーゼルエンジン搭載の新車種を出している。
ディーゼルエンジンの主な使用例
関連動画
関連商品
関連項目
- 機関車
- DD51
- DF200
- いすゞ自動車
- カミンズ
- ヒュンダイ・アクセント - 1.5L3気筒ディーゼル搭載モデルあり。なお性能は(ry
- Hammerhead-i Eagle Thrust - ディーゼル発電機を用いた自動車(市販には至らず)
- ディーゼル・シロッコの歌
関連リンク
脚注
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