トーリン(Thorin)とは、小説「ホビットの冒険」とそれを原作にする映画「ホビット」三部作の登場人物である。
ドゥリン家の王としてトーリン2世、またの名を「樫の盾(オーケンシールド/Oakenshield)」。
概要
中つ国のドワーフ七王家の筆頭たるドゥリン王家の当主にしてエレボールの王位継承者=「山の下の王」。
第三紀2746年生まれ。父の行方不明に伴い王位を継承し、2941年、五軍の合戦において討ち死にした。
祖父に「山の下の王」スロール王、父に王位継承者スライン2世を持つ生粋の王子であり、流浪の時にあってもその生まれ持っての威厳と誇りを失うこと無くドワーフたちのリーダーで在り続けた。
経歴
経歴は「追補編」「ホビットの冒険」などに基づく。映画では改変箇所があるため注意のこと。
流浪の王子
トーリンは「山の下の王国」として知られる、中つ国北方はなれ山、エレボールのドワーフ王国の王子として生まれた。第三紀2770年、黄金竜スマウグがエレボールを襲撃し王国が崩壊すると、父や祖父とともに民を指揮してエレボールを脱出する。更に2790年、悲嘆と錯乱のうちにあった祖父スロールが家祖の土地、霧ふり山脈のモリアを単身訪れ、モリアを占拠していたゴブリン(オーク)によって殺害されたという知らせが伝わると、父スライン2世は「こんなことは堪えられん!」と叫んで復讐戦を誓う。彼はドゥリン王家の名のもとに全ドワーフを招集した。
ドワーフの長上王たるドゥリン王家の王を殺されたドワーフは怒り狂い、霧ふり山脈のゴブリンの拠点を壊滅させモリアに迫った。オークの軍勢はドワーフ軍をモリア東門前のナンドゥヒリオンで迎え撃つ。激戦の結果、くろがね連山の領主ナインをはじめとする無数の犠牲とともにゴブリンは壊滅し、ゴブリンの首領アゾグも討ち取られた。
この時トーリンが樫の枝を盾代わりに使ったことが「樫の盾(オーケンシールド)」の異名の由来である。
結局の所、あまりにも大きすぎる犠牲を払ったドワーフたちはバルログの徘徊するモリアの奪還を断念し、スラインとトーリンたちはエリアドールでの放浪生活を経てやがて中つ国西方の青の山脈に居を構えるようになった。そしてスラインが旅に出たまま帰らず、トーリンが当主となってからも、彼はエレボール奪還の意志を忘れることはなかった。
エレボールの奪還
2941年、サルクンことガンダルフと出会った彼は、スマウグの排除を目的とするガンダルフの提案に同調しエレボール奪還計画を具体化させた。彼は12人のドワーフとともにホビット庄にビルボ・バギンズを訪ね、仲間に引き入れる。エレボールへの遠征、すなわち「ゆきてかえりし物語」こと『ホビットの冒険』はここから始まる。
一行はトーリン以下のドワーフ13名、つまりバーリン、ドワーリン、オイン、グローイン、ドーリ、オーリ、ノーリ、フィーリ、キーリ、ビフール、ボフール、ボンブール、そしてトーリン・オーケンシールドとビルボ・バギンズ、ガンダルフという15人でホビット庄を旅立った。
途中トロルに捕まってガンダルフに救われた際、古のエルフの名剣オルクリストを得、自らの得物とする。
その後も、霧ふり山脈越えのさなかにゴブリンの洞窟に囚われ大ゴブリンを殺害して逃げ出したり、闇の森のエルフ王国の虜囚になるなど苦難の旅を続け、はなれ山の南、たての湖に浮かぶ湖上の町エスガロスにたどり着く。
そこで歓迎を受けた彼は潤沢な装備とともについにはなれ山に到着して裏口を発見し、忍び込んだビルボを取り逃がしたことに激怒したスマウグがエスガロスに飛び去った隙をついてエレボールを奪還した。
トーリンは道中大きな助けとなったビルボにミスリルの鎖帷子を送り、それがのちに「指輪物語」においてフロド・バギンズの命を救うことになる。
竜のいぬまに
一方スマウグはエスガロスを灰燼に帰さしめたが、弓手バルドの「黒い矢」によって撃ち落とされて死んだ。
エスガロスの民は主を失った(はずの)エレボールの富を得て町を奪還しようと考え、救援に駆けつけた闇の森のエルフの軍勢とともにはなれ山に赴く。そして彼らははなれ山で、死んだと思っていたトーリンたちが生きており、山の下の王国の再興を宣言していることを知ると、富の分配を要求した。
しかし、長年にわたってエレボールの再興を夢見てきたトーリンは既に黄金の魔力に取り憑かれつつあった。
エレボールの富の象徴たる「山の精髄」アーケン石が見つからないことへの焦燥と、互いに敵視している闇の森のエルフの軍勢が同行していることへの反発から彼は財宝の拠出を拒否し、エレボールの表門で一触即発の事態に陥る。さらに、ビルボ・バギンズがアーケン石を隠し持ち、エレボールを忍び出て交渉の札としてバルドにアーケン石を渡したことを知った彼は激怒してビルボを糾弾し、エレボールから追放してしまった。
彼は既にくろがね連山のナインの子、「鉄の足」ダインの援軍を呼んでおり、必要とあらば戦端を開くことも辞さない構えで対峙していた。しかし、そこに突如として現れたゴブリンとワーグの連合軍が襲いかかる。トーリンの一行に大ゴブリンを倒された洞窟のゴブリンと、かつてナンドゥヒリオンで殺されたアゾグの子ボルグの軍勢が復讐戦を挑んできたのである。
五軍の合戦
ゴブリンとワーグは、エルフ、ドワーフ、エスガロスの人間のいずれにとっても仇敵であった。
くろがね連山のドワーフ、闇の森のエルフ、エスガロスそれぞれの軍勢は打って変わって一致団結し、ゴブリン軍と相対した。ドワーフ、エルフ、人間の三軍とオーク、ワーグの二軍との会戦、すなわち五軍の合戦の始まりである。
ゴブリン・ワーグ連合軍は数で優っており、三軍を圧倒する。トーリンはいまだ籠城を続けていたが、ことここに至って仲間とともに出戦し、ゴブリン軍に斬り込んだ。これを見た三軍も意気を取り戻し、二軍を押し返す。
トーリンの軍勢はそのままボルグの本営に突入するが、親衛隊に阻まれ孤立してしまった。これを見た大鷲と急ぎ駆けつけた闇の森の熊人ビヨルンの参戦によってボルグが倒され、合戦は三軍側の勝利に終わったが、甥であるフィーリとキーリは討ち死にし、トーリンも致命傷を負っていた。
彼は病床でビルボにエレボールを追い出した際の言動を詫び、後悔と励まし、そして別れの言葉を述べると、最後に「もうわしは、ゆかねばならぬ。さらば、じゃ!」と発して息を引き取る。棺に横たわるその亡骸の手中には、アーケン石とオルクリストが収められた。
彼には子がなかったため、「山の下の王」はくろがね連山の「鉄の足」ダイン2世が継ぎ、エレボールを治めた。
トーリンの一族
トーリンの遠征に同行したドワーフの内、前述のようにフィーリとキーリはトーリンの妹ディースの息子で、甥である。
また、トーリンの祖父であるスロールの父ダイン1世の弟ボーリンの息子ファリンにはフンディンとグローイン(Gróin)の二人の子がおり、前者の息子がバーリンとドワーリン、後者の息子が遠征に参加したグローイン(Glóin)である。ちなみにこのグローイン(Glóin)の子が「旅の仲間」の一人であるギムリとなる。
トーリン2世の跡を継いで「山の下の王」になったダイン2世の父は前述のようにナインだが、その父はスロール王の長兄グロールであり、フィーリとキーリが戦死した後はドゥリンの一族でもっともトーリンに近い血族である。その息子もまたトーリンであり、指輪戦争でダイン2世が討ち死にした後、「石兜」トーリン3世として山の下の王となった。
映画「ホビット」
映画「ホビット」三部作ではリチャード・アーミティッジがトーリン・オーケンシールドを演じた。吹替は東地宏樹。
映画では、トーリンの年齢を(外見を含め)若く、バーリンを老人に変更しているほか、それに伴いスマウグの襲撃を始めとする年代が変更されている。また、ストーリーの簡素化のためか、トーリン関連では
- スロール王がモリア奪還の軍を起こし、ナンドゥヒリオンで討ち死に。スラインは以後行方しれず。
- トーリンがアゾグと対決して樫の枝を盾に使い、「オーケンシールド」と呼ばれるように
- アゾグは片腕を失ったもののナンドゥヒリオンの合戦で倒されず、トーリンの仇敵として登場する
などの変更点がある。「オーケンシールド」とゴブリンとこれらの経緯が指輪物語「追補編」の一章を割いて解説されている複雑なものであることを考えれば、ある程度妥当な変更といえるだろう。
関連動画
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関連項目
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