プルガサリとは1985年、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)によって製作された特撮の怪獣映画である。邦題は「プルガサリ 〜伝説の大怪獣〜」。85分カラー。
概要
朝鮮民話を題材に、飢饉の広がった高麗王朝末期を舞台とした時代劇の怪獣映画である。
まだ表舞台に出ていなかった映画好きである金正日プロデュースの元、当時北朝鮮に拉致されていた韓国の映画監督・申相玉、招待された中野昭慶や薩摩剣八郎ら東宝の「ゴジラ」シリーズ製作メンバー、北朝鮮の人民らによって製作された。
北朝鮮による全面協力のもと潤沢な資金によってゴジラスタッフの特撮技術が活かされた演出や、1万人にも及ぶ社会主義国家ならではのエキストラの大動員は圧巻で、マルクス主義の寓話と評される単純明快なストーリーと相まち一定の評価を得ている。なおエキストラは朝鮮人民軍であった。
映画は1985年に完成、世界上映が見込まれていたものの、1991年に支援国であったソ連が崩壊したことによる経済破綻を原因に北朝鮮国内で飢饉が発生したり、拉致されていた申相玉夫妻が国外へ亡命したことなどの政治的事情から劇場公開は中止となってしまった。
色々とあって日本では1998年に劇場上映されたのち、映像ソフト(オリジナル版・吹き替え版)がリリースされているので、気になる人は入手してみてほしい。
ストーリー
時は高麗王朝末期、先軍政治の苛斂誅求によって起こった飢饉に民衆が苦しむなか役人に武器の作成を命じられた鍛冶屋のタクセは、これに抗議して捕らえられる。無念の情を抱きながら、タクセは獄中で飯を練って作った小さな「プルガサリ」の像を遺し獄死する。
タクセの娘アミが形見として持っていたプルガサリ像だったが、ある日アミの血を受けて命が宿る。プルガサリは金属を食べることで成長していった。
ある日、アミの恋人であるインデが役人に逆らったために捕らえられてしまうと、処刑の場に現れたプルガサリが刀を食べることで救出、ついでに武器庫の武器も食べて山に消える。
生き延びたインデは農民らと一揆を起こし、プルガサリと共に王朝に立ち向かっていく――。
プルガサリ
プルガサリは朝鮮語で「殺すことが出来ない」を意味し、朝鮮の伝説上の妖怪の名前である一方、現代ではヒトデの意味でもあるらしい。漢字では不可殺伊と書かれる。トレマーズの韓国公開題名としても使われた。
妖怪のプルガサリは牛、芋虫など様々な姿の説があるが、本作のプルガサリは牛のような角を持った怪獣として描かれている。
ありとあらゆる金属を食料としており、最初はとても小さい体をしているものの、金属を食べれば食べるほど体が大きくなり強靭になっていく。
作中では成長によって何種かの着ぐるみが使われた。スーツアクターは小さい頃の姿(通称ミニガサリ)をミニラの深沢政雄、巨大化後をゴジラの薩摩剣八郎が演じた。
キャスト
- アミ:チャン・ソニ
- インデ:ハム・ギソプ
- アナ:リ・ジョングク
- タクセ:リ・イングォン
- インデの母:ユ・ギョンエ
- インデの弟:ロ・ヘチョル
- 王:パク・ヨンホク
- 役人:パク・ポンギル
- 朝廷軍将軍:リ・リョンウン
- 反乱軍兵士:テ・サンフ、キム・ギチョン、リ・インチョル
- プルガサリ(幼体、ミニガサリ):深沢政雄
- プルガサリ(成体):薩摩剣八郎
- エキストラ:朝鮮人民軍ほか
スタッフ
- 監督:申相玉
- 特撮監督:中野昭慶
- チーフ助監督:浅田英一
- 脚本:キム・セリュン
- 音楽:ソ・ジョンゴン
- 撮影:チョ・ミョンヒョン、パク・スンホ、江口憲一
- 編集:キム・リョンスン
- 照明:ロ・ドンチョン、リ・インボム、三上鴻平
- 特殊効果:キム・ドクホ、久米攻
- 特撮美術:パク・チョンギル
- 美術:リ・ドイク、鈴木儀雄
- 造形チーフ:安丸信行
- 操演:白熊栄次
エピソード
- ミニガサリは日本でソフビが製造・販売された。
- 東宝スタッフには北朝鮮から高級ホテルが宿泊先として用意された。中野昭慶が部屋で一人のときにふと「日本のビールが飲みたい」とつぶやいた次の日、その部屋の冷蔵庫に一缶の「スーパードライ」が入っていた。
- 美術スタッフの一人であった眞壁廉はある日帰りのバスに乗り遅れたところ、現地スタッフの案内で地下鉄で帰ることになった。しかしこの地下鉄、当時まだ日本人には開放されていなかったのである。その次の日から、案内をした現地スタッフは姿を消したという。
- 申相玉監督は亡命後、ハリウッドで本作のリメイクである映画「ガルガメス」を製作した。
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関連項目
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