劇場版Zガンダム声優問題とは、1985年放送のテレビアニメ「機動戦士Zガンダム」の新訳劇場版として2005年から2006年にかけて公開された、劇場用三部作「機動戦士Ζガンダム A New Translation」における、旧テレビシリーズのレギュラー声優の降板に端を発した一連の騒動のこと。
概要
劇場用三部作「機動戦士Ζガンダム A New Translation」は、製作決定の発表に合わせ大々的にガンダムエースを中心としたアニメ雑誌誌上で公開前から取り上げられていた。この際、当初は旧作テレビシリーズと同様の声優が登板すると一部で報道されていた。しかし、公開が迫るにあたりヒロインであるファ・ユイリィ役の変更発表を皮切りに、レギュラー・サブ問わず多くの声優変更が行われたことが明らかとなった。
そしてこれに対して不満の声をあげた一部のファンの声を聞いた旧シリーズのフォウ・ムラサメ役である島津冴子が、総監督の富野由悠季、音響監督の藤野貞義の了解を得たうえで、島津自身の取材(事実確認)や経緯等の内容をまとめたとされる手記を、自身のホームページで公開した。
しかし降板する島津の手記であることもあり、皮肉にもこのことがより波紋を広げてしまい騒動として拡散してしまう。その結果、事実虚偽問わず様々な噂が飛び交い、陰謀論や誹謗中傷などの書き込みがインターネット上に飛び交った。
更に総監督である富野由悠季が島津の公開した手記の内容にそぐわない内容のコメントを劇場版公式サイトで行ったことで、さらなる憶測を加熱させるも、当劇場用三部作の公開終了とともに自然鎮火の方向に向かっていった。
騒動加熱の要因
発端
元々ガンダムシリーズは、長期シリーズの宿命ゆえ各作品に対する思い入れは世代間ごとに様々なものがある。その思いがぶつかりあうことにより、作品間のファン同士どころか同じ作品のファン同士でも議論が白熱することが知られている(但し、必ずしもネガティブな面だけではないということを留意しておく)。
それを留意することに加えて「声優のキャスティング」とはガンダムファンのみならず、アニメファン、声優ファンの多くがこだわりを見せる作品の重要なポイントの一つであり、特に声優の降板に関するものは、時として争いの種となることもしばしばである。
こうしたファンの情勢が重なった上で、「機動戦士Ζガンダム A New Translation」においては上記の通り騒動に発展してしまう。
発端となったものは、公開決定が報じられて間もない当初に一部のアニメ雑誌(2004年6月刊行)がこぞってキャストを掲載したことであった。この時発表されたのは、メインキャラに関しては全員TV版当時と同じキャストだった。この情報がリサーチ不足だったのか、早まって情報を掲載したのかは不明である。
しかし後にファ・ユイリィの声優変更が発表され、その後あれよあれよと変更されることが明らかとなった。このことは一部のファンの不満を呼び、特に当初のアニメ雑誌における誤報を信じていたファンにとっては、狐につままれた格好となったのは想像に難くない。
騒動加熱(今で言う炎上)
このファンの不満の声を聞いた、フォウ役の旧声優島津冴子は、電話・会談を通して総監督の富野・音響監督の藤野に事実確認を行ったとしている。これをまとめ、対話をした両名の許可を得たことを掲載したうえで、自身のHPの掲示板にその内容を公開、後に手記としてさらに詳しくまとめることになる。
そして、その手記の内容は以下のようなものであった。
- 総監督の富野は島津冴子にフォウをやらせるつもりでいろいろ打診していたが、音響監督の藤野が島津の現状に対する誤認識や下調べの不足などを原因としコンタクトを取ることができず、結果島津がオーディションを受ける機会を失っていたことがわかった。
- 島津冴子自体は「当時のフォウの芝居に満足がいっていなかった、やれるならまたやりたい」という意思を示しており、テレビシリーズ以降もゲーム等でフォウ役として出演していた。
- 同時に、監督の意向なら仕方ないとも思っていたが、これは聞いた当時に藤野に否定された。
- 富野が「音響監督に騙された」と弁解した。
これを見たファンは大激怒した。
この弁解通りなら、今回の音響監督の仕事はプロとしてあるまじき杜撰さで、かつあまりにも不自然だったからである。騒動はさらに加熱、当時は今ほどアニメ問題を取り上げていなかったネットのニュースや週刊誌もこれをピックアップした。
さらにこの間、「ゆかな(新約におけるフォウ役)が不倫を思わせる発言を過去にしていた」「騙された=如何わしい営業で決めたから藤野はそう弁解せざるを得なかったんだ」などと虚偽や憶測が飛び交った。
さらに、カミーユ役の飛田展男から劇場版第一作のアフレコの終了を聞かされた、サラ・ザビアロフ役の旧声優水谷優子が、参加出来なかったことについてラジオ番組で「残念」という思いを告げたことも、それらを加速させた。
ゆかなもこれを踏まえてなのかは不明だが、Zガンダムファンに対するコメントを自身のHPの掲示板で発表。しかし「見てしまうと意識して演じてしまうのであえて旧作は封印して見ていない」といった発言もあり、不満を持った旧作のファンにはこの言葉が冷静な方向へ受け取られることもなく、かえって炎上状態となってしまった。
事態終息
このような反響の中、劇場版Zガンダムは粛々と公開されていった。
公開されたことで流石に諦め所を感じたファンもいたが、それでもなお一部のファンは次の段階として「ソフト化の際に、TV版オリジナルキャストによる別バージョンを収録してもらおう」と、たのみこむに依頼する者なども現れた。
「DVDでは両方収録される」というデマを、関係者になりすまして拡散した不届き者も現れたほど。
が、それと並行して公開後に富野が劇場版の公式サイトにおいて、島津冴子によってまとめられた手記とは異なる内容のコメントを発表した。具体的には、変更した声優に関しては元々旧作のキャストを使う気がなかったという意図のコメントであった。
これに対して、手記を公開した島津冴子による反論は一切なく、更に妙な憶測を呼ぶことになる。
が、劇場版が全て公開され、結局円満に終了したことに加え、ファンの加熱しきった熱も既に冷め始めた頃であったため、結局この騒動は真実がなんだったのか不明瞭なままに終息した。
このため、未だに事実無根、あるいは真相の判明していないことを事実として語り継ぐ、あるいは真実と思い込んで語り、不穏な話題に利用する者もいるのが現状である。
その後の影響
劇場版公開以降「Zガンダム」関係のゲームが製作される際、新約において声優の変更が行われたキャラクターは、ほとんどが新約に沿ったキャスティングになるよう変更された。これによって旧作の変更前の声優は降板により近い形になることとなり、一部のファンに衝撃を与えた。
新約劇場版後に島津冴子版のフォウが使用されたのは、新約公開以前の2004年に発売され収録も終えていたスーパーロボット大戦GCのリメイクであるXO(2006年)など、僅かである。
もっとも、こういった事象は「ドラゴンボール改」など当時の他のアニメ作品でも見られるゲーム媒体のキャスティングであり、バンダイそのものの意向である可能性がある。
また、噂として島津冴子はこの一件が原因で業界を干された、などと言われたこともあるが、これは手記の中でも元々「最近アニメに出る機会は少ない」と言及していることであり、事実無根である。
つまり、別に今に始まったことではなく、島津冴子自身の事情によるものであるし、後年においては「サクラ大戦」関連のイベント等にも出演を果たしている。
なお、後に起こった「シンプソンズ」におけるキャスト人事騒動が起こった時は、このZガンダム声優問題が、過去の例としてあがったことがある。こちらはファンの熱心な行動が活力となり、DVDでオリジナルキャスト版が収録されることとなった。
ただし、こちらはZのような新訳再編集ではなく、これまでの脈々と続いてきたシリーズの特別編的な位置づけであるということ、メインキャストが本業声優でないことがバッシングの理由になっていたことも手伝っていた為、当問題とは同一の事情ではないことを留意したい。
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選抜した関連動画は比較してどちらかを貶めるために掲載しているわけではありません。
各声優や関係者に対する誹謗中傷コメントはありとあらゆる方への迷惑になるのでやめましょう。
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