概要
第二次世界大戦後、イギリスのベヴァリッジ報告やILO(国際労働機関)による条約・勧告の影響を受け、
西側諸国を中心とした世界各国で社会保障制度の充実が図られた。
ILOによる社会保障の定義は、以下の通りである。
「社会保障は、社会がしかるべき組織を通じて、その構成員が晒されている一定の危機に対して与える保障」
このように、抽象的な定義にとどめているため、各国の社会保障政策にはばらつきがある。
そのばらつきがどのようなものであるのか。
本項目では各国の社会保障制度を通して、それをみていく。
なお日本の社会保障制度は次の項目について参照されたし。 → 社会保障
各国の社会保障制度
アメリカの社会保障制度
先進国の中では社会保障制度に対して最も消極的な国の代表格だ!
医療も年金も保険はほとんど民間保険だ!8割くらいの国民は加入できているぞ!
民間保険に入れない低所得者には「メディケイド」、高齢低所得者には「メディケア」って制度があるんだ!
いわば最下層だな!
民間保険にも入れず、メディケイドも認可されない、いわゆる「下の中」くらいの層が無保険者として、社会問題となっている!
仕方ないね。
無保険者の問題は、マイケルムーア監督『シッコ』でも取り上げられていたな!
なんつったて自己破産理由の1位が「医療関係」だからな!
なんといっても2010年代には6人に1人が医療保険はいってない、さすがアメリカ!
けどオバマが通した、公的医療保険制度のおかげで、彼らもなんとか救えそうなんだ!
え?公的医療保険を民間保険会社が販売する?どういうことなの?
(オバマが通した改正案は職場を通して廉価に買える公的医療保険を追加するというものだからです。)
なんでも「民間民間」なイメージがあるが、意外なことに病院の半数以上は、公立病院だ!
病院に占める公立病院の割合は日本より高いぞ! 歪みねぇな!
イギリスの社会保障制度
イギリスの社会保障制度は、すごく充実しているんだよ。
みんな税金でお金を集めるから、医療や年金に社会保険制度なんていらないの。
(※労災・失業保険は社会保険制度)
病院だってタダ(無料)で診てもらえるんだよ。
NHS(National Health Service。国民健康サービス)のおかげだね。
ちゃんと予約すれば1週間後には診察してもらえるし、
救急車だって4時間以内に病院まで運んでくれるよ!
え?日本だったら、行ったその日に見てもらえるの?
救急車の平均搬送時間が30分台?
それ、どんな術式を使ってるの?
ドイツの社会保障制度
ドイツの社会保障制度は、職域による組合保険が特徴だ!
医療も年金も介護も全部、組合による社会保険制度で成り立っている!
もちろんギルド時代からの、同業者組合にルーツを持つが、
それを近代国家の政策として復活させたビスマルク宰相は、流石である!
ドイツの社会保険は世界一ィィィ!!!
フィリピンの社会保障制度
フィリピンでは3つの社会保険事業と社会福祉事業を軸に社会保障政策が展開されている。
民間部門の労働者を対象とした社会保障制度 (SSS; Social Security System)
SSSは保険対象者が広く,民間企業職員や雇用主,商店主や農家などの自営業者が含まれる。保険料は労働者側が給与の3.33%,そして使用者側が7.07%であり,自営業者やインフォーマルセクター従事者は保険料が収入の10.4%となっている。が,月収1,000ペソ以下の自営業者に対しては減免措置がある。これに加え,労災保険の保険料として,平均月収が15,000ペソ未満の場合は10ペソ,それ以上の場合は30ペソの拠出が必要となる。また,基金の運営に際して必要に応じて国庫補助を基金にたいして割り当てる規定もある。
給付内容は老齢年金・障害者年金・遺族年金・死亡給付・疾病手当・出産手当である。
年金制度の給付実績をみると,老齢年金は受給者が697,805人で平均給付額が3,411ペソ,遺族年金は受給者が652,080人で平均給付額が2,709ペソ,障害者年金は受給者が58,788人で平均給付額が3,068ペソとなっている。ちなみに60歳以上人口を約530万人から550万人(全人口比で約6%から7%)と仮定しても,老齢年金・遺族年金の受給者件数の合計,約135万人は,60歳以上の25%に満たないことになる。
SSSの加入者は2009年12月現在,2,907万人である。この数から年金受給者を差し引いた2,766万人が,民間労働者,NGO職員,自営業者になり,この加入者数は公務員や公社で働く人々を差し引いた労働人口の88%に相当する。しかし,実際には農家・漁師・個人商店主など自営業者の加入率は51%であり,約半数がSSSに加入できていない。2006年の段階で農家の44%,漁師の50%が,収入が国内平均所得の半分に満たない貧困層である。これらの低所得層には,所得の10%を支払いSSSに加入するインセンティブは極めて小さいことも留意しておく必要がある
公務員を対象にした公務員保険制度(GSIS; Government Service Insurance System)
GSISは公務員と国有企業職員を対象とした所得保障制度である。これらの条件に当てはまる労働者は,全労働者の8.3%である428万人となっている。
保険料率は月額給与が1万ペソ以下の場合労働者側が給与の9%,使用者側が12%を拠出し,1万ペソを超える部分にたいしては労働者側が超過分の2%,使用者側が超過分の12%を拠出する。使用者負担は公務員もしくは国有企業職員であるため政府が拠出する。また,これに加え,労災保険の保険料100ペソの拠出が必要となる。
給付項目は,老齢年金・障害者年金・失業保険・生命保険である。また,労災保険が,労災補償制度としてある。
全国民を対象とした国民健康保険 (National Health Insurance Program)
国民健康保険制度は,全国民を対象とし,加入者本人とその家族にたいして医療保障がおこなわれる。保険料負担は,月収入5,000ペソ(約1万円未満)で100ペソから月収3万ペソ以上で最高月額750ペソ(約1500円)にまで段階的に定められている。また,貧困者はミーンズテストを受けることによって保険料が免除され,また,GSISとSSSの老齢年金受給者は無条件で保険料が免除される。
給付方式は外来(救急含む)や入院といった医療サービスの現物給付方式である。医療行為または投薬ごとに給付額が指定されており,それを超える費用は患者の自己負担となる。つまり,日本のように定率ではなく,定額で給付が行なわれる。これは,フィリピンでは混合診療が認められているためである。そのため,医療行為にたいして請求できる金額は,医師や医療機関ごとに異なる。
また,こういった保険診療が利用できる医療機関は,フィリピン医療保険公社の認可を受けた医療機関に限られる。2008年末の時点で認可を受けている医療機関は,病院1,644施設,地域保健診療所1,086施設,結核診療所556施設,助産診療所470施設となっている。
国民健康保険制度の加入世帯数は1,795万世帯,被保険者数は8,104万人となっており,これはフィリピンの総人口の87%にあたる(2009年6月)。近年,加入者数を伸ばしているが,まだ13%,1,400万人は無保険者となっている。
社会福祉開発省による「公的扶助」と「社会福祉事業」
フィリピンでは,社会全体が深刻な格差と貧困にさいなまれてきたため,「公的扶助」に相当する制度が長年無かったが,2009年に「フィリピン家族生活事業(The Pantawid Pamilyang Pilipino Program。通称4Ps)」が開始された。
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