救急車とは、緊急の差し迫った傷病者を病院等の医療機関へ搬送するための自動車のこと。日本での消防法(消防法施行令および同規則)の呼称は「救急自動車」、道路交通法及び関連政令の呼称は「救急用自動車」である。
概要
現在の救急車は、傷病者を運ぶためのストレッチャー兼ベッド、医薬品、AEDや血圧計、人工呼吸器等の救急機材が装備されており、内部では医師や救急隊員が応急処置できるように広い空間がある。
救急車は自動車が登場する以前は、人力車や馬車などを用いており、その起源は19世紀初頭のナポレオン戦争の時代まで遡る。最初に救急車という言葉で登場したのは、アメリカの南北戦争の頃だと言われている。
現在、国際法上で戦争状態にある国や地域でも、赤十字章(イスラム圏は赤新月章)をつけた救急車を攻撃することは許されない。
近年では、より迅速な救急搬送を行うことができる「ドクターヘリ」も登場している。(項目参照)
日本の救急車
東京消防庁の救急車(ニコニ・コモンズより:nc13945) |
道路運送車両法で定められている特殊用途自動車にあたり、道路交通法で定められている緊急自動車にあたる。緊急車両であるため、赤色警告灯とサイレンが付いている。他の緊急車両と比べ、赤色警告灯は高輝度LED式フラッシュ灯を搭載している車両が多い。
救急車は、各自治体の消防本部や病院、自衛隊、関西国際空港、成田国際空港、JRA(日本中央競馬会)、その他一部の企業やテーマパークの自衛消防隊などが保有している。
基本的に電話で119番にかけた場合は、各自治体の消防本部の救急車が出動する。病院が保有する救急車は、主に患者を別の病院へ転送するために使用される。
総務省消防庁の救急業務実施基準(昭和39年3月3日自消甲教発第6号)において、救急隊員3人以上及び傷病者2人以上を収容でき、応急処置等に必要な資器材が備え付けることが定められており[1]、その他に構造や設備についても法令で定められている。
救急車のサイレン
一般的な救急車のサイレン音のピコカキコ(病院が来い#217より)
※段々近づいてきます |
車体の色
車体の色は「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」(国土交通省告示)第75条3項によって、「白色」と決められているが、車体の前面から後面にかけて赤色のラインが入っている場合が多い。但し、防衛省関係の車両は例外が認められているため、自衛隊保有の一部の救急車はオリーブドラブ色(いわゆる自衛隊カラー)になっており、車体前面、側面、後面に大きく赤十字章が描かれる。
(緊急自動車)
第75条 ・・・(中略)・・・
三 緊急自動車の車体の塗色は、消防自動車にあっては朱色とし、その他の緊急自動車にあっては白色とする。ただし、・・・(中略)・・・防衛省用自動車であって緊急の出動の用に供するもの、・・・(中略)・・・にあっては、この限りでない。
種類
高規格救急車 |
2B型救急車 |
スーパーアンビュランス |
救急車のタクシー化問題
症状が軽微にも係わらず、安易に119番通報し救急車を呼ぶケースが近年問題となっている。
総務省消防庁の調査によると、1996年に救急車が出場した件数は約337万件だったのに対して、2006年は約524万件と10年間で約55%増加している。そのうち、約52%の人は、入院の必要のない軽微な症状だったという。[4](その場では軽症・重症の判断がつかず、念のため搬送したが軽症だったという場合も少なくないため、これらすべてが不要だったというわけではない。)
「擦り傷」や「虫に刺された」、「歯が痛い」など、到底救急車を呼ぶ程度でない症状や、通院時のタクシー代わりに使用する者もおり、中には「またお前か」と言いたくなるような「常連」も居るとのこと。[5]
総務省消防庁では、軽微な場合、移動手段がない場合などは、民間の患者等搬送事業者(民間救急車)や病院情報提供サービス等を利用するように呼びかけているが、一方で、救急車の有料化についての議論が出ている。
なお、救急車の出場にかかる経費は税金で賄われてことを、忘れてはいけない。
主なメーカー
アメリカの救急車
アメリカでは州や地域によって救急車の運用者が異なっており、行政や民間の企業(通称、EMS)が有料で行っているケースがある。また、運営者によって車体の色も異なっており、消防車と同様に黄色や赤色、白地に青ラインなど様々。
日本のように直ぐ救急車を呼ぶわけではなく、まずホームドクター(最初に相談する医師)に連絡をとり、救急車を呼ぶか、自分で病院まで行くか判断する。また、救急車だからといっても、必ず早く医療機関に着くとは限らない。[6]
ニューヨーク(FDNY)の 救急車 |
ペンシルベニア州 ランカスター郡の救急車 |
ウィスコンシン州ドッジビル の救急車 |
EMSの救急車 |
主なメーカー
その他の国の救急車
イギリスの救急車 |
カナダ モントリオールの 救急車 |
ドイツの救急車 |
オランダの救急車 |
ベルギーの救急車 |
香港の救急車 |
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関連商品
関連項目
脚注
- *出典:AEML 救急・救助六法 - 救急業務実施基準について
- *具体的な装備については、総務省消防庁発表の「高規格の救急自動車の標準的な仕様のあり方」を参照
- *出典:高千穂町 総務課消防防災係 画像展示室 - 軽救急車
- *出典:総務省消防庁 - 救急車の適正利用について(2008年4月9日)
- *出典:四国新聞社 - 増える救急車出動/有料化は必要か(2005年7月17日)
- *出典:シカゴ日本商工会議所 - アメリカの緊急医療
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