基礎データ | |
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正式名称 | ベトナム社会主義共和国 Cộng Hoà Xã Hội Chủ Nghĩa Việt Nam |
国旗 | |
国歌 | 進軍歌 |
公用語 | ベトナム語 |
首都 | ハノイ(Hanoi) |
面積 | 329,560km²(世界第65位) |
人口 | 約9762万人(世界第15位) |
通貨 | ドン(₫, VND) |
時間帯 | UTC +7 |
ベトナム(越南) 、ベトナム社会主義共和国とは、インドシナ半島東部に位置する国家である。
概要
かつては中国への朝貢国であり、北部地域では10世紀頃に中国から独立した王朝が建てられた。1802年には初めて現在とほぼ同じ領土を統一した阮朝(グエンちょう)が成立した。
その後西洋列強の進出により1887年から1954年まで日本占領期を除きフランス領インドシナとして植民地支配を受けていた。1975年まで続いたベトナム戦争では国土全体が戦場となるなど、歴史に翻弄され続けてきた国である。
近年は経済発展がめざましく、日本からも多くの企業が進出している。
その経済成長を支えている要因の一つは若さである。ベトナムの平均年齢は31歳前後(日本は48歳前後)。人口は約9700万人で東南アジア諸国ではインドネシア、フィリピンに次いで多く、2025年頃には1億人に達すると予測されている。
民族衣装のアオザイ(Áo dài)は女性の体のラインを美しく見せることで人気がある。アオザイをまとった美少女のイラストも多く存在するようである。
また、古来タイとインドシナの覇権をかけて対立していたインドシナ半島の強国である。
地理
主に北部、中部、南部の3つの地域に分けられる。首都のハノイは北部に位置し、政治の中心となっている。南部にはホーチミン市(旧称サイゴン)があり、ベトナムの商業の中心地となっている。中部にはダナン、フエ、ホイアンなど人気の観光地として賑わう都市が連なっている。
常夏のイメージがある東南アジア諸国であるが、北部のハノイは、冬には最低気温が10度を下回ることもある。
国民
多民族国家であり、キン(京)族が86%、華人が3%、タイ人、クメール人、ムオン族、メア族など54の民族がいる。ハノイやホーチミン市などの平地、デルタ地帯にはキン族が多く、山岳地帯には少数民族が多い。
宗教は日本に近く、大乗仏教が大半を占める。また、中国の影響から道教、フランスの影響からカトリック信者もいる。また、ホーチミン市より南には、ホアハオ教やカオダイ教等の新興宗教がある。また、共産党員は胡志明(ホー・チ・ミン)を信仰する人が多い。(ホー・チ・ミン自身は自らが崇拝対象になることを嫌い、遺言にまでしたが、共産党指導部によって遺体は埋葬されることなく保存処理された。)国が認めた宗教は仏教、カトリック、プロテスタント、イスラム教、カオダイ教、ホアハオ教である。
教育は、小学校5年、中学校4年、高校3年の義務教育と、大学がある。大学には日本の東大に相当するベトナム国家大学とその他の国立大学、私立大学がある。
名字
ベトナムの名前は、漢字由来が多く、ベトナム人に名字の漢字表記を教えると喜ばれる場合があるので、覚えておいて損はない。おもなベトナムの名字と漢字表記は以下のとおり。グエン(Nguyễn)は非常に多く、なんとベトナム国民の38%を占める。
グエン→阮 | チャン→陳 | レ→黎 |
ホー→胡 | ファム→範 | ファン→潘 |
ヴォー→武 | ブイ→裴 | リー→李 |
文化
ベトナムは漢字文化圏に含まれる(他の漢字文化圏は中国・日本・台湾・韓国・北朝鮮)。かつては漢字を元にした文字である「チュノム」が使われていた。現在の公用語であるベトナム語はフランス植民地時代に作られた「クオック・グー」(国語)と呼ばれるラテン文字で表記され、朝鮮半島と同じく普段の生活に漢字は使われていない。
ベトナム語の単語の6割~7割は漢字の熟語由来となっているため、日本語と似た発音の単語も多い。例として、注意(Chú ý チューイー)、管理(Quản lý クアンリー)、楽観(Lạc quan ラックアン)など。
近年は日本からの観光地として人気が上昇している。歴史的な文化遺産としては、阮朝の首都であったフエの王宮や、古都ホイアンの町並み、ハノイのタンロン王城やホー・チ・ミン廟など。また、紅河デルタ地帯で行われる水上人形劇は一見の価値がある。
中国と同じく旧暦の1月1日が正月休みになる(テト休み)。お盆やお年玉の習慣もある。
食文化
ベトナムは中国やフランスの食文化の影響を受け、独自の食文化を築いてきた。野菜や魚介類をふんだんに使った料理が多く、ヘルシーなものが多いのが特徴。また、ベトナム料理は辛いものやクセの強い料理が少ないため、東南アジアの中では日本人の口に合うものが多い。
代表的な料理に米粉の麺料理フォーやベトナム風サンドイッチのバインミー、ベトナム風お好み焼きのバインセオ、生春巻きのゴイ・クオンなどがある。調味料として、ヌクマムと呼ばれる魚醤がよく使われる。中国の影響を受け、犬やネズミ等を食べる文化もある。また、ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国であり、ベトナムコーヒーという伝統的なコーヒーもある。
音楽
ベトナムのポピュラー音楽は、主に民謡系のザン・カー(Dân ca)とポップス系のニャック・チェー(Nhạc_trẻ)に分けられる。ニャック・チェーは、近年ではV-POPとも呼ばれており、インターネットの普及も相まってSơn Tùng M-TP、Đông Nhiなどの歌手が人気を集めている。
スポーツ
国内で最も人気が高いスポーツはサッカーである。2008年に初めて東南アジアサッカー選手権で優勝し、近年は東南アジアの強豪チームとして着実に実力を上げている。2014年から2016年にかけては元Jリーグ監督の三浦俊也がベトナム代表監督を務めた。
政治
政治的にはベトナム共産党による一党独裁体制である。南ベトナムや都市部の若者には共産党の官僚的支配体制に対して不満を持つものも少なくはない。
ベトナムの外交政策は全方位外交と呼ばれる。日本とは1973年に外交を樹立して以降【静かな同盟関係】と呼ばれる程親密。ベトナム要人は時々靖国神社へ参拝に来る。また日本の外国人労働者で最も多いのはベトナム人である。
韓国とはベトナム戦争関連で民間の一部に軋轢があるが経済交流が盛んでパートナーシップを結ぶなど深い繋がりがある
中国とは中越国境紛争などがあり問題を抱えている。一方で互いに非西側の独裁国家であるためロシアの経済制裁や人権問題などでは歩調をあわせている。
意外と米国とは良好な関係を築いている。1995年に国交を回復し、中国の軍事的脅威に対抗するために軍事面での協力を進めている。
ASEAN諸国とは比較的良好な関係を築いている。但し、隣国であるカンボジアとは複雑な関係である。
カンボジアのポル・ポト政権を倒したのはベトナム軍であるが、カンボジア人は「ベトナム人に支配されるくらいならポル・ポト政権の方がましだ」という意見が多くなり、国際的な批判も相成ってベトナム軍は撤退した。以上のような経緯から、ベトナムとカンボジア関係は複雑と言える。
軍事
ベトナム軍は伝統的にゲリラ戦が強い。黎利の時代から、ベトナム軍は地形を利用したゲリラ戦で勝利を得てきた。
忍耐強い国民性が、ゲリラ戦に優位に働くと云う意見もある。
ベトナム戦争でアメリカに勝利したことは有名で、世界で唯一最強国家であるアメリカを負かした国とも言われている。
中越戦争でも、人海戦術で大量の兵士を投入してきた中国に対し、ベトナムはアメリカに勝利した際に手に入れた近代兵器などを用いてあっさり返り討ちにした。
反面、海軍はあまり強くなく、南シナ海に進出する中華海軍に押され気味である。ベトナム軍の当面の課題は海軍強化であろう。
経済
1976年に南北ベトナムが統一した後も、1978年のカンボジアへの侵攻などにより国際社会からの援助がままならず、経済状況は非常に悪かった。1986年にドイモイ(刷新)政策が導入され、計画経済から市場経済へ路線を転換した。その後、海外投資が増加し労働集約型の製造業が成長を遂げた。1995年、ASEANに加入、2007年にはWTOに加入。
日本企業も続々とベトナムに進出しており、物価が上昇しつつある中国に変わりメイドインベトナムの商品が増えつつある。また、ファミリーマート、サークルK、イオンモール、高島屋などの小売店は現地でも人気がある。
今後は賃金の上昇により隣国のカンボジアやミャンマーに製造拠点が移り、産業の発展が停滞する可能性も考えられるため、国内の工業技術の育成が急務となっている。
通貨はベトナムドン(VND)とよばれる。ドイモイ政策開始後のインフレの影響で通貨の価値が下落したこともあり、およそ200ドン=1円となっており、桁数が多い。
交通
バイクが非常に多い。世界でも有数のバイク大国であり、人口の半数がバイクを保有している。信号や横断歩道が十分に整備されていないため、歩行者はバイクの群れをかき分けるように道を渡る必要がある。道路渋滞や大気汚染は長年の課題となっており、2020年に向けてハノイやホーチミン市では地下鉄の建設が進められている。
2つの都市を結ぶ主な交通手段は飛行機、鉄道、バスである。ノイバイ国際空港とタンソンニャット国際空港が空の連絡口となっている。
ネット環境
ベトナムは社会主義国であるが中国のような規制は少なく、YouTubeやFacebookが利用できる。また、市内の多くのカフェやレストランではWi-Fiが利用できる。現地では配車アプリのgrabが普及しているので、旅行時には利用すると便利。
国民性
注:あくまでもステレオタイプとしてのベトナム人です。全てのベトナム人がこうではありません。
ベトナム人は一般的に向上心が強く真面目な人と言われる。前述のドイモイ政策が成功したのもこの国民性だと言われる。ただし、個人主義であるため日本でいう真面目な性格とは異なり、会社への忠誠心が高いというわけではない。
ベトナムは大きく分けると、ハノイを中心とする北部、フエを中心とする中部、ホーチミンを中心とする南部に分けられるが、国民性も北部、中部、南部では違ってくる。
北部の人々は自己主張が強いが内向的で落ち着いており、伝統や礼儀を重視する。中部の人々は忍耐力があり倹約家、南部の人々はオープン、外交的でエネルギッシュであるといわれる。
ちなみに、日本に留学する人は北部出身が多いそうだ。
日本との関係
比較的良好であり、戦争経験から日本嫌いのベトナム人も当然いるが、上記のように国の人口の大半が若者であることから、戦争からくるネガティブな意識を引きずってくることは少ないようだ。
実際調査すると、国民の多くが親日と答えてくれるそうである。
ベトナムでは、一時期バイクのことをホンダとみんなが呼んでいたくらい、日本製のバイクの普及率が高い。
お店でバイクを紹介される時は「この商品はヤマハ製のホンダです」という日本人からすればまるで意味のわからない紹介のされ方をすることもあったとか。
「壊れない」という理由から、日本製のバイクを末永く愛用している人も多く、日本製の電化製品の信用性は高い。
その一端を示す例に、2002年にHTBの番組「水曜どうでしょう」が行ったハノイからホーチミンをホンダのカブ(正確にはドリームⅡ)で走り抜ける企画「原付ベトナム縦断1800キロ」がある。この企画では大通りを埋め尽くすバイクのほぼすべてがホンダのカブであった。
日本は中国に工場などを置く企業が多いが、中国の人件費が増加していることや勤勉な国民性、ベトナムが親日国であることから事業を移転させる動きも見られる。
そして、現在ベトナムからの留学生や労働者が増えている。2022年の統計では、ベトナム人留学生は65,817人で、これは、中国(119,302人)に次いで多い。また、日本で生活するベトナム人は2022年時点で約42万人に上り、中国人に次ぐ多さ、外国人労働者全体の25%を占める。
主なベトナム人・ベトナム系の人物
ニコニコ大百科に記事がある人物は太字。
- ホー・チ・ミン(ベトナム独立の英雄。都市の名前にもなっている)
- グエン・ベト、グエン・ドク(枯葉剤の被害者)
- ニャンさん(HTB「水曜どうでしょう」原付ベトナム縦断1800キロ ガイド)
- フォンチー(アイドリング!!!)
- ヴァン・ダークホーム(ベトナム系アメリカ人。出生地もベトナム)
- チャン・フン・ダオ(別名チャン・クォック・トアン。ベトナムで人気の大英雄。元のベトナム侵略を退けた)
- ヴォー・グエン・ザップ(ベトナムの有名な将軍)
- レ・ロイ(明からベトナムを独立させた英雄)
- グエン・トラン・フォク・アン(在日ベトナム人の元社会人野球選手)
- ダニー・グレーブス(ベトナム出身者で初のメジャーリーガー)
- レ・コン・ビン(サッカー選手・元ベトナム代表、コンサドーレ札幌)
- グエン・コン・フオン(サッカー選手・ベトナム代表)
- ミー・タム(歌手・女優)
- ハイ・バー・チュン(徴姉妹。独立のために後漢と戦ったベトナムの英雄)
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関連項目
- ハノイ
- ホーチミン市
- ヴェトナム史
- 越蒙戦争
- ベトナム大飢饉(1944~45年)
- ベトナム戦争
- ベトコン
- 国の一覧
- アジア
- 東南アジア
- テト攻勢
- ライダイハン
- ベトナム共産党
- 社会主義国
- フォー(ベトナムの麺料理)
- バインミー
- 外国人技能実習生
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