格安航空会社とは従来の航空会社よりも低価格のサービスを提供する航空会社である。
LCC(Low-Cost Career, ローコストキャリア)と略されることが多い。
なお従来型の航空会社はFSC(Full-Service Career, フルサービスキャリア)またはレガシーキャリア(Legacy carrier)と呼ばれることが多い。
概要
FSCよりもサービスを簡素化させ、無駄を徹底的に省くことによって安価な運賃を提供している。簡素化の度合いはマーケットや航空会社によって異なるが、主に以下に挙げるような工夫が行われる。
- シートピッチ(座席間隔)を狭くする
シートピッチを狭めることによって、より多くの座席が設置可能になる。一部、座席間隔が広い席(非常口席や最前列など)も存在するが別料金が設定されている事が多い。 - 受託手荷物の完全有料化
FSCでは、ある一定の重量までの受託手荷物は無料だが、LCCにおいては重量にかかわらず有料となる場合が多い。もしくはFSCよりも条件が厳しい場合が多い。 - 運航機材の統一
メンテナンスの効率化などの目的で運行する機種を180席~200席クラスであるボーイング737やエアバスA320などに統一する事が多い。ただし、中長距離の路線、または事業が拡大した場合には大型機材の導入が図られることも多いため、一概には言えない部分でもある。 - 人件費の削減
キャビンアテンダント(CA)が地上係員(搭乗受付)、機内清掃などの業務まで行う。もしくは係員が複数の業務をこなすマルチタスク化。これによって雇用するスタッフの数が削減できる。
これらの特徴を備えた航空会社は、だいたい1970年代頃に海外で形になりはじめ、90年代にアメリカでサウスウエスト航空が大成功を収めたことで一気に台頭した。
日本では、規制緩和によって90年代後半にスカイマークが就航したぐらいで、なじみのあるものとは言えない状態が続いていたが、2000年代後半から海外の大手格安航空会社が相次いで参入し、世界のFSC各社も子会社または関連会社としてLCCを手掛けるなど、国内外問わず近年にわかに活発化してきている。
安全性
運賃こそ低廉ではあるが、安全面でのコストダウンは行われていない(というよりも政府の航空当局や国際機関から許可されない)ため、FSCとLCCでは安全上の差はない。
航空機の運航には非常に厳格な安全基準が定められているので過度な心配は不要だと言えよう。
しかし海外では、バリュージェット航空やアダム航空など、新規参入したLCCが事故を起こした前例もある。これらはスタッフの訓練不足などが原因となっており、その根底にはやはり、安全性の確保やスタッフの育成よりも便数の早期確保・維持を優先する経営体制があったと言われる。
そもそも、苛烈な価格競争とコストカットが、パイロットの過労や劣化機材の放置などによってトラブルを招いた事例は、航空業界に限らず数多い(2012年に関越自動車道でおきた格安高速バスの事故などが典型的な例である)。
こういった理由から、LCCは決して使わず信頼のおけるFSCのみを使うことに決めている人もいる。格安航空会社の安全性が不安視されがちなのもある意味では仕方ないところもある。
利用する場合の注意点
サービスが他の航空会社に比べて控えめなのは、搭乗中に限ったことではない。LCCの利用によるトラブルも多発しているようである。以下に注意点を簡潔にまとめるので、利用する場合の参考にして欲しい。
チケットはWebサイトから自力で予約するのが原則
航空券の手配は旅行会社に任せる方も多いと思われるが、LCCの場合は自力での手配が原則である。各社のWebサイトから予約を行い、クレジットカードやコンビニで支払いを行う。
日本ではLCC各社の予約センターから電話予約もできることが多いが、Webサイトでの予約より割高となる。
運賃は大きく変動する
格安航空会社の運賃は需要や空席数によって大幅に変動する。今さっき予約した便の運賃が1時間後には2倍になることも、逆に半額になることも日常茶飯事である。
運賃が下がっても差額の払い戻しなどは行われないので、損をした場合でも潔く諦めよう。また、宣伝文句として使われる運賃は最安値のものであり、実際に予約するとその数倍だった、といったことも良くあるので気をつけるべきだろう。
基本的に週末や休暇期間の運賃は高くなる傾向にある。早めに買っておくといろいろ割引が利く辺りは他の航空会社と同様。
払い戻しは行われない(と思うべし)
航空会社や運賃にもよるが、キャンセルに対しての払い戻しは、フライトの何日前であろうと行われない場合が多い。
行われたとしても現金ではなくポイント(マイレージ)や次回搭乗時の割引クーポンとして払い戻される場合が多いので、予約する場合は覚悟を決めておこう。
遅延・欠航時のサポートはない(と思うべし)
悪天候や機材トラブルで遅延・欠航等が発生した場合でも、原則として他社便振替は行われず、払い戻しのみの対応となる。しかもキャンセル時同様、ポイントやクーポンとして払い戻されることが多い。
乗り継ぎの場合で遅延・欠航等により、乗り継ぎ便へ搭乗できなかった場合、後便への振替ができずに改めて航空券を手配しないといけないことが多い。
何があっても自己責任、である。受験や急な出張など、遅れが許されない場合や代替交通機関を確保する自信がない人は、値が張ってもサポートの厚い航空会社を使うべきであろう。
主な格安航空会社
以下に主な格安航空会社を列挙する。
スターフライヤーやソラシドエア、アイベックスエアラインズなど、規制緩和で近年設立された航空会社(≒JAL、ANA以外)も一括りにLCCとして扱っているWebサイトも見られるが、この記事においては従来の航空会社と比較して明確にコスト削減と運賃の引き下げが行われている航空会社を「格安航空会社」として定義する。
日本
- Peach(ピーチ) - ANA子会社(共同運航は行われていない)
- ジェットスター・ジャパン - JALとカンタス航空の合弁事業。
- バニラ・エア(旧:エアアジア・ジャパン) - Peachと統合し運行終了
- スプリング・ジャパン(旧・春秋航空日本) - 春秋航空の関連会社だが、2021年よりJAL子会社
- リンク - 就航前に破綻。
- スカイマーク - 運賃も低価格であり、サービスの簡素化も行われているが、スカイマーク側はLCCでないとしている
。
- ZIPAIR Tokyo - JAL子会社。国際線(主に中長距離)を運行
海外
アジア・オセアニア
- ジェットスター(オーストラリア) - 日本・シンガポール・ベトナムにグループ企業あり
- エアアジア(マレーシア) - タイ・インドネシア・フィリピンにグループ企業あり
- エアアジアX(マレーシア) - 上記エアアジアの長距離路線運航担当。
- べトジェットエア(ベトナム)
- セブパシフィック航空(フィリピン)
- インディゴ(インド)
- 春秋航空(中国) - 日本にグループ企業あり
- ジンエアー(韓国)
- チェジュ航空(韓国)
欧米
関連動画
関連項目
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