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炭疽菌とは、非常に危険な細菌の一種である。
概要
人間（ヒト）や哺乳動物に対して炭疽症と呼ばれる病気を引き起こす細菌。学名はバチルス・アンシラシス。
この菌の最大の特徴として、防御力が非常に高いことがあげられる。高温や乾燥、消毒にも耐えられる厄介な細菌である。これは炭疽菌が芽胞と呼ばれるバリアを作る能力を有することが理由である。
ただし、完全な無敵状態というわけでもなく、一応、抗生物質（抗菌剤）でやっつけることができる。
耐久性だけでなく毒性も非常に強いため、しばしばバイオテロに使われることがある、非常に危険な細菌である。
感染症法では保健所への報告が直ちに必要な四類感染症となっている。
非常に危険な細菌であるため、研究施設ではエボラウイルスやペスト菌、ボツリヌス菌などと同様に厳重な管理が要求される。
ちなみに近い仲間の細菌（バチルス属）として善玉菌の納豆菌や枯草菌、食中毒の病原体であるセレウス菌などがある。（ただしセレウス菌は炭疽菌と異なり、軽症で済むことが多く重篤な症状を引き起こすことはほとんど無い）
感染経路
炭疽症にかかった動物に触れたり、炭疽症で死亡した動物の肉を食べることで感染する。
インフルエンザなどと異なり、人から人に伝染することはほぼ無いとされる。
日本などの先進国で発生することはきわめて稀であり、一つでも発症例があった場合はバイオテロの可能性が強く疑われる。
症状
炭疽菌が感染した部位によって皮膚炭疽症、腸炭疽症（消化管炭疽症）、肺炭疽症（吸入炭疽症）に分かれ、それぞれ症状、経過が異なる。
いずれの炭疽症も早急に薬で治療しなければ死亡する危険性が非常に高い。
皮膚炭疽症
炭疽菌が皮膚の小さな傷から感染することで発症する。ほとんどの炭疽症はこの皮膚炭疽症として発症する（逆に言えば、腸炭疽症や肺炭疽症などはバイオテロ以外ではほとんど発生しない）。
高熱と発疹がみられ、発疹はやがて瘡蓋（かさぶた）になる。進行すると敗血症を併発して死亡することもある。未治療の場合の致死率は20%以上。
腸炭疽症（消化管炭疽症）
炭疽菌に汚染された肉を食べることで食中毒として発症する。小腸や大腸などの消化管に出血や壊死が起こる。
主な症状は激しい腹痛、下痢・下血、嘔吐・吐血。進行すると消化管に穴があいて腹膜炎を引き起こすこともある。また、のどのリンパ節に感染することもあり、この場合は激痛や嚥下障害を伴う。未治療の場合の致死率は50%以上。
予防方法としては炭疽菌に汚染された肉を食べないことがあげられる。ちなみに炭疽菌は腸管出血性大腸菌O157やノロウイルスなどと異なり、高温にも耐えるため食品の加熱による予防はほぼ不可能である。
肺炭疽症（吸入炭疽症）
激しい咳や喀血、呼吸困難などがみられる。髄膜炎を合併することもある。未治療の場合の致死率はほぼ100%であり、発症してから数日で死亡することが多い。
髄膜炭疽症
炭疽菌による髄膜炎のこと。特に肺炭疽症の合併症として起こりやすい。
髄膜炭疽症を起こした場合の予後はきわめて悪く、薬による治療を実施してもほぼ100%死に至る。
治療方法
抗生物質による治療を行うが、いずれの炭疽症も進行が早く致死率が高いため、原則として入院治療が必要である（ただし天然痘やペストなどと異なり人から人に伝染することはほとんど無いため、患者を隔離する必要は無い）。
症例によっては手術が必要になることもある（例：消化管に穴があいた場合など）。
生物兵器としての炭疽菌
炭疽菌はしばしば「最も優秀な生物兵器」の一つと言われることがある。これは以下のような理由があるからである。
- 核兵器や化学兵器に比べて製造コストが安い。
- 攻撃力が非常に高い（重篤な症状を起こしやすく、致死率が非常に高い）
- 人から人に伝染しないため、（テロリスト側にとっては）制御が簡単である。
- 芽胞を作ることができるため、防御力が非常に高い。
- 有効な治療薬があるため、（テロリスト側にとっては）比較的安全である。
ちなみにエボラウイルスやマールブルグウイルスなどの出血熱ウイルスは炭疽菌以上に高い攻撃力を持つが、「有効な治療薬やワクチンが存在しない」「人から人に容易に伝染する」などの理由からテロリスト側にとっても取り扱いが非常に難しいため、生物兵器としてはあまり好まれないとされている。
ただし炭疽菌は非常に高い防御力を持つため、一度土壌などの環境が汚染されると、除染するのがきわめて困難であるという弱点も存在する。
関連動画
関連項目
- ニコニコ大百科：医学記事一覧
- 生物兵器、生物化学兵器
- 天然痘ウイルス、ペスト菌、ボツリヌス菌、エボラウイルス（エボラ出血熱）…炭疽菌と同様にバイオテロに使われる可能性が指摘されている病原体たち。
- 破傷風菌…炭疽菌と同じく傷口から感染する細菌で、致死率が非常に高い。
- 細菌
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