養子縁組(世界平和統一家庭連合)とは、統一教会の信者同士で行われる養子縁組のことを指す。
概要
教団が信者同士の養子縁組を推奨する
統一教会は、子どもを産んだ信者が子どもを持っていない信者へ養子に出すことを推奨する宗教団体である。
統一教会の教えを書いた本には「子女のいない家庭に(子を)分かち与えることは神様の願いに応えること」、「家庭連合の養子縁組は一般で行われている養子縁組とは違い神様の心情を中心としてなされるもの」と記載されている。さらに統一教会では、自らの子を養子にだした信者を表彰するなどして、養子縁組を促している[1]。
教団が信者同士の養子縁組を斡旋(あっせん)する
統一教会は、信者同士の養子縁組を斡旋する宗教団体である。斡旋とは、仲介することであり、仲を取り持つことであり、2人の間に入って両者の間が上手くいくように世話をすることである。
2014年に発行された『祝福家庭のための侍義生活ハンドブック(光言社)
』によると、養子縁組について「両家で合意がなされたら、 必ず家庭教育局に報告が必要」とするなど、組織的に管理するルールを信者に定めている。また、統一教会の元職員によると、教会本部の「家庭部」という組織が中心となり、各地域の教会家庭部を通して養子縁組の申請を募り、本部が「マッチング」を行っていたという[2]。
2015年3月1日に初版が発行され2022年8月4日に改訂版が発行された『神の子を迎える喜び 妊娠・出産・育児(光言社)
』には、「家庭連合の養子縁組は一般で行われている養子縁組とは違い神様の心情を中心としてなされるものです」とあり、さらに「養子縁組を決める際には教会の家庭部長が両家の間に入って意思確認する」としており、さらに「養子縁組が合意に至ると必ず日本の家庭連合本部の家庭教育局に報告が必要です」と述べ、さらに「2組の家庭が養子縁組式を行うべきだ。養子を出す側が『子女に一切未練を持たないようにします』と言い、養子をもらう側が『神の子女として預り育てていきます』と言うべきだ」としていて、そして家庭裁判所に養子縁組許可申立を行って自治体に届け出ることを指南していて、本の最後で「養子を出したいと思う人や養子を迎えたいと思う人は所属教会の家庭部長にぜひ相談してください」と語っている(記事
、動画
)。
教団が信者同士の養子縁組を許可・承認する
統一教会は、養子縁組を行った信者に対して「養子縁組申請書」という書類を提出させ、統一教会本部の家庭教育局でその書類を保管しているという(記事
、動画
)。
「養子縁組申請書」には養子縁組を行った家族の生年月日や所属教会などの情報が記載され、さらに家族の写真などが添付されているという。
2022年11月22日に厚生労働省と東京都が連名で統一教会に対して質問状を出し[3]、それに対して12月5日に統一教会が回答書を出した[4]。その回答書の中で統一教会は「養子縁組申請書は、養子縁組の許可を求めるものではなく事実を報告するものにすぎない」と説明している。
しかし、2015年3月1日に初版が発行され2022年8月4日に改訂版が発行された「神の子を迎える喜び 妊娠・出産・育児(光言社)」には、「養子縁組申請書を教会本部に提出し、会長が承認する」と記されている(動画
)。
Twitterには、教団が信者に向けて出したと思われる文書がアップロードされており、その文書の中には「養子縁組の決定には、真のご父母様の代身である会長の承認が必要ですので、養子縁組を決定する前に、本部家庭局に報告してくたさい。」という文言が見られる。そしてその文書には「家庭局長 高橋久夫」という署名が添えられている。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/Stash80743017/status/1594536554252247041
統一教会はYoutubeで「ほぼ5分でわかる祝福結婚Q&A第39回」という題名の動画を公開していた(動画
)。統一教会の養子縁組の斡旋疑惑が報じられるようになり、その動画は非公開となったが、ニコニコ動画に転載されている。
1分14秒頃に「天は全ての祝福家庭に子女を授けたいと願っておられますが、実際には様々な理由により子どもができない場合があります。真の父母様はこの課題を解決するために養子縁組を許可してくださり、祝福子女を授かる道を開いてくださいました」と語っている。この発言からは「統一教会が信者同士の養子縁組を許可し承認している」という教団の認識をうかがうことができる。
統一教会の信者同士の養子縁組の実績
統一教会によると、統一教会の信者同士で養子縁組された最初の記録は1981年に誕生した子女のものであり[5]、2022年5月までの41年間に745人の養子縁組が行われたという。
そして、745人の養子縁組のうち31人は、都道府県知事からの許可を得て養子縁組の斡旋をする体制となった2018年4月以降に行われたと報じられている[6]。
2022年11月15日以降になってやっと話題になる
2022年7月8日に安倍晋三射殺事件が発生し、その直後から統一教会の霊感商法や選挙協力などが次々と報じられるようになった。
そして11月15日になってNHKがクローズアップ現代で『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』という題名の番組を放送し、統一教会が信者同士の養子縁組を斡旋している疑いを報じた(ツィート
、記事1
、記事2
)。ここから一気に国会や行政が動きだし、11月22日に厚生労働省と東京都が連名で統一教会に対して質問状を出す事態となった。
安倍晋三射殺事件が起こるまでの間にマスコミや国会議員や厚生労働省に対して「統一教会が信者同士の養子縁組を斡旋している」という垂れ込みがあったものと推定されるが、何一つ話題にならなかった。こうしたことを広く見渡すと、日本という国家が非常に闇の深い国であることを再確認することができる。
法令に違反する可能性
法令違反の指摘
統一教会は、都道府県知事の許可が必要な「養子縁組のあっせん業」を無許可で行っている疑いがあり、法律に違反している疑いがある。こうした問題に詳しい棚村政行・早稲田大学法学学術院教授によると、児童福祉法や民法や養子縁組斡旋法に触れる可能性があるという[7]。
統一教会の主張
統一教会に対してNHKが「『民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律
』に基づき、事業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けていますか」と質問したところ、統一教会は次のように答えた[8]。
「当法人で行われている養子縁組制度は、民間あっせん機関による養子縁組とは性質を異にするものであり、養子縁組を取り持つ教会が金銭的報酬を受け取ることは一切ありません(以上の理由から民間あっせん機関等の認可は受けていません)」
「尚、最近20年間においては、教会が関わる養子縁組制度から養子縁組を希望する家庭間で執り行われる養子縁組制度へと移行しております」
統一教会の主張に対する反論
養子縁組制度を所管する厚生労働省は、NHKの取材に対して「養子縁組のあっせんとは、親や子どもの間をとりもって、養子縁組の成立が円滑に行われるように第三者として世話をすることで、報酬を伴うのかどうかに関わらず、一定の目的をもって反復継続的に『業』として行う場合は、都道府県の許可を受ける必要があると定められています」と答えた[9]。
また、養子縁組に詳しい棚村政行・早稲田大学法学学術院教授は、統一教会の組織的な行為について「養子を取りたい人と養子に出したい親御さんの間を取り持つ行為がまさにあっせん」「報告書・申請書みたいなものも出されているので、まさにあっせんと言えると思う」と述べた(動画
)。
また、2015年3月1日に初版が発行され2022年8月4日に改訂版が発行された「神の子を迎える喜び 妊娠・出産・育児(光言社)」には、養子縁組に積極的に関与しようとする教団の姿勢が随所に見受けられるので(動画
)、統一教会の「尚、最近20年間においては、教会が関わる養子縁組制度から養子縁組を希望する家庭間で執り行われる養子縁組制度へと移行しております」という回答も、非常に空虚なものと言える。
子どもの福祉の軽視
子どもの福祉を増進するように求めている法律
日本の養子縁組制度は、普通養子縁組と特別養子縁組に分かれる。普通養子縁組は戸籍上に養親と実親の名前が両方とも記載されるのに対し、特別養子縁組は戸籍上に養親の名前だけが記載される(資料1
、資料2
)。人々が「養子」と聞いて即座に連想するものは、やはり特別養子縁組と言える。
民法第817条の2
や民法第817条の7
により、特別養子縁組は子の利益のため特に必要があると認めるときに家庭裁判所が認めるものと定められている。そうした条文を受け、厚生労働省も「特別養子縁組とは、子どもの福祉の増進を図るために・・・」と述べている(資料
)。
妊娠前に養子縁組の約束をすることを推奨する
2015年3月1日に初版が発行され2022年8月4日に改訂版が発行された「神の子を迎える喜び 妊娠・出産・育児(光言社)」には、「養子縁組の約束を交わすのは、妊娠前が最も望ましい」という記述がある(動画
)。
また統一教会の「ほぼ5分でわかる祝福結婚Q&A第39回
」という動画の2分30秒頃では「養子をもらう母親は、養子を送り出す母親と一体化するため、養子を送り出す母親の出産の前後1週間を病院などで共に過ごすべきである」と説いている。この発言は「養子縁組の約束を交わすのは、妊娠前が最も望ましい」という記述とぴったり整合するものである。
つまり、統一教会は「養子縁組の約束をしてから、実親が子作りして出産し、子どもを養親に渡すのが、最も好ましい」と述べているのである。
このような実態は、「統一教会は子どもをモノのように扱っている」と批判されても致し方がないところである。
「養子縁組の約束をしてから、実親が子作りして出産し、子どもを養親に渡す」という形式で養親のところに行った子どもが「自分はモノのように扱われているのではないか」と深く苦悩することも容易に想像できることである。
「今の養子縁組や民法は、お子さんが生まれて何らかの事情があり、そこの家庭では育てられない・幸せにできないという場合に幸せになるための手段である。妊娠前・出産前に(養子縁組を)決めてしまうというのは子どもの福祉に反する」と棚村政行・早稲田大学法学学術院教授が述べている(動画
)。統一教会の姿勢は、子どもの福祉を重視する民法の理念から離れたものと言わざるを得ない。
関連項目
脚注
- *NHKクローズアップ現代『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』(初回放送2022年11月15日)

- *NHKクローズアップ現代『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』(初回放送2022年11月15日)
- *東京新聞記事

- *朝日新聞記事

- *NHKクローズアップ現代『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』(初回放送2022年11月15日)
- *読売新聞2022年12月3日記事

- *NHKクローズアップ現代『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』(初回放送2022年11月15日)
- *NHKクローズアップ現代『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』(初回放送2022年11月15日)
- *NHKクローズアップ現代『スクープ取材・旧統一教会 “知られざる被害”の告白』(初回放送2022年11月15日)
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